SOGIハラとは?
SOGIハラスメントとは、性的指向や性自認に関する嫌がらせを指す。具体例として、同性カップルへの不適切な質問や、性自認を揶揄する発言、性別に基づいたステレオタイプの押し付けなどがある。
「オカマ、オトコオンナって気持ち悪い」「自分もゲイだと思われたくないから無視しよう」といった言動はもちろん、「あの人レズなんだって」と本人の意思に反してカミングアウトされた内容を広める「アウティング」もSOGIハラにあたる。さらに、本人が望まない性別で生活を強要することも問題だ。
また、SOGIハラは法的にも問題となり得る。日本では、性的指向や性自認に基づく差別や嫌がらせを禁止する条例が制定されている地域もあり、こうした行為は罰則の対象となることがある。
性的指向や性的自認に関連する嫌がらせは、「SOGIハラ」という言葉が誕生する以前から存在していた。「SOGIハラ」が定義された背景には、さまざまなハラスメントが定義される流れの中で、ハラスメントへの意識が高まったことが影響している。
SOGIハラを防ぐためには、多様な性のあり方への理解を深め、尊重することが不可欠である。教育や啓発活動を通じて、性の多様性に対する偏見や無知を無くし、すべての人が安心して生活できる社会を築く努力が求められる。
「SOGI」と「LGBTQ+」の違い
そもそもSOGIハラの「SOGI」とは、「Sexual Orientation(性的指向)」と「Gender Identity(性自認)」の頭文字をとった言葉である。性的指向とは、恋愛や性愛の対象となる性別を指し、性自認とは自身の性別に対する認識を指す。
一方で「LGBTQ+」は、Lesbian(レズビアン)・Gay(ゲイ)・Bisexual(バイセクシュアル)・Transgender(トランスジェンダー)・Queer/Questioning(クィア/クエスチョニング)の頭文字を取ったもので、特定の性のあり方を持つ人々を示す言葉である。
LGBTQ+は、具体的なコミュニティを指す言葉であり、これらの人々が直面する課題や差別について意識を高めるために使われる。これに対しSOGIは、すべての人々に関わる性の概念であり、誰もが持つ性自認や性的指向を包括する。そのため、SOGIに基づくハラスメントである「SOGIハラ」は「他人ごと」ではなく、誰もが経験し得る問題として認識されることが期待される。
注目される背景
まだまだ認知度が高くないSOGIハラだが、法整備の進展と共に、個人の問題ではなく「社会全体で解決すべき課題」として認識されるようになってきている。
2020年6月に施行された「パワハラ防止法」では、企業が対策すべきハラスメントの一つとして「SOGIハラ」も義務付けられるようになった。パワハラ防止法におけるハラスメント防止は企業の「義務」であり、これを怠れば、労働局からの助言・指導・勧告を受け、最悪の場合、ペナルティとして企業名が公表されると規定されている。
当初は大企業が対象だったが、2022年からは中小企業も対象に含まれる運びとなった。このような動きが、SOGIハラが注目されるきっかけとなったのである。また、多様な性への理解が深まるにつれ、性的マイノリティの人々が抱える困難や不公正が社会問題として認識され始め、それに対する意識も高まっている。
さらに、インターネットやSNSの普及により、被害者が声を上げやすくなったことも大きな要因である。今まで見過ごされてきた問題が表面化されたことで、社会全体での議論が活発化した。
SOGIハラの現状

「SOGIハラ」という言葉を知らない人は、まだまだ多い。しかし、SOGIハラを経験したことがあるトランスジェンダーの割合は決して少なくない。ここでは、SOGIハラにまつわる調査結果から、その現状を深掘りする。
「SOGIハラ」の認知度は低い
SOGIハラスメントの認知度は依然として低い。「LGBTQ」という言葉は広く知られていても、「SOGI」を知っている人は少ないのが現状である。
連合近畿地方ブロック連絡会が行った調査によると、LGBTQの認知度が70%以上であったのに対し、SOGIの認知度は30%以下であることが分かった。このような認識の差は、ハラスメントの発生を見過ごす原因となり得る。
