マインドフルネスとは やり方や効果、企業や教育への活用について解説

マインドフルネスとは

マインドフルネスとは、「意図的に、今この瞬間に、価値判断することなく注意を向けること」と定義されている。「こうでなければならない」といった自分のネガティブな思い込みや、不安や迷いの感情から離れ、自分や周りで今起きていることのみに向き合うという意味である。

マインドフルネスは、うつ病や不安障害、ストレスなどに対する心理的ケアとして多く用いられており、「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」や「マインドフルネス認知療法(MBCT)」などのエクササイズは、それらの治療の一環として行われる。

また、マインドフルネスには生活の質を高める効果もある。マインドフルネスにて「今」に向き合うことで、さまざまな感情に振り回されにくくなり、自律神経が整いやすくなるといわれている。

マインドフルネスの歴史

マインドフルネスは、東南アジアを中心に信仰されるテーラワーダ仏教において、自分を律するために始めた瞑想が起源となっている。19世紀後半から20世紀はじめにかけて、ミャンマーの僧侶らがこれを理論化した。

1970年代には「マインドフルネス瞑想」が欧米へと広まり、マサチューセッツ工科大学のジョン・カバット=ジン博士らによって、健康づくりの方法として研究された。その後1970年代の終わりには、医療分野で活用するために、「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」と呼ばれるストレス軽減プログラムが開発された。

1990年代に入ると「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」に、負の感情を緩和させる認知行動療法を組み合わせた「マインドフルネス認知療法(MBCT)」が開発された。この認知療法によって、うつ病への再発予防効果が出たことから、医療業界を中心により研究が進むようになった。

マインドフルネスの効果

PATCH THE WORD マインドフルネス_瞑想方法

マインドフルネスには、うつ病や不安症などの治療や、ウェルビーイングの向上などの効果がある。これはマインドフルネスによって、自分の中にあるネガティブな要素を取り除き、自分を客観視できるようになるからである。

抑うつ効果

マインドフルネスの状態が高くなることで、不安や抑うつが改善される。そもそも抑うつは、過去に起こった出来事にとらわれ繰り返し考えてしまう「反すう」という行動をすることが原因とされている。

そのため、マインドフルネスによって「今」に集中することで、反すう行動の数が減り、抑うつの改善につながるのだ。

高血圧への対策

マインドフルネスは、高血圧の人の血圧を下げる効果もある。ブラウン大学のエリック・ルークス氏は、高血圧の人を対象に、感情の調節をしたり健康的な習慣を身につけたりするトレーニングを通じて、マインドフルネスとの関連を調べる研究を行った。

結果、血圧を下げるための治療とマインドフルネスを組み合わせることにより、参加者の自己コントロール能力が向上し、高血圧改善につながった。

免疫力アップ

マインドフルネスによりストレスが軽減されることで、免疫力を高める可能性もある。

フロリダ大学と米国研究者グループによる研究では、8日間の瞑想体験をした106人の実験参加者に対し、体験前後の血液を調べた。すると、参加者全員の免疫に関する細胞が活性化していることがわかった。1日10時間の瞑想を実施したことで、ストレスの受け止め方が変化したのである。

マインドフルネスの実践方法

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マインドフルネスの効果を高める方法としては、瞑想が有名である。ほかにも、ヨガや呼吸法など日常で気軽に取り入れられる方法がある。ここでは、具体的なやり方について解説していく。

瞑想

マインドフルネスな状態になるためには、以下のやり方で瞑想を行うと効果的だ。

  1. 静かな環境に移動する
  2. 楽な姿勢で背筋を伸ばして座る
  3. 呼吸に意識を向けながら、自然に呼吸する
  4. 余計ことを考えないようにして呼吸に集中する
  5. 3.と4.を複数回繰り返す。

瞑想をする上で大切なポイントは、「環境」と「時間」である。まず、環境においては、静かかつ明るい場所で、気が散るものが周りにない場所を選ぶことが大切だ。瞑想する時間に関しては、集中することに慣れるため、最初は5分、10分と短い時間から始めた方が良い。慣れてきたら15分、30分と徐々に延ばしていくのが効果的である。

ヨガ

ヨガも「今」に目を向けるために、多くの人が取り入れる方法だ。ヨガをする際は、以下のポイントを意識しながら行うとより効果が表れやすい。

  1. 身体を締め付けず動きやすい服を着る
  2. 簡単なポーズを選ぶ
  3. 自分の身体を観察しながらポーズをとる

ポーズをとる際は、「痛みを感じる場所はどこか」「足は伸びて心地よさを感じるか」など、身体を観察しながら、自分の感情に向き合い、ポーズをとることを目的にせず、自分の身体に意識を向けることが大切である。ヨガを繰り返すことで、身体に「良い」「悪い」という表現はないと理解し、身体を受け入れられるようになるのだ。

