今年を「知る年」にしよう。国際デーから読み解く世界の今。

世界共通で考えて行動するために国連や国際機関が制定した国際デー。つまり、この日を知ることで、世界にはどのような課題があるのかがわかる。本記事では、4つのカテゴリーに分けてそれぞれ4つずつ国際デーを紹介した。世界にはまだまだ課題が多いことを、国際デーから読み取ってほしい。

国際デーとは

国際デーとは、国連や国際機関が特定の課題や価値について、世界共通で考え、行動するために制定した記念日。国際デーを定めた目的や背景を知ることで、世界にはどのような課題や苦しみ、そして喜びがあるのかを理解することができる。

本記事では「環境」「人権」「平和」「社会課題」の4つのカテゴリーに分けて、特徴的な国際デーを取り上げた。問題意識を高め、行動を起こすきっかけにもしてもらいたい。

環境に関わる国際デー

3月22日「世界水の日」

「世界水の日」は、1992年の地球サミット(環境と開発に関する国連会議)をきっかけに制定された国際デー。安全な水を使えることの重要性を再認識するために設けられた。

世界人口の4分の1は安全な飲料水を利用できていないとされる。日本ではかつて「水はタダ」と表現されることもあったが、多くの労力やコストがかかっている限りある資源へと認識は変わりつつある。水を出しっぱなしにしていないか、自身の生活を振り返って意識や行動を変えるきっかけにしたい。

6月5日「世界環境デー」

環境保全への関心と理解を深めることを目的に制定。6月5日としたのは、1972年にスウェーデンのストックホルムで開催された「国連人間環境会議」を記念してのことだ。日本が提案した。

国連環境計画(UNEP)がイベントを毎年開催しており、これまでは「生態系の回復」「気候変動への行動」などがテーマとして選ばれている。

日本では、1993年施行の「環境基本法」により6月5日を「環境の日」に、6月を「環境月間」としている。全国各地で環境に関するイベントが行われ、環境について考えたり、気軽に行動できる日になっている。利便性と引き換えに失われる自然との共生は、私たちの大きな宿題として今も残っている。

9月7日「青空のためのきれいな空気の国際デー」

大気汚染に対する世界的な意識を高めるために制定。2019年12月の国連総会で採択され、2020年から実施されている。

世界人口の99%が汚染された空気を吸っており、毎年約800万人が大気汚染に関連して亡くなっている。大気汚染は世界の主要な健康リスクの一つなのだ。

日本では、車の排ガス規制などにより大規模な大気汚染は起きていないとされる。しかし大気汚染による健康被害は労働能力の低下にもつながるとされ、健康格差や経済格差の一つの要因にもなる。省エネ家電への切り替えやエコドライブ、公共交通機関の利用などできることを徹底したい。見えない大気の汚れが命を脅かす状況は、今も世界中で続いている。

11月6日「戦争と武力紛争による環境搾取防止のための国際デー」

戦争や紛争が起きると、環境破壊を伴う軍事行動が行われるほか、資源の略奪も起きやすく、復興や人々の生活再建の妨げにもなる。この日は、戦争や武力紛争が森林や水資源、土壌、生態系といった環境に深刻な被害を与えていることに注意を促すために2001年に制定された。

世界各地で起きている戦争や紛争は遠く感じるが、日本には資源輸入国・消費国としての責任もある。地球環境は全世界の人類が共有すべきものであり、一度失うと元に戻すには時間と労力、コストがかかることを改めて意識する日にしたい。

人権に関わる国際デー

2月20日「世界社会正義の日」

社会正義には、貧困や格差の是正、ジェンダー平等、差別の解消などが含まれる。2015年に採択されたSDGsでは、目標1「貧困をなくそう」、目標8「働きがいも経済成長も」、目標10「人や国の不平等をなくそう」など多くのゴールに関わる。

「世界社会正義の日」は2007年の国連総会で制定、2009年から実施。日本での知名度は低く、直接関わるイベントは少ないが、賃金格差や世代間格差など日本社会に直結している課題も多い。「木を見て森を見ず」という言葉もあるが、社会全体の正義について深く考える機会にしてはどうだろう。

6月12日「児童労働に反対する世界デー」

2002年に国際労働機関(ILO)が制定。国際的な注意を児童労働に向け、撤廃に向けた行動を促す日としている。

農業や鉱山、縫製などの分野を中心に、世界では1億人以上の子どもが児童労働に従事。衣料品やカカオ、コーヒーなどのサプライチェーンに組み込まれ、世界全体がその安さや便利さの恩恵を受けている。

日本ではこれらの消費国としての視点が必要で、普段の暮らしが児童労働を生み出さないように消費行動を見直す日にもしたい。遊びや学びの時間を奪われた子どもたちの労働は、今も世界を支えてしまっている。

11月18日「子どもの性的搾取、虐待と暴力の防止とその治癒のための世界デー」

2022年の国連総会によって制定された新しい国際デー。世界中で20歳未満の女性約1億2000万人が強制的な性的接触を経験しているとされ、子どもの人権に関わる注目度が高まっていることがうかがい知れる。

