フェムテックとは?女性特有の健康課題の解決に向けた取り組みを紹介

フェムテックとは

フェムテック(Femtech)とは、女性(Female)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた言葉である。これは、女性の健康やライフイベントに関する悩みを、テクノロジーの力で解決していくためのサービスや製品のことを指す。対象となる健康課題には「月経・月経前症候群」「妊娠・不妊」「産後ケア」「更年期」「婦人科疾患」などが挙げられる。

フェムテックを企業や社会に知ってもらうことで、女性が持つ健康の悩みによって何かを犠牲にしたり諦めたりすることのない環境をつくることを目指している。産業としては始まったばかりではあるものの、2025年には世界で5兆円程度の市場にまで成長すると予想されている。

フェムケアとの違い

似た言葉として、女性(Female)とケア(care)を組み合わせたフェムケア(Femcare)がある。フェムテックがテクノロジーを活用して問題を解消するものである一方、フェムケアはテクノロジーに依存することはなく、さまざまな方法で問題をケアする製品やサービスを指す。フェムケアの方がより広い範囲を示すと捉えられるだろう。

フェムテックが注目される4つの理由

フェムテックが注目される理由

フェムテックが注目される理由としては、以下の4点が挙げられる。

1.SDGsの認知度向上

SDGsの目標の1つとして「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」があり、これがフェムテックに関連する。

日本では、雇用や賃金格差、女性の管理職の少なさ、家事や育児の負担の大きさなどにおいて男女格差が激しいことが問題となっている。世界経済フォーラムが2021年に発表した「世界ジェンダーギャップレポート」では、日本の順位は156か国中120位で、先進国の中では最低のレベルであった。

このような背景から、ジェンダー平等の意識が高まり、女性の生きやすさを実現するフェムテックに注目が集まっている。

2.女性の働き方改革

近年、社会で女性の活躍が推進される働き方改革が起こっていることも、注目される理由の一つだ。

女性の社会進出が進む前は、PMS(月経前症候群)や更年期障害など、職場において女性特有の健康問題に対する認識や配慮はあまりされていなかった。しかし、経済産業省のデータによると、PMSによる労働損失は1年間で4,911億とされている。女性の健康課題に対応し、働きやすい社会環境の整備を進めることが、生産性向上や企業業績向上にも結びつくため、フェムテックによる解決が求められている。

3.テクノロジーの進化

AIやビッグデータ、IoTといったテクノロジーが発展したことも注目されている背景の一つである。

最先端のテクノロジーにより、細かいデータ分析や個々の状態に合わせたヘルスケアの提供が可能になったことで、フェムテックの商品やサービスも増加した。たとえば、月経周期について、これまでは基礎体温等を手書きで記すことで把握していたが、現在ではアプリに体温や生理日を入力すると、次の生理日や妊娠可能性が高い期間を自動で知らせてくれるようになっている。

また、多くの人がスマホを使用するようになり、データの記録やオンラインでの対話が気軽にできるようになったこともフェムテックが注目される要因の一つだと考えられている。

4.SNSの普及

SNSの普及により、女性の健康の悩みを共有しやすくなったことも注目されるきっかけの一つである。

これまでは、女性特有の問題を話題に出すことは避けられており、女性は独りで悩みを抱えていた。しかし、SNSという自由に発信できる環境が生まれ、問題に関する情報も多く発信されるようになると、女性特有の問題が社会全体の課題として認識されるようになった。

日本のフェムテック市場の状況

矢野経済研究所が2023年に行なった調査によれば、日本の2022年のフェムテックおよびフェムケアの市場は、2021年と比べると107.8%の695億100万と推計されている。日本では、2022年に女性活躍推進法(改正)が全面施行され、不妊治療が保険適用されるなど、フェムテックに関する動きがあった。また、内閣府男女共同参画局による「女性版骨太の方針2022」では「フェムテックの更なる推進」が掲げられたことで、さらなる関心を集めている。このような潮流のなか、フェムテックに関する展示会や、政府による事業補助金の制度も生まれた。

フェムテックに特化した展示会の開催

フェムケアやフェムテックに関わる企業が一同に会する「Femtech Tokyo」と呼ばれる展示会が、2022年から東京で年に一度行われている。

フェムテックに特化した展示会としては日本最大規模であり、企業の取り組み事例の共有や最新情報の発信を行い、専門家によるセミナーも開催している。また「月経」「妊活」など、悩みごとにブースを分け、一般来場者向けに健康相談や検査サービスも設けている。