呼吸法

呼吸に意識を向ける「呼吸法」は、どこでも取り組めるマインドフルネスの方法である。

以下、呼吸法の効果的なやり方だ。

  1. 椅子に座り背筋を伸ばして目を閉じる(座れない場合は立った状態で良い)
  2. 息を吸う時間より吐く時間が長くなるように深呼吸をする
  3. 呼吸のリズムが整ったら、呼吸そのものに意識を集中させ呼吸を繰り返す

呼吸に意識を向ける際は、息を吸ったときのお腹の様子や、空気が身体に入る様子を観察しながら行うと、集中しやすくなる。

日常への取り入れ方

日常にマインドフルネスを取り入れる際は、一日の目標をあらかじめ決め、目の前のことに集中することが大切である。一日の目標を決める際は、「自分に優しくする」「我慢せず食べる」などどのような目標でも構わないため、毎日設定することを心がける。そして、一日のあるタイミングで目標を思い出し、振り返ることで自分に意識が向けられるようになる。

また、目の前のささいなことにマインドフルネスを取り入れてみることが大切である。たとえば、食事中のテレビの代わりに料理の食感やにおいを感じてみたり、歩く際に足の裏の感覚に意識を向けたりするなど、日常のさまざまな場面において実践可能だ。

実践のポイント

マインドフルネスは、「毎日続けること」と「自分のペースで行う」ことがポイントである。

マインドフルネスを長時間取り組んで疲れてしまうより、一貫性をもって毎日短時間行う方が良い。また、自分なりのやり方を見つけ、マイペースに行うことも大切だ。無理をしないように心がけ、ポジティブに向き合うことで、継続することにもつながる。

企業での活用

マインドフルネスは、仕事における効果もあるとして、企業でも活用されている。企業におけるマインドフルネスは「ストレス軽減・集中力アップ・幸福感・チームワークの向上」などの効果がある。

世界的な大企業のGoogleでは、2007年にある社員が「サーチインサイドユアセルフ(SIY)プログラム」と呼ばれる、マインドフルネスを通して、社員の個性やリーダーシップを発揮させる能力開発プログラムをつくりだした。

このプログラムに参加した、世界20か国6100人によるプログラム終了後アンケートによると、参加者のストレス管理能力が、プログラム参加前後で約29%増加した。また、同期が助けを求めている際に助けられると回答した割合は約8%増加した。

このように、企業でマインドフルネスを取り入れることにより、仕事におけるポジティブな効果がでるとされている。

教育への導入

マインドフルネスは、世界の教育現場においても活用されている。アメリカのニューヨークでは、公立の幼稚園から高校にて、毎日2分間の「マインドフルネス呼吸法」が義務化されている。

各学校内で教員1名以上が、マインドフルネス呼吸法の能力開発をできるよう、市が教員向けの訓練プログラムを開催している。これによって、児童や生徒だけでなく、教員も心身の健康や幸福度が向上したと報告されている。

教育現場にマインドフルネスを取り入れることで、集中力や共感力が上昇したり、睡眠障害が改善したりするなどの効果があるとされている。「今」を見つめることで、不安やストレスが軽減し、心のゆとりができるようになるのである。

まとめ

「今」に意識を向けるマインドフルネスは、さまざまな効果があるにもかかわらず、まだ広く認知されていない。ただし、マインドフルネスを実践することで、ストレス軽減、抑うつ効果、免疫力アップなど心身両方にポジティブな影響を与えることが報告されていることもあり、企業や教育での導入事例が出始めている。

マインドフルネスは、睡眠前や仕事中、食事の際など日常のさまざまなところで簡単に取り入れられる。まずは、一日一分からマインドフルネスを実践して、「今」に目を向けてみてはいかがだろうか。

参考記事

「マインドフルネス」とは?~メンタル疲れを防ぐ心の筋トレ法~|大正製薬
マインドフルネスとは|東京マインドフルネスセンター
『マインドフルネス』って何だろう?|東京大学
マインドフルネスの歴史と展望|大谷 彰
マインドフルネスがなぜ不安や抑うつに効くのか~“反すう”に着目して~|東京マインドフルネスセンター
Mindfulness training may help lower blood pressure, new study shows|BROWN UNIVERSITY
Mindfulness-Based Blood Pressure Reduction (MB-BP): Stage 1 single-arm clinical trial|PLOS ONE
Large-scale genomic study reveals robust activation of the immune system following advanced Inner Engineering meditation retreat|PNAS
【初心者向け】マインドフルネスについてわかりやすく解説!やり方や効果を、心理の専門家が徹底解説|コグラボ
5 Simple Mindfulness Practices for Daily Life|mindful

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