ダブルマテリアリティとは?その重要性や企業の取り組み事例を紹介

ダブルマテリアリティとは?重要な理由、企業の取り組みなどを紹介

ダブルマテリアリティとは

ダブルマテリアリティとは、社会や環境が企業に与える影響と、反対に企業が社会や環境に与える影響の両側面を重視する考え方のことをいう。そもそもマテリアリティとは、各企業において「自社が優先的に取り組むべき重要課題」のことだ。

現代では、企業に対して透明性のある情報開示が求められており、投資家のみならず従業員や取引先、消費者などの広範囲なステークホルダーへ積極的に企業の情報を開示することが重要である。

ダブルマテリアリティはその情報の一つであり、サステナビリティ情報に関する中長期的な企業の在り方を表すものとして、近年特に重視されている。

シングルマテリアリティとの関係

世界のマテリアリティにおける考え方は、ダブルマテリアリティとシングルマテリアリティに二分されている。ただし、この2つは相反する考え方ではない。シングルマテリアリティは、ダブルマテリアリティの内、社会や環境が企業の財務面に与える影響のみを意味するものだ。

従来シングルマテリアリティのみが注視されてきたが、現在はダブルマテリアリティを重要視するべきとの声が多く上がっている。

ダブルマテリアリティが注目される背景

マテリアリティは元々投資家に向けて発信されていたもので、先述の通りその内容はシングルマテリアリティのみ、すなわち財務面に関することのみが報告されていた。投資家はそれらをもとに投資先を決定していたのである。

しかし近年は、切迫する環境・社会問題に対する企業の取り組みを評価する風潮にある。そのため、ダブルマテリアリティの観点も取り入れるべきとの議論が活発になったのだ。

この議論においては、環境・社会問題に積極的に取り組むEUがリードしており、情報開示ルールを強化する取り組みの一環として盛んに行われている。

ダブルマテリアリティの重要性

ダブルマテリアリティの重要性

EUで2023年1月に発効された企業サステナビリティ報告指令(CSRD)は、約50,000社の企業に「ダブルマテリアリティの原則」に基づく情報開示を義務付けている。

さらに2024年1月には、CSRDに基づいたガイドライン「欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)」の適用が開始され、日本企業にも大きな影響が与えられている。

ダブルマテリアリティに取り組む動きは、大企業だけではなく資産運用会社でも活発化している。資産運用の面においては当然ながら財務面が最も重視されるため、基準としていたのはシングルマテリアリティのみであった。

しかし、昨今ではESG投資に代表されるように、投資家の世界においてもサステナビリティは重要な位置付けにある。ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとったもので、ESG投資は財務面でのリターンのみならず、企業の取り組みが環境・社会面に配慮しているかどうかを基準にした投資の形だ。こうした企業は今後の成長が大きいと期待されており、単純に数値のみで企業を評価できない時代にあるといえるだろう。

このような流れは、消費者や投資家が、経済面の成長だけではなく、環境や社会が抱える課題に対し、どう解決していくかという点を意識しはじめていることが理由の一つだ。世界がサステナビリティ(持続可能性)への関心が高まっている中、ダブルマテリアリティの重要性が年々説かれるようになっている。

日本企業の取り組み事例

EUで活発化するダブルマテリアリティだが、その潮流は日本にも影響を与えており、各企業も続々と対応しはじめている。では、実際にどのようなダブルマテリアリティが設定されているのか見ていこう。

伊藤忠商事

2013年からマテリアリティに取り組んでいる伊藤忠商事株式会社。毎年見直しを行っており、ESGの観点を取り入れたマテリアリティを選定することが重要であるとして、2018年4月には社会影響と事業影響の2つの観点から7項目のマテリアリティを特定した。

温室効果ガスの排出削減など脱炭素へ寄与する事業展開で気候変動に取り組むほか、人権の尊重、QOLの向上、透明性のある経営体制など、SDGsにも貢献するものとなっている。

村田製作所

村田製作所は、2019年度にESGを始めとした非財務面視点のマテリアリティの特定を行い、以後3年ごとに見直しを行うこととしている。

2022年度に策定されたマテリアリティは、社会インフラの構築、資源エネルギー不足を解消する事業の創出、安全な交通社会への貢献など、事業の中心である技術革新によって社会課題の解決を図るものだ。また企業全体では、ESG領域に対する9項目のマテリアリティを策定している。

味の素グループ

味の素グループは、「食を通じたウェルビーイングの実現」をはじめ、現在6つのマテリアリティを策定している。サステナビリティや健康に関する消費者の意識が高まっている中、それに対応した商品やサービスを展開したり、食文化を尊重する選択肢の提供など、食品を取り扱う会社ならではのマテリアリティが特徴的だ。

また、メディカルフード分野の強化をはじめとした先端医療・予防への貢献も取り入れている。

ダブルマテリアリティの課題点

ダブルマテリアリティの課題点

ダブルマテリアリティの大きな課題は、他者との差別化が上手くいかず、画一的になりかねないことだ。同じ業界であれば自社に与える外的な要因もそれに対して自社ができることも、企業間での大きな差異はなく、独自の取り組みを打ち出すことは難しくなる。

差別化を図ろうとするあまり、自社の製品やサービスとかけ離れたり、「環境問題」「社会問題」といった一般的な課題を取り上げたりすると、かえってステークホルダーの理解を得にくくなる可能性がある。結果、ダブルマテリアリティの成果は期待できず、シングルマテリアリティに戻る事態も考えられるのだ。

特にこれまでシングルマテリアリティ視点のみで事業展開をしてきた企業は、ダブルマテリアリティに関する社内勉強会、専門家への相談など、ステークホルダーへの説明など着手しなければならない問題が多く、ハードルが高いことも課題点といえるだろう。

まとめ

現在、世界では持続可能な社会をつくることが最も重要と考えられており、事業においてもサステナビリティを最重要課題とするよう求めている。

こうした時代の中で企業は、自社が財務面で受ける影響のみを考慮していたこれまでの企業活動から、今後は社会や環境問題に対して積極的に取り組んでいることをアピールする必要がある。その際に指標となるのがダブルマテリアリティの観点だ。

人類が経済成長のみを求めてきた結果、相次ぐ気候変動問題、環境破壊問題、人権問題など、地球はこれまでにない勢いで崩壊に向かっている。持続可能な社会の実現に向けた社会構造の修正は、個人の取り組みでは限界があるため、大企業など影響力のある組織にこそ課せられた責務といえるだろう。

ダブルマテリアリティは、その取り組みを方向づける指標として機能し、私たち個人が商品やサービスなどを選択する際の基準でもあるものだ。今一度、普段関わっている企業が考えている最重要課題について調べてみてはいかがだろうか。

Edited by k.fukuda

参考サイト

マテリアリティ |ESG・サステナビリティ|味の素グループ
重点課題 | 村田製作所
方針・基本的な考え方|伊藤忠商事株式会社
サステナビリティ関連情報開示と企業価値創造の好循環に向けて-「非財務情報の開示指針研究会」中間報告 –|経済産業省
ダブルマテリアリティを巡る議論からの見えてくる課題 | 日経ESG

About the Writer
秋吉紗花

秋吉 紗花

大学では日本文学を専攻し、常々「人が善く生きるとは何か」について考えている。哲学、歴史を学ぶことが好き。食べることも大好きで、一次産業や食品ロス問題にも関心を持つ。さまざまな事例から、現代を生きるヒントを見出せるような記事を執筆していきたい。この人が書いた記事の一覧

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