「SOGIハラが何を指すのか」「どのような行為が該当するのか」についての理解が不足していると、無意識のうちにハラスメントを引き起こしてしまうこともある。例えば、性的指向や性自認に関する不適切な質問や偏見に満ちた言動が、被害者に対する精神的な負担となる場合がある。
トランスジェンダーの4人に1人がSOGIハラ経験あり
「トランスジェンダーの4人に1人が、職場でSOGIハラスメントを経験している」との調査結果がある。このデータは、全国の有職者1万人を対象にした調査から得られたものであり、トランスジェンダーの人々が特にハラスメント被害を受けやすい状況にあることが如実に示された。
全体の8.2%が職場でのSOGIハラ被害を経験しており、「現在も職場でSOGIハラを受けている」と回答したトランスジェンダーの割合は15.1%にも達している。このような高い被害率から、職場環境が依然として性的指向や性自認に対する理解が不十分であることが分かる。被害を受けた人々は、精神的な苦痛やストレスを抱えながら働いているケースが多い。
SOGIハラを防ぐためには、企業が差別禁止の方針を明文化し、相談窓口の設置やトイレ、更衣室などの施設利用上の配慮も必要である。また、職場での研修を行い、従業員全体の意識を向上させることも重要だ。
参考:LGBTQ+有職者1万人調査~SOGIハラ/アウティングの実態2023~|株式会社アスマーク
SOGIハラの種類と具体例
SOGIハラスメント(SOGIハラ)には、さまざまな形態が存在する。ここでは、「なくそう!SOGIハラ」実行委員会による5つの定義を参考に、具体的な例を交えながら紹介する。
- 差別的な言動や嘲笑、差別的な呼称
- いじめ・無視・暴力
- 望まない性別での生活の強要
- 不当な異動や解雇、不当な入学拒否や転校強制
- 誰かのSOGIについて許可なく公表すること(アウティング)
これらの行為は、被害者に対する精神的・肉体的な苦痛を引き起こし、職場や学校などの環境を悪化させる原因となる。SOGIハラを防ぐためにも、従業員や学生一人ひとりが、互いの性のあり方を尊重し合える社会を目指したいものである。
SOGIハラが起こりやすいシーン

SOGIハラは日常のさまざまな場面で起こり得る。ここでは、特にSOGIハラが起こりやすい5つのシーンを紹介する。
職場
職場では、性的指向や性自認に対する偏見や理解不足が原因で、SOGIハラが発生しやすい。例えば、同僚からの差別的な言動や、上司による不当な異動命令などが挙げられる。
特に企業文化が保守的である場合、LGBTQ+の従業員が疎外感を感じやすく、ハラスメントのリスクが高まる。
就活
就職活動中もSOGIハラが起こりやすい。面接官が無意識のうちに異性愛者を前提とした質問をしたり、性的指向や性自認に対する偏見を持っている場合がある。
例えば、LGBTQ+の就活生が性的指向を理由に不採用にされる、またはトランスジェンダーであることを理由に面接の段階で除外されることがある。こうした環境では、LGBTQ+の就活生が自己を偽らざるを得なくなる場合が多い。
学校
学校もSOGIハラが発生しやすい場所の一つである。例えば、同級生からのいじめや、教師による偏見に基づいた指導が挙げられる。
特に性教育の不足や、性的指向や性自認に対する理解が浅い場合、ハラスメントが発生しやすい。教育現場での啓発活動が不可欠である。
公共の場所
公共の場所でもSOGIハラが起こり得る。例えば、駅のトイレや更衣室での差別的な言動や、公共施設での不当な取り扱いが挙げられる。
不特定多数の人々が利用する公共の場では、多様な価値観を持つ人が混ざり合うため、偏見や無知が露わになりやすい。公共施設の利用においても、多様性を尊重する姿勢が求められる。
SNS
匿名性が高いSNSは、SOGIハラが発生しやすい環境である。例えば、性的指向や性自認に関する誹謗中傷や、アウティングが行われることがある。
オンライン上では、直接対面しないことから、他人への配慮が欠けやすくなる。SNS利用者全体での意識向上が重要だ。
SOGIハラをなくすためには
SOGIハラをなくすためには、個人と社会の双方での取り組みが必要だ。まず個人ができることとして、他者の性的指向や性自認を尊重し、偏見や差別を持たない姿勢が重要である。日常生活の中で、多様な性のあり方について学び、理解を深めることが大切だ。