注目なのは「性的搾取、虐待と暴力の防止」に加えて、「治癒」が含まれること。子どもが受けた被害をなかったことにするのではなく、心理的・社会的・尊厳の回復を重視している。

日本でも1日あたり1000人以上の子どもが性被害に遭っているという厚生労働省の調査もあり、少子化に歯止めがかからない中で、子どもの尊厳を守ることは日本における課題の一つ。自分の子どもはもちろん、他人の子どもにも目を向けられるような意識も持ちたい。

11月25日「女性に対する暴力撤廃の国際デー」

女性・女児に対する暴力をなくすために1999年に制定。11月25日が選ばれたのは、ドミニカ共和国で独裁政治に反対するミラバル姉妹が1960年11月25日に殺害された事件が由来だ。

国連では「世界人権デー」(12月10日)までの16日間を、「女性に対する暴力撤廃のための16日間の行動」として提唱。公式カラーのオレンジ色をモチーフに、世界各地で啓発イベントなどが行われる。

日本でも「世界人権デー」に向けて11月を「人権月間」に制定。内閣府による「女性に対する暴力をなくす運動」ほか、オレンジリボン運動などが全国で開催される。性別を理由に自由や命が脅かされる構造的な暴力は、今も根深く残っている。

平和に関わる国際デー

2月12日「テロリズムに通じる暴力的過激主義防止のための国際デー」

テロリズムにつながる暴力的過激主義には、予防が重要だという国際的合意に基づいて制定。2022年に国連総会で採択され、2023年から実施されている。テロ行為の根底にある貧困、差別、孤立、誤情報などに目を向けているのが特徴だ。

日本は大規模なテロの危険は小さいが、いじめや自死、カルト的組織による暴力、ネット上の過激化などテロ行為につながりかねない出来事が数多く起きている。比較的安全と言われる日本にいるからこそ、暴力が必要とされない社会の構築を冷静に考える日にしてはどうだろうか。

8月29日「核実験に反対する国際デー」

核実験に反対し、その廃止と世界平和の重要性を訴える国際デー。2009年12月に国連総会で採択され、2010年から実施されている。8月29日は、1991年の同日に核実験により甚大な被害をもたらしたセミパラチンスク核実験場(カザフスタン)が閉鎖された日だ。

国連総会で採択されながらいまだ未発効という「包括的核実験禁止条約(CTBT)」を後押しするのも目的の一つとされる。

日本は唯一の被爆国として、CTBTに早期署名・批准した国。広島と長崎に原爆が投下された8月6日と9日同様に、未来につながる大切な日として心に留めておきたい。

9月21日「国際平和デー」

平和の理想を強めることを目的に制定。1981年に国連総会で採択されたが、9月21日としたのは2002年から。「停戦と非暴力の日」として、24時間の敵対行為の停止も呼びかけられる。

当日、国連本部では平和の鐘が鳴らされる式典が開催。この平和の鐘は、日本国連協会が1954年6月8日に寄贈したものだ。

戦争はもちろんだが、人種差別や不寛容、貧困、不平等、テロ行為や暴力的過激主義などが平和を脅かす。こうした課題と向き合う機会にしたい。「24時間の非暴力」さえ守ることが困難な現実は、今も続いている。

9月26日「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」

核兵器の全面的な廃絶を世界的な目標として再確認する国際デー。2013年9月26日に核軍縮の高級レベル会合が開催されたことを記念して制定された。

国連では毎年9月に総会を行っており、核兵器廃絶をめざす啓発活動などを開催。日本でも「核兵器廃絶国際デー記念イベント」など、国連広報センターやNGOなどが連携してシンポジウムなどを開催している。

国際情勢は不安定感が高まり、核兵器の存在価値が世界中で高まっているように見える。核抑止論が再び注目される中、自分事として核兵器の必要性を問う時代に入っているのかもしれない。究極の破壊兵器が平和を維持するという矛盾した論理は、今も世界を支配している。

社会課題に関わる国際デー

5月3日「世界報道自由デー」

報道の自由の重要性を再確認し、世界中のジャーナリストを守るために1993年に制定。5月3日は、1991年に採択された「ウィントフック宣言」(報道の自由と独立を訴えた宣言)に由来する。

政府の監視強化などにより報道の自由が弱まると、市民の「知る権利」そのものが奪われる危険性が高まる。

日本では元々国際的に報道の自由度は低く、「報道自由度ランキング」での評価も低い。単なる「記者の日」ではあることはもちろんだが、わたしたちの安全や暮らしに重要な「知る権利」を守るための日であることも改めて認識したい。

5月21日「対話と発展のための世界文化多様性デー」

制定のきっかけは2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロ事件だ。2001年11月2日にはユネスコで「文化多様性に関する世界宣言」が採択され、その流れを受けた。

