
自己肯定感とは、良い面も悪い面も含め「ありのままの自分を受け入れる」こと。日本の子どもは精神的幸福度が低く、その背景に自己肯定感が育ちにくい環境があると指摘されている。すぐに高めるのは難しいため、理由を理解し、小さな挑戦を積み重ねたり、「自己受容」から始めたりすることが大切だ。
自己肯定感とは

自己肯定感とは「ありのままの自分を受け入れ、肯定すること」である。この「ありのまま」という部分には自分の良い面も悪い面も含まれる。
ユニセフが2020年に発表した先進国の子どもの幸福度調査(※1)において、日本は「精神的幸福度」の低さが指摘されており、その背景には思春期に自己肯定感が育ちにくい環境があると考えられている。
自己肯定感は自分の資質や能力を十分に発揮するために必要な要素の1つと捉えられており、教育現場やビジネスシーンなどで注目を集めている。
自己受容との違い
自己肯定感と似た言葉に「自己受容」がある。自己受容とは「ありのままの自分を受け入れる」ことだ。
「自分を受け入れる」という部分については共通しているが、自己肯定感は受け入れた自分を積極的に肯定するという点で異なる。つまり、自己肯定感の前段階として自己受容が存在しているのだ。
自己肯定感が低い人の特徴

自己肯定感が低い人には、大きく分けて次の3つの特徴が挙げられる。
自分にはできないと諦めやすい
自己肯定感が低い人は「自分なんて…」と自己否定をしやすく、自信のなさから一歩を踏み出すのをためらいがちだ。行動してもうまくいかないと「やっぱり無理だった」と感じ、努力を続けることが困難になる。
他人と比較してしまう
自己肯定感が低いと自分の価値を認めることが難しいため、他人との比較の中で自分の優れている部分を探し、価値を確認しようとする傾向がある。しかし昨今ではSNSの影響もあり、友人や同僚などの身近な人だけでなく、画面越しの他人と比べてしまい、劣等感や不安を抱えやすくなる。
承認欲求が強い
自分に自信がない場合、他人からの承認や評価を得ることで、ようやく安心を感じられるという人が多い。そのため、常に周りの気を引こうとしたり、自分を認めてほしいという強い承認欲求を抱きやすい。そうした気持ちから、周囲の目を気にして自分を押し殺し、「嫌と言えず何でも引き受けてしまう」といった行動にもつながる。
自己肯定感を下げてしまう背景

自己肯定感が下がってしまう背景には、周囲との関わり方や自己肯定感が下がるきっかけとなる経験、現代ならではの環境が挙げられる。
幼少期の周囲との関わりや教育の影響
自己肯定感は生まれてからおおよそ3歳までに土台が作られ、思春期ごろまでの周囲との関わりを通して育まれるとされる。そのため、幼少期に無条件に愛された感覚や自分の存在が認められた経験が少ないと自分の価値を実感しにくくなるという。
例えば、成績が良いときだけ褒められる、感情表現を「わがまま」と言われて抑えられる、兄弟姉妹と比較されるといった関わり方や評価重視の教育体制も影響する。これにより自分の欲求や感情を後回しにし、他人の期待や反応を優先してしまう。
過去の失敗や否定的な経験
過去の大きな失敗や否定された経験が心の傷として残ると「自分はダメだ」という思い込みにつながりやすい。例えば、受験や面接、仕事での挫折、人間関係のトラウマ、ありのままの自分を笑われた経験などがきっかけとなる。
その経験によって自分を守るための方法として過度に頑張ってしまう、失敗を恐れて挑戦に踏み出せないといった影響が出てくる。
SNS普及などの社会的な影響
SNSの普及により、他人の成功や幸せが常に目に入りやすい現代。常に他人の現状が見えるために比較が日常化し、必要以上に卑下しやすくなっている。同世代の結婚・転職などの投稿を見て焦ったり、「○歳までに○○すべき」という基準に縛られたりして、自信を失い、行動が空回りする負のループに陥ることもある。
自己肯定感の低さがもたらす影響

自己肯定感が低いことで、学校や職場、身近な人との人間関係においてもたらされる影響は、主に以下のようなものがある。
周囲の人に依存してしまう
自分自身の考えや判断に自信がもてないため、常に周りの人に”正しさ”を求めてしまう。他の人の意見に流され、自分を押し殺すことが習慣化されやすい。
(例)
自分から発信することを躊躇してしまう
「変に思われたらどうしよう」「自分の意見なんて誰も聞いてくれない」という考えが先行してしまい、自信をもって発言することができなくなる。意見があっても伝えられず、周囲とのコミュニケーションが希薄になりやすい。
(例)
新しい挑戦や主体的な行動ができない
失敗を極度に恐れたり、自分の能力が信用できないため、未知の領域に踏み出すのが怖くなる傾向がある。成長の機会を逃しやすく、変わることができない自分に対して、さらに落ち込んでしまうという悪循環に陥りやすい。
(例)
自己肯定感が高い人の特徴

