食パンの耳から生まれたクロワッサン。高校生のアイデアで食品ロス削減

日本の「食品ロス」は、年間約464万トンにも上る。国民一人当たりに換算すれば、毎日「おにぎり1個分(約102g)」の食べものが捨てられている計算だ。そんな“もったいない”現状の中、高校生のアイデアから、廃棄されがちな「食パンの耳」を活用した新商品が誕生した。本記事では、企業と学校が連携して実現した食品ロス削減の取り組みについて紹介する。

高校生のひらめきから始まった商品開発

食品ロス削減に向けた取り組みは、企業単独ではなく、学校や地域との連携が重要になってきている。その事例の一つが、電通が運営する「電通ノーペコラボ」だ。 電通ノーペコラボは、食品ロスの削減をテーマに、「子どもと食」に関わるさまざまな課題解決を目指すプロジェクト。食品廃棄や、それに伴うCO₂排出といった環境問題にも着目し、家庭でも楽しく食品ロスに取り組めるような仕組みづくりを行っている。

2024年、同プロジェクトが開催したのが「めざせ商品化!究極のノコサンレストラン2024」というコンテストだ。廃棄予定だった食パンの耳を活用するレシピを募集したところ、全国から103件のアイデアが集まった。

このうち「ローソン賞」を受賞したトキワ松学園高等学校の生徒によるレシピが、実際に商品化されることになった。それが「黒糖とシナモン香るクロワッサン」(税込181円)だ。2024年9月9日(火)より関東甲信越地区のローソン約4,600店舗(ナチュラルローソン、ローソンストア100を除く)で発売された。

商品化にあたっては、パンメーカーでの製造過程で生じる「パンの耳」を粉砕し、クロワッサン生地の一部として配合。パンの耳は通常、食品原料や飼料などに再利用されているが、今回は菓子パンの原料として活用された。


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パンの耳がクロワッサンに変わるまで

「黒糖とシナモン香るクロワッサン」は、粉砕した食パンの耳とシナモンパウダーを練り込んだクロワッサン生地を焼き上げ、黒糖蜜を加えたカスタードクリームをサンドした商品だ。

 一般的に、食パンの耳はパンの成形工程でカットされた際に発生する副産物である。多くの製パン工場では、ラスクやパン粉などに再利用されているものの、すべてが有効活用されているわけではない。家庭や小規模店舗では、使用用途が限られるため廃棄されるケースもある。 

今回の商品では、パンの耳を単なる「再利用素材」としてではなく、味わいに寄与する原材料として位置づけた。黒糖とシナモンの風味と組み合わせることで、パンの耳の香ばしさや食感が生地に深みを加える設計になっている。廃棄物に新たな価値を付加するアップサイクルの手法を取り入れた商品開発といえる。

ローソンはこれまでにも、規格外食材を使用したおせちや、「プレミアムロールケーキ」の生地の切れ端を使用したクリスマスケーキ、売れ残ったまぐろのたたきや焼穴子を具材に使った手巻寿司など、余剰食材を活用した商品を展開してきた。ただし、こうした取り組みがどの程度の食品ロス削減につながっているかについては、定量的なデータは現時点では公表されていない。


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若者視点から問い直す、社会の課題

高校生のアイデアが企業との連携によって商品化された今回の取り組みは、企業のサステナビリティ活動に若年層を巻き込む一つの手法といえる。

電通ノーペコラボは、子どもや若者が食品ロスの問題を「自分ごと」として捉えられるよう、コンテスト形式の企画を展開している。背景にあるのは、食品廃棄が温室効果ガスの排出源の一つであり、気候変動を通じて農業生産に影響を及ぼすという問題意識だ。

同プロジェクトは「家庭の食品ロスを減らすことが、世界の飢餓を減らすことにつながる」というメッセージを掲げている。ただし、家庭での食品ロス削減と途上国の飢餓問題との因果関係については、複数の要因が絡み合っており、単純な構図ではないという指摘もある。

今回のコンテストは、啓発活動にとどまらず、実際の商品化まで視野に入れた点に特徴がある。学生の発想を企業の製品開発に取り入れることで、若年層の参加意欲を高める効果が期待される。 

企業の社会貢献活動において、若年層との「共創」を打ち出す事例は近年増加している。アイデアを出すだけでなく、それが実際の商品として店頭に並ぶ経験は、若い世代が社会課題に継続的に関わる動機づけになる可能性がある。こうした取り組みの積み重ねが、食品ロス削減という課題への社会全体の意識を変えていく一助となるかもしれない。

Edited by k.fukuda

参考サイト

ノーペコ ラボ|Facebook
食品ロスについて知る・学ぶ|消費者庁
<関東甲信越地区>食パンの耳を活用したクロワッサン発売|LAWSON
めざせ、商品化!究極のノコサンレシピコンテスト《高校生、学生限定》|登竜門
ノーペコ ラボ主催「めざせ、商品化!究極のノコサンレストラン2024」受賞アイデアがローソンで商品化 9月9日発売|ウェブ電通報
「伝える力」で、ノーペコ(ノー、腹ペコ)に! 電通ノーペコ ラボ|ウェブ電通報

About the Writer

ともちん

大学で英文学を学び、小売・教育・製造業界を経てフリーライターに。留学や欧州ひとり旅を通じて「丁寧な暮らし」と「日本文化の価値」に触れ、その魅力を再認識。旅や地方創生、芸術、ライフスタイル分野に興味あり。言葉を通して、自尊心と幸福感を育めるような社会の実現に貢献することを目指している。
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