デジタルデトックスとは
デジタルデトックスとは、一定の間スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスから距離を置くことで、ストレスを減少させる取り組みである。現代において、デジタルデバイスは生活に不可欠なものとなっており、娯楽や暇つぶしだけでなく、レストランでの注文や日用品の購入など生活や社会におけるさまざまな場面で使われる。デジタルデトックスでは、現代の生活に欠かせない存在となりつつあるデジタルデバイスから離れ、人とのコミュニケーションや自然とのつながりにフォーカスすることで、心身をリフレッシュすることが期待される。
デジタルデトックスは、厳しいルールを設けて徹底的に行うこともあるものの、時間を決めて短い時間で取り組むことも可能である。たとえば、通勤時や寝る前などの短時間であっても、デジタルデトックスをすることで幸せを感じやすくなると言われている。
デジタルデトックスの必要性
デジタルデバイスが非常に身近な存在である現代では、先進国において成人のほとんどがスマホを所有しており、朝起きてから寝るまでそれらを利用している場合もある。インターネットにつながれば、常に新しい情報を得られるため、ふとした瞬間の暇つぶしとしても重宝されている。
しかし、新しい情報を取得し続けることは「脳過労」を引き起こす可能性がある。脳を休めることなく動かし、疲れを回復できない状態が続くと、やる気や判断力、記憶力の低下、感情のコントロール等ができなくなる弊害があるのだ。
また、SNSの過剰利用は、メンタルヘルスにも悪い影響をもたらす。SNSを長時間使用するほど、自身を周りと比較するようになり、ネガティブな感情が生まれやすくなるからだ。2018年のペンシルベニア大学の研究によると、SNSの利用時間を3週間にわたって1日10分に制限したグループでは、孤独感と憂鬱さが大きく改善したと報告されている。
デジタルデトックスによって、デジタルの世界から離れることで、脳を休めることができるだけでなく、自分の生活を見つめなし、心身ともウェルビーイングな状態に保つためにも必要な取り組みとなる。
デジタルデトックスの効果

心身を健康に保つために注目され始めているデジタルデトックスには、主に5つの効果がある。
- .目の疲れが取れる
デジタルデバイスを長時間見続けると、目の周りの筋肉が凝り固まり、目の疲労を引き起こす。さらに、それを起因として肩こりや頭痛が生じる場合もある。そのため、デジタルデトックスを行うことで、目の疲れはもちろん、全身の疲れの軽減にもつながる。
- 睡眠の質が良くなる
スマートフォンからから発生するブルーライトは、脳や体を活動状態に保ち、睡眠の質を下げるとされている。そのため、就寝前のスマホ使用を避けることで、体がスムーズに睡眠状態へと切り替えることができる。
- ストレスが減る
デジタルデトックスは、日々の生活や自分自身に意識を向けられるため、SNS等を見ることによって引き起こされる他人との比較や、自己嫌悪などのストレスから解放される。
- 脳の疲れが取れる
SNS等で次から次へと新しい情報を得ることは、脳を過剰に働かせる原因となる。デジタル空間から離れることで、脳を休めてリラックスさせられる。
- 幸せな気持ちになれる
デジタルデトックスを行うと、これまでスマートフォンに費やしていた時間を他の活動に当てられる。例えば、人とのコミュニケーションや、自分の興味のあるものに主体的に向き合うことで、より幸福感や充実感を味わうことができる。
デジタルデトックスの実践方法
デジタルデトックスは、厳しいルールを設けて徹底的に行わずとも、日常生活で気軽に取り入れることができる。ここでは、4つの実践方法を紹介する。
寝る前にスマホを見ない
1つ目は、寝る前にスマホを見ないこと。
スマホの画面から放出されるブルーライトの影響により、睡眠の質が低下する可能性がある。ブルーライトは、メラトニンと呼ばれる睡眠ホルモンの分泌を妨げ、体を活動状態にさせてしまう。そのため、スマホ使用後は頭がさえてしまい、リラックス状態で入眠できなくなるのだ。
スマホを枕元や寝室に置く場合は、夜間の通知をオフにしたりスマホの電源を切ることで睡眠に集中できる。加えて、寝る前は、ストレッチや瞑想などを行うことで、よりデジタルデトックスの効果を高めることができるだろう。
「ながらスマホ」をやめる
