2025年、制服は「選ぶもの」へ。広がるジェンダーレス制服という選択肢

2025年現在、全国の中学・高校で「ジェンダーレス制服」の導入が進んでいる。これまでスカート=女子、ズボン=男子という暗黙の了解があった学校制服において、性別にかかわらずスタイルを選べる取り組みは、学校現場における小さな革命ともいえる。背景には、Z世代の多様性を重んじる価値観や、政策的後押しがある。

なぜ今、制服の選択制が求められているのか

制服の選択制を求める声が高まっている背景には、政策的な後押しとZ世代の価値観がある。

文部科学省は2015年の「性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応について(通知)」により、性同一性障害の子どもが安心して学校生活を送れる環境づくりを求めてきた。現在ではLGBTQ+全体への配慮に広がりつつある。

通知には教職員や保護者、医療機関との連携や支援体制の充実の必要性が明記され、具体的な配慮事項として、更衣室やトイレ、水泳指導など生活全般での支援の例が示されている。「自認する性別の制服・衣服や、体操着の着用を認める。」というのは、その中の一つだ。

またZ世代は、性別による固定観念に縛られず、自分らしい装いを通じて自己表現をしたいという傾向が強い。彼らは学校教育の中でSDGsを学び、多様性や他者の尊重を社会の良識として理解している世代だ。

制服にもその価値観を反映しようとするのは自然な流れといえるだろう。特に、自認する性とは異なる制服を着ることに抵抗を感じるトランスジェンダーの生徒にとっては、制服を選べることの意味は大きい。ジェンダーレス制服の導入は、見た目の自由だけでなく、生徒の尊厳や安心感を守るための第一歩といえる。


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全国に広がるジェンダーレス制服の実例

全国では、制服の刷新を機にジェンダーレス制服の導入が進んでいる。

2023年に菅公学生服株式会社が全国の中学・高校生1,400人に対して行ったインターネット調査によると、「LGBTQ+の生徒への服装の配慮がされている」と回答したのは、中学校では44.7%、高校では55.5%、全体では53.0%という結果であった。

中学校ではやや低い割合だが、「現在は制服による配慮はされていないが、今後予定がある」という回答が8.4%あり、今後さらなる配慮の拡大が期待される。ここでは3つの例を紹介する。

生徒発案で実現した制服改革|明星高校

明星高校(東京都)では、高校1年の「総合的な探究の時間」の授業をきっかけに2020年に有志チームが発足。2021年、男子用と女子用の2種類しかない制服の改革を目指して活動を始め、スウェーデン大使館を訪問し、大使との意見交換を経て、多様性への配慮を制服面からアプローチした。

チームは教員へのプレゼンや試作品への意見提供を行い、2022年4月に女子用スラックスを導入し、ジェンダーの視点だけでなく防寒目的の需要から好評を得ている。今後は周囲の理解を得ながら、女子ネクタイや男子スカートなど選択肢の拡大を目指すとしている。

活動を通じて、ジェンダーの多様性や海外と比較した日本の現状についての学びがあり、日々の言動への意識につながっている。

当事者の経験を活かした導入|船橋市立行田中学校

船橋市立行田中学校(千葉県)では、2023年度から性別に関わらず選べるジェンダーレス制服を導入。ブレザーとズボンを共通の標準形とし、男女ともにスカートやリボンを選択できる。

議論を主導したのは、中学生時代に制服の着用が苦痛だった経験があるトランスジェンダー当事者の教員だ。性の多様性に関する授業を通じて、教職員全体の理解が進んだこともあり、保護者も交えた検討委員会が立ち上がった。

ジェンダーレス制服導入についての異論はなく、機能性や「かっこよさ」「かわいらしさ」も重視された。ブレザーは深みのある黒色、ズボンとスカートはグレーを基調とし、ネクタイとリボンは青みのある藤色となった。スカートとズボン、ネクタイとリボンのいずれを選んでも見た目に大きな違いが出ないよう、同じ柄で統一されている。生徒からも、制服でその人らしさを表現できると好評だ。

幼児期から「選ぶ」体験を|篠ノ井学園

幼稚園を運営する篠ノ井学園(長野県)は、2023年に制服デザインを刷新し、性別による色分けを廃止したジェンダーレス制服を導入した。背景には子どもファーストの視点がある。

ズボンとスカートの選択制に加え、スモックはブルーとピンク、シャツや刺繍は3色から選択可能とし、幼児期から「自分で選び決定する」経験を重視している。動きやすく汚れが落ちやすい素材や費用面への配慮を盛り込み、自由に選べるデザインを実現。

検討過程では教員もジェンダーレスの意義を学び、男の子がピンクを選ぶなどの選択を自然に受け止める環境づくりが進められた。保護者説明会では拍手が起こるなど賛同の声が多く、「今の時代に生まれてよかった」との感想も寄せられた。


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制度化の先にある課題と、これからの展望

ジェンダーレス制服の導入は徐々に進む一方で、周囲の目が気になり本当に着用したい制服を選べない可能性もある。男子がスカートを選びにくい雰囲気や、制服選択が性的指向や性自認のカミングアウトと受け取られる懸念など、文化的なバリアは残る。

しかし、学校が選択肢を提示して個人が自由に「選べる」という事実は、生徒に自己の在り方を問い、多様性を自分ごととして考えるきっかけになり得る。学校側が、多様性を尊重する姿勢を明確に発信することで、校内文化やジェンダー観の変化を促し、生徒一人ひとりの「自分らしく生きる」意識へとつながっていくに違いない。

多様な他者と認め合い、誰もが安心して過ごせるような世の中の実現に向けて、制服の選択制は今後も重要な役割を果たしていくだろう。

Edited by k.fukuda

参考サイト

性同一性障害に係る児童生徒に対するきめ細かな対応の実施等について
【Vol.205】「ジェンダーレス制服」とセーラー服 :: カンコー学生服
生徒有志チーム主導で「ジェンダーレス制服」を導入
「選択肢を増やしたい」ジェンダーレス制服を導入した船橋市の中学校 | TBSラジオ
【服育】ジェンダーレス制服の幼稚園!多様性が子どもの心を育む|学校法人篠ノ井学園

About the Writer
曽我部倫子

曽我部 倫子

大学で環境問題について広く学び、行政やNPOにて業務経験を積むなかで環境教育に長く携わる。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、未就学児や保護者を対象に自然体験を提供。またWebライターとして、環境、サステナブル、エシカル、GXなどのテーマを中心に執筆している。三姉妹の母。
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