“循環する服”をつくるために。日本のサステナブルファッションの今

大量生産・大量廃棄のファッションモデルが行き詰まるなか、日本でも衣服を「捨てる」から「循環させる」へと転換する動きが進みつつある。環境省・経産省による資源循環ロードマップや、繊維分野での拡大生産者責任(EPR)の検討、地域での回収・再資源化の実証事業などを手がかりに、日本のサステナブルファッションの現在地を俯瞰する。

日本の衣服循環の現状

日本では、年間およそ80万トン前後の衣類が排出されているとされている(※1)。その多くは、リユースやリサイクルに回ることなく、焼却や埋立によって処理されてきた。家庭から排出される衣類についても、分別回収の仕組みが十分に整っているとは言い難く、自治体や民間事業者による回収の取り組みは地域差が大きい。

背景には、衣類という製品特性ならではの課題がある。素材が綿・化学繊維・混紡など多岐にわたること、ボタンやファスナーなど異素材が組み合わされていること、汚れや劣化の程度が一様でないことなどが、選別や再資源化を難しくしてきた。結果として、循環は個別企業や一部の先進的な取り組みに委ねられ、社会全体の仕組みとしては十分に機能してこなかった。

こうした状況を受け、衣服の循環は「個人の意識」や「企業の努力」だけでなく、制度として設計すべき課題として認識され始めている。


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資源循環ロードマップに見る日本の衣類政策

環境省および経済産業省は、循環経済への移行を進めるため、製品分野ごとの課題と方向性を整理した「資源循環ロードマップ」を公表している。衣服・繊維分野もその対象の一つとして位置づけられ、廃棄物対策にとどまらない包括的な循環の設計が求められている。

ロードマップでは、衣服を「使用後に処理される廃棄物」ではなく、「循環を前提に設計・流通・回収される製品」として捉える視点が示されている。具体的には、製品の耐久性向上や修理のしやすさといった設計段階での工夫、素材表示や情報提供を通じた回収・選別の円滑化、回収後のリユース・再資源化ルートの確保などが論点として整理されている。

また、衣服分野では、単一素材ではない製品が多いことや、再生原料の品質・需要が安定しにくいことが指摘されており、技術開発と市場形成を並行して進める必要性も明記されている。これは、回収量を増やすだけでは循環が成立しないという認識に基づくものであり、再生素材の利用拡大や調達の仕組みづくりも政策的課題とされている。

ロードマップの特徴は、こうした課題に対して一律の規制を即座に導入するのではなく、実証事業や段階的な制度検討を通じて現実的な選択肢を探る姿勢にある。自治体や企業と連携した回収・再資源化のモデル事業を重ねながら、制度化の是非や手法を検討していく方針が示されている。

このように、資源循環ロードマップは、衣服政策における最終解を示すものではなく、日本としての「考え方の整理」と「検討の方向性」を示す設計図と位置づけられる。繊維EPRを含む今後の制度議論も、このロードマップで示された枠組みの上に積み重ねられていくことになる。


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日本における繊維EPRの位置づけ

資源循環ロードマップの中でも、注目されている論点の一つが、繊維分野におけるEPR(拡大生産者責任)である。EPRとは、製品が廃棄された後の回収や再資源化について、生産者が一定の責任を負うという考え方であり、容器包装や家電などではすでに制度化されている。

繊維分野でEPRが検討される背景には、回収やリサイクルが市場原理だけでは進みにくいという構造的課題がある。衣類は単価が低く、回収や選別にかかるコストを回収しにくいため、持続的な循環システムを構築するには制度的な後押しが必要とされてきた。

現在、日本では繊維EPRの導入そのものが決定しているわけではなく、検討段階にある。どの範囲まで生産者責任を求めるのか、自治体や消費者との役割分担をどう設計するのかなど、複数の論点が整理されつつある。重要なのは、EPRが単なる負担増ではなく、循環を前提とした産業構造への転換を促す制度として位置づけられている点だ。


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制度から見る日本のサステナブルファッション

日本のサステナブルファッションをめぐる動きは、理念や個別事例の段階から、制度設計というフェーズへと移行しつつある。資源循環ロードマップや繊維EPRの議論は、服を「どうつくるか」だけでなく、「どう社会の中で循環させるか」を問うものである。

制度はすぐに完成形をもたらすものではない。しかし、制度が方向性を示すことで、企業の取り組みや生活者の選択が重なり合い、循環の基盤が形づくられていく。日本でどんな制度づくりが進んでいるのかを知ることは、服をめぐるさまざまな動きを考える手がかりになる。

Edited by k.fukuda

注解・参考サイト

注解
※1 環境省「サステナブルファッションに関する現状と課題」

参考サイト
サステナブルファッションの推進に向けた取組|環境省
繊維産業におけるサステナビリティに関する検討会|経済産業省

本記事は、特集「物語をまとう——つくる人、着る人、つながる世界」に収録されている。布や色の奥に重なる時間や人の気配。世界とのつながりを形づくるその輪郭に、静かに目を凝らしてみたい。ほかの記事もあわせて、より多角的な視点を見つけよう。

つなぎ合わせることで生まれる。minä perhonenが紡ぐ再生のデザイン
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About the Writer
Kie Fukuda

k.fukuda

大学で国際コミュニケーション学を専攻。これまで世界60か国をバックパッカーとして旅してきた。多様な価値観や考え方に触れ、固定観念を持たないように心がけている。関心のあるテーマは、ウェルビーイング、地方創生、多様性、食。趣味は、旅、サッカー観戦、読書、ウクレレ。この人が書いた記事の一覧

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