他者化とは?
他者化とは、自分とは異なる属性の他者を、“自分とは違う他者”であり異質な存在として扱い、距離を置いたり、排除したりする現象を指す。
〇〇人は真面目、〇〇の仕事をしている人は教育レベルが低い、〇〇を好む人は性的に奔放、〇〇に住んでいる人は社交的で面白い……など、世の中には、さまざまなステレオタイプが存在する。そのステレオタイプを鵜呑みにしたり、他者を理解しようとするのではなく、異質な存在として排除したりする現状を「他者化」というのだ。
他者化は、国が違う人、性別が違う人、文化が違う人、性的嗜好が違う人、経済レベルが違う人、などさまざまな相手に対して行われる。特に、文化が違ったり、経済的なレベルが違ったりすることで、他者化は発生しやすい。近年、日本はインバウンドを強化し、さまざまな国の人が訪れる観光大国になりつつある。外国人という“他者”が入ってくることで、日常が脅かされていると感じ、他者化を行ってしまうことは珍しくない。
他者化は、“あの人(またはあの集団)は自分とは違うので理解することは不可能”と考えることなので、他者理解からはもっとも遠い態度であり、相手を同じ人間と見なさない態度でもある。
それゆえ、他者化は、相手を下に見たり、奇妙なものとして見たりする態度になるだけではなく、“神聖なもの”として神格化する態度にもつながりうる。一見、神聖視は良いことのように思われるが、その実、相手の実態を理解しようとする意図がない態度でもある。さらに、神聖視しているが故に、その幻想が壊れた時に、一方的に怒りをぶつけることにもなりやすい。
他者化は、相手にステレオタイプを押し付けて、遠ざける行為だということもできるだろう。故に、他者化は、個人間やグループ間の分断や、争いのきっかけになりやすい。また、自分を守るために他者化を行っているはずが、結局は自分に不利益が及ぶことも珍しくない。
他者化が起こる4つの原因

ところで、なぜ人は他者化をしてしまうのだろうか? 人は社会的な生き物ゆえに、基本的には人とコミュニケーションをとること、理解することを重視する。しかし、社会的な生き物だからこそ、相手を遠ざけてしまうこともある。
以下に、他者化が起こる4つの原因を解説する。
1 無知・見ている世界が狭い
他者化が起こる最大の原因は無知だ。他者について知識が不足している場合、偏見や誤解が生じやすく、その誤解が解かれるきっかけもない。例えば、「〇〇人はマナーがなっていない」というイメージがある人がいるとする。その人は、実際にマナーがなっていない〇〇人を見たことがあるのかもしれない。たった数回、マナーがなっていない〇〇人を見たからという理由で、〇〇人全体を決めつけるのは無知だとしか言いようがないが、本人は実感があるため、なかなか自分の見方が偏っていることに気がつけない。
また、近年はSNSなどによって、自分が見ている狭い世界の常識を繰り返し目にする機会が増えている。繰り返し偏った情報にアクセスした結果、自分の偏った考えこそが常識であり、真実であると思い込んでしまうケースもある。同じ偏った情報にばかりアクセスしてしまい、認知が歪んでしまうことをエコーチェンバー現象という。エコーチェンバー現象もまた、他者化を加速することに一役買っている。
2 教育やメディアによる、性別ごとの教育の違い
メディアや学校教育、家庭環境などから植えつけられたステレオタイプが拭えないパターンもある。例えば、ある男性が「男性が足を広げて座るのは、身体の構造上そのほうが楽だから、女性とは違う」と思い込んでいる事例がある。なぜ彼は、そのような根拠のないことを思い込んだのか。それは、女性が、「女の子は公共の場所で足を広げてはいけません」と教育されてきたからだ。性別に関わらず、足を広げて座る方が楽だという人は多い。公共の場所で足を広げないのは、それがマナーだと思っているからなのだが、足を閉じている女性ばかりを目にしてきた男性の中には、「女性は足を閉じているのが自然な状態なのだろう。女性は、自分とは違うのだから」と勘違いする人もいる。彼らは、女性を自分とは違う生き物として他者化しているのだが、これは、教育によって作られた差異を生物学的差異だと思い込み、他者化してしまっている一例だと言えるだろう。
