グリーンインフラとは?求められる背景や特徴、国内事例を紹介

グリーンインフラとは?普及が求められる背景や特徴、国内事例を紹介

グリーンインフラとは

グリーンインフラとは、自然がもつ多様な機能を取り込んで活かしながら、社会資本の整備を行う手法である。

グリーンインフラの「グリーン」は樹木や花など植物の緑だけでなく、土壌・水・風・地形などを含む自然を意味する。「インフラ」は英語の Infrastructure(インフラストラクチャー)に由来し、社会や経済、生活を支えるための基盤のことだ。

グリーンインフラの概念は、英国と米国を中心に1990年代後半に発展してきたが、明確に定義が定まっているわけではない。米国では、雨水や水資源管理の観点から、都市の緑地形成に重点を置いている。一方、欧州では、さまざまな生態系サービスを提供できる土地利用のネットワーク構築を重視している。

日本では、2013年ごろにグリーンインフラの概念が導入され、国の計画としては2015年の第二次国土形成計画で初めて触れられている。その後、安全・安心で持続可能な国土、人口減少・高齢化などに対応した持続可能な地域社会の形成といった課題への対策の一つとして、グリーンインフラが位置づけられてきている。

グリーンインフラの特徴

グリーンインフラとは

自然のもつ多様な機能を活かしたグリーンインフラは、我々の暮らしに広範な利益をもたらす。まず、自然そのものが防災・減災などの機能を発揮するため、都市の快適性を高めるとともに国土の安全管理にも有効である。

グリーンインフラは時間の経過とともに機能が向上し持続的・永続的に利用でき、適切な維持管理を行えば更新が不要で低コストになる。欧米の事例では、洪水対策を全て人工物で整備する場合と比べ、グリーンインフラを取り入れた場合の方が、多面的な効果を含めると費用対効果が高いことが示されている。 

また、グリーンインフラは生物多様性・土壌・水などの自然資本の損失を軽減し、回復させることが期待できる。さらに、自然資本の活用は心身両面での健康を向上させ、景観形成や文化醸成、地域活動や教育面にも資するものであり、SDGsや地方創生の実現につながる。

このように、安心・安全な国土管理とともに、社会課題の解決と持続可能な自然共生社会を実現できる要素をグリーンインフラはもっている。

政府の取り組み|グリーンインフラ推進戦略 2023

地球温暖化や生物多様性の損失などが世界共通の課題となるなか、国土交通省は2023年9月に「グリーンインフラ推進戦略 2023」を公表した。

グリーンインフラが求められる背景には、近年甚大化・頻発化している自然災害や将来の人口減少による土地利用の変化、老朽化する既存インフラの維持管理への対応があげられる。一方で、市民はうるおいとゆとりのある魅力的な生活空間の創出を求めており、社会資本整備やまちづくりなどにおけるグリーンインフラへの期待が高まっている。

推進戦略が目標とするのは、グリーンインフラを活用した自然と共生する社会の実現である。単に自然を取り入れ豊かにするだけでなく、地域ごとの状況や課題を踏まえ、健康・安全と快適な暮らしを確保し、楽しく活動できる社会の実現を目指している。さらに触れられているのは、高度成長期を経て薄れつつある、自然に対する畏敬の念や自然観の大切さと、伝統的な知恵や生活文化を取り戻す必要性である。

本戦略を踏まえ、横断的・基盤的な取組のハブであるグリーンインフラ官民連携プラットフォーム(*1)が構築されている。このように、政府もグリーンインフラ普及の必要性を認識し、実装にむけた仕組みの構築に力を入れている。

グリーンインフラの課題

グリーンインフラを社会に普及させ実装を推進するためには、対応が必要な課題がいくつかある。具体的な例は次のようなものだ。

  • 安全面に関する技術指針、多面的な機能に関する効果の定量的な指標の提示
  • 導入のための初期投資と管理について、長期的・多面的効果の受益者が公平に費用を負担する新しい仕組みづくり
  • 人口が減少するなか、長期的に機能を維持・強化するための適切な管理の在り方の検討
  • 地域の集客や観光などによる事業収益の増加と、グリーンボンドESG 投資など資金調達

国土交通省は課題解決のための検討や知見の収集を行っている。グリーンインフラポータルサイト(*2)【実践編】では「グリーンインフラ実践ガイド」や「グリーンインフラに関連する支援制度集」などが利用可能である。

グリーンインフラとグレーインフラ

このようにグリーンインフラには、安心・安全な国土管理とともに、社会課題の解決と持続可能な自然共生社会を実現できる可能性がある。

かつては、コンクリート構造物をグレーインフラと呼んで、グリーンインフラと両極のものとして比較する議論が一部にあった。しかし、グレーインフラはデメリットばかりというわけではなく、グリーンインフラによって自然の脅威への対応が不要になるわけでもない。

グリーンインフラは整備後に機能を発揮するまで時間がかかることもある一方、グレーインフラは設置とともに効果を発揮でき、効果の大きさを測定できるという長所がある。津波・高潮対策の例では、グレーインフラである防波堤や防潮堤と併せて、グリーンインフラである海岸樹林帯や湿地帯を維持すれば防災力が向上する。グリーンインフラは防波堤・防潮堤への波の衝撃を和らげることにより、劣化を遅らせ破損を防ぐ可能性がある。

