不登校30万人時代。変わる日本の教育で、子どもが選ぶ多様な学びのカタチ

不登校30万人時代。変わる日本の教育で、子どもが選ぶ多様な学びのカタチ

学校に通えない、通わない子どもたちが増え続けている。不登校は誰にでも起こりうることだが、我が子や孫など身近な存在が不登校になれば不安が尽きない。大切なのは、子ども一人ひとりが安心して過ごせる場所で、自分らしく学び成長していけること。この記事では、不登校の現状や支援の選択肢を紹介しながら、大人の寄り添い方を考える。

11年連続増加。不登校児童生徒の実態

文部科学省は「不登校」を、何らかの心理的・情緒的要因などにより年間30日以上登校しなかった児童生徒で、病気や経済的理由を除くものと定義している。

令和5年度の調査によると、小中学校における不登校の児童生徒数は約29万9千人と、11年連続で増加し、過去最多を更新した。在籍する児童生徒に占める割合は3.7%にのぼる。この割合を小中学校別にみると、小学校では2.1%、中学校では6.7%であり、小学校では47人に1人、中学校では15人に1人が不登校という状況だ。また、学年が上がるにつれて不登校の割合は増えている。

かつては一部の特別なケースと見なされがちだった不登校だが、今では決して稀ではなくなった。しかし、我が子が学校に行かない選択をした場合、親がありのままの現実を受け止めて、子どもに寄り添った対応をするのは簡単ではない。

「進学や就職ができないのではないか」「社会復帰できなくなるのではないか」などと将来に不安を抱くのも無理はない。


ばら教室KANIの授業風景

不登校が増加している背景

不登校30万人時代。変わる日本の教育で、子どもが選ぶ多様な学びのカタチ

不登校が増加している背景には、さまざまな要因が複雑に絡み合っている。思春期特有の心の不安定さや人間関係の悩み、学業へのプレッシャーなどに加え、子どもそれぞれの個性も影響している。

また、「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律」(以下、教育機会確保法)の施行により、学校外での学びが法的に認められたことも、不登校を選ぶハードルを下げる要因だろう。さらに、学校に行かないことが以前ほど「特別なこと」と見なされなくなり、社会全体の認識が変化しつつあることも一因である。

以下に、不登校が増加している背景について説明する。

子ども一人ひとり違う不登校のきっかけ

不登校の原因は千差万別で、子どもの状況によってそれぞれ異なり、本人ですら「なぜ学校に行きたくないのか」を言葉でうまく説明できない場合もある。登校しようとすると腹痛が起きる、日曜の夜になると無口になるといった変化は、学校に対する不安の表れである。

文部科学省の調査では、いじめ、友人関係や教師との関係、学業不振、生活リズムの乱れ、親子関係の影響など、多岐にわたる要因が指摘されている。また、制服の感触に耐えられない、集団生活に強いストレスを感じるなど、個々の特性による影響も無視できない。

多くの場合、原因は一つではなく複雑に絡み合っており、誰にでも通用する画一的な対応策は存在しないことを理解する必要がある。

大人へと成長する思春期は心が不安定に

小学校高学年から中学にかけての思春期は、子どもから大人への移行期であり、心が不安定になりやすい時期である。身体の成長が急速に進む一方で、精神的な成熟は追いつかず、戸惑いや不安を抱きやすくなる。

親や友人とは異なる「自分だけの内面世界」に気づき始め、理想の自分と現実の自分とのギャップに悩むことも多い。自らの価値観や生き方を模索しはじめる時期であり、周囲との関係にも大きな意味を見出すようになる。

特に友人関係に敏感になり、その評価を強く意識する反面、他者との関わりを避けたがる傾向もある。また、親への反発やコミュニケーションの希薄化も見られ、家庭内の関係性にも揺らぎが生じやすい。こうした多面的な葛藤が、学校生活への不安やストレスとなって現れることも少なくない。

法律が後押しする新しい教育のカタチ

不登校が増加している背景の一つに、従来の学校以外にも多様な学びの場が選択肢として広がったことが挙げられる。2016年に公布された「教育機会確保法」では、不登校児童生徒に対し学校外での多様な学習機会の重要性が明記され、個々の事情に応じた支援の必要性が示された。

同法では、子どもたちが自分の進路を主体的に考えられるよう後押しし、子どもたちや保護者の意思を大切にしながら民間機関とも連携して一人一人に合った支援をすることを掲げている。

具体的には、学校におけるスクールカウンセラーやソーシャルワーカーによる支援体制の整備や夜間中学の設置促進を図るとしている。

こうした取り組みの中で、「学校に行かない」という選択が特別視されず、子ども自身の意思に基づいた柔軟な学び方が少しずつ社会に認められつつある。


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不登校の子どもを支える制度

不登校30万人時代。変わる日本の教育で、子どもが選ぶ多様な学びのカタチ

不登校の子どもを支えるためには、単に「登校させる」ことを目標とするのではなく、子どもが自らの進路を主体的に考え、社会的に自立できるようになるための支援が必要だ。

不登校の期間は、心身の回復や自己理解を深める大切な時間でもあり、必ずしも否定的に捉えるべきではない。一方で、学業の遅れや進路選択の難しさ、将来的な社会参加への不安など、乗り越えるべき課題も多い。