自己肯定感の高い人は自分の弱さや失敗も含めて受け入れており、うまくいかない自分も含めて大事にできる。だからこそ、失敗を必要以上に恐れることなく前向きに捉えられるのだ。
また、自分と周囲の人を必要以上に比べることが少なく、「自分は自分」と自然に思えるため、他人の意見を尊重しながらも自分の意見を大切にできる。その結果、コミュニケーションでも素直に自分の意見を発信しやすく、人間関係において無理をすることが少ない。
さらに、「自分はどうしたいか」という軸で判断ができるため、自分の意思で動くことができる。そのため、周囲の意見や期待に流されすぎず、納得感をもって自ら行動することができる。
自己肯定感を高めるには?

自己肯定感は大人になってからでも育てられるが、子どものうちに土台ができるとその後の人生をもっとしなやかに歩むことができる。
こども家庭庁が発表した「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」(※2)では「私は、自分自身に満足している」「今の自分が好きだ」という質問に対して「そう思う」と回答した日本人の割合が約55%で、調査国のなかで最も低い割合となった。
自己肯定感を高める方法は自分で高める場合と、親として子どもに行う場合でアプローチ方法が異なる。
自分で高める方法
できたことや気持ちに目を向ける習慣をもつ
一日の終わりに日記やメモに「今日うまくいったこと」「頑張ったこと」「感じたこと」を1つでも書き出してみよう。書き出すことで客観的に自分の行動の振り返りができ、自分の良い面やその時の感情に気づきやすくなる。
自分に対する否定的な言葉を見直す
「どうせ自分なんて」といった口癖を、「自分なりにやっている」といった前向きな言い換えに意識的に変えていこう。実際に自分の声を耳から聞くことで、自分に対する前向きな感覚が思考や意識に刷り込まれやすい。
小さな挑戦を積み重ねる
いきなり大きな挑戦ではなく、小さな挑戦や変化でも成功体験は自信のもとになる。スモールステップで簡単なことから始め、「やってみた自分」を肯定する習慣をつけていこう。
子どもの自己肯定感を高める方法
結果よりも「過程」をほめる
点数や成績より「工夫したね」「頑張っていたね」と努力や工夫の過程を認める声かけが子どもにとって安心感につながる。結果だけではなく取り組みにも価値があると伝えることで、「うまくいかなくても、自分には価値がある」という感覚を育むことができる。
子どもの話を否定せずに聞く
子どもの話にすぐアドバイスや評価をせず、「そう思ったんだね」と気持ちを受け止める姿勢を意識する。気持ちを受け入れてもらえると、子どもは「自分の感情には意味がある」「ありのままの自分でいい」と感じやすくなる。
ただ存在していることに感謝を伝える
特別なことがなくても「あなたがいてくれて幸せ」「一緒にいられてうれしいよ」という言葉を伝えよう。存在そのものを肯定する言葉は、ただ存在しているだけで大切にされているという自己肯定感の土台を築いていく。
まとめ

自己肯定感の低さには背景や原因があると考えられるため、自分を責めるのではなく、まずはその理由を丁寧に理解していくことが大切である。
すぐに自己肯定感を高めるのは難しいことも多いため、小さな挑戦を積み重ねながら、焦らず向き合う姿勢が求められる。
どうしても前向きになれないときには、自分を評価することよりも、ありのままを受け入れる「自己受容」から始めることも1つの方法である。
Edited by k.fukuda
注解
(※1)ユニセフ報告書「レポートカード16」先進国の子どもの幸福度をランキング 日本の子どもに関する結果|unisef
(※2)「我が国と諸外国のこどもと若者の意識に関する調査(令和5年度)」|こども家庭庁






























水無月もえ
大学卒業後、管理栄養士免許を取得。小学校で栄養士として従事し、給食や食育分野に携わる。自分の気持ちに正直で、日々、成長できる生き方をモットーにライターとして活動。新たな発見や気づきにつながり、誰かの人生を後押しできる記事づくりを心がけている。関心がある分野は食、ライフスタイル、健康、マインドフルネス、ダイバーシティ。散歩や食べ歩き、観劇、旅行など新たな発見がある趣味が好き。( この人が書いた記事の一覧 )