さらに、海岸樹林帯や湿地帯には特有の生態系が成立し生物多様性が高まるうえに、夏の日差しや強い風を防ぐことができ、住民は平常時から持続的に自然の恵みを得られる。

このように、グリーンインフラとグレーインフラは対立するものではなく、両者の特性を踏まえ適切に組み合わせることでより良い融合を目指すのが理想だろう。

グリーンインフラの国内事例

国土交通省は、グリーンインフラへの取り組み事例を広く情報発信することを目的に、グリーンインフラ大賞を創設した。このうち、3つの事例を以下にご紹介する。いずれもグリーンインフラの施工技術のみならず、地域住民との共同やまちづくりの視点を取り入れていることは興味深い。

「森林浴のできるメディカルケアタウン」づくり(千葉県柏市)

日中人通りが少なく閑散とした街区において、里山雑木林景観の保全と病院経営の両立が課題であった。下記の取組を通じて、患者のQOLが向上し、約100tのCO2を固定するとともにみどり豊かなまちづくりに貢献している。

  • 調査記録をもとに鳥類7種を誘致目標種に設定し植栽計画に反映することで、在来種主体の生物多様性の高い緑地整備を実現
  • 雨水を見える化する「雨水建築」と「雨も愉しむ庭」を取り入れ、雨水の一次貯留・浸透を図り公共下水道への負荷を軽減
  • 植物・木質材料・石材などの素材を利用し、水平基調、深い軒などを建築に取り入れ、生態系サービスの一つである健康にも寄与する統一感のある景観を創出
  • 診療所スタッフ・関係者とその家族の参加による巣箱づくり、花苗植付会を実施し、地元幼稚園に緑地を開放するなど、自然への愛着を醸成する取組を実施

今後は、隣接する雑木林で実施した生きもの調査の結果を樹林整備や保全活用計画に活かし、地元自治体との連携強化やネイチャーポジティブな社会の実現に貢献するとしている。

高校生による「グリーンインフラによる学校周辺まちづくり」の提案(埼玉県越谷市)

埼玉県立越谷北高等学校の生徒が利用する通学環境には、大雨による駅周辺の浸水被害、交通量が多く歩道が狭い通学路や生物の生息に適さない護岸などの課題があった。

生徒は下記の取組により、建築コンサルタントの援助を受け、学校周辺の地域課題を発掘・整理し、まちづくりの提案を行った。

  • グリーンインフラの事例見学・事業者インタビューをとおして、地域課題解決のための対策を場所ごとに具体的に探究
  • 通学路に樹木・花壇を導入し車道に凹凸をつけるなど、高校生が作成した計画を地域づくり主体者の越谷市(越谷市長)へ提案
  • 高校生自らが地域の一員としてグリーンインフラの多面的な機能を活用し、持続可能な地域づくりに関与していくことを明記
  • 事業展開後は、学校行事や部活動を通じた清掃活動、花壇の整備、グリーンインフラ導入後のモニタリングなどを提案

今後、文部科学省の支援も活用した教育機関と企業との連携を継続していくとしている。

舞根地区の震災復興と流域圏創成(宮城県気仙沼市)

気仙沼市は2011年の東日本大震災により沿岸地域が壊滅しコミュニティーの維持が危ぶまれ、復興工事により海洋生物が必要とする水際が失われる懸念があった。

当初は、被災地で環境に配慮した復旧工事を行うことは合意形成が不可能であったが、下記の取り組みにより約10年をかけて人々の共感を得て、主要な工事は完了した。

  • 旧住宅街と海を見下ろせる高台に移転することで合意形成し、防潮堤を作らずに移転跡地の汽水環境を保全
  • 河川護岸を開削して水交換と生物移動を可能にし、河川工事の残土を利用して震災で消失した干潟を再生
  • 地下水を通す穴あき矢板を採用した道路の復旧
  • フレーム護岸と砕石詰めにより魚類の生息環境を確保した多自然川づくりを実施
  • 全国の研究者を巻き込み、2011年から隔月で生物環境モニタリングを実施

今後は、エコツーリズムと林業を融合させたプログラムを開発し、人材育成と森林整備を同時に進めていくとしている。

まとめ

私たちのQOLを向上させ、人と人をつなぎ、生物多様性保全や脱炭素にも資するグリーンインフラは、まちづくりに不可欠な要素となっていくだろう。

今後、グリーンインフラの導入事例が増えることで知見が蓄積され、普及をはばむ課題が一つひとつ解決されるよう期待したい。

Edited by k.fukuda

参考サイト

注解
※1 グリーンインフラ官民連携プラットフォーム
※2 グリーンインフラポータルサイト


参考サイト
グリーンインフラ推進戦略 2023|国土交通省
グリーンインフラの推進|国土交通省
グリーンインフラを取り巻く背景と課題|国土交通省
グリーンインフラとグレーインフラの融合に関する研究|土木学会複合構造委員会
「森林浴のできるメディカルケアタウン」づくり
高校生による「グリーンインフラによる学校周辺まちづくり」の提案
気仙沼市舞根地区の震災復興と流域圏創成

About the Writer
曽我部倫子

曽我部 倫子

大学で環境問題について広く学び、行政やNPOにて業務経験を積むなかで環境教育に長く携わる。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、未就学児や保護者を対象に自然体験を提供。またWebライターとして、環境、サステナブル、エシカル、GXなどのテーマを中心に執筆している。三姉妹の母。
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