足元からはじまるサステナブル。湘南発、海に還るビーチサンダル

夏の海辺に欠かせないビーチサンダル。軽くて便利な一方、その多くはプラスチックでできており、使い捨てられた後は海洋ごみとして長く残り続ける。そんな課題に対して、湘南の「まちプロ社」が開発したのは、微生物の働きで約5年で自然に還るビーチサンダル。足元からはじまる小さな変化が、海を守る新しい一歩になるかもしれない。

ビーチサンダルが抱える環境負荷

夏の海や川遊びに欠かせないビーチサンダルだが、海洋の環境に悪影響を及ぼす性質をもっている。熱い砂浜や鋭い石から足を守り、気軽に履ける涼しい履物として親しまれるビーチサンダル。その素材は合成樹脂(プラスチック)であり、便利さの裏に環境への負荷を与える原因が存在する。

一般的なビーチサンダルの多くは、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)というプラスチックの一種でつくられている。EVAはゴムのように柔らかく弾力があり、軽量で水に強いという特性を持つ。紫外線や熱にも比較的強く、低温でも硬くなりにくいため、夏の砂浜や水辺でも快適に使える素材である。また、塩素を含まないため燃やしても有害物質が出にくく、安全性が高い点も評価されている。加工しやすく安価に大量生産でき、靴底やマット、玩具などにも広く利用されてきた。

その一方で、高い耐久性と安定性を持つがゆえに、自然界では分解されにくい。木材などの天然素材は微生物の働きで最終的にCO2と水に分解されるが、一般的なプラスチックを分解できる微生物はほとんど存在しないためである。

陸上で使われたプラスチックごみが河川などを通じて海に流れ込み、海の環境に悪影響を及ぼしているのが海洋プラスチック問題である。米国を拠点とするNGO、Ocean Conservancyの報告によると、海に流れ込むプラスチックごみは年間500万~1,300万トン。日本は世界でも有数のプラスチック消費国であるため、他人事ではない。包装やコンビニ容器など使い捨てプラスチックが多く、焼却やリサイクルによって処理される一方、ポイ捨てや雨風などの影響で海に流出するものもある。

ビニール袋やペットボトルはウミガメやクジラなどに誤食され、釣り糸などが海鳥に絡まるなどして、海洋生物に悪影響を与えている。さらに紫外線や波の影響で細かく砕け、マイクロプラスチックとなって魚や貝、さらには私たちの食卓にまで入り込んでいる。一度環境中に流出すると長い間残留し、海洋ごみやマイクロプラスチックとなって生態系に影響を及ぼすことになる。実際に海岸の清掃では多くのビーチサンダルが回収され、浜に打ち上げられたクジラの体内からも発見されている。


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湘南から生まれた“海に還る”サンダル

“海に還る”ビーチサンダルは、海を愛し、日々海に親しむサーファーたちの問題意識から生まれた。世界の海で問題となっている海洋汚染の主な原因はプラスチックだが、ビーチサンダルやサーフボードのパーツなども例外ではない。日常的に海に入り、波や風と向き合うサーファーたちは、砂浜に打ち上げられるごみや沿岸の環境変化を誰よりも身近に感じている。いつも恩恵を受けている海の未来を守りたいという思いが、分解されて自然に還るという新しい発想を生み出した。

株式会社まちプロが商品化したビーチサンダル Six Line® は、自然界で分解される素材を採用した国内製造の製品である。職人の手作業で作られ、天然ゴムの弾力を生かしたフラットソールを採用している。プリントには塗料を使わず、環境への影響が少ないレーザー彫刻を採用。箱やタグにはFSC認証紙を使用するなど、製造工程でも環境配慮がなされている。台と鼻緒を組み合わせるカスタマイズが可能で、6本線のデザインには伝統的なわらじの意匠が取り入れられている。

最大の特徴は、生分解性を促進させる添加剤Eco-One®を配合している点である。この添加剤は、プラスチック内部に微細な有機成分を組み込み、微生物が素材を分解しやすい状態に変える。

米国食品医薬品局(FDA)の安全認証を受け、米国材料試験協会(ASTM)試験で生分解性が実証されている。天然ゴムと組み合わせることで、台も鼻緒も分解可能な構造となっており、微生物が豊富な環境で数年のうちに自然に還ることが期待されている。


サーキュラーデザイン

消費者が“選ぶ”ことで変わる未来

持続可能な社会の実現には、企業の努力だけでなく、消費者一人ひとりのエシカル消費が欠かせない。

近年、海洋ごみ問題の解決に向けて、素材開発の分野でも革新的な研究が進んでいる。前述の生分解性添加剤を配合したプラスチックもその一つだ。ほかにも、誤って海の生き物が食べても安全な素材として、動物の消化酵素で分解されるナイロンが開発されている。プラスチックの代わりに竹や木材など天然素材を使い、生分解性と便利さを兼ね備えた製品も実用化されている。

私たち消費者が、環境に配慮した素材や生産背景を意識して選び、長く丁寧に使うこと、さらに廃棄のことまで思い巡らせることが重要だ。日々の小さな選択の積み重ねが、持続可能な未来につながっていく。

Edited by k.fukuda

参考サイト

すべてが海にかえる国産ビーサン『SIX LINE®』|株式会社まちプロ
EcoLogic LLC 
海洋プラスチック問題について|WWFジャパン 
Stemming the Tide: Land-based strategies for a plastic-free ocean|Ocean Conservancy

About the Writer
曽我部倫子

曽我部 倫子

大学で環境問題について広く学び、行政やNPOにて業務経験を積むなかで環境教育に長く携わる。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、未就学児や保護者を対象に自然体験を提供。またWebライターとして、環境、サステナブル、エシカル、GXなどのテーマを中心に執筆している。三姉妹の母。
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