グリーンウォッシュとは?意味とグリーンウォッシュによる7つの罪、日本や欧州での事例やそれに対する規制を解説

グリーンウォッシュとは・意味

グリーンウォッシュとは、エコやSDGs、サステナビリティに取り組んでいるように見せて、企業のブランドイメージを向上させる見せかけの活動または行為のこと。環境をイメージさせる「グリーン」と、壁などを白く上塗りして「ごまかす」「取り繕う」といった意味の「whitewash(ホワイトウォッシュ)」を掛け合わせた造語だ。

グリーンウォッシュに当たる企業については「ウォッシュしている企業」と言われることもある。補助金や税金、資金調達などで優遇されたり、広告や人材採用の面で有利にはたらくように、意図的にグリーンウォッシュを行う企業も存在する一方で、中途半端な取り組み自体がグリーンウォッシュと捉えられることもある。これまで世界的企業であるマクドナルドやコカ・コーラなどがグリーンウォッシュに当たると批判を受けた事例もある。

6つの分類

グリーンウォッシュによる混乱や懸念が拡大する中、2023年1月にはイギリスの金融シンクタンクNGOであるPlanet Trackerがグリーンウォッシュの手法を以下の6つに分類して発表した。

  1. グリーンクラウディング(Greencrowding)

不都合な事実が見つからないように多くの情報の中に紛れ込ませたり、企業連合などに参加するなどして自社に注目が集まらないようにする手法のこと。

  1. グリーンライティング(Greenlighting)

環境に配慮した活動や特徴を積極的にアピールすることで、自社の環境破壊的な活動や事業を隠すこと。環境に配慮した活動や特徴は実は規模が小さいケースが多い。

  1. グリーンシフティング(Greenshifting)

企業が消費者に責任を押し付ける手法で、石油業界がCO2排出の責任を車ユーザーに転嫁しているといった例が代表的だ。

  1. グリーンラベリング(Greenlabelling)

環境への配慮をうたった虚偽の表示によって消費者や投資家を裏切る行為。「再生可能エネルギーを利用して製造」などと表示している商品が、実は虚偽だったケースなどがある。

  1. グリーンリンシング(Greenrincing)

ESG目標を達成する前に定期的に目標を変更する方法。大きな目標を掲げておきながら、達成できない企業などに見られる。

  1. グリーンハッシング(Greenhushing)

サステナビリティに関連する実績をあえて小さく報告したり、隠したりする方法。投資家や消費者から監視されたり、注目されることを回避するために行われる。

グリーンウォッシュの問題点

グリーンウォッシュを規制する動きが世界中で出ているが、それは放置できない問題があるからだ。代表的なグリーンウォッシュの問題点を解説する。

消費者の正しい判断を妨げる

エシカル消費の普及に伴い、環境保全に取り組んでいる企業の商品やサービスなどを選んで購入する消費者も増えている。しかし、消費者が環境や社会に配慮したつもりで購入した商品が、実はグリーンウォッシュに当たるものだったというケースも少なくない。

グリーンウォッシュが放置されると、”見せかけ”の商品やサービスが市場に増え、消費者の正しい判断を妨げることにつながってしまう。

投資家の判断基準に影響

環境課題などに配慮する企業に対して投資するESG投資市場が拡大しており、投資家にとってもグリーンウォッシュは懸念材料の一つになっている。グリーンウォッシュによって不当な資金集めが行われることもあり、投資家はそのような動きに加担しないように、投資先企業を慎重に選択する必要がある。

PwCが2022年12月に発表した「PwC’s Global Investor Survey 2022」では、企業の開示にグリーンウオッシュが含まれていると疑いを持つ投資家が87%を占めると報告している。

企業側のリスク

グリーンウォッシュによって、ブランドイメージの低下につながるなど、企業側にもリスクがある。環境配慮などをうたい実態とかけ離れていることが判明した場合、消費者は裏切られたと感じ、不買運動やダイベストメントに発展することもある。

企業側が意図的に行うグリーンウォッシュがある一方、意図せずにグリーンウォッシュとみなされることもあるため、そのようなリスクを回避する方法や対策を心得ておく必要がある。