3 自らの地位や特権が脅かされる不安・恐れ
未知のものや、異質なもの、新しいもの、理解できないものに遭遇した際感じる不安や恐れが他者化を引き起こす一因にもなる。例えば、移民大国のアメリカでは、移民に仕事やお金を奪われるのではないか、と恐怖を感じ、移民に対して他者化を行う人もいる。移民を自分と同じ労働者だと考えれば、同じフィールドで戦わなければならなくなるが、自国民とは違う“他者”だと捉えれば、排除することができる、というわけだ。
4 格差社会・不平等
他者化は、経済的に豊かな人や、社会的地位が高い人が、下位の人に対して行うだけではない。経済的に恵まれない人や、社会の周縁に追いやられている人が、上位の集団や別の集団に対して行うこともある。近年、資源や機会が一部の人に偏り、格差社会が加速している生活レベルや環境があまりにも違うが故に、相手を同じ人間だと思えず、他者化してしまうこともあるのだ。
他者化の実例
次に、具体的な他者化の実例について確認していこう。
1 人種差別:アパルトヘイト、大虐殺など
人種が異なることで他者化は起こりやすい。歴史的には、アパルトヘイトや、ユダヤ人の大虐殺などが、他者化の最悪の帰結だ。〇〇人だというだけで、殺害したり、奴隷化したりすることに疑問を抱けなかったという歴史は、他者化が人命や人権の軽視につながることを証明している、といえるだろう。
2 性別差別・性的嗜好差別:医学部の受験差別など
女性差別は、男性を基準に考え、女性を“他者”だと考えるために発生している。例えば、医学部の受験において、女性だけ減点されていた、という事件があった。ああいった性差別は、今も公然と、また時には暗黙の了解で行われている。また、レズビアンやゲイ、バイセクシャルなど、性的嗜好が異性愛者ではない人たちに対する差別も、他者化故に行われることがある。
3 外国人差別:移民や在日外国人に対するヘイト
移民や旅行者、在日外国人、難民などに対しての差別も、他者化の一形態だ。特に、自国の経済が弱くなっている時には、外国人が経済的な脅威として感じられがちなため、他者化は進行しやすい。
他者化をしないための4つのヒント
最後に、他者化をしないためにできることについて解説していく。
1 異なる背景を持つ人について知識を深める
他者化は無知や、視野の狭さによって発生することが多い。無知を解消するためには、学ぶことが不可欠だ。異なる背景を持つ人について学ぶことで、偏見を減らすことができるはずだ。
2 対話し交流し、相手を知る
実際に異なる文化的、経済的背景を持つ人と交流することも大切だ。相手と対話をすることで、自らの偏見に気がつく機会になりうる。
3 SNSやメディアの使い方のリテラシーを高める
情報を取捨選択するためのリテラシーを高めることも大切だ。また、与えられた情報を鵜呑みにするのではなく、批判的視点を持つことも大切だろう。テレビや新聞などの権威のあるマスメディアでも、ステレオタイプや他者化を助長する報道をしている報道機関はたくさんある。また、映画やドラマ、小説などでも偏見を強化するものはある。情報が溢れている現代だからこそ、批判的な目で情報を精査することが必要だろう。
4 社会的・経済的な機会平等を促進する
格差社会が他者化を促進している一面もあるため、社会的、経済的な機会平等を促す必要があるだろう。これは、個人ができることではないため、大企業や国に働きかけ、格差社会の是正を訴える必要がある。
さいごに。他者を知る好奇心を持とう
他者化は、社会の分断をうむ。また、他者化を行うことで、他者と繋がりが感じられず、孤立する要因にもなる。平和で豊かな世界を実現するためには、分かり合えない他者を“自分とは違う人間”と切り捨てるのではなく、理解しようとする好奇心が必要だろう。
【参考文献】
サイコロジートゥデイ「他者化の心理」
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