ジェンダーレスとは?「性別にとらわれない社会」の実現は可能か?

ジェンダーレスとは何か?性別という“前提”は本当に必要?

ジェンダーレスとは、性別にとらわれない考え方や生き方を指す。従来の性別に基づく役割や期待から解放され、個人が自分らしく生きることを重視するのだ。ジェンダーレスの概念は、性別に関するステレオタイプや偏見を取り除き、すべての人が平等に扱われる社会を目指すものである。

ジェンダーレスの考え方は、ファッションや職場、教育などさまざまな分野で広がっている。例えば、ファッション業界では、男性用・女性用といった区別をなくし、誰でも着られるデザインが増えている。また、職場では性別に関係なく能力や成果が評価されるべきだという意識が高まっている。教育現場でも、性別に基づく役割分担を見直し、すべての子どもが平等に学べる環境づくりが進められている。

ジェンダーレスの実現には、社会全体の意識改革が必要である。個人の価値観や行動を変えるだけでなく、法律や制度の整備も重要だ。例えば、性別に関係なく育児休暇を取得できる制度や、性別に基づく差別を禁止する法律の整備が求められる。

ジェンダーフリーとの違い

ジェンダーフリーとは、性別による役割分担や固定観念をなくし、誰もが平等に行動できる社会を目指す考え方である。一方、ジェンダーレスは、性別の区別そのものをなくし、性差を超えた状態を目指すものである。

共通点として、どちらも性別による不平等を解消し、個々の自由を尊重することを目指している点が挙げられる。しかし、ジェンダーフリーは性別による差別や制約をなくすことに重点を置いており、具体的には職場での育児休暇の平等な取得や、学校での制服の選択肢の拡大などが含まれる。これに対し、ジェンダーレスは性別そのものを意識しない社会を目指し、例えばユニセックスなファッションやトイレの導入などが具体例として挙げられる。

このように、両者は性別に関する問題を解決するためのアプローチが異なるが、最終的には多様性を尊重し、誰もが自分らしく生きられる社会を目指している点で共通している。

ユニセックスとの違い

ユニセックスとは、性別に関係なく誰でも使用できるデザインやスタイルを指す言葉である。主にファッションや化粧品業界で使われ、男性用・女性用といった区別をなくし、どちらでも利用できる商品を提供することを目的としている。

一方、ジェンダーレスは性別による社会的・文化的な差をなくそうとする考え方である。これは、性別に基づく固定観念や役割分担を排除し、誰もが平等に行動できる社会を目指すものである。

共通点として、どちらも性別による制約を取り除くことを目指している点が挙げられる。しかし、ユニセックスは具体的な商品やサービスに焦点を当てており、ジェンダーレスは社会全体の意識や制度に対するアプローチである点が異なる。ジェンダーレスはより広範な社会変革を目指しているのだ。

ジェンダーレスが注目される社会的背景

注目される背景

ジェンダーレスが注目される背景には、社会の多様化と個人の価値観の変化がある。従来の性別に基づく役割分担や期待が、現代の多様なライフスタイルや価値観に合わなくなってきているのだ。特に、女性の社会進出やLGBTQ+コミュニティの権利向上が進む中で、性別にとらわれない生き方が求められるようになった。

また、インターネットやSNSの普及により、さまざまな情報や意見が瞬時に共有される時代となった。これにより、性別に関する固定観念や偏見が広く議論され、見直される機会が増えている。特に若い世代は、性別にとらわれない自由な発想を持ち、ジェンダーレスの考え方を積極的に受け入れている傾向が強い。

さらに、企業や教育機関もジェンダーレスの重要性を認識し、取り組みを進めている。例えば、企業では性別に関係なく能力や成果を評価する制度を導入し、多様な人材が活躍できる環境を整えている。教育現場でも、性別に基づく役割分担を見直し、すべての子どもが平等に学べる環境づくりが進められている。

ジェンダーレスが注目される現代において、個人の価値観や行動を変えるだけでなく、法律や制度の整備など、社会全体の意識改革が必要となる。例えば、性別に関係なく育児休暇を取得できる制度や、性別に基づく差別を禁止する法律の整備が求められている。

制服やトイレからの変化──身近に進むジェンダーレス社会

ジェンダーレスの身近な例として、ファッションが挙げられる。近年、男性がスカートを履いたり、女性がスーツを着たりすることが一般的になってきた。これにより、性別に基づく服装の固定観念が崩れつつある。

また、トイレのジェンダーレス化も進んでいる。多くの公共施設や商業施設で、どのような性別でも利用できるトイレが設置されるようになり、性別に関係なく誰もが利用しやすい環境が整えられている。

さらに、職場における性別にとらわれない取り組みも重要なテーマである。例えば、育児休暇の取得が男女問わず奨励されるようになってきた。これにより、育児や家事の負担が女性だけに偏らないようになり、男女平等を以前より進めようとしている。

