
アップサイクル(Upcycle)とは?
アップサイクル(Upcycle)とは、従来であれば捨てられてしまうような廃棄物に付加価値を与えて、新しい製品などに生まれ変わらせること。アップサイクルによって、廃棄物の削減、環境負荷の軽減、製品の寿命を伸ばすことにつながるなど、多くの恩恵がある。ごみに新たな価値を与えてアップグレードすることから、創造的再利用とも呼ばれている。
リサイクルとの違い
リサイクルは、大量のエネルギーを使ってごみを原料に戻したのちに再利用すること。それに対してアップサイクルは、原料に戻さずに可能な限り元の製品の素材を活かすため、より地球への負荷を軽減することができサステナブルである。
対義語はダウンサイクル
ダウンサイクルは、元々の製品よりもダウングレードする活用方法。アップサイクル同様、廃棄物を減らすことに繋がる一方、製品の価値は元のモノよりも下がる。例えば、使用済みの歯ブラシを掃除に使ったり、古着を古布や雑巾として使うことなどが考えられる。
アップサイクルの歴史

1994年10月11日にドイツのピルツという企業のレイナー・ピルツが、ドイツメディア「SALVO News」に対してアップサイクルとダウンリサイクルについて語った。これが、アップサイクルという言葉が初めて世に出たとされている時である。
ただ、「アップサイクル」という概念自体はこれよりも前から存在しており、昔は当たり前のこととして行われていた。金や漆を用いて壊れた陶器を修繕する金継ぎや、着古した木綿の衣類や布を裂いて糸に戻してから、再び新たな布を織る裂き織(さきおり)など、日本でも古くからアップサイクルの習慣はあった。
ところが、産業革命の頃から、修理するよりも買い換える方が安いなどの理由から「使い捨て」が当たり前になった。大量生産と効率が重視されるようになったため、バージンマテリアルを用いて安価な製品を大量に作るようになり、修理などを施しながら一つの物を長く愛用するという考えが薄れていったことが原因である。
しかし近年は、気候危機や資源の枯渇、世界人口の急増などへの対策として、サーキュラリティやサステナビリティへの意識が強まっている。このような潮流の変化の中で、アップサイクルが再び脚光を浴びることとなった。
注目される背景

アップサイクルが注目される背景としては、大量生産・大量消費の社会の中で、地球温暖化などの気候危機や資源の枯渇、廃棄物問題など多くの問題が浮き彫りになってきているということがある。
世界人口や所得の増加に伴い、エネルギー消費や資源消費量も増え続けている。国際エネルギー機関(IEA)によると、2040年の世界のエネルギー消費量は2014年比で約1.3倍に増加すると推測されており、石油などの燃料価格の高騰や化石燃料の枯渇が心配される。また、大量のエネルギーが消費されることで、地球温暖化の原因となる温室効果ガスが大量に排出されており、これに対しても世界中で危機感が募っている。
さらに、廃棄物問題もある。特に、食品ロス問題は深刻で、2021年7月にWWF(世界自然保護基金)と英国の小売り大手テスコが発表した報告書によると、世界では生産された食品の約40%にあたる年間25億トンもの食品が廃棄されているという。電子廃棄物も急増しており、解決が叫ばれている。「The Global E-waste Monitor 2020」によると、2019年の電子ごみの排出量は5,360万トンに及び、2030年までに7,400万トンにまで増加すると推測されている。また、ファッションロス問題もある。Global Fashion Agendaの調査によると、世界中で年間9,200万トン、約3,000億着の衣類が廃棄されているという。
このような問題に対して、持続可能な社会を目指す動きが世界中で活発になってきている。アップサイクルは、資源の利用を抑えることができる点や、廃棄物の削減につながることから、社会のサステナビリティを高めていくための取り組みとして近年注目されている。
アップサイクルのメリット

アップサイクルによって、環境面において大きく3つのメリットがある。
新たな資源を使用しない
アップサイクルは元の製品の素材や特性を生かすため、新たに資源を使わずに製品を作り出すことができる。それまでは廃棄されていた物にアイディアを加えることで、バージンマテリアルを投入することなく新たに価値を創出するため、あらゆる資源の保護に貢献できる。
エネルギー消費を削減できる
リサイクルの場合、原料に戻す際に大量のエネルギーを使うが、アップサイクルはそのようなエネルギーが発生しない。また、廃棄物を焼却する際のエネルギー消費も抑えることができるため、地球温暖化の原因である温室効果ガスの排出を抑えることができる。
廃棄物の削減につながる
これまでは捨てられていた物が新たな製品へと生まれ変わるため、廃棄物を減らすことができる。新たな製品として作り変えることで製品の寿命も延びるため、元の製品に手を加えることなく再利用するリユースと比較しても、よりサステイナブルな選択と言える。
このように、アップサイクルをすることで様々な側面から環境配慮を施すことが可能である。
アップサイクルの取り組み事例

