フェミニズムとは?定義や社会運動の歴史、現在抱える問題などを解説

フェミニズムとは

フェミニズムとは、女性が性差別によるあらゆる抑制から解放されることを目指した思想および社会運動のことである。

フェミニズムという言葉は、男性優位の側面が強かった時代には、女性の地位の向上や権利の尊重を訴える思想や活動を示していた。しかし現在では、女性だけではなく、「男女の性差をなくした平等な社会の実現」を目指すものとして広がっている。

女性が不当な扱いを受けていた時代に比べ、男女の性差別による問題は多くの人の意識に根付いてきている。しかし、それでも人々の間に染みついた価値観や、社会の構造的な性差問題は、そう簡単に変えることはできないものだ。女性たちは今も性別による搾取や抑制などの問題を訴えており、一朝一夕で解決するものではない。

また、世界には女性たちが声を挙げることすら許されない環境もある。多くの場合、やはり古い慣習や価値観に基づくもので、フェミニズムの問題は、社会の構造そのものから変えていかなければならない、大きな課題なのである。

フェミニズムとマスキュリズム

フェミニズムの対義語として、「マスキュリズム」というものがある。これはフェミニズムの主体を男性に変えたものと考えると分かりやすい。つまり、男性の権利について訴える思想や活動を示している。

マスキュリズムは、もともと男尊女卑を意味していた言葉であったとされる。しかし、フェミニズムの台頭による女性差別撤廃への取り組みが進む中で、新たに男性差別を生んでしまう例も増えた。そうした社会の傾向や、男性優位社会によって染みついた「男らしさ」に対して生きづらさを感じる男性も年々増加していることから、「男性の性差別への抵抗」という趣意を持つようになったのが「マスキュリズム」だ。

後述するフェミニズムへの反対思想を意味することもあり、実に多義的な言葉ではある。いずれにしても、「女性差別」と「男性差別」は男女双方の立場から同時に考えなければならない問題であることは間違いないだろう。

フェミニズムの歴史

フェミニズムの歴史

男性優位社会が長く続いていた世界の中で、女性たちはどのようにして自身の権利を訴えてきたのだろうか。ここからはフェミニズムが生まれた背景や、現在まで続くフェミニズム思想の広がりについて解説する。

第1波:女性の参政権の獲得(リベラル・フェミニズム)

19世紀末から20世紀初頭にかけて、初めてフェミニズムが起こった。これは、当時男性にしか認められなかった政治への参加や、財産権、相続権などの取得を訴えるものである。

18世紀に起こったフランス革命で採択された「フランス人権宣言」は、男性に限ったものであったため女性たちが反発。これが、フェミニズム運動の萌芽となった。その後、主にアメリカやイギリスで女性の参政権を求める声が大きくなり、「サフラジェット」という過激な活動家も誕生した。

激しい抗議の末、20世紀に入ると各国で次々と女性が参政権を得られた一方、フランスでは1944年まで認められることはなかった。

第2波:女性解放運動(ウーマン・リブ)

第1波で参政権を勝ち取ったのち、さらなる権利を訴える女性たちは、政治よりもさらに身近な「生活」にスポットを当てていく。すなわち「伝統的な家庭や社会からの解放」である。これは「男性は外で働き、女性は家を守る」という社会および家庭構造の見直しを求めるものだ。

女性の社会進出、職業の選択、高等教育の享受など、女性にも男性と同じように自由な選択肢が与えられるような制度を要求している。

このウーマン・リブ運動は、特に第二次世界大戦後の1960年代以降急速に広まり、この時期のフェミニズムは、政治だけでなく社会におけるすべての性差別を対象としている。

第3波:多様性とポップカルチャー

1980年代後半から1990年代前半にかけて起こった第3波。この時期のフェミニズムで特徴的なのは、「ポップカルチャーによる訴求」という点だ。

ステレオタイプ化された女性像への抵抗や皮肉、嫌悪などが、音楽をはじめとしたポップカルチャーによって力強く発信されたことで市民の関心を惹きつけ、さまざまな議論を巻き起こしていく。

その後、ジェンダーへの理解が進む中で「インターセクショナリティ」が重視されるようになる。これは「女性差別は単なる性差だけではなく、人種や宗教、性的指向といった様々なアイデンティティによって引き起こされる」という考え方である。

