エコツーリズムとは?定義や注目される背景、取り組み事例を紹介

エコツーリズムとは?定義や注目される背景、取り組み事例を紹介

エコツーリズムとは

エコツーリズムとは、ある地域における自然や歴史などを学ぶことで、環境保全に繋げる観光のことである。環境省の定義によると、エコツーリズムの概念は「自然環境や歴史文化を対象とし、それらを体験し、学ぶとともに、対象となる地域の自然環境や歴史文化の保全に責任を持つ観光のありかた」とされている。

旅の目的は人によって様々だが、ほとんどの人は日常から離れ、旅行先の地域のグルメを堪能したり、アクティビティを楽しんだりする「観光」をメインとしているだろう。

そんな観光の目的を「環境保全」とするのがエコツーリズムである。その地域の自然の成り立ちや歴史、文化を深く学ぶ体験型の観光で、地域を守ることに繋がっていくものだ。エコツーリズムを実現するには、旅行者や旅行業者だけではなく、地域の住民や行政、企業の協力がとても重要である。

エコツーリズムによって、旅行者がその地域を尊重するだけでなく、地域住民が自分たちの地域の価値について再認識し、活性化していくことが期待されている。地域の活性化が成功すれば、新たな雇用を生み出すことも考えられるのだ。

元々は、発展途上国の資金調達として考えられた概念だが、先進国でもこの考え方が重要視されるようになり、これを受けて国連は2002年をエコツーリズム年とした。

グリーンツーリズムとの違い

エコツーリズムが環境省の推進であるのに対し、農林水産省が推進しているのがグリーンツーリズムだ。これは、滞在先で農作業や漁業体験を楽しみ、地域住民との交流を図る観光のあり方である。

その地域を尊重し、地域を守るという点ではエコツーリズムと同じだが、グリーンツーリズムの大きな特徴は、都市住民に地元の人との交流を提供し、農漁業体験を通して農山漁村を活性化させることにある。それにより、新たな産業が生まれることも期待されている。

エコツーリズムの歴史

先述のとおり、元々エコツーリズムは発展途上国における産業転換から生まれたものだ。それまでの途上国の経済を支えてきた農業にかわり、その土地にある風景や自然資源を生かした観光振興を図ることで観光客を呼び、経済状況を向上させるために考えられた。

エコツーリズムが初めて提唱されたのは、1982年のIUCN(国際自然保護連合)での会議と言われている。「第3回世界国立公園会議」の議題に取り上げられ、「自然保護の資金調達として有効である」とされた。

1996年には、オーストラリアが国として初めてエコツーリズム認証制度を導入。2002年にはカナダで「世界エコツーリズム・サミット」が開催されている。

日本では、1993年に屋久島(鹿児島県)と白神山地(青森、秋田両県)が世界自然遺産に登録されたことで、自然資源の観光が人気になったことを契機に、民間事業者によるエコツーリズムの取り組みが見られるようになる。その後、2007年には環境省によってエコツーリズム推進法が成立、2008年に施行されている。

この法律では、「自然環境の保全」「観光振興」「地域振興」「環境教育の場としての活用」の4つを目的としている。

エコツーリズムが注目される背景

エコツーリズムが注目される背景

エコツーリズムが注目されるようになったのは、近年SDGsをはじめとして様々な取り組みによって、環境問題への意識が高まってきていることが大きな理由だ。

これまで多くの日本人にとって、環境問題はどこか遠くの国の出来事のように感じている風潮があった。しかし近年、大型化する自然災害や異常気象、物価高騰などによって、自らの生活に環境問題が大きく関わっていることに気づいた人が現れはじめている。

また、学校での学習時間が増えたり企業で取り組んだりと、人々が環境問題に触れる機会が増えたことも理由の一つと言えるだろう。

特に昨今はインバウンドの影響もあり、観光地でのゴミ問題や交通渋滞、騒音被害など、旅行者による振る舞いが問題視されることが多く、観光において責任ある行動を求められることが多い。

これらの問題を踏まえると、「地域を守る」というエコツーリズムは、これからの観光のあり方として大きな主軸になるといえるだろう。

エコツーリズムの取り組み事例

エコツーリズムの取り組み事例

エコツーリズムの取り組みは、各地域が様々な工夫を凝らして行われている。日本での事例を一部紹介しよう。

鹿児島県屋久島

屋久島は、1993年に日本で初めて世界自然遺産に登録されており、この豊かな自然を後世に受け継いでいくため、様々な事業者によってツアーが開催されている。(*1)

