色覚多様性とは?色覚の仕組みやカラーユニバーサルデザインの事例をご紹介

色覚多様性とは

色覚多様性とは、人々の色の見え方の多様性を意味する。色覚は種によっても異なる特性を持ち、多くの動物が単一の色覚型をもつ中で、人間は進化の過程で獲得された「色彩を見分ける能力」を有する。

色覚の見え方は実に多様であり、例えば「赤と緑の色の区別が難しい人」「青と黄色の区別が困難な人」「すべての色を白黒で見る人」などがいる。また、日本・欧米・アフリカで色の感じ方が異なるとされるが、これも色覚多様性として表れる。

近年は、色覚多様性をもつ人々への配慮が求められており、すべてのユーザーが情報を正確に受け取るための工夫が必要とされる。例えば、視覚的に区別しやすい色の組み合わせの配慮を施すなど、色の違いがわかりにくい人々に対して正しく情報が伝わるように工夫することが重要だ。

色覚異常や色盲との違い

色覚異常や色盲という用語は、色の見え方に違いがある人々を「正常」や「異常」に分類する考え方に基づいている。しかし、あたかも色の見え方が異なることが劣っているかのように捉えられることが問題視されている。

異常や障害といった言葉は差別的なニュアンスを含むため、日本遺伝子学会が2017年9月から提唱したことをきっかけに、現在では「色覚多様性」と呼ばれている。実際、色覚の違いは遺伝的な多様性の一部であり、「正常」や「異常」という概念がそもそも無理があるのではないだろうか。

例えば、血液型においてA型が多く、AB型が少ないからといって、A型が「正常」でAB型が「異常」とは言わないのと同様である。同じように、色覚の違いも多様性の一つとして捉えられるべきであり、社会全体がこの認識を共有することが望ましいとされる。

少数色覚をもつ人の割合

日本人において、少数色覚をもつ人の割合は男性で約5%、女性で約0.2%とされている。すなわち、男性は20人に1人、女性は500人に1人の割合に相当する。

色覚多様性は遺伝的要因に由来し、性別によって異なる頻度で現れる。男性の場合、X染色体が1つしかないため、色覚に関する遺伝子が存在するとその影響が直接現れる。一方、女性はX染色体を2つ持つため、両方のX染色体で条件が揃わなければ色覚多様性が現れない。

少数色覚の割合は、実はそれほど少なくはないが、多くの人が身近にいることに気づいていない。これは、色覚に関する話題が日常生活であまり取り上げられず、当事者が自ら話題にしないことが多いためである。このため、少数色覚をもつ人々が直面する課題や必要な配慮が埋もれてしまいやすい。

一般色覚者より優れている場合もある

特定の状況では少数色覚をもつ人が、一般色覚者とされる人よりも優れている場合がある。例えば、緑豊かな森の中で保護色に身を包んだ小鳥や虫を探し出すような場面では、一般色覚者は「緑色の群れ」として全体を捉えてしまうため、見つけるのが難しいことがある。

しかし、少数色覚を持つ人は、「青みがかった緑」と「黄みがかった緑」を異なる色として捉え、保護色に惑わされずに特定の生物をより速く見つけられることがある。色覚多様性は環境や状況によっては優位にはたらくことがあるのだ。

色覚の仕組みと見え方の分類

色覚の仕組みと見え方の分類

色覚の仕組みは、目の網膜に存在する「錐体(すいたい)」と「杆体(かんたい)」という2種類の視細胞によって成り立っている。錐体は明るい場所ではたらき、L錐体(赤)・M錐体(緑)・S錐体(青)の3種類それぞれが異なる波長の光を感じ取る。杆体は暗い場所で働き、明暗を感知する役割を果たす。

カラーユニバーサルデザイン機構(CUDO)では、色覚をC型・P型・D型・T型・A型の5つに分類している。一般的な色覚を持つC型は、3種類の錐体がすべて揃っており、日本人男性の約95%、女性の99%以上を占める。

一方で、少数派の色覚特性を持つとされるP型(Protanope)とD型(Deuteranope)は、それぞれL錐体やM錐体が欠けていたり、分光感度がずれていたりする。P型は赤い光を、D型は緑の光を感知しづらい。

T型(Tritanope)は青い光を感知しづらい特性を持ち、A型は錐体が1種類しかない、もしくは全くないため、色を明暗でしか感じられない。

また、目の疾患によっても色の見え方は変わる。白内障や緑内障、糖尿病性網膜症などの疾患は視細胞に影響を与え、色覚に変化をもたらすことがある。特に、短波長の光を通さなくなる白内障や、S錐体に影響を及ぼす緑内障などは、見え方の個人差が大きく、T型に近い見え方になる場合もある。

参考:色覚の仕組みと呼称|北海道カラーユニバーサルデザイン機構

少数色覚者が日常生活で困ること

少数色覚を持つ人にとって、日常生活を送ることに概ね問題はないものの、社会のさまざまな場面で不便さを感じることがある。色覚多様性に配慮されたデザインも増えてきてはいるものの、以下のような問題は依然として存在する。

