ソーシャルグッド(Social Good)とは?
ソーシャルグッドとは、社会全体に良い影響を与える取り組みや製品、サービスの総称のことを指す。ソーシャルグッドに明確な基準はなく、社会に対してプラスの影響をもたらすものはソーシャルグッドな取り組みとして認識され、「ソーシャルグッドな〇〇」と表現されることも多い。
近年、多くの企業がCSR(社会的責任)やCSV(共有価値の創造)の取り組みを重要視しており、それに伴い、社会へのインパクトを考慮したソーシャルグッドの概念を経営に取り入れる動きも活発になってきている。
このような動きが強まることで、環境問題や人種差別、貧困などさまざまな社会問題の解決の糸口につながることが期待される。
注目される背景

2010年頃にソーシャルグッドという言葉が誕生して以降、欧米を中心に年々注目が高まっている。このように注目を集める背景として、主に次のような要因がある。
環境問題の深刻化
産業革命以降急速に進む地球温暖化や海洋汚染、森林破壊など、地球環境は深刻な状況に陥っている。山火事や猛暑などの異常気象により、人体や生物へも甚大な影響を与えているため、世界規模で喫緊の課題としての認識が強まる。そのような状況の中、地球環境への配慮をした商品や取り組みに多くの関心が向いている。
SDGs達成への共通認識
2015年のパリ協定で採択されたSDGsは、健全な社会を築くために必要な17つのゴールから成る世界共通の目標である。日本でも9割を超える人がSDGsを認知しており、社会貢献という概念は多くの人の意識に定着してきている。このSDGsはソーシャルグッドな取り組みとも密接に関わっているため、SDGsへの関心の高まりは、ソーシャルグッドな取り組みに対しての興味の高まりにもつながっている。
個人の意識の変化
地球環境への危機感や社会からの要請により、消費者となる個人の意識も変わり始めている。特に、ミレニアル世代やZ世代など若い世代は環境意識や社会貢献への関心が高く、値段や性能以外の価値も商品や企業に求める傾向がある。そのため、企業もこのような消費者のトレンドを反映させ、ソーシャルグッドを推進し始めている。
ソーシャルグッドの広まりと現状
ソーシャルグッドという概念は、2010年頃から欧米を中心に広まり始め、トレンドとなっている。特に、Z世代にとっては、消費の場面で非常に重要な指標でもある。
これは、社会変革の担い手が大きな組織から個人や民間レベルに移行したことも、ソーシャルグッドという言葉がトレンドと成り得た一つの理由として挙げられる。
以前は、多くの人的・経済的リソースを持つ政府や国際NGOのみが社会変革の主体と認識されていたが、近年は社会変革の担い手として個人も力を持ち始めている。SNSでは社会問題解決に向けたアイディアを簡単に発信し共有できるため、以前より声をあげることが容易になってきているのだ。
日本ではまだ馴染みが薄い言葉ではあるが、ソーシャルグッドと関連性の高いSDGsは幅広い世代に浸透している。つまり、ソーシャルグッドの概念自体は日本においても広く認識されているということだ。そのような中、社会貢献に対しての意識を持つ人は増加傾向にある。一方で、Sustainable Development Report 2023によると日本は以下の項目において達成率が低いという結果が出た。
- goal5 ジェンダー平等(女性議員の数、男女の賃金格差)
- goal12 ゴミ問題(プラスチックごみの排出、電子廃棄物)
- goal13気候変動(化石燃料の燃焼等によるCO2排出)
- goal14海の生物多様性(海水の汚染、魚の乱獲)
- goal15陸の生物多様性(絶滅危惧種の数、天然水の確保)
これまで効果をあげている取り組みに加えて、ジェンダー平等や気候変動への対策などもより一層進めていく必要があるようだ。
ソーシャルグッドに関する企業の取り組み

近年、徐々に普及してきているソーシャルグッドという考え方だが、ビジネスにおいては、どのように捉え取り入れるべきなのか。企業の活動にソーシャルグッドな要素を取り入れる必要性と取り組み事例を見ていく。
CSRとCSVとの関係
