ブラックフライデーに“直す”という選択肢。グリーンフライデーが生む新しいサイクル

年末商戦の幕開けを告げるブラックフライデー。店頭やオンラインでは大規模なセールが展開され、多くの消費者が割引を求めて殺到する。しかし、この消費の祭典の裏側では、深刻な環境負荷が積み重なっている。そんな中、「買わない」「直す」という新しい選択肢を提示するグリーンフライデーの動きが、世界中で広がりを見せている。

ブラックフライデーが抱える環境負荷。見えない“コスト”を考える

ブラックフライデーの環境への影響は想像以上に大きい。2024年のブラックフライデーには、欧州だけで商品配送のトラックから120万トンのCO2が排出され、これは通常の週と比べて94%も多いという。(*1)英国だけでも配送による温室効果ガス排出量は42万9000メートルトンに達し、ロンドン・ニューヨーク間の往復フライト435回分に相当する規模だ。(*2)

さらに問題なのは、廃棄物の急増である。ブラックフライデーで購入された商品の80%が数回の使用後に廃棄されるという調査結果もある。(*1)米国では、ブラックフライデーから新年にかけて家庭ゴミが通常より25%増加するとされており、大量生産・大量廃棄のサイクルが加速していることが見て取れる。

この消費文化を支えているのが、ファッション産業だ。アパレル産業は世界のマイクロプラスチック廃棄物の約3分の1を占め、人為的な温室効果ガス排出量の4〜8%を占める。特にファストファッションの台頭により、服は「使い捨て」の商品へと変化している。

返品によるさらなる環境負荷も見過ごせない。ブラックフライデー後には商品返品が143%急増し、返品による環境コストは最初の配送より30%高くなるという。米国では返品だけで年間1500万トンのCO2が排出され、これは300万台の自動車の年間排出量に匹敵する。割安に見える買い物の背後には、私たちの目には見えない膨大な環境コストが存在しているのだ。


「買わないこと」が次の流行?SNSで広がるZ世代の過少消費の潮流とは
行動経済学とは

“買わない”から”直す”へ。グリーンフライデーが生み出す新しい循環

こうした大量消費への反省から生まれたのが、グリーンフライデーという動きだ。2015年に始まったグリーンフライデーは、ブラックフライデーと同じ日に、買い物習慣による悪影響への意識を高めるために創設された。企業がセールに参加する代わりに、環境に配慮した方針を推進し、既存製品の修理を奨励する取り組みである。

衣類を中心としたリペア活動は、環境に大きな効果をもたらす。衣類の寿命を9ヶ月延ばすだけで、新品購入と比較して環境への影響を最大20%削減(*3)できることが研究で示されている。この実践により年間50億ポンド(約9,500億円)の資源を節約できる可能性がある。

実際に多くの企業がグリーンフライデーに参加している。アウトドアブランドのパタゴニアは先駆的な存在だ。2020年にはブラックフライデーの売上100%を環境保護活動に寄付し、以前には「このジャケットを買わないで」という広告を展開した。同社の「Worn Wear」プログラムでは、顧客に服の修理を促し、中古品の購入を推奨している。2005年以降、北米だけで41万5174点のパタゴニア製品が修理され、修理センターでは年間最大5万点の衣類を修繕している。

IKEAは家具の買い戻しと再販スキームを推進し、顧客が家具を売却してIKEAで修理・再販できるようにしている。また、英国のScrummiは持続可能で生分解性のある美容業界向けテキスタイルメーカーとして、「ブラックフライデーは無意味だ」というメッセージで反旗を翻している。

こうした「直す」文化の広がりは、製品のライフサイクルを延ばすだけでなく、新たなコミュニティと価値観を生み出している。修理は単なる節約術ではなく、モノとの関係性を見直し、消費のあり方そのものを問い直す行為と捉えることもできる。


「お直し文化」の再評価。衣料品の大量消費・大量廃棄の先を目指す暮らし

消費の主導権は、いつでも私たち消費者にある

グリーンフライデーの本質は、消費者一人ひとりが購買判断を見直すことにある。グリーンフライデーは衝動買いから意図的な消費への転換を促し、教育、リユース、修理といった低負荷でエシカルなサービスベースの提供に焦点を当てる。

では、私たち個人には何ができるだろうか。まず、本当に必要なものかを立ち止まって考えることだ。環境プラットフォームEarthlyの調査によると、多くの消費者が持続可能な素材の使用を重要な購買要因と考え、63%がブランドの持続可能性推進を重視している。(*4)消費者の意識が変われば、企業の行動も変わる。

修理という選択肢も身近になっている。破れたジーンズ、ほつれたセーター、壊れたファスナー。これらは新品を買う理由ではなく、修理する機会として捉えることができる。スマートフォンの場合、新品購入では85.2kgのCO2が排出されるのに対し、整備済み端末では7.61kgのCO2排出で済む。小さな選択の積み重ねが、大きな変化を生み出す。

もちろん、システム全体の変革も必要だ。パッケージのゴミは世界的な汚染の主要因であり、毎年生産されるプラスチックの40%が包装用途で、そのほとんどが埋立地や焼却炉に送られる。企業による持続可能な包装材の採用、製品の耐久性向上、修理サービスの拡充など、構造的な改善が求められている。

しかし同時に、消費の主導権は常に私たちの手にあることも忘れてはならない。何を買うか、何を買わないか、どう使い続けるか。日々の小さな選択が、企業の方針を変え、社会の価値観を変えていく。

ブラックフライデーの喧騒の中で立ち止まり、「本当に必要か」「長く使えるか」「直せるか」と自問してみること。それこそが、持続可能な未来への第一歩なのかもしれない。グリーンフライデーは単なるイベントではなく、消費と環境、モノと人との関係を再構築する、新しいサイクルへの入り口になるのではないか。

Edited by k.fukuda

注解・参考サイト

注解
*1 CleanHub 「How Does Black Friday Impact the Environment?」
*2 Waste Managed 「Is Black Friday Bad For The Environment?」
*3 WRAP「Extending Product Lifetimes: WRAP’s Work on Clothing Durability」

*4 Earthly「Is Green Friday the solution to address nature’s balance sheet?」

参考サイト
Anti-Black Friday Movement Continues to Promote Repair, Reuse Over Rampant Consumption|Sustainable Brands
Patagonia公式サイト

本記事は、特集「物語をまとう——つくる人、着る人、つながる世界」に収録されている。布や色の奥に重なる時間や人の気配。世界とのつながりを形づくるその輪郭に、静かに目を凝らしてみたい。ほかの記事もあわせて、より多角的な視点を見つけよう。

つなぎ合わせることで生まれる。minä perhonenが紡ぐ再生のデザイン
つなぎ合わせることで生まれる。minä perhonenが紡ぐ再生のデザイン
previous arrow
previous arrow
next arrow
next arrow
About the Writer
Kie Fukuda

k.fukuda

大学で国際コミュニケーション学を専攻。これまで世界60か国をバックパッカーとして旅してきた。多様な価値観や考え方に触れ、固定観念を持たないように心がけている。関心のあるテーマは、ウェルビーイング、地方創生、多様性、食。趣味は、旅、サッカー観戦、読書、ウクレレ。この人が書いた記事の一覧

Related Posts