
白黒思考とは
白黒思考(all-or-nothing thinking)とは、物事を「良いか悪いか」「白か黒か」「敵か味方か」といったように二極化して捉える思考パターンのこと。一つの考えに固執したり、好き嫌いがはっきりしたり、曖昧な状況に耐えられないといった性格に結びつくとされる。「スプリッティング(分裂)」「全か無か思考」「0か100か思考」「二分割思考」という別名もある。
「べき思考」「心のフィルター」「結論の飛躍」などと同じように、心理学では「認知のゆがみ」といわれる考え方の癖の一種だ。厚生労働省の資料では、「認知のかたより(アンバランス)」の一つとして記載されている。
認知行動療法の専門家であるジュディス・ベックは、白黒思考を「状況を連続体ではなく、たった2つの極端なカテゴリーで捉えること」(*1)と説明している。また精神科医のデイビッド・バーンズは「メンタルヘルスを崩す人には、極端な10の考え方がある」とし、その一つに「オール・オア・ナッシング(all-or-nothing)」があるとしている。
社会心理学者のゲルト・ホフステードによる異文化理解のフレームワーク「ホフステードの6次元モデル」の一つ「Uncertain Avoidance(UA、不確実性の回避)」では、日本はギリシャ、ロシア、ベルギーに次いで世界で4番目に高い位置にいる。つまり、日本には不確実なことを嫌う文化があり、白黒思考を持つ日本人は世界各国に比べて多いと考えられる。
(*1)出典:ジュディス・S・ベック 著ほか. 認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで : ジュディス・ベックの認知行動療法テキスト,星和書店,2015.7.
白黒思考の具体例
- 人を好きと嫌いで分ける
- 遊びでも勝ち負けにこだわる
- 自分を極端に卑下する
- 失敗しそうな挑戦はしない
- 自分か相手かどちらかがすべて悪いと決めつける
- ちょっとしたことで嫌われていると思う
- テストで100点が取れないと失敗だと思う
- 優柔不断な人に対してイライラしてしまう
白黒思考が問題とされる理由

白黒思考は、その極端な思考パターンのため、ストレスや生きづらさを感じてしまうことがある。世の中には曖昧なもの、グレーなものが数多く存在しているのにも関わらず、それらを認めたり、受け入れたりできないからだ。
そのため感情的、あるいは誤解や偏見による判断をしがちで、自分の決定に対して後悔することが多いという特徴がある。責任を感じやすく、自分を責めるという傾向もある。結果、自分のネガティブな面を見続けてしまうため、自尊心が低くなり、うつ病やパニック障害、摂食障害などになりやすい。
また、曖昧なことが受け入れられない「曖昧さ耐性」についての研究では、曖昧さの受容が低いと「手を何度も洗う」といったような強迫行為傾向や汚染不安が高いという研究結果もある。
白黒思考の代表的な特徴
その人の性格や傾向、特徴などによって、白黒思考をしてしまう人、白黒思考をしない人に区別できる。以下の表は、白黒思考になりやすい(あるいは、すでに白黒思考が強化されている)人の代表的な性格、傾向、特徴などをまとめたものだ。