ガイドは実に200人以上もいるとされるが、屋久島のガイドには登録・認定制度があり、縄文杉登山、ウミガメの観察など、山岳部や川、海で行われる多種多様なツアーを安全に楽しむことができる。

高知県黒潮町

環境省が毎年開催している「エコツーリズム大賞(*2)」において、2023年度の大賞となったのが高知県の黒潮町だ。4kmの砂浜を「美術館」として、エコツアーをはじめ、アートイベント、環境教育、ホエールウォッチングなどを実施。これらの企画や開催などエコツーリズムの推進を、3団体で取り組んでいる。

近年は、壮大な自然だけではなく、恐ろしさを伝えるための防災学習プログラムにも力を入れているのが大きな特徴といえる。

埼玉県飯能市

埼玉県飯能市は、2004年に環境省の「エコツーリズム推進モデル地区」(*3)に指定され、2009年には国内で初めてエコツーリズム推進全体構想が認定された自治体だ。

都心から50km圏内でありながら、まちの75%を森林が占めている飯能市は、里地里山の豊かな自然との暮らしを生かしたツアーが特徴だ。「人と人とのふれあい」と「体験」を重視しており、木の端材を使った家具づくり、うどん作り体験、入間川リバートレッキングなどが楽しめる。


秋のお散歩マーケット

エコツーリズムの課題点

エコツーリズムの課題点

近年は、オーバーツーリズムなどの観光地問題も各地で多発しているが、エコツーリズム特有の課題点はどのようなものだろうか。

地域の受け入れ体制

エコツーリズムを楽しんでもらうためには、地域の受け入れ体制がとても重要になる。例えばエコツーリズム推進法では、自然保護のために罰則を伴うルールを制定することができる。しかし、あまりにも厳しすぎるルールにしてしまうと、地域側と旅行者の双方とも楽しむことができない可能性も生まれる。

そのため、豊富な知識と経験を持つツアーガイドが観光や体験の中で、遵守のボーダーラインを旅行者に伝えていくことが望まれる。

ツアーガイドの高齢化

先述の通り、エコツーリズムを成立させるには質の良いツアーガイドの存在が不可欠だが、各地でツアーガイドの高齢化や後継者不足に悩まされているという。しかし、地域も予算の都合でツアーガイドを安定的に雇用することが難しいため、若い人材を確保、育成していくことが大きな課題となっているのだ。

まとめ

交通網の発達によって、私たちは世界中どこへでも旅行することが可能になった。観光地となった地域の中には、多くの経済効果を生み出しているところもある。しかしその一方、観光資源を持たない地域や、流行が去って衰退した観光地なども存在する。

そこで活用されるのが、エコツーリズムである。自然を観光資源としながら、同時に地域の自然と文化の保全を目的としたエコツーリズムは、環境問題の観点や地方創生の観点から見ても、世界で最も注目されている観光のあり方だ。

エコツーリズムでビジネスチャンスが増えれば地域は活性化し、旅行者にとっても大きな学びとなる。まさに相互利益を生むことができるのだ。

ときには日常から離れ、エコツーリズムで自然や文化に触れながら、心を満たしてみてはいかがだろうか。

Edited by s.akiyoshi

注解・参考サイト

注解
*1 屋久島エコツーリズムの体系_世界遺産 屋久島_屋久島世界遺産センター|環境省
*2 第19回エコツーリズム大賞|一般社団法人日本エコツーリズム協会
*3 さあ楽しもうエコツーリズム!|環境省

参考サイト
エコツーリズムとは|エコツーリズムのススメ|環境省
エコツーリズムの歴史|エコツーリズムのススメ|環境省
エコツーリズムに関する国内外の取組みについて|環境省

About the Writer
秋吉紗花

秋吉 紗花

大学では日本文学を専攻し、常々「人が善く生きるとは何か」について考えている。哲学、歴史を学ぶことが好き。食べることも大好きで、一次産業や食品ロス問題にも関心を持つ。さまざまな事例から、現代を生きるヒントを見出せるような記事を執筆していきたい。この人が書いた記事の一覧

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