ここでは、既存の教育の枠組みでは対応しきれない子どもたちのために、学習の機会を提供する制度などについて紹介する。

校内教育支援センター

不登校の子どもを支える制度の一つに、「校内教育支援センター(通称:スペシャルサポートルームなど)」がある。これは、教室に入りづらい子どものために学校内に設けられた居場所であり、不登校の未然防止や登校復帰支援を目的とする。

空き教室などを利用し、パーテーションで区切った個別学習スペースや、安心して会話ができるエリアなどが整備され、環境面・心理面の両方から「居場所づくり」が行われている。

活動内容や登下校時間の自己決定を尊重することで、子どもが自分の意思で学びを選ぶ機会を提供している点も特徴である。自分のペースで安心して過ごせる空間として、不登校を未然に防止するとともに、不登校からの復帰を後押ししている。

不登校特例校

不登校特例校とは、通常の教育課程の基準にとらわれず、不登校児童生徒の実態に配慮した特別な教育課程を編成して教育を行うことが認められた学校である。

個別の実情に応じた柔軟なカリキュラムを編成でき、少人数制指導や習熟度別指導、家庭訪問、保護者支援、校外学習の活用など多様な支援が行われる。

対象となるのは年間30日以上の欠席があるなど不登校の傾向が認められる児童生徒である。従来の学校教育に馴染みにくい子どもたちに対し、自分に合った学びのスタイルで学ぶことを可能にする制度といえる。

2025年7月現在、小中学校・高校を合わせて全国で58校が指定されている。

都立の特別支援校

東京都には、不登校や中途退学などを経験した生徒を支援する「チャレンジスクール」や「エンカレッジスクール」といった都立高校がある。

チャレンジスクールは、昼・夜・午後の時間帯から通学時間を選べ、学力検査や調査書ではなく意欲を重視した入試が特徴だ。基礎学習に加え職業系の科目も選択でき、学校外の学修の単位認定により3年間での卒業も可能である。カウンセリングなど心のケアにも力を入れている。

一方、エンカレッジスクールは全日制で、30分授業や少人数制、習熟度別授業などを通じて「分かる授業」を実施。二人担任制できめ細かな指導が行われ、体験学習やキャリア教育も重視されている。

どちらも社会につながる学びを通し、生徒のやる気を育みながら無理なく高校生活を送れるよう支援する取り組みである。

フリースクール

フリースクールでは、学校教育法で定められた学校とは異なり、決まったカリキュラムや出席の義務がなく、子ども一人ひとりの興味やペースに合わせた学びが可能だ。

運営形態はNPOや民間団体が中心で、学習支援のほか、自然体験や芸術活動、カウンセリングなど多様なプログラムが提供されている。

フリースクールは公的な学校ではないため、在籍している学校(小学校、中学校、高校)の籍を置いたまま、並行して通うことになる。フリースクールへの通学は在籍校で「出席扱い」と認められる場合もあり、文部科学省も一定の条件下で支援を進めている。

不登校の子どもにとって、負担感なく自信を取り戻す大切な選択肢のひとつであり、社会とのつながりを保てる場として注目されている。

通信制高校

通信制高校では、主に自宅での学習を中心とし、定期的に登校する「スクーリング」やレポート提出、テストなどで単位を取得する。

自分のペースで学べるため、学習の遅れを取り戻したい生徒や、働きながら学ぶ生徒にも適している。学校によってはオンライン授業や個別指導、専門的なコース(芸術・IT・福祉など)を設けているところもあり、進学や就職に向けた支援も充実している。

また、対人関係に不安がある生徒へのサポート体制が整っている学校も多く、安心して学ぶ環境が整っている。不登校やさまざまな事情で全日制高校への通学が難しい生徒を支える制度のひとつである。


スケープゴート

子どもの選択を信じて支える

不登校は「問題」ではなく、子どもが今を生きるために選んだ選択肢の一つ。親にとっては不安もあるかもしれないが、子どもが自分のペースで成長していく過程であることを理解し、否定せず、ありのままを受け入れる姿勢が求められる。

そのためには、学歴や通学へのこだわりといった大人の価値観を見直す勇気も必要であり、子どもを信じ、子ども自身の選択を尊重することで、親子の信頼関係が育まれていく。

また、子どもにとって信頼できる人が家庭以外にもいることは大きな支えになる。学校だけにこだわらず、フリースクール、支援機関など、多様な選択肢やつながりを持つことで、子どもが自分らしく過ごせる居場所が見つかるだろう。

悩みを抱え込むよりも、まずは学校のスクールカウンセラー、市町村の教育支援センターなどに相談してみることをお勧めしたい。

社会に出るまでの道のりに、決まった正解はない。一人ひとりに合ったペースと環境で学び、成長していくことが、自分らしい人生を切り拓く力になるはずだ。すべての子どもたちが、自分らしい未来を描けるよう、社会も変わりつつある。

Edited by k.fukuda

参考サイト

不登校児童生徒への支援に対する基本的な考え方
児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果の概要
別添1 義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律(概要)
不登校児童生徒への支援について

About the Writer
曽我部倫子

曽我部 倫子

大学で環境問題について広く学び、行政やNPOにて業務経験を積むなかで環境教育に長く携わる。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、未就学児や保護者を対象に自然体験を提供。またWebライターとして、環境、サステナブル、エシカル、GXなどのテーマを中心に執筆している。三姉妹の母。
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