ミソジニー(女性蔑視)とは?ミソジニーが起きる理由、性差別のない社会の実現などについて解説

ミソジニーとは

ミソジニー(misogny)とは、「女性蔑視」と訳される言葉である。ラテン語の“misos”(憎しみ、嫌悪)と“gune”(女性)が語源とされ、女性や女性らしさに対する嫌悪感のことを意味する。ただしミソジニーは男性側だけではなく、女性から女性へ抱く例もある。このようにミソジニーを持つ人々のことを、ミソジニストともいう。

女性に対して明らかな嫌悪感を示す人もいれば、無意識のうちに女性を見下しているという人もおり、様々な形があるものの、それらはすべてミソジニーに含まれている。

最近SNSなどでよく見かけるようになった言葉だが、その歴史は古く「ミソジニー」という言葉自体は1650年代にはすでに誕生していたようだ。かつて中世ヨーロッパでは魔女狩りが横行しており、ここから目に見えてミソジニー思想が社会で浮き彫りになったといわれている。

時代の変化の中で徐々に下火になっているものの、ミソジニーがもとになっているルールや価値観は今でも多く存在し、様々な社会問題に繋がっている。

ミソジニーの対義語①:ミサンドリー

女性蔑視に対し、「男性蔑視」にあたる言葉が「ミサンドリー」だ。ただ、ミソジニーとミサンドリーは単に対義の関係にあるわけではない。なぜなら、ミサンドリーは男女平等と多様性を志向するフェミニズムから派生し、極端な反男性バイアス(偏見)を持つ人々を表したことがはじまりとされているからだ。

つまり、ミソジニーによって生まれた「支配的かつ特権的な男性社会」への抵抗といえる思想なのである。

ミソジニーの対義語②:フィロジニー

ミソジニーの対義語として、もう一つ挙げられるのは「フィロジニー」だ。これは、女性や女性らしさへの愛好や称賛を意味する言葉である。ミソジニーが女性というだけで嫌悪の対象となる一方、フィロジニーでは反対に女性というだけで神聖や崇拝の対象になるものだ。

これもまた極端なバイアスによって生まれるものとされ、ギリシャ哲学においてこのような過度な愛好は、ある種の病の一つとして認識されていたという。

ミソジニーはなぜ起きるのか

ミソジニーはなぜ起きるのか

ミソジニーは、根強いジェンダー・バイアス(社会に浸透している性別に関する思い込みや固定観念のこと)によって起こると考えられている。ではそもそも、そのようなジェンダー・バイアスは、なぜ起こるのだろうか。

文化的・社会的な影響

男性優位社会は、日本も含め世界各国で形成されてきた構造である。中でも家父長制が個人に与える影響は大きく、日本でも長らく家庭や社会における女性の権利を軽んじる傾向が続いていた。

戦後の改革で女性の参政権が認められたり、日本国憲法で男女の本質的平等が制定されるなど、政策面は女性の権利を向上させる風潮になりつつあるが、個人の価値観は旧態依然としているきらいがあるだろう。

特に親から子、上司から部下など、家庭や職場で受け継がれることで、無意識のうちにミソジニー思想に陥っているパターンも多く見られている。

メディアの影響

近年、ミソジニーおよびジェンダー・バイアスを想起させるようなメディアのあり方が物議を醸し、大きな議論を巻き起こすことが多々ある。これは、メディアが市民に与える影響の大きさを物語っているが、SNSの発展によってその傾向はますます強まっている。

だからこそ、番組や映画、広告などで女性を蔑視したり、反対に「女尊男卑」ともいえる過剰な表現や報道があると、男女問わずミソジニーを助長する危険性が高まってしまうのだ。

ミソジニーがもたらす問題

近年、ミソジニーによる問題は徐々に顕在化している。その中には、明らかな嫌悪感を示す人だけでなく、女性に対して友好的な態度の人が引き起こすものもあるため、一見分かりにくい場合がある。ここでは、社会的に大きな議論の対象になっているものを例に、ミソジニーがもたらす問題について考えてみよう。

ステレオタイプの押し付け

「スカートやハイヒールを履くべき」「結婚もせず、しても家庭に入らず仕事をしているのは良くない」「感情的で理性に欠ける」など、女性に対するこのようなステレオタイプは前時代的といわれて久しいが、実際は今でも耳にする機会はあるだろう。

この問題は、先述のように無意識のうちに身についた価値観や偏見が引き起こしている場合も多い。つまり、自らがミソジニーに陥っているとは気づいていない人も案外多く存在しているのだ。

