中国発、土にかえるロボット。電子ゴミを生まない循環の発想

中国発、土にかえるロボット。電子ゴミを生まない循環の発想

電子ゴミが世界的な環境問題となる中、中国の研究者らが開発した「土にかえるロボット」が注目を集めている。豚のゼラチンと植物性セルロースから作られており、使用後わずか8週間で土壌中に完全分解される。従来の頑丈な金属製ロボットとは正反対の発想で生まれた技術から、持続可能なテクノロジーの新たな可能性を探る。

8週間で土に還る、生分解性ロボット

中国の 西湖大学(Westlake University)の研究チームは、自然由来の素材だけで構成された「8週間で土に還るロボット」を発表した。本研究でいう「ロボット」とは、人間の操作や外部からの刺激に応じて動作する機械を指す。今回チームが開発したのは、その一例となるロボットアームとコントローラーである。

これらの素材は、綿花パルプから得たセルロースフィルムで、柔軟性を与えるグリセロールを加え、層を乾燥させることで十分な強度を確保している。また、導電性を付与した豚由来のゼラチンをセンサーとして活用し、折り紙のように折りたたまれる構造を実現。実験では、操作性や耐久性が確認されている。

さらに、最終的に屋外の深さ20センチの土中に埋めたところ、8週間以内に素材はほぼ完全に消失した。実験により、自然素材で機能性と分解性を両立できることが示され、環境調和型ロボットの実現に向けた有効な知見となった。

生分解性ロボットの特徴と可能性

生分解性とは、微生物の働きによって、水や二酸化炭素など環境中で循環する自然界で無害な物質に分解される性質を指す。

従来のロボットは、金属やプラスチックで作られ耐久性が高く長期間の利用に適する一方、廃棄後は環境負荷を残す課題がある。これに対し、生分解性ロボットは最終的に分解され土に還るため、廃棄物削減に寄与する。

特にソフトロボット(※)分野では、柔軟な動きを実現するためにゴムやゲル状の素材が利用されてきたが、近年はそれらを自然由来の生分解性素材に置き換える研究が進んでいる。

今後、耐久性や使用期間などの課題を克服し、環境調和型のソフトロボットが医療や環境モニタリングなどで活躍することが期待されている。

自然素材が支える“土に還る”ロボット

生分解性ロボット開発の課題は、使用後には自然に分解する性質と、使用に耐える強度や必要な機能を両立させる点にある。

西湖大学の研究チームが作ったロボットアームは、綿花由来のセルロースフィルムに可塑剤(柔らかさを与える添加剤)としてグリセロールを加えて柔軟性を持たせ、層を乾燥させて十分な機械的強度を確保した。さらに、導電性を付与した豚由来のゼラチンをセンサーとして組み込み、折り紙構造に折り畳むことで軽量ながら複雑な動きを可能にしている。

他にも、マックス・プランク知能システム研究所などの国際研究チームは、ゼラチン、オイル、バイオプラスチックを組み合わせて人工筋肉を開発した。電場や熱刺激を与えると収縮・膨張する性質をもち、従来同様の動作を実現しつつ、自然由来の材料で構成されている。

これらの研究では、自然環境下で数週間以内に素材が分解されることが実証済みである。


Cradle to Cradleとは 資源を再利用するモノづくりを目指す考え方

ロボット普及の影で深刻化する電子ゴミ問題

ロボットは私たちの暮らしや医療、産業に貢献する一方、その普及に伴って「電子ゴミ」という新たな課題が生まれている。ロボットも電子機器の一つであり、電子ゴミの課題と無関係ではない。そこでまず、世界で深刻化する電子ゴミの現状を見てみよう。

電子ゴミの現状

世界的に電子機器の普及が進むなか、電子ゴミ(E-waste)の量は急増している。国連がまとめた The Global E-waste Monitor 2020 によると、2019年に発生した電子廃棄物は約5,360万トン。これは一人当たりに換算すると7.3kgにのぼる。さらに2030年には7,400万トン近くに増加すると予測されている。