ビジネスにおけるソーシャルグッドな取り組みと関連する概念として、CSR(社会的責任)とCSV(共有価値の創造)がある。ソーシャルグッドと比較すると、これらの単語は日本でも広く普及しており、企業による取り組みも増えてきている。では、CSRとCSVはそれぞれどのような概念なのか、また、ソーシャルグッドとの関連も見ていきたい。
まずCSRは、Corporate Social Resposibilityの略称で企業の社会的責任のことを指す。これは、自社の事業とは別に地域への貢献や環境保全活動に取り組むことで、社会貢献を行っていくという考え方だ。つまり、社会に対しての取り組みと自社のビジネスや利益とは切り離している。社会に対してポジティブな影響を与えるという点では、ソーシャルグッドと重なる部分がある。
一方CSVは、Creating Shared Valueの略称で共有価値の創造のことを指す。2010年にアメリカの経営学者マイケル E. ポーター教授が提唱した考え方で、企業の収益と社会課題の解決を同時に目指すものだ。CSRと異なり、事業の進行と社会問題の解決を決して分けない点がポイントとなる。この概念が登場したのと同時期に、ソーシャルグッドという考え方も普及し始めた。そのため、企業活動においてソーシャルグッドという単語を用いる際は、CSVの文脈に沿ったものと捉えることがより適していると言えそうだ。
企業がソーシャルグッドを推進する意義
近年、企業がソーシャルグッドな経営や商品・サービスづくりをする必要性が高まっている。しかし、利益を最大化する企業の動きと社会のためによい行いをすることは、時として離反することもあり、中小企業などではソーシャルグッドを進めることに二の足を踏んでいるかもしれない。
そこで、企業がソーシャルグッドを推進する意義を3項目に分けて確認していく。
ビジネスモデルの拡大
サステナビリティや社会的責任に焦点をあてることで、自社のビジネスモデルが拡大し、ソーシャルグッドを促進するためのより多くの事業を創出することにもつながる。
従業員のモチベーション向上
従業員がその仕事に対して自らの努力や情熱を投資する価値があるとみなすことで、仕事に対するモチベーションが高まり、同時に会社の生産性やイノベーション、成長にもつながる。また、従業員と目指すべきゴールを共有することで、会社に対してのロイヤリティを高め、コミュニティ内の絆やつながりを強める作用もある。
会社のブランド価値を高める
ソーシャルグッドな取り組みを行うことで会社のイメージが向上するだけでなく、社内に明確な目的意義や情熱をもたらす。また、会社がブランドやアイデンティティを構築、維持することにもなる。
このように、ソーシャルグッドの考えを経営に取り入れることは、社会に対してプラスの影響を与えるだけでなく、自社内にも多くの恩恵をもたらすことにつながる。
企業の取り組み事例
社会や地球環境に対してポジティブな影響を与えるだけでなく、企業自身の成長や従業員の働きがいにもつながるソーシャルグッドに関して、日本国内でも多くの企業が注目し取り組み始めている。その中でも、次の3つの企業はビジネスの中核にソーシャルグッドの概念を置き事業を行っている。
株式会社ボーダレスジャパン
「より良い社会を築いていくこと」を使命としているボーダレスジャパンは、貧困、差別・偏見、環境問題など、様々な社会問題解決につながるソーシャルビジネスを創出する。ボーダレスジャパン社内から社会起業家を生み、事業部ではなくそれぞれの会社として独立するサポートを行う。それぞれの会社の横のつながりのサポートや各社の余剰利益を共通のポケットに入れて、次のソーシャルビジネスの原資とする仕組みを整えている。これまで、教育、途上国支援、地方創生など様々分野で、国内外で30以上のソーシャルビジネスを展開。
株式会社良品計画
社会問題に対して多角的な取り組みを行う無印良品は、2018年ソーシャルグッド事業部を発足させた。地域の活性化を念頭に置いた新規事業の担当部署として立ち上げ、高齢化やそれに伴う中心市街の空洞化などの問題を抱えている地方都市での拠点づくりなどを行う。
