ヒュッゲ(Hygge)とは?デンマーク発祥の文化に学ぶ豊かな暮らしのヒント

ヒュッゲ(Hygge)とは

ヒュッゲ(Hygge)は、デンマーク発祥の考えで、「居心地がよい快適な空間」や「小さなことに幸せを感じること」を意味し、デンマーク人の暮らしに対する心のあり方を表す言葉である。

世界幸福度ランキングで上位の常連で、2024年版の世界幸福度報告(World Happiness Report)においても2位にランクインした幸福大国デンマーク。他の北欧諸国と同様に、医療や教育が基本的に無料であるなど高い社会保障制度による生活への安心感もさることながら、日常を大切にし、無理をすることなく自分らしく生きるというヒュッゲの精神がデンマーク人の幸福度を高めているゆえんとも言える。

具体的にヒュッゲな暮らしとは、心地の良い空間で、家族、友人、パートナーといった大切な人と語り合い、ともに過ごす時間を大切にすること、自然と触れ合うこと、「今この瞬間」に集中し楽しむことなど、心身の緊張をほどいてリラックスして過ごすことである。

注目されている背景

デンマークを起源とするヒュッゲは、欧米諸国や日本での注目も高まっており、多くの関連書籍が発行されたり、メディアで取り上げられる回数も増えている。このように、多くの国で支持を集める背景としては、社会に対する不安や日常のストレスの増加が関係している。

地球環境の悪化や格差の広がり、国際的な対立の表層化などによって、地球環境への懸念やこれまでの社会システムへの不安が人々の間に蔓延している。このような不安は、SNSやネット情報から無数の情報を常に収集できる現代人にとっては、四六時中付きまってくるものでもある。また、コロナ禍によって外出が制限されたり人と交流する機会が減少してしまったことで、孤独感やストレスを感じる人も急増した。

こうした状況において、心身の健康に目を向ける「ウェルビーイング」が新たな幸福の軸として認識され始めており、「ヒュッゲ」はその概念の一部として、また具体的なスタイルの提案として注目されている。

ヒュッゲを楽しむポイント

ヒュッゲのポイント

ヒュッゲな暮らしは、特別なものを必要とせず、今日からすぐに取り入れることができる。また、絶対的な定義も存在しないため、住んでいる場所や年齢、趣味嗜好など自身の状況に合った方法で取り入れるのがよい。

明確な定義や決まりはないが、多くのデンマーク人にとって、ヒュッゲに欠かせないアイテムがキャンドルだ。実は、キャンドルを1時間使用した際の脳のリラックス効果は、スパで1時間過ごすことと同様のリラックス効果を得られるとされている。そのため、キャンドルを灯しながら部屋でのんびり読書をして過ごしたり、キャンドルを囲んで家族や友人と食事をしたり、語り合ったりすることは、それだけでヒュッゲな時間になる。

また、大好きなコーヒーをゆったり味わうことや、散歩をしながら夕陽の美しさに感動することなど、日常のなかにある小さな喜びを見つけ、幸せを感じることもヒュッゲを楽しむポイントである。いつでも「今この瞬間」を楽しもうという気持ちで日々を過ごすことこそがヒュッゲな暮らしなのだ。

ヒュッゲを取り入れる方法

それでは、ヒュッゲを楽しむ具体的な方法を見てみよう。

家族や友人との時間を大切にする

家族や友人とともに過ごす時間を多くもつこともヒュッゲの一つだ。特別なことはせずに家族で食卓を囲む、友人を招いてホームパーティを開くなど、自宅でありのままの飾らない自分で、大好きな人たちと心安らぐ時間を持つことが心からリラックスを与えてくれる。

季節を楽しむ

自然の時間の流れを感じながら、それぞれの季節を楽しむことも生活に暖かさをもたらしてくれる。日本では、四季の移り変わりがはっきりしており、それぞれの季節で行事もあるため、旬の食材を料理に取り入れたり、季節ごとのイベントを純粋に楽しむことも心の豊かさになるだろう。

自然に触れる時間を作る

ハイキングやキャンプなどありのままの自然を楽しむ時間を持つことも大切だ。これらの時間において、デジタルデトックスを意識してスマホなどのデジタルデバイスから距離を置くことで、失われていたゆとりを取り戻してくれる。ストレスホルモンであるコルチゾールの数値は、自然環境において改善することが示されており、人は自然と繋がることで、本来持っている生命力を活性化できることが分かっている。

心地いい空間作りを心掛ける

お気に入りの物に囲まれて、スッキリ整えられた空間に身を置くことで、心の身軽さを手に入れられる。例えば、木製の家具やウール・リネンといった天然素材を取り入れることで、温かみのある空間を創る効果がある。また、暖色系の照明やキャンドルは柔らかさを演出し、ふわふわのクッションやブランケットはくつろげる空間とリラックス効果を高めてくれる。

仕事に縛られない

デンマークでは、ワークライフバランスを重視しており、残業はほとんどなく、早い人では15時や16時には退社する。役職者であっても定時になれば退社し、家族とゆっくりした時間を過ごすそうだ。暮らしが充実しているからこそ、仕事にも注力できるというのがヒュッゲの考え方である。

今あるものを大切にする

多くのものを持たず、愛着のあるものだけを長く大切に使うこともヒュッゲにおいて重要だ。「あれが欲しい」とないものに目を向けるのではなく、目の前にあるものに感謝し、今あるもので幸せに暮らす。余計なものを持たないことで、無駄なストレスを感じづらい暮らしへと繋がっている。

まとめ

あまりにも多くの情報に囲まれ、それらが四六時中スマホから流れ込んでくる現代において、私たちは、「今」「この場」を純粋に楽しむことから疎遠になってしまった。そして時には、所在不明の不安や焦りに苛まれることもあるかもしれない。

そのような現代に蔓延るネガティブな感情に対して、ヒュッゲは誰もが簡単に自分を取り戻すことができる方法を提案してくれている。

目的などもたず、身近な人たちと共に、純粋に「今」を楽しむ時間。せわしない毎日に、そんなひと時を加えることで、自らをやさしく労わることができるのではないか。

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k.fukuda
大学で国際コミュニケーション学を専攻。これまで世界60か国をバックパッカーとして旅してきた。多様な価値観や考え方に触れ、固定概念を持たないように心がけている。関心のあるテーマは、ウェルビーイング、地方創生、多様性、食。趣味は、旅、サッカー観戦、読書、ウクレレ。