気候変動や資源枯渇への対策となることや、新たなビジネスの契機となることから、様々な業界でアップサイクルに関する取り組みが進められている。各業界のアップサイクル事例として、以下のようなものがある。
食品業界
食品宅配サービスを提供するオイシックス・ラ・大地では、2021年7月より「Upcycle by Oisix」というアップサイクル商品のブランドを展開している。「フードロスに、新たな価値を」と掲げ、農家や食品工場で未活用だった食材をアップサイクルすることで、フードロスの削減を試みている。商品のラインナップとしては、冷凍野菜工場から出るブロッコリーの茎や漬物工場から出る大根の皮を活用したチップス、梅酒の梅を種抜きして使用したドライフルーツなどがある。2021年のサービス開始から、通算で約100トンもの食品ロス削減に貢献した。
ファッション業界
ファッションブランドBEAMSでは、衣料廃棄ロスをゼロにすることを目指して、ReBEAMS(リ・ビームス)というプロジェクトを実施している。このプロジェクトでは、経年により販売できなくなったデッドストック品をトートバッグなどの新たな商品へとアップサイクルさせる。コートやシャツなどの素材やデザインを活かし、商品は全て一点ものである。この取り組みは、ファッションロス問題に向き合う一つのアイディアとなっている。
また、スイスのバッグメーカーFREITAGは、古いトラックタープを利用してバッグを製造している。トラックタープは耐久性に優れているため、バッグに生まれ変わった後も長年使用することが可能だ。タープをリサイクルすることで、新たに素材を調達してバッグを製造する場合と比較して、CO2排出量は22%削減できると試算されている。
建設業界
長野県諏訪市を拠点に建築建材のリサイクルショップを運営するリビルディングセンタージャパンでは、「レスキュー」と呼ばれる活動を通して解体が決まった建物や空き家などから古材や古道具を引き取り、空間デザインやオーダー家具の制作、ワークショップなどに活用している。環境負荷の軽減や廃棄物の削減に繋がるだけでなく、家や道具を手放す持ち主の想いを「レスキュー」することにも一役買っている。彼らが手がけるクリエイティブ・リユースによって、古材に新たな価値が吹き込まれ、再び世の中の誰かの役に立つことになっている。
自宅でできるアップサイクル

企業だけでなく、私たちも手軽に自宅でアップサイクルを行うことができる。例えば以下のような例がある。
コーヒーかすを消臭剤にする
コーヒーを淹れたあとのかすは、下駄箱の消臭やオムツの脱臭剤などに活用することができる。コーヒーかすは、アンモニアの吸収率が活性炭の約5倍もあると言われており、トイレの臭い消しにも適している。濡れたままでも、乾かして布袋に入れて使用しても、どちらも消臭の効果が期待できる。
野菜の皮を揚げてチップスにする
野菜の皮には、中心よりも栄養が豊富に含まれていることも多い。そのため、調理の際に皮をむく場合においても、そのまま廃棄するのはもったいない。揚げたり、オーブンで焼くことで、チップスとして食べることができ、ゴミの削減につながるだけでなく、一品増やすこともできるため、まさに一石二鳥である。
玉ねぎの皮で草木染めをする
玉ねぎの皮は、鍋で煮出してこすことで染料として活用することができる。玉ねぎに含まれているケルセチンという色素のはたらきで、黄色またはオレンジ色に染色することが可能だ。少し手間はかかるが、休日の暇つぶしや子どもとの遊びにはよいかもしれない。
みかんの皮を掃除で使う
みかんの皮を煮出して作ることができる「みかんスプレー」は、キッチンまわりなどの油汚れの掃除に活用することができる。また、みかんの皮を電子レンジ内で温めることで、庫内の汚れを簡単に落とすこともできる。これは、みかんに含まれるリモネンという油に溶けやすい成分が作用するためである。
ゆずの種で化粧水をつくる
実は、ゆずの種は化粧水づくりに適している。ゆずの種のまわりには、保湿成分や、シミ・小じわを薄くするぺクチンという成分が含まれているため、美肌に効果を発揮するそうだ。作り方は、ゆずの種を焼酎やウォッカにつけて、1週間ほど冷暗所で保管するだけという簡単な工程である。
この他にも、アイディア次第でさまざまな廃棄物を生まれ変わらせることができるだろう。
まとめ
アップサイクルは、廃棄物やエネルギー消費の削減につながることから、サーキュラリティやサステナビリティを推進するという機運が高まる中で、あらゆる業界からの注目が高まっている。実際に、世界中で様々なアップサイクル製品やアイディアが出てきており、私たち消費者のエシカル消費を後押ししてくれている。
また、アップサイクルは自宅でも簡単に取り入れることができる環境配慮でもある。自由研究感覚で気軽に始めることができるアップサイクルは、多くの人がゴミ問題や環境問題に取り組む足掛かりになるかもしれない。
Edited by k.fukuda






















k.fukuda
大学で国際コミュニケーション学を専攻。これまで世界60か国をバックパッカーとして旅してきた。多様な価値観や考え方に触れ、固定観念を持たないように心がけている。関心のあるテーマは、ウェルビーイング、地方創生、多様性、食。趣味は、旅、サッカー観戦、読書、ウクレレ。( この人が書いた記事の一覧 )