このような多様性を受け入れ、誰もが自分らしく生きられる社会の実現を目指そうとする運動が、第3波フェミニズムの中心となった。

第4波:SNS時代のオンラインフェミニズム

そして現在は第4波の真っ只中である。SNSの台頭によって自己表現や情報発信がますます容易になったこともあり、オンラインでのフェミニズム運動が盛んに行われるようになった。

その代表が「#MeToo運動」だ。2017年、ハリウッド女優のSNS投稿をきっかけに、一大ムーブメントを巻き起こした運動である。これは、セクシャルハラスメントや性暴力を受けた女性が実態を告発するため、「#MeToo(=私も)」というハッシュタグをつけてSNSに投稿をすることだ。この運動は、一般人だけでなく著名人なども行ったことで日本でも広がり、社会現象となったことは記憶に新しい。

世界がリアルタイムに繋がっている現在、国境や人種を超えた共有が瞬時にできるようになったことは、多くの人々へフェミニズムの当事者として考え、被害にあった人々が声をあげやすくなった要因となっている。

フェミニズムが抱える課題

女性の解放運動から始まったフェミニズムは、実に多面的な広がりを見せるようになった。一方で誤った認識を持たれたり、過激な言動に対する嫌悪を生んだりもする。いまフェミニズムが抱える問題とは、一体どんなものだろうか。

アンチフェミニズム

アンチフェミニズムは、その名の通りフェミニズムに反対する思想や運動のことだ。フェミニズムに対する批判は過去から根強く続いているもので、大きく分けて伝統主義的な立場からの意見と、過激なフェミニズムを自由主義に反するものとする意見がある。

特に、女性の差別は問題視される一方、男性の差別は話題になりにくい傾向への不満から、アンチフェミニズムを唱える人も増えているようだ。

ミソジニー

ミソジニーは、「女性嫌悪」「女性蔑視」を意味する。女性が見知らぬ男性に暴力を受けたり、殺害されるといった事件は後を絶たず、これらの事件を起こした犯人の中には「女性を見ると腹が立ってくる」といった供述をする人物も少なくない。

この原因として、女性差別の撤廃に関する政策に対して「女性優位政策」と受けとったり、それが自身の既得権を脅かすものと認識し、女性に対する憎悪が助長されて暴力といった形で表されると考えられている。

フェミニズムを正しく理解するために

こうしたフェミニズムに対する認識の違いや反発は、主に男性側の不満から生まれることが多い。また、女性側も過激な運動や謳い文句に疑問を持つ人も多く、これではフェミニズムとアンチフェミニズムの対立は深まる一方だ。そうした隔たりをなくすために、私たちは自分がどういう立場で、何ができるかを考えなければならない。

例えば、女性の権利を向上させるあまり、男性の権利に目が向けられていない事例はしばしば見受けられる。確かにこれまでの男性優位社会は、女性の権利を奪い、抑圧を強いてきたものである。しかし「男尊女卑」が「女尊男卑」になってしまっては、同じことの繰り返しになるだけだ。

フェミニズムは決して女性だけのものではなく、すべての人に対して性差別をなくし、多様性を尊重するものであることを、男性側も女性側も認識する必要があるだろう。

まとめ

近現代以降、男女平等を実現し、世界をよりよくしていこうという動きが、世界各地で継続的に行われている。求める権利は時代によって変化しているが、性差による不公平を是正しようとする根本的な主張は揺るがない。

SDGsの5つ目の目標「ジェンダー平等を実現しよう」においても、性暴力や望まない妊娠、強制的な結婚などを撤廃し、女性の権利を向上させ自由な選択肢を与えることが盛り込まれている。伝統的な慣習や古いジェンダー観が未だ根強く残る地域もあり、意識改革にはまだまだ時間はかかるかもしれないが、ジェンダーに関する課題が世界全体で共有され始めていることは間違いない。

時には、フェミニズムの動きに反対的な意見をもつ者との対立を生むこともある。しかし、「フェミニズム=女性優位社会の実現」という一辺倒なものではなく、すべての人々の権利を守るものだということを、改めて社会全体で認識することで、フェミニズムに限らず、あらゆるジェンダーの公正を保つことにつながるはずだ。

【参考サイト】
JAPAN SDGs Action Platform 5: ジェンダー平等を実現しよう|外務省

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