クロスドレッサーとは?トランスジェンダーの違いや時代によって変化する定義を見ていく

クロスドレッサーとは?トランスジェンダーの違いや時代によって変化する定義を見ていく

クロスドレッサーとは

クロスドレッサーとは、自分が生まれた時に割り当てられた生物学的な性別とは、違う服装をする人のことを指す。つまり、「女性として生まれたけれど、男性特有の服を着る」「男性として生まれたけれど女性特有の服を着る」人がクロスドレッサーにあたる。

例えば、タレントのマツコデラックスさんは、生まれた時の性別が男性で、レディース用のワンピースなどを着用することが多い。マツコデラックスさんはクロスドレッサーだと言える。また、ミュージシャンのデヴィッド・ボウイは、女性らしい服装を取り入れたことで人気を博した、クロスドレッサーの先駆けかつカリスマ的存在だ。

クロスドレッサーと関連用語との違い

クロスドレッサーという言葉は、トランスヴェスタイトや、トランスジェンダーと混同されやすい。

トランスジェンダーの違い

トランスジェンダーとは、出生時に割り当てられたジェンダーとは異なるジェンダー・アイデンティティを自認する人を表す総称だ。また、ノンバイナリー(性別が女性、男性のどちらか一方にとらわれない性自認の人)の人も、広い意味でトランスジェンダーに入る。

例えば、クロスドレッサーのマツコデラックスさんは、男性として生まれ、自分のことを男性として認識している。つまり、トランスジェンダーではない。トランスジェンダーは、性自認が生まれた時の性別と異なる人を指すので、この点で異なるのだ。

トランスヴェスタイトとの違い

生まれた時に割り当てられた性別と異なる性別の服を着る人は、かつてトランスヴェスタイトと呼ばれていた。しかし、現在はトランスヴェスタイトという言葉はあまり使われていない。

なぜなら、トランスヴェスタイトという言葉には、「自分の性別と異なる性別の服を着ることで性的に興奮している人」というニュアンスがあり、偏見やスティグマと結びついてきた侮蔑語だったからだ。

トランスヴェスタイトに差別的なニュアンスがあった一方、クロスドレッサーという言葉はより広義に使われ、シンプルに「異性装をしている人」という意味にとどまっている。

クロスドレッサーが異性装をする目的はさまざまで、「女性らしい服装」「男性らしい服装」が苦手だから、という理由の場合もある。「女らしさ・男らしさ」よりも「自分らしさ」を追求した結果、異性のファッションの方がしっくりきた、という人もいる。また、ファッションや、自己表現の一種として、異性装を楽しんでいる人もいる。

「虎に翼」のよねさんはクロスドレッサーなのか

2024年の4月から9月にかけて放送されたNHK「連続テレビ小説」に山田よねというキャラクターが出てくる。

よねさんと呼ばれる彼女は、女性として生まれ、性自認も女性。しかし、女性として性的に搾取されそうになった経験から、女性として見られることを忌み嫌い、大正時代の当時、女性は誰もしていなかった男性用のスーツにショートカットで、いわゆる「男装」をしていた。よねさんは、女性に解禁されたばかりの弁護士試験に挑戦するが、その「奇異なファッション」が災いして、口頭試験で落とされてしまう。

よねさんは、女性でありながら、男性専用と当時されていたファッションを纏っていたという点で、クロスドレッサーだと言えるだろう。

しかし、よねさんのファッションを、現代の女性がしていた場合、クロスドレッサーだと言えるだろうか。

クロスドレッサーの定義は、時代によって異なる

クロスドレッサーの定義は、時代によって異なる

ショートカットに、腰がくびれていないパンツスーツの女性は、現代では珍しくない。よねさんと同じファッションを現代にしていたとしても、「男装」だと言われることはないだろう。

なぜなら、男女の服装の垣根は、大正時代よりも低くなっているからだ。昔は、女性のスーツといえば、腰がくびれていてポケットが小さいものしかなかった。しかし、今は女性のスーツの形も、男性ものに近づいてより機能的になりつつある。クロスドレッサーであるという意識がなくても、現代では、性別の垣根を超えたファッションを好む人たちは増えているのだ。

同時に、ユニセックスを売りにするブランドも現れている。「これは女性の服」「これは男性の服」とはっきりと分けられなくなっている今、クロスドレッサーという言葉があまり聞かれないのは、必然だと言えるだろう。

服装による性差がなくなりつつある現代

クロスドレッサーは、本人の意図はさまざまだが、単なるファッションや個人の趣味としての異性装を超えて、社会的なジェンダーロールのあり方に対する問いかけを行う存在でもある。男性が女性らしい服を着ること、女性が男性らしい服を着ることに対する偏見や社会的なプレッシャーが依然として存在する現代において、クロスドレッサーたちは自己表現の自由や多様性を体現しているとも言える。

女性の服・男性の服とはっきり分かれていて、その境界線を越えることがタブーとされていた時代には、「虎に翼」の山田よねさんのように異性装をすることは、社会において固定されたジェンダーロールに対する挑戦、つまり社会秩序への挑戦であり、後ろ指を指され、社会から排除される可能性のある危険な行動だった。今は女性がパンツスーツを着たり、ショートカットだったりしても、逸脱行動だとは見なされない。

ファッションにおいて性別の垣根が低くなっているのは事実だろう。スカートなど、性別との結びつきが強く、その性別ではない人が着用することにタブー意識が強いファッションも残っているが、今後変わる可能性は大いにある。何せ、10年前は男性がメイクやネイルをすることはタブーだったが、今は珍しくもない。時代は変わるのだ。

いずれは、ファッションと性別の結びつきが薄れ、クロスドレッサーという言葉が「こんな言葉があったらしい」と懐かしまれる時代が訪れるかもしれない。

Edited by k.fukuda

参考サイト

エリス・ヤング著、上田勢子訳『ノンバイナリーがわかる本 heでもsheでもない、theyたちのこと』明石書店、2021年

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