一方で、社会全体での取り組みも不可欠である。教育機関や企業は、SOGIハラスメントに関する啓発活動を積極的に行い、性の多様性についての理解を広めることが必要だ。例えば、学校では性教育の一環として「SOGI」について学ぶ機会を設けるべきであり、企業では従業員向けの研修を実施し、職場環境を整備することが望ましい。
さらに、法整備も進めるべきである。性的指向や性自認に基づく差別やハラスメントを禁止する法律を強化し、被害者が安心して相談できる窓口の増設が求められる。メディアを通じて、多様な性のあり方を尊重する文化を広めることも重要だ。
これらの取り組みを通じて、SOGIハラスメントを防ぎ、すべての人が安心して生活できる社会を築くことが望ましい。個人と社会全体が協力して、多様性を尊重し合う環境を整えることが、SOGIハラをなくすための第一歩である。
「SOGIハラかも」と思ったら
自分自身の行動には気をつけていたとしても、学校や職場でSOGIハラを見聞きすることがあるかもしれない。SOGIハラが疑われる場面に遭遇した時、私たちにもできることがある。
以下に、「パワーハラスメント」という言葉をつくった、クオレ・シー・キューブが提唱する4つのアクションを紹介する。
- ストッパー(制止者):
その場でハラスメント的な言動を注意し止める。「その言葉、良くないですよ」と指摘するだけでも効果的。 - レポーター(通報者):
その場で注意できなかった場合でも、適切な相談窓口や担当部署に事象を伝えておくことが大切。報告することで、問題の認知と予防が可能になる。 - スイッチャー(話題・場面転換者):
話題を転換する方法。「そう言えば〜」と話題を変え、SOGIハラの被害者をその場から救う手助けができる。 - シェルター(避難所):
「この人になら相談できる」「味方になってくれる」と感じられる行動をとること。日常的に多様な性を尊重する姿勢を示すことで、「相談してもいいんだ」と思ってもらえる。
上記のようなアクションを起こし、一人ひとりが立ち向かう力を持つことで、SOGIハラをなくしていける。見て見ぬふりをせず、ぜひ自分でもできることを探して見てほしい。
SOGIハラに対する国内外の動き
SOGIハラに対する取り組みとして、国や自治体、企業、そして国際的な動きを紹介する。
日本国内の動き
2017年1月に国家公務員の就業規則において、性的指向や性自認に関するハラスメントが禁止事項とされた。翌年には、東京都国立市で「国立市女性と男性及び多様な性の平等参画を推進する条例」が成立し、アウティングが禁止となる。
また、2020年6月には厚生労働省が「パワハラ防止法」を施行し、SOGIハラスメントを含む広義のハラスメントが禁止された。これにより、大企業は2020年6月から、中小企業は2022年4月から、ハラスメント対策が義務付けられている。
自治体でも、SOGIハラスメントを防ぐための取り組みが進んでいる。例えば、東京や大阪などの都市部では、LGBTQ+の理解を深めるためのセミナーやワークショップが定期的に開催されている。また、多様性を尊重する方針を掲げる会社も増え、従業員のための相談窓口を設置する企業が増えている。
国際的な取り組み
一方、国際的な取り組みとしては、2016年6月に国連人権理事会が「性的指向と性自認を理由とする暴力と差別からの保護」に関する決議を採択し、独立専門家を任命した。
この専門家は、各国における暴力や差別の実態を調査し、改善策を提言する役割を担っている。こうした動きは、世界中の市民団体の連携によるものだ。
まとめ
SOGIハラに関する今後の展望として、法的整備や社会の意識向上がさらに進むことが期待される。各企業や教育機関での啓発活動が活発化し、性の多様性に対する理解が深まることで、ハラスメントの発生が減少することが望ましい。また、被害者が安心して相談できる環境の整備も重要だ。
一人ひとりが暮らしやすい社会を築くためには、個人と社会全体が協力して取り組むことが不可欠である。多様性を認め合い、互いに尊重し合うことが、すべての人々が安心して生活できる社会の実現につながるだろう。
参考記事
なくそう!SOGIハラ
SOGIハラスメントを知っていますか?|宍粟市
Ⅱ.職場と性的指向・性自認をめぐる現状|厚生労働省
LGBTQからダイバーシティ&インクルージョンを考える 第3回―個人で実践できること|クオレ・シー・キューブ
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