また、発達障害や精神疾患を持つ人も考え方が二極化しやすく、特に自閉スペクトラム症やうつ症状を持っている人は白黒思考が強化されやすいとされる。「自閉スペクトラム傾向の高さが不確実さ不耐性を介して、二分的な思考を生じさせる可能性がある」という研究結果も報告されている。
白黒思考の原因
白黒思考の根底にあるのは、「分断本能」「単純化本能」「犯人探し本能」などの思い込みがあると考えられている。分断本能とは、世界を二つに分けて考えること。人間は複雑なものよりも単純にものを考えたいため、二つに分けてしまう傾向がある。これは「単純化本能」と同じで、一つの原因に当てはめた方が単純でわかりやすくなるため、一つにはめ込もうとしてしまうのだ。
また犯人探し本能とは、起こった現象の犯人を一つに決めつけること。複雑な物事が絡んでいるよりは、一つの原因が現象につながったとした方が人間は理解しやすいため、このような思考に陥るとされる。
人間は10歳ごろまで精神が未熟で、これらの思い込みのまま「できる、できない」「正義の味方、悪者」といったように二つに分ける傾向が強い。本来は社会経験を積んでいくうちに世の中に存在する曖昧さに気づき、こうした思い込みが緩み、やがて曖昧さを受け入れていくようになる。
しかし白黒思考の強い親などの大人が身近にいることで、自分の白黒思考が強化されてしまう。例えば、100点を取った時だけ褒められたり、失敗した時や試合に負けた際に強く怒られたりすると、「成功するしかない」と思ってしまうのだ。そのため、大人になっても柔軟な考え方ができずに、「0か100か」「白か黒か」という判断をしてしまう。
白黒思考を治すには
白黒がはっきりしていないと気が済まないのは、曖昧な状況が許せない、居心地が悪いと感じているからと考えられる。言い換えると、どっちつかずの状態では自分を保っていられないということだ。これは、どんな状況も受け入れられる強さを指す「曖昧さ耐性」が低い状態にあることを意味する。
白黒思考の特徴である「曖昧さ耐性」の低さを治していくには、次のような方法が有効と考えられる。
自己肯定感を向上させる
白黒思考の人は自己肯定感や自分に対する評価が低い傾向があり、自分を責めて落ち込んでしまうことが多々ある。そこで自己肯定感を高めるために、自分に自信を持つように心がけたい。
例えば、「昨日よりも少しできたことを自分で褒める」「他人から褒められたことを書き留めておく」といったことで自分の長所にも目が向くようになり、自己肯定感を高めることができる。小さな成功体験にも目を配ることで自分の基準が下がり、達成感も得やすくなる。
他の考え方を探してみる
サイコロには6面あるように、物事には見えていない部分も含めてさまざまな側面がある。自分から見えているものだけがすべてではないことをまずは認識したい。
その上で、自分と違う考え方や見え方があることも受け入れていきたい。その考え方に納得できなくても「そういう見方もある」と認めるだけで、極端に考える癖は回避できるようになる。
グレーの存在を認める
世の中にはグレーゾーンが実は多いという現実を受け入れることができれば、柔軟な考え方もできるようになっていく。そのため、0か100かではなく、その間にはたくさんの数字があり、それぞれに価値があることをまずは認めたい。
また、前回は0だったものが10になったり、10だったものが20になったりなど、物事は変化もする。こうした事象を受け入れることで、世の中には不確定なものや曖昧な存在が数多くあることにも気づくはずだ。
物事を柔軟に捉えるための3つの方法
長年積み重ねてきた思考パターンを改善するのは簡単ではないが、物事を柔軟に捉えるための3つの方法を紹介したい。
①自分の考え方を観察して記録する
まずは自分がどのような時に二極化して物事を捉えるのか、自分を客観視することが重要だ。白黒思考になった時にいち早く気づき、どのようなシーンで二極化しているのか把握したい。ただ観察するだけではなく、ノートに書き残したりすると、自分の思考パターンの傾向にも気づくはずだ。
自分の気持ちを0か100で表すのではなく、「0〜100」の点数をつけるという方法もある。「昨日は32点」「今日は74点」などと評価することで、「0か100か」という極端な思考はしないようになっていく。
②「絶対」などの言葉を避ける
自分の思考パターンをある程度把握したら、次に取り組みたいのは使うワードを変えることだ。例えば「絶対」「違いない」「するべき」「本当に」などの断言するワードを使わないようにしたい。
断言をしないことは、感情的な即断を回避して、自分の判断を保留することにつながる。「あの人のことが本当に嫌い」ではなく「あの人のことが、嫌いなのかもしれない(好きになる可能性もある)」といったように思考を不確実にすることができる。
③自分の結論に疑いを持つ
自分が出した結論に対して疑いを持つことも、白黒思考を改善させる方法の一つだ。例えば、「今回のテストは80点で、100点ではないので失敗だ」と思った時に「本当にそうだろうか」と振り返ってみる。
「前回の90点よりは下がったが、解けなかった問題が解けるようになった」「答えは間違ったが、原因は単純な計算ミス」など、失敗の原因や経過が見えてくる。そうすれば、「次に活かせる」といった思考になる。
完璧主義から脱する方法に「負けたら勝ちじゃんけん」という遊びがあるが、白黒思考にも有効とされる。勝つのが正義という思考が覆されることで、固定観念を打ち砕くことができる。
まとめ
白黒思考とは、物事を二極化して捉える考え方の癖のことだ。本来は悪いことではないが、それによって生きづらさやストレスを感じてしまう可能性がある。白黒思考によって生きづらさを感じているなら、改善することをおすすめしたい。
グレーの存在がどうしても受け入れられない場合は、白と黒を混ぜるのではなく、それぞれがまだらのように点在しているとイメージしてみる方法もある。
例えば、その人が味方か敵かではなく、味方の時もあれば敵の時もある。人間関係は本来複雑なもので、二人の時は味方でいてくれるけれど、たくさん人がいる中ではどっちつかずな存在でいるといったこともある。
シーンや周囲の環境などによって人々の考え方は変わり、関係性も変わる。そうした曖昧さを理解することが、より良い人間関係の構築、ひいてはウェルビーイングにつながっていく。
Edited by k.fukuda
参考サイト
異文化理解のフレームワーク「ホフステードの6次元モデル」(4)不確実な未知の出来事に対する対処法:不確実性の回避|The Culture Factor
うつ病の認知療法・認知行動療法 (患者さんのための資料) |厚生労働科学研究費補助金こころの健康科学研究事業 「精神療法の実施方法と有効性に関する研究」
自閉スペクトラム傾向と「0か100か」思考の関係を解明 ~不確実な状況への耐えにくさを介する可能性~|名古屋大学研究成果情報
完璧主義になりやすい人へ。白黒思考について、原因と解決策|早稲田メンタルクリニック





















倉岡 広之明
雑誌記者として活動した後、フリーライターとして独立。さまざまなジャンルの記事を執筆しているが、北海道で生まれ育ったこともあり、自然環境や気候変動、SDGs、エネルギー問題への関心が深い。現在は、住宅やまちづくり、社会問題、教育、近代史など、多岐にわたるテーマを手がけている。
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