教育現場でも同様の取り組みが見られる。制服の選択肢が増え、スカートやズボンを自由に選べる学校が増えている。生徒が自分の性別にとらわれずに、自分らしい服装を選択できるようになっているのだ。

このように、性別にとらわれない考え方は私たちの身近な生活に浸透しつつある。

多様化するジェンダーアイデンティティ

多様化するジェンダーアイデンティティ

ジェンダーアイデンティティとは、自分自身がどのような性別であると認識しているかを指す。近年、性自認やセクシュアリティに関する価値観が多様化している。

従来の「男性」「女性」という二元的な性別の枠組みを超えて、ノンバイナリーやクィアなど、多様な性自認が認識されるようになった。また、セクシュアリティにおいても、異性愛だけでなく、同性愛、両性愛など、さまざまな性的指向が尊重されている。

性自認の例

  • ノンバイナリー男性や女性のどちらにも完全には当てはまらない性自認を持つ
  • クィア性別の枠にとらわれない、または性別を流動的に感じる
  • トランスジェンダー生まれた時の性別とは異なる性自認を持つ
  • アジェンダー:性別を持たない、または性別を感じない
  • Xジェンダー男性でも女性でもない、またはその両方を含む性自認を持つ

セクシュアリティの例

  • 異性愛(ヘテロセクシュアル):異性に対して性的な魅力を感じる
  • 同性愛(ホモセクシュアル):同性に対して性的な魅力を感じる
  • 両性愛(バイセクシュアル):男女両方に対して性的な魅力を感じる
  • パンセクシュアル:性別に関係なく、すべての人に対して性的な魅力を感じる
  • アセクシュアル(無性愛):他者に対して性的な魅力を感じない
  • アロマンティック(無性愛的恋愛感情)他者に対して恋愛感情を抱かない
  • デミセクシュアル:強い感情的な絆を感じた相手にのみ性的な魅力を感じる
  • グレイセクシュアル:性的な魅力を感じることが非常に稀である
  • Questioning(クエスチョニング):自分の性自認やセクシュアリティについて探求中である

このように、自認する性や恋愛感情の対象や有無は非常に多様化している。ジェンダーに関する上記のような多くの新しい単語が生まれていることからも、社会の中で性の多様性に対しての理解が深まり、受容が進んでいることがうかがえる。

ジェンダー問題の現状──日本と世界の“格差”から見る今

世界的に、ジェンダー平等の実現に向けた取り組みが進んでいるが、依然として多くの問題が残っている。

例えば、ほとんどの国で女性の賃金は男性よりも低く、政治や経済の分野での女性の参加率も低いままである。特に開発途上国では、教育や医療へのアクセスが制限され、児童婚や性暴力などの深刻な問題が存在する。

日本においても、ジェンダーギャップは依然として大きな課題である。世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数」では、日本は2024年に156カ国中118位と、87位のイタリアを下回り先進国の中でも最下位となっている。特に政治分野での女性の参加率が低く、企業の管理職に占める女性の割合も低い。また、賃金格差も依然として大きく、女性の平均所得は男性よりも低いのが現状だ。

ジェンダーギャップ指数

ジェンダーギャップ指数は、世界経済フォーラムが公表する男女格差の度合いを示す指標である。この指数は、経済・教育・健康・政治の4分野で評価され、各国のジェンダー平等の達成度を数値化する。0が完全不平等、1が完全平等を示し、数値が大きいほどジェンダーギャップが小さいことを意味する。

上述の通り、日本のジェンダーギャップ指数は156カ国中118位と依然として低い順位にとどまっている。これに対し、1位アイスランド(0.935)、2位フィンランド(0.875)、3位ノルウェー(0.875)と、北欧諸国は高いジェンダー平等の実現に成功している。

主な先進国の順位を見ると、ドイツが7位(0.810)、イギリスが14位(0.789)、フランスが22位(0.781)、カナダが36位(0.761)、アメリカが43位(0.747)となっている。

このように、ジェンダーギャップ指数は、各国のジェンダー平等の現状を把握し、改善のための指針となる重要な指標である。

ジェンダーレスに対する批判的な意見

ジェンダーレスに対する批判的な意見

ジェンダーレスの考え方や取り組みは、多くの人々に支持されている一方で、批判的な意見も存在する。まず、伝統的な価値観を重んじる人々からは、性別に基づく役割分担が社会の安定に寄与してきたとする意見がある。彼らは、ジェンダーレスの推進が家族やコミュニティの崩壊を招く可能性があると懸念しているのだ。

また、取り組みが過度に進むことで、個々の性別の特性や違いが軽視されるとの批判もある。例えば、男性と女性の生物学的な違いや、それに基づく健康や教育のニーズが無視される可能性が指摘されている。特定の性別に特有の問題が、適切に対処されないリスクがあることも否定できない。