国連では、世界における紛争の89%は異文化間対話の少ない国々で発生しており、平和を持続させるには異文化間の対話が欠かせないとしている。

グローバル化が進む中、言語や宗教、民族、ジェンダー、価値観などが共存する文化多様性が重要度を増している。日本でも外国人労働者などが増加しており、多様性と共存することは優先課題だ。多様性を発展に生かすにはどうするべきか、考える日にしたい。

9月18日「平等な賃金の国際デー」

2019年の国連総会で採択され、2020年から実施されている。男女の賃金格差是正とともにキーワードとなっているのが「Equal Pay」だ。同じ価値の仕事に対しては、平等な賃金が支払われるべきということを意味している。

男女賃金格差のOECD平均(2023年)が約11%に対して、日本は約22%と約2倍の開きがあり、G7諸国では最大だ。2021年からは中小企業も「同一労働同一賃金」が適用され、女性活躍推進法により「男女賃金格差の開示義務」も開始されている。徐々に不平等は解消される見込みだが、厳しい目を持ち続けたい。

10月17日「貧困撲滅のための国際デー」

貧困撲滅を訴えるための国際デーだが、貧困を単なる「所得の不足」ではなく、尊厳や権利、機会の欠如として捉えているのが特徴だ。

これは制定のきっかけにも関わる。「世界人権宣言」を行ったフランス・パリにおいて、1987年10月17日に世界中から10万人以上が貧困や飢え、暴力、恐怖の犠牲者に敬意を表するために集結。この取り組みが評価されて1992年から国際デーとなった。

日本では貧困は見えにくいとされてきたが、近年は非正規雇用の増加や高齢者の孤立化、物価高などにより身近な課題だ。貧困は人権に関わるとして、解消のために何ができるのかを改めて考える機会にしたい。

国際デーは記念日ではない

国際デーについて知ることで、世界には課題が多いことがわかる。ただし、今回紹介した国際デーはわずか15。国連の公式サイトには、1年の2/3に相当する229の国際デーが記載されている(2026年1月15日時点)。わたしたちが身近に感じていない課題がまだまだ多いのだ。

それらを一つずつ知ることは重要だ。国際デーは単なる記念日ではなく、その課題に直面する人々に思い巡らすきっかけにもなる。例えば、カレンダーに丸をつけて、気になる国際デーを書いてみるのもいいだろう。そして「これからどんな一年を生きていきたいか」を考える機会にしてはどうだろう。それが何かの第一歩になるはずだ。

Edited by c.lin

参考サイト

「世界水の日」|国土交通省
3月22日は「世界水の日」|unicef

環境の日&環境月間|環境省
青空はきれいな空気から : 国際デー|公益社団法人日本WHO協会
青空のためのきれいな空気の国際デー(9月7日)に寄せる アントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ|国際連合広報センター

「戦争と武力紛争による環境搾取防止のための国際デー」とアトゥール・カレ国連オペレーション支援局担当事務次長の訪日を振り返って|国連広報センターブログ
パレスチナYWCAより:世界社会正義の日に際して|日本YMCA
6月12日は「児童労働反対世界デー」|unicef
6月12日は児童労働反対世界デー~日本のカカオ産業関係機関が連携してガーナの児童労働問題に取り組む~|独立行政法人国際協力機構
子どもの性的搾取、虐待、暴力の防止と治癒のための世界デー- 11月18日|国際連合
11月18日は「子どもの性的搾取、虐待と暴力の防止とその治癒のための世界デー」|ワールド・ビジョン・ジャパン
【今日は何の日?】11月25日: 女性に対する暴力撤廃の国際デー/International Day for the Elimination of Violence against Women|認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン
女性に対する暴力の撤廃に向けて|UN WOMEN日本事務所
テロリズムにつながる暴力的過激主義の防止のための国際デー、​​2月12日|国際連合
核実験に反対する国際デー(8月29日)に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ|国際連合広報センター
「核実験に反対する国際デー」|原水禁
「国際平和デー」に関する参考資料|国際連合広報センター
核兵器の全面的廃絶のための国際デー(9月26日)|国際連合広報センター
【今日は何の日?】5月3日:世界報道自由デー / World Press Freedom Day|認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン

対話と発展のための文化多様性世界デー、5月21日|国際連合
初の「平等な賃金の国際デー」に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長メッセージ(ニューヨーク、2020年9月18日)|国際連合広報センター
賃金の男女格差解消に向けて〜格差をもたらすものは何か〜|認定NPO法人日本BPW連合会
OECD 雇用見通し 2025: 日本|OECD
【今日は何の日?】10月17日:貧困撲滅のための国際デー/International Day for the Eradication of Poverty|認定NPO法人フリー・ザ・チルドレン・ジャパン

About the Writer
倉岡

倉岡 広之明

雑誌記者として活動した後、フリーライターとして独立。さまざまなジャンルの記事を執筆しているが、北海道で生まれ育ったこともあり、自然環境や気候変動、SDGs、エネルギー問題への関心が深い。現在は、住宅やまちづくり、社会問題、教育、近代史など、多岐にわたるテーマを手がけている。
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