教育機会や雇用における格差

近年の日本人の大学進学率は男子56.6%、女子50.3%で、このことは日本において男女の教育機会が平等になりつつある証とも見える。しかし一方で、その内訳をみると理学や工学の分野での女子率は著しく低く、医学部医学科の受験で女子が意図的に不合格にされていたことも大きな話題となった。(※1)

途上国の中には、未だに女子の就学や就労が認められない地域もあり、特に教育機会に恵まれない女子の割合は依然として高い傾向にある。

また仕事の面においても、日本の正規労働者の割合は男性の73.1%に比べ、女性は26.9%であり、就労できる職業には偏りもある。(※2)

さらに女性管理職の割合は12.9%と国際的にみても低い水準で、賃金面でも男性平均337.2 千円に比べ、女性平均は253.6 千円と、大きく差が出ている状況だ。(※3)

性的虐待やDVの横行

日本ではドメスティック・バイオレンス(DV)は犯罪と認められているが、昨今話題となっているのは、表面化しにくい「性的DV」である。DVは、総じてミソジニーによる日常的な支配関係によって引き起こされることが多いが、身体的・精神的なものと異なり、性的なものは当事者すらDVだと気づかないことも多いという。

これは「男性が性行為を望むときには女性はこたえるのが当たり前」といった考えや、「女性は突然されたり無理やりされることを喜ぶ」というドラマや漫画、アダルトビデオなどのメディアの悪影響も大きいとされている。

男性にも与えられる苦しみ

ミソジニーによって苦しむのは、実は女性自身だけではない。例えば「男性は仕事、女性は家庭」という偏見は、裏を返せば「男性は外で働くもの」というステレオタイプがあるということだ。

それ以外にも、ミソジニーは女性を蔑視する一方で、すべての男性は強くあるべきという「男らしさ」を押し付けられることになる。不安や弱さを抱えることは認められず、人を頼ることはかっこ悪いこととされ、一人で苦しさを抱え込んでいる男性も少なくはない。

ミソジニーなどの性差別をなくすには

UNESCOの調査によると、世界の6歳〜11歳の子どものうち、一生教育を受けることができない女子の割合は、男子の約2倍もあるという。また、大人でも家事育児に専念することを強要され、外に出て自由に働くこともできず、暴力や強姦、強制わいせつに苦しむ人は世界中に存在している。

この状況を受け、2030年までに達成しようとするSDGs(持続可能な開発目標)には、目標の5つ目に「ジェンダー平等を実現しよう」というものが制定されている。

この実現のために私たちが今すべきこと、できることは何だろうか。改めて考えてみよう。

ジェンダー教育を行う

「三つ子の魂百まで」という言葉で表されるように、幼いころに受けた教育や指導は、その人の人生に大きく影響している。そのため性差別などのジェンダー教育を正しく行い、子どものころからミソジニーに繋がるステレオタイプを取り除くことは効果的であると考えられる。

自分の認識を改めて考える

ミソジニーは一見個人の思考や価値観のように見えながら、実は社会に多大な影響を及ぼしている。そのため、一人ひとりが自分の持つ無意識なバイアスに気づき、女性の意見や経験談に耳を貸すなど、他者の視点に立って考えてみるという姿勢が大切だ。

言葉や表現に気をつける

無意識であるがゆえ、知らないうちに自身の言葉が相手を傷つけている可能性もある。差別的で侮辱するような表現はもちろん、「女なんだから」「女らしくない」などのステレオタイプを強調するような言葉も避けるよう、しっかりと意識を持つことが求められる。

まとめ

性差別は、大きな社会問題のひとつ。特に長い間議論されつづけている女性の社会進出や、いつまでもなくならない暴力問題は、ミソジニーの思想が根幹にあると思われる。

気づかないうちに身についたバイアスなどは、早々変えられるものではないが、個人のバイアスの集合によって社会全体の誤った認識も固定されてしまう。もちろん、これはミソジニーだけではなく、反対にミサンドリーによっても様々な問題を生んでいる。

今一度、ジェンダーに対する自身の認識を確認し、まずはバイアスの存在を意識してみてはいかがだろうか。

※1 第1節 教育をめぐる状況|内閣府男女共同参画局
※2 令和4年度雇用均等基本調査|厚生労働省
※3 令和3年賃金構造基本統計調査|厚生労働省

参考サイト
妻が夫の求めに応じるのは当たり前? 夫婦の間に潜む「性的DV」 | NHK | WEB特集
5.ジェンダー平等を実現しよう | SDGsクラブ | 日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)
Fact Sheet no.56「New Methodology Shows that 258 Million Children, Adolescents and Youth Are Out of School」(UNESCO/2019)

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