さらに、この概念が一部の人々にとっては理解しにくい、あるいは受け入れがたいものであるとの意見もある。特に高齢者や伝統的な価値観を持つ人々にとって、新しい概念や変化に適応することは難しい場合がある。このような人々は、ジェンダーレスの推進が自分たちの価値観や生活様式を脅かすものと感じることがあるのだ。

最後に、一部の人々にとっては、ジェンダーレスへの取り組みが「逆差別」と感じられることもある。例えば、特定の性別に対する配慮が過剰であると感じる人々は、自分たちが不公平に扱われていると感じることがある。このような意見は、ジェンダーレスの推進が社会全体の調和を乱す可能性があるとする懸念を反映している。

以上のように、ジェンダーレスに対する批判的な意見は多岐にわたるが、これらの意見を理解し、対話を通じて共存の道を模索することが重要である。

ジェンダーレスに取り組む企業の事例

現代社会において、ジェンダーレスな環境を推進する企業が増えており、性別に関係なく誰もが活躍できる職場が実現されつつある。以下に、具体的な取り組みを行っている企業の一例を紹介する。

積水ハウス

積水ハウスは、女性活躍推進のために営業職や技術職の女性社員の採用を積極的に行い、キャリア形成や人的ネットワークの構築にも注力している。また、管理職の育成を目的とした「積水ハウス ウィメンズ カレッジ」を実施し、ビジネススキルの向上を図っている。

さらに、LGBTQ+に関する取り組みも評価され、LGBTQ+にとって働きやすい職場であるかを評価する「PRIDE指標」で、最高位の「ゴールド」を6年連続で受賞している。これらの取り組みにより、積水ハウスは多様な人材が安心して働ける環境を整え、持続可能な成長を目指している。

また、積水ハウスは企業のジェンダー平等に関する取り組みを評価する「ブルームバーグ男女平等指数」にも選定されており、ジェンダー平等に関する取り組みが国際的に評価されている。この指数に選定されることで、国際的な評価を受け、投資家やステークホルダーに対してジェンダー平等へのコミットメントを示しているのだ。

コーセー

コーセーは、1946年の創業以来、性別に関わらず全ての社員が自分らしく働ける環境を整えてきた。特に、女性の活躍推進に力を入れており、1985年には女性取締役を初めて任命した。

さらに、育児休業制度の充実や、男性の育児休業取得を促進する「コーセーイクパパサポート制度」を導入している。これにより、男性社員の育児休業取得率は年々向上している。また、社内コミュニティ「パパママラウンジ」を設置し、子育て中の社員同士が情報交換や悩みを共有できる場を提供している。

さらに、LGBTQ+の社員に対する理解を深めるための研修や、性別にとらわれない商品開発にも力を入れている。これらの取り組みにより、コーセーはジェンダーレスな職場環境を実現し、全ての社員が安心して働ける企業文化を築いている。

パナソニック

パナソニックは、特に女性の活躍推進に力を入れており、上級管理職や意思決定を行う職位において、より多くの女性を登用することを目指している。

また、LGBTQ+の社員に対する理解を深めるための研修や、性的指向・性自認に関わらず働きやすい職場づくりに取り組んでいる。さらに、育児・介護中の社員へのサポートや、多様な働き方とワーク・ライフ・バランスの実現にも注力しているのだ。

パナソニックは、報酬体系においても性別や性自認による格差をなくし、公平な評価を行っている。社内コミュニティやイベントを通じて、社員同士の交流を促進し、多様な価値観を尊重する企業文化を醸成しているのだ。これらの取り組みにより、パナソニックはジェンダーレスな職場環境を実現し、全ての社員が安心して働ける企業文化を築いている。

まとめ

社会全体が多様性を尊重し、全ての人が自分らしく生きられる環境を整えることが求められている中、ジェンダーレスの取り組みは、今後ますます重要性を増すだろう。今後、企業や教育機関、政府が連携し、ジェンダーに関する偏見や差別をなくすための教育や啓発活動をさらに進めることが必要である。

ジェンダーレスの推進に当たっては、個々人がジェンダーに対する理解を深め、性別にとらわれない言葉遣いやファッションの選択を日常生活の中で実践することも重要だ。また、日常の中に無意識で潜むジェンダーによる区別・差別を発見することもジェンダーレスな社会のあり方を考えるきっかけとなるかもしれない。

【参考記事】
ダイバーシティ&インクルージョン|積水ハウス
取り組み1:ジェンダーダイバーシティ(女性活躍・LGBTQ+、男女共同参画)|株式会社コーセー
一人ひとりへのサポート:ジェンダーの公平性|パナソニック ホールディングス株式会社

関連記事

新着記事