しかし、この膨大な電子ゴミのうち、正式に回収・リサイクルされているのはわずか17%程度にとどまる。電子ゴミには、鉛・水銀・カドミウムといった有害物質が含まれることが多く、不適切な処理や焼却により土壌・水質・大気汚染を引き起こすリスクがある。

電子機器の回路基板などの複雑な構造物は分解や分別が難しく、金属とプラスチックや電子部品が混在しているため、リサイクルコストや技術的ハードルが高い。こうした点で、従来型ロボットも電子機器と同様の問題を抱える。生分解性素材を使ったロボットであれば、電子部品以外の構造体部分は使用後に自然界で分解されるため、廃棄物として埋立てられる量を抑制できる可能性がある。

都市鉱山と資源循環

都市鉱山とは、廃棄された家電製品や電子機器に含まれる金や銀、銅、レアメタルなどの資源を都市に眠る鉱物資源と見立て、再利用を図るものである。

すでに利用している資源を循環させることで、新たな採掘による環境破壊や資源枯渇のリスクを減らすことができ、サーキュラエコノミーの実現に直結する。たとえば東京オリンピック2020では「都市鉱山から作る!みんなのメダルプロジェクト」が実施され、不要な電子機器から回収した金属がメダルへと生まれ変わった。

こうした取り組みは、リサイクル技術の高度化と回収体制の整備が不可欠である一方、製品設計の段階から資源回収を前提とした工夫が求められる。そこで注目されるのが、生分解性ロボットのような新しい発想だ。

使用後に土に還るロボットは、従来型のように複雑な分解作業を必要とせず、資源循環の効率化や廃棄物削減に貢献しうる。都市鉱山から電子部品の資源を回収し、生分解性ロボットにより新たな廃棄物を減らす——両者を組み合わせることで持続可能な資源利用が後押しされるだろう。


トランジションデザインとは

自然のサイクルに学ぶ、循環型テクノロジーのこれから

生分解性ロボットは、使用後に分解され、再び利用可能な資源として循環していく。その仕組みは、生物が死後に分解され自然に還り、他の命につながるという自然界のサイクルに似ている。この点で、バイオミミクリーの一例と捉えることもできる。

回路や電源に使用される金属や半導体は分解されにくいため、ロボット全体を完全に生分解性にするのは容易ではないが、自然のサイクルに学ぶ循環型テクノロジーへの期待は高まる。

例えば、人に代わって有害廃棄物処理に使用されるロボットが、使用後に土中に残留せずに微生物によって完全に分解されれば、廃棄物を減らし環境への負荷を低減できる。また、体内で手術を支援した医療用ロボットが、体内で異物を残さず代謝・吸収されれば、患者への負担を軽減しながら、医療廃棄物を削減することが可能だ。

これらの技術はまだ初期段階にあり、実用化にはいくつもの課題が残されているが、自然界の循環を取り入れた発想は、廃棄物問題の軽減や持続可能な社会の実現の鍵となるだろう。

Edited by k.fukuda

注解・参考サイト

注解
※ ソフトロボットとは、ゴムやゲルのような柔らかい素材で作られ、生物のようにしなやかに動くことができるロボットを指す。

参考サイト
Biodegradable origami enables closed-loop sustainable robotic systems | Science Advances
This Robot Copies Life—By Decomposing | Scientific American
Pioneering Sustainable Soft Robotics: Biodegradable Artificial Muscles for a Greener Future – Unite.AI
電子ごみ(E-waste)とは?知っておきたい3つの問題点をわかりやすく解説|Tekisetsu
The Global E-waste Monitor 2020
都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト/オリンピック・パラリンピック準備局|TMCブリーフィング

About the Writer
曽我部倫子

曽我部 倫子

大学で環境問題について広く学び、行政やNPOにて業務経験を積むなかで環境教育に長く携わる。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、未就学児や保護者を対象に自然体験を提供。またWebライターとして、環境、サステナブル、エシカル、GXなどのテーマを中心に執筆している。三姉妹の母。
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