2つ目は、何か別のことをしながらスマホを使用する「ながらスマホ」をやめること。
通勤時間中や食事中などにスマホを開くことが癖になっている人も多いだろう。しかし、常にデジタルデバイスに触れていることは、脳過労やストレス増加などの原因となる。
食事中は、スマホはしまって目の前の食事をゆっくり楽しみ、通勤時間には、紙の本を読んだり、外の景色を見たりすることで、意識的にデジタルデトックスを行うことも大切だ。マルチタスクを行うと幸福度が下がるという研究もあるように、何か物事を行うときは、スマホは近くに置かず、目の前のことだけに意識を向けることで充足感を得やすくなるようだ。
スマホの通知をオフにする
3つ目は、スマホの通知をオフにすること。
スマホで新しい情報を得ると、快楽や意欲をもたらす物質「ドーパミン」が脳から放出される。多くの情報を得るほどドーパミンが増えるため、人は次から次へと情報を求めてしまうのである。さらに、ドーパミンは「情報が得られるかもしれない」という確かでない状況の方が多く放出される。
そのため、スマホの通知が来ると「ためになるかもしれない」という思いから、つい手が伸びてしまうのである。これは、狩猟採集民であった時代からヒトにそなわっている本能でもあるため、抗うことが難しいかもしれないが、電話やメッセージなど、緊急時のアプリ以外は通知をオフにすることで、スマホを見る頻度を無理やりにでも減らすことができる。
SNSやアプリにタイマーを設定する
4つ目は、SNSやアプリに使用制限をかけられるタイマーを設定すること。
SNSでは、クリックやスクロールをし続けることで、気づいたら長い時間が経っていたということもある。スマホには「スクリーンタイム機能」が備わっており、アプリごとの一日当たりの使用時間を確認したり、アプリごとの使用時間の上限を設定することができる。これにより、リセットするまでは上限時間を超えたスマホの利用ができなくなる。
スマホから離れたい気持ちはあってもつい使用してしまう場合は、このように強制的にスマホから離れられる環境を作ることも良いだろう。
デジタルデトックスに関する取り組み
デジタルデトックスは、まだ広く普及しているわけではないものの、団体や企業によるさまざまな取り組みが行われている。
一般社団法人日本デジタルデトックス協会では「デジタルデトックスを日本国内に広めること」をミッションに掲げ、一般の人や企業、法人を対象にさまざまなプログラムやセミナーを実施している。所要時間3時間でデジタルデトックスの講義や体験を行うプログラムから、宿泊業界と連携し2泊3日程度で行うものなど、オーダーメイド型のイベントを通してデジタルデトックスの普及に努めている。
企業においては、ホテル事業などを展開する「穴吹エンタープライズ株式会社」にて、2022年に新卒入社した人を対象に、自然の中でデジタルデトックスを取り入れた新人研修を行った。全国で初めてデジタルデトックスを取り入れたこの研修では、コミュニケーションやチーム力の強化を図ることが目指された。
まとめ
現代においてデジタルデバイスは、日本では成人のほとんどが所有し、日常生活や仕事においても必要不可欠となっている。便利であるからこそ、画面から離れられなくなり、気づいたら体や心にダメージを与えていることもある。
一定期間スマホやパソコンから距離を置くデジタルデトックスには、ストレス軽減や目の疲れの解消、睡眠の質向上などのさまざまな効果がある。また、デジタルから離れ現実世界でのコミュニケーションや自然の様子に目を向けることで、SNSに求めていた快楽とは異なる幸福感を感じられるようになるかもしれない。
デジタルデバイスは日常で欠かせない存在であるからこそ、上手に付き合い、現実とのバランスを取ることが求められる。
参考記事
デジタルデトックスとは?|DIGITAL DETOX JAPAN
DIGITAL DETOX JAPAN公式サイト
コラム 新しい余暇の形(デジタルデトックス)|国土交通白書2023
原因はスマートフォンの使い過ぎ!?「脳過労」を防ぐデジタルデトックス術|サワイ健康推進課
No More FOMO: Limiting Social Media Decreases Loneliness and Depression|Guilford Press
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