スーツケースを持たずに石垣島をまわろう。手ぶらではじめるサステナブルツーリズム

沖縄県・石垣島では、年間約150万人の観光客が訪れる一方で、 公共交通の混雑やスーツケースの放置など、オーバーツーリズム による課題が顕在化している。こうした中、手荷物配送サービス 「RedCaps」を展開する株式会社furasucoが、石垣市や竹富町と 連携し、新たな解決策に乗り出した。

石垣島から始まる、“手ぶら旅”の実験

訪日外国人旅行者の多くは個人で自由旅行を選択し、公共交通機関を利用して国内を移動している。その際、大きな荷物の持ち運びは混雑やストレスの原因となり、観光地ではスーツケースの放置や不法投棄といった問題も発生している。こうしたオーバーツーリズムの弊害を緩和する手段として、観光客の荷物を当日中に目的地へ配送する「手ぶら観光」サービスが注目を集めている。

石垣島には年間約150万人が訪れる一方で、観光客の増加に伴い、公共交通の混雑やタクシー不足、観光地へのアクセスにおける移動ストレスなどの課題が深刻化している。こうした背景を踏まえ、「旅を、もっと身軽に、もっと自由に。」をミッションに掲げる株式会社furasucoは、沖縄県・石垣市・竹富町をはじめとする自治体や、マイクロモビリティ・貨物運送・航空などの事業者と連携。観光と移動に関する地域課題を総合的に解決するプロジェクトとして「RedCaps」をスタートした。

株式会社furasucoが提供する「RedCaps」は、石垣市役所や竹富町役場を含む官民7者連携のプロジェクトである。南ぬ島石垣空港、ユーグレナ石垣港離島ターミナル、宿泊施設を結ぶ荷物の当日配送および一時預かりサービスとして導入が始まった。

観光客は空港や港の受付カウンターで荷物を預けることで、ホテルに向かう前から観光を始められる。帰路ではホテルのチェックアウト後も手ぶらで観光を楽しみ、空港で荷物を受け取るといった利用が可能だ。

この仕組みによって、石垣島内のレンタカーやバス、フェリーなどの交通機関における混雑緩和が期待される。また、観光客の利便性・回遊性が向上することで、地域経済の活性化にも寄与すると考えられている。さらに、海水浴やシュノーケリング、カヤックなどのアクティビティを楽しむ際にも、大きな荷物の煩わしさから解放され、身体的・心理的な負担が軽減される。

本プロジェクトでは、「観光の質の向上(=手ぶら観光の普及)」と「地域への責任と共感(=ツーリストシップの実践)」の両面から、サステナブルツーリズムの構築を目指している。観光客に対しては、「ごみの持ち帰り」「野生動物への配慮」「地域ルールの遵守」などを呼びかけ、美しい自然と文化を守るための意識改革を促している。

実際の利用者からは、「到着日から身軽に動けるだけで、旅行の満足度が大きく変わった」「短い旅程でも時間を有効に使えた」「子連れ旅行にも便利だった」など、好意的な声が寄せられている。


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なぜ「手ぶら観光」がサステナブルなのか

「スーツケースを持たない観光」がもたらすメリットは、旅行者の利便性や快適さの向上だけではない。このスタイルは、環境への配慮や地域との共生といった観点からも、持続可能な観光の実現に寄与している。

航空機の運航においては、機体に搭載されるモノの重量が燃料使用量に直結する。たとえばANAでは、機内サービスで使用するカートを軽量化したことで、1機あたり約580kgの重量削減を実現。全体として年間約5,700トンの燃料削減と、25mプール約17,500杯分に相当するCO₂排出量の削減に貢献した。

このような事例から、一つひとつの重量の見直しが環境負荷の軽減に直結することが分かる。旅行者の手荷物が軽くなれば、航空機全体としての重量負担も下がり、結果的に燃料の使用量や排出ガスの抑制につながる。たとえ一人分の荷物がわずかでも、それが積み重なれば削減効果を生む可能性がある。

さらに、“手ぶら”で旅をすることで、荷物を増やしたくないという意識が働き、旅先での使い捨て用品や衣類などをその場しのぎで購入し、不要になったら捨てて帰るといった消費行動も抑制できる。荷物を減らすことは、自分にとって本当に必要なものを選び取る意識を高め、結果的に廃棄物の削減にもつながる。

このように、RedCapsの「手ぶら観光」は、単なる便利さにとどまらず、ゼロエミッションやごみの削減といった環境面での効果も期待できる「環境にやさしい旅行スタイル」としての価値を持っている。

さらに、RedCapsの導入は物流の効率化だけでなく、「持続可能な観光地づくり」というビジョンにも基づいている。その根底にあるのが、観光客が訪問先の自然や文化、住民に対して責任ある行動を促す「ツーリストシップ」の考え方だ。「ごみを持ち帰る」「野生動物を驚かせない」といった一つひとつの行動が、島の自然と文化を未来につなげる。

地域環境と地域経済の両面に配慮したサステナブルツーリズムの実現には、観光のスタイルそのものの見直しが欠かせない。本プロジェクトは、快適さと持続可能性の両立を図る新しい観光のスタンダードになり得るだろう。


オーバーツーリズム解決の切り札「ツーリストシップ」。旅行者の行動変容が生む地域との新しい関係性

身軽だから出会える、旅の自由と新たな発見

石垣島で始める「荷物のない快適な旅」は、従来の観光スタイルでは想像しづらかった自由をもたらしてくれるだろう。

重い荷物を持たずに済むことで、旅先でのフットワークが軽くなり、移動の制約が少なくなる。これまで訪れる機会が限られていた場所へも足を延ばしやすくなり、その土地ならではの体験や交流が生まれる。限られた時間内でより多くの離島や観光スポットを巡ることができ、地域の魅力をより深く、広く体感できる。

今後は「手ぶら観光」をさらに発展させ、「顧客体験の質の向上」と「地域観光の再活性化」を目的とした取り組みも計画されている。「RedCaps」の成功事例を基に、全国の観光都市への展開も予定されている。

本プロジェクトから始まる「地域と自分に優しい観光」の連鎖が全国に広がり、観光地を訪れる人・暮らす人の双方にとって心地よい環境を生み出すことで、持続可能な観光モデルの実現に向けた新たな一歩となることが期待される。

Edited by k.fukuda

参考サイト

RedCaps – 荷物同日配送サービス|RedCaps公式サイト
石垣島を手ぶら観光するなら絶対使って!新石垣空港の超便利サービス【RedCaps-石垣島】|RedCaps公式サイト
手ぶら観光とは|国土交通省
手ぶら観光で地域課題を解決!観光の新時代を切り開く『RedCaps』が石垣島から全国展開へ|PR TIMES

「石垣島 手ぶら観光」持続可能な観光の実現に向け、八重山諸島で官民7者連携プロジェクトを始動|PR TIMES
【石垣島旅行】ホテルチェックインまでの時間をどう使う?RedCapsで手ぶら観光!|RedCaps公式サイト
CO2排出量削減 CO2排出量削減に貢献~機内サービス用カートの軽量化~|ANA公式サイト

About the Writer

ともちん

大学で英文学を学び、小売・教育・製造業界を経てフリーライターに。留学や欧州ひとり旅を通じて「丁寧な暮らし」と「日本文化の価値」に触れ、その魅力を再認識。旅や地方創生、芸術、ライフスタイル分野に興味あり。言葉を通して、自尊心と幸福感を育めるような社会の実現に貢献することを目指している。
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