例えば新潟県直江津市では、地域の特産品を販売する市場や地元の食材を用いたメニューを取り扱う食堂の運営を通じて、地域住民にとって「くらしのまんなか」となるような場所を提供する。
ソーシャルグッド事業部では、事業の収益性を考えると同時に地域へのインパクトを1つの評価ポイントとしており、地域のことを第一に考えることを促している。
株式会社CAMPFIRE
社会問題と向き合う人のためのクラウドファンディングプラットフォームGood Morningを運営する。このサービスは、「誰もが社会変革の担い手になれる舞台をつくる」をミッションに掲げ、クラウドファンディングの実行者および支援者として社会変革の担い手を増やしていくことを目指している。
社会を変えようと思った人が、仲間やお金を集めて前進していく行程を一貫してサポートし、社会を変革する制度や文化の構築を後押しする。
社会のために私たちができること
ソーシャルグッドな取り組みが民間主体になってきた中、企業だけでなく個人レベルでも社会に対してよい行いをしたいと考える人が増えてきている。
社会のための行動というと、とても壮大に聞こえるかもしれないが、日常のささいなことから社会貢献は可能だ。例えば、以下のような取り組みが挙げられる。
ボランティアに参加する
被災地や発展途上国での支援活動やゴミ拾い、老人ホームでの交流活動など、国内外でさまざまなボランティア活動がある。特別な知識や経験が無い場合でも参加できる活動も多いため、手軽に始めることができるソーシャルグッドなアクションなのではないだろうか。また、親子や友達と一緒に参加することで、社会に対してよい行いをしながら自らも有意義な時間を過ごすことができるかもしれない。
フェアトレード商品の購入
フェアトレード商品を購入することも社会貢献の一つだ。代表的な商品としては、コーヒー、チョコレート、バナナ、コットン製品などがあり、フェアトレード認証ラベルが目印となっている。これらは発展途上国の生産者などに、適正な価格で継続的に取引を行ったうえで消費者のもとまで届く。そのため、フェアトレード商品を購入することは、生産者の生活への配慮にもつながる立派なソーシャルグッドな取り組みである。
寄付をする
社会課題に対しての取り組みを積極的に行うNPOやNGOなどへの寄付も有効なアクションだ。NPOなどの非営利組織は寄付金を重要な財源としているため、より多くの寄付金が集まることで取り組みのスケールをより大きくすることができる。日本において寄付はまだ馴染みが薄いが、オンラインで少額から寄付することも出来るため、多くの人がイメージするよりもハードルは低いのではないだろうか。また、認定NPO法人などへの寄付によって税額が控除されるといった制度もある。
この他にも、食品ロスの削減や脱プラスチックの取り組み、献血なども私たちができるソーシャルグッドな取り組みとして挙げられる。たとえ小さなことでも、多くの人が取り組むことで社会に対して大きな影響を与えることになる。また、利他的行動は幸福度を高めるという研究もあるように、社会全体のことを考えて行動することは、私たち自身の幸福や満足感にもつながるかもしれない。
今後の動向
欧米諸国ではすでにスタンダードとなっているソーシャルグッドだが、日本ではまだ耳慣れない言葉ではある。ただ、「SDGs」「社会貢献」などという言葉は社会に浸透しており、ソーシャルグッドの概念自体は理解しやすいものといえる。
そのため、今後は日本でもZ世代を中心に「ソーシャルグッド」が消費行動の軸となり、企業もそれに呼応する形でソーシャルグッドな取り組みや経営を推進していくことが予想される。このような考えが当たり前になることで、よりよい社会、よりよい世界、そして私たち自身もよりよい個人となるのではないだろうか。
【参考記事】
Social Good: Definition, Benefits, Examples |Investopedia
Sustainable Development Report 2023
無印良品、ソーシャルグッド事業部は何をしているのか|日本経済新聞
ボーダレス・ジャパン
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