回避する方法

グリーンウォッシュの拡大を受けて、欧米では回避するためにさまざまな対策が取られている。企業として行う回避策として代表的なのは次の2つだ。

「グリーンウォッシュ7つの罪」の活用

グリーンウオッシュを回避するには、まずどのようなことがグリーンウォッシュに当たるのかを把握することが重要だ。カナダのグリーンマーケティング・エージェンシーのTerrachoiceでは、「グリーンウォッシュの7つの罪」として、グリーンウォッシュを次のように分類している。

  1. トレードオフ隠蔽の罪…環境に配慮していることだけを強調し、環境への負荷は公表しないこと
  2. 証拠がないことの罪…根拠を示さずに「サステナブル商品」「環境に良い商品」と表記・宣伝すること
  3. あいまいさの罪…数字や定義をあいまいにして、消費者の誤解を招くこと
  4. 誤ったラベル表示の罪…存在しないもしくは機能していない第三者機関から評価されていることを示すこと
  5. 的外れの罪…明らかな嘘とは言えないが、消費者にとっては特に役に立たないことを強く主張すること
  6. まだましの罪…より悪いものと比較することで、「まだまし」と消費者に思わせること
  7. 捏造する罪…虚偽であるにも関わらず、「環境に配慮している」との広告や発表をすること

以上のような行為を行うことで、グリーンウォッシュに当たるとの疑いをかけられる可能性があるため、グリーンウオッシュを回避するには、上記のような動きがないか見極めることが重要だ。

客観的評価基準・目標設定に基づいた施策を実行

自社独自の基準ではなく、客観的な評価基準や目標設定を活用することも、グリーンウォッシュを回避する手段となる。

具体的には、CO2削減目標を設定するSBT認定、自然エネルギー100%で事業活動を行うことを目指す国際イニシアチブ「RE100」への加盟、使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示す「再エネ100宣言 RE Action」への参加などが代表的だ。

これらの客観的な評価基準や目標設定を活用することで、環境保全に向けた商品やサービス、事業が第三者の基準に基づいて行われていることを示すことができるため、グリーンウォッシュの疑いをもたれるリスクを低減できる。

グリーンウォッシュの事例

SDGsへの取り組みやESG経営などが広く取り入れられるようになった一方、企業がグリーンウォッシュに関する指摘を受けた以下のような事例もある。

マクドナルド

マクドナルドでは、2018年に「環境への配慮」として、「100%リサイクルが可能」とした紙製ストローをイギリスとアイルランドの店舗で導入した。しかし実際には、紙製ストローが厚過ぎるためリサイクルは困難だったことが判明。消費者によって、リサイクル可能なプラスチック製ストローへの変更を求める署名活動が行われた。

スターバックス

スターバックスでは、2018年にプラスチックゴミを削減する取り組みの一環として「ストローが不要なフタ」を採用した。しかし実際は、従来のストローとフタとの組み合わせに比べて、より多くのプラスチックを使用していたことが判明。グリーンウォッシュであると批判を受けることになった。

ユニリーバ

サステナビリティ重視の経営方針を打ち出しているユニリーバだが、特定の表現が曖昧で消費者に誤解を与えている可能性や、ナチュラルをうたっている原料に関して不正確または誤解を招く可能性がある疑いをかけられている。これに対して、2023年12月にイギリスの競争・市場庁(CMA)が同社のグリーンウォッシュに関する本格調査を開始している。

H&M

スウェーデンのアパレルメーカーH&Mでは、2019年にノルウェー消費者庁からグリーンウォッシュの指摘を受けている。これは、100%オーガニックコットン、リサイクルポリエステルといった持続可能な素材をすべてのラインナップに採用した「H&Mコンシャスコレクション」において、リサイクル素材の含有量についての具体的な情報を明示していなかったためだ。

ライアンエアー

アイルランドの格安航空会社ライアンエアーは、2019年に公開した広告に「ヨーロッパの大手航空会社の中で二酸化炭素の排出量が最も少ない」と記載した。これに対してイギリスの広告基準局(ASA)は、比較対象が不足しているなど根拠となる情報や裏付けがないとして、当該広告はグリーンウォッシュと断定され禁止処分を受けた。