色の選択や区別が難しい

少数色覚者にとって、同じ色系列の中から特定の色を選ぶことは難しいとされる。例えば、パソコンで文字の色を変えようとする際に、選択画面で色の違いを正確に認識することが難しい場合がある。色鉛筆などで一度使った色を再度選ぶときにも、混乱することが多い。

料理をする際にも、色で判断を強いられるシーンは多い。少数色覚者にとっては、肉の焼き加減や野菜の鮮度を色で判断することが困難であり、誤った判断をしてしまうことがある。

特に、暗いところでは色の区別が一層難しくなるため、薄暗いクローゼットの中から洋服を選ぶ際にも戸惑うことが少なくない。

危険を知らせるサインが見づらい

信号灯や警告サインは一般的に赤色が使用されることが多いが、これは少数色覚者にとって最も見分けが難しい色の一つである。そのため、信号灯の色の違いを正確に認識できず、事故の危険性が高まることがある。

また、雨天や夕暮れ時など視界が悪い条件下では、運転時に前方の車のテールランプを見落とすこともあり、さらに危険が増す。特に街中で多数のネオンサインや照明がある環境では、信号灯を見落としやすくなるため、少数色覚者は常に注意を払って生活する必要がある。

職業が制限される場合がある

少数色覚者は、特定の職業において制限を受けることがある。例えば、飛行機のパイロット・自衛官・警察官などの職種では、色覚に関する基準が設けられており、色覚特性によっては採用が難しい場合がある。

また、美容関係・印刷業・映像関係・食品関係など、微妙な色の識別が求められる仕事も同様だ。このような職業制限は徐々に緩和されつつあるが、地域や職種によって異なるため、注意が必要な場合もある。

色覚多様性に配慮した「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」

色覚多様性に配慮した「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」

カラーユニバーサルデザイン(CUD)は、色覚多様性に配慮し、すべての人に伝わる色使いを目指すユニバーサルデザインの一種である。色覚特性に関係なく情報が正確に伝わることを重視し、誰もが視認しやすい色使いを行う。

例えば、色の濃淡や暖色と寒色の組み合わせを工夫することで、色覚に制約がある人々も情報を理解しやすくなる。色だけに頼らず、形やパターンの違いを利用することで視認性を高めることも重要だ。

CUDに対応した製品には「CUDマーク」が付与されており、マークがある製品は多様な色覚に対応したものであることが一目でわかる。「色はみんなが同じように見えている」という前提ではなく、「色覚には多様性がある」ことを前提にした取り組みが広がりつつある。

カラーユニバーサルデザインの事例

多くの学校や自治体、企業では、色合いや配色による障壁のない「色覚バリアフリー」の考え方を取り入れている。ここからは、色覚多様性に配慮したCUDの事例を紹介する。

学校用色覚チョーク

学校用色覚チョークは、緑色の黒板でも明るく見分けやすい色に調整されたチョークである。色覚特性に応じて3種類の色覚(C型・P型・D型)に配慮して作られており、色覚多様性をもつ児童や学生にもわかりやすい配色となっている。

一般のチョークと同価格で販売されており、高価な蛍光チョークではない。ただし、より多くの人に正確な情報を届けるためには、「この赤い部分は…」というようにチョークの色名を伝えることも必要だ。

エプソン「カラーユニバーサルプリント」

エプソンの「カラーユニバーサルプリント」は、色の見え方が異なる人々にも識別しやすく印刷する機能が搭載されている。例えば、色文字に下線や網掛け処理を施し、色分けされたグラフには色ごとに対応したパターン変換を導入している。

エプソンは、商品だけでなく、マニュアルやソフトウェアにおいてもCUDを取り入れており、すべてのユーザーにとって使いやすい製品づくりを目指している。

Jリーグ「選手番号・選手名」

Jリーグでは、全クラブの選手ユニフォームに表示する「選手番号および選手名」の書体を統一している。これにより、スタジアム観戦やスマートフォンでの視聴時においても、誰もが選手を判別しやすくなった。

CUDを取り入れた配色構成により、色覚特性をもつ人々にも見やすく調整されている。製品素材や加工技術の進化により高度なデザインが可能となり、より多くの人がサッカー観戦を楽しめるよう工夫されている。

まとめ

近年カラーユニバーサルデザインの考え方が広まりつつあり、色覚特性を持つ人々が快適に生活できる環境が整ってきている。CUDの取り組みは、教育現場や企業、公共施設など多岐にわたり、色覚多様性を尊重したデザインも普及している。色覚シミュレーションツールも注目されており、多様な色覚への理解も深まっている。

どのような色覚を持つかは生まれつきのもので、「異常」や「障害」という言葉は適さない。色覚の特性によらず、誰もが平等に情報を受け取れるよう工夫することで、インクルーシブな社会の実現の一助となりそうだ。

参考記事
冊子「色覚異常を正しく理解するために」|日本眼科医会
CUD認証事例 教科書・文具・玩具|NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構
ユニバーサルデザイン|EPSON
2021グッドデザイン賞 受賞ギャラリー|GOOD DESIGN AWARD

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