この展示会は、フェムテックの認知を広めることで、女性がポジティブに生きられるような社会をつくりたいという強い思いから開催されている。

フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金

経済産業省では、出産や更年期障害などの女性のライフイベントによる望まない離職等を防ぎ、個人の幸福や企業価値を高めるために「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」を令和3年度より開始した。

1年目の令和3年度は、全国の企業や自治体、医療機関等とフェムテックに取り組む企業が協力し、女性特有の健康課題の解決に向けたさまざまな施策が行われた。2年目の令和4年度には、実証事業の拡大を目指し、新規性や独自性のある事業が採択された。たとえば、「セミナー、コンテンツ配信等」「専門家相談/サポート」「漢方・ピル処方」など、健康課題を解決するものから医療機関の活動をサポートする事業まで、さまざまなサービスが実施された。

フェムテックのサービス事例3選

ここでは、国内で展開しているフェムテックのサービス事例を3つ紹介する。

リシテア/女性活躍支援サービス(日立ソリューションズ)

日立ソリューションズでは、女性の従業員がいつでも気軽に看護師や助産師にオンライン相談ができる「リシテア/女性活躍支援サービス」を提供している。従業員がなかなか人に相談しづらいことや、日ごろストレスに感じることを相談できる機会の提供を目的としている。

相談内容は、相談者と相談を受けた専門家でのみ共有されるため、話した内容は、所属する企業へ伝わることはない。また、顔を見ながらビデオ通話にて相談できるため、心理的な安全性もある。働きながら気軽に利用でき、安心感もあることが良い評判へとつながっている。

今後は、健康課題だけにとどまらず、キャリア形成や介護についても相談できるようなサービスを拡張する予定だ。

母子の健康伴走サポートサービス(株式会社MamaWell)

株式会社MamaWellでは、妊娠・育児期の女性を対象に、パーソナル助産師による母子の健康伴走サポートサービスを展開している。利用者一人ひとりの状況に応じた適切な情報を提供し、体づくりを中心にオンラインサポートを行っている。

このサービスでは、助産師との週1回のオンライン面談やいつでも相談できるチャットなどがある。そして、妊娠や出産における不安軽減や妊娠による労働パフォーマンスの維持などを目的とし、結果的には妊婦だけでなく企業や地域社会にもメリットをもたらせるようサービスを展開している。

株式会社MamaWellは「女性の生涯における健康をエビデンスに基づいてサポートする」をミッションとしており、今後も妊娠や育児がキャリアの成長を抑える要素とならないよう、シームレスなキャリア形成の実現につなげることを目指す。

ケアミー/PMSの予測と分析サービス(株式会社ヘルスアンドライツ)

ケアミー
出典:株式会社ヘルスアンドライツ

株式会社ヘルスアンドライツは、PMS(月経前症候群)の対策に特化した「ケアミー」と呼ばれるアプリを提供している。ケアミ―は産婦人科医が監修しており、ユーザーの過去のデータ(気分の変化・身体的症状・生理周期など)をもとにPMSによりおこる不調を独自のシステムで分析・予測する。そして、ユーザーにいつどのような症状が起こるのか通知し、PMSにより生活に支障が出る悩みを解決する。また、不調をLINEでパートナーに共有することも可能だ。

これまで、月経に関するアプリは、生理周期や排卵予定日等を把握する生理管理アプリが主流であり、PMSに対する世間の認知度も低かった。しかし、最近ではPMSは生活の質を低下させ、日常生活に支障をきたす場合もあると知られてきている。ケアミーはこれまでにない新たなアプローチで世間に新しい風を吹かせた。

まとめ

フェムテックは、女性が働きやすい・生きやすいと思える世の中に変えていくための大切な一歩である。しかし、女性特有の健康問題の解決は、周りのサポートや理解が必須だ。働き方改革やSNSの普及などによって、問題自体は認知されてきたものの、実際に悩みを抱えていない場合は、問題の本質をとらえられていないことも多い。フェムテック市場が成長していくうえでは、社会で生きる誰もが悩みに目を向け、当事者意識をもっていく必要があるのではないだろうか。

参考記事
フェムテックプロジェクト|経済産業省
フェムケア&フェムテック(消費財・サービス)市場に関する調査を実施|矢野経済研究所
Global Gender Gap Report 2021 |World Economic Forum

株式会社MamaWell

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