規制状況

グリーンウォッシュによって消費行動や投資心理などにさまざまな影響が出ていることから、混乱を避け、健全な企業競争を促進するために法整備を進めている国もある。以下、海外と日本の動きをそれぞれ紹介する。

海外の対策

ESG投資の市場規模が大きい欧米ではグリーンウォッシュ対策も進んでおり、法整備や規制を設けるなどの動きが見られる。例えばEUでは、2018年にサステナブルな経済活動の定義などを記載した「EUサステナブルファイナンス行動計画」を公表。企業に対してGHG目標やPAIなどの開示を求めており、投資家はESGへの取り組みを容易に比較できるようになっている。

また欧州委員会は 2022 年 3 月に不公正取引方法指令の改正案を公表。さらに2023 年 3 月には、環境主張における最低要件を定め、要件を満たさない環境主張を禁止する「グリーン・クレーム指令案」を公表するなど、矢継ぎ早に規制を強めている。

国ごとでの規制も強化されており、2021年にフランスでは「改正法5419」が成立し、グリーンウォッシュと判断された場合には罰金が科されるようになった。また同年イギリスでは「グリーン・クレーム・コード」と呼ばれるガイドラインを制定し、誠実かつ正確な取引を推奨している。

さらに2022年には、アメリカ証券取引委員会(SEC)がグリーンウォッシュに対する規則案を発表。より明確な情報を投資家に届けることを目的に、ESGに関連する金融商品の分類を行っている。

日本の動き

一方、日本では厳格な規制は設けられていないものの、「不当景品類及び不当表示防止法」による優良誤認表示に対する規制や、環境省の「環境表示ガイドライン」に則って環境配慮に関する主張を正しく行うよう促す動きはとられている。直近では、2023年に「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」の一部を改正し、ESGに該当しないと判断された商品は、ESGに関連する用語を用いたアピールができないようになった。

さらに金融の分野では、2017年に環境省が、国際原則に準拠した「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン」「グリーンローン及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン」を策定し、改訂を重ねている。これにより、環境事業を行う企業は適切に資金調達するように促し、投資家が安心して投資できる環境を整えている。

グリーンウォッシュを見分けるためにできること

政府などによる規制が行われている一方、消費者や投資家自身もグリーンウォッシュを見極めるリテラシーを向上させることが重要だ。そのために、まず表示方法や表現などを鵜呑みにしないことが大切である。「エコ」「グリーン」などの曖昧なイメージに惑わされないことに加えて、リサイクル素材が利用されている旨の表示がある場合には「◯◯%のリサイクル素材を使用」といったように具体的な数値が示されているか確認するようにしたい。

またサステナブル先進国である欧米では、批判的に捉えるクリティカルシンキングが根付いている。懐疑的な目を持って、自分自身で判断するように心がけることがグリーンウォッシュを見分けるためのカギとなる。

まとめ

「エコ」に加えて「サステナブル」という言葉も広く普及するようになった昨今、関連した商品やサービスが急増。このような環境配慮などの良いイメージを、マーケティングや自社の利益のために利用するケースも多くなっている。これらが行き過ぎた結果、グリーンウォッシュの拡大につながってしまっているのだ。こうした状況が放置されることで、「サステナブル」「エシカル」などの商品がただのまやかしとなり、陳腐化してしまう恐れがある。

そうならないためにも、消費者は正しい知識を身につけて、グリーンウォッシュに加担しないことが重要だ。一方、企業側も、グリーンウォッシュの疑いをかけられない活動をすることを心掛けたい。そうすることで、企業と投資家、消費者が同じベクトルでサステナブルな行動を取ることにつながるはずだ。

参考記事

東京商工会議所「「地球にやさしい」は使えない? 「グリーンウォッシュ」規制強化へ」
中小機構「SDGsに取り組む際、「グリーンウォッシュ」に気をつけるとは具体的にどんなことに注意すればいいのでしょうか。」
日本総研「グリーン・ウォッシングをどう規制すべきか? ~EUの取り組みと日本への示唆~」
株式会社JPX総研「ESG 投資におけるデジタル債の活用に関する研究会-報告書-」

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