Ally(アライ)とは?
Ally(アライ)とは、本来「味方」を意味する言葉だ。そこから派生して、マイノリティの当事者ではないけれど、マイノリティの権利や平等を支持し、時にはマイノリティが直面する問題に共感を示し、積極的にサポートを提供する人々を指すようになった。
彼らは正式にはストレートアライと呼ばれる。共感することにとどまらず、性的マイノリティの人々の社会的な地位向上やジェンダー平等に向けて、積極的に運動を牽引したり協力することが特徴だ。
LGBTQ+とは?
Ally(アライ)の具体的なアクションを紹介する前に、まずは、LGBTQ+とは何か、について解説していく。
LGBTQ+とは、性的指向および性自認に関して、多様なアイデンティティを持つセクシャル・マイノリティの総称だ。
L(Lesbian、レズビアン)
Lはレズビアン、つまり、女性の同性愛者を指す。性自認が女性で、女性に対して恋愛感情や性的な魅力を感じる人をレズビアン、またビアンと呼ぶ。
レズビアンの中には、自身のことをレズと呼ぶ人もいるが、レズというのは蔑称であり、当事者以外が使うことは相応しくない。黒人ラッパーが、自身のことをニガと言うことがあるが、黒人以外の人が使うNワード(ニガなどの黒人差別が原因できた蔑称)を使うことは差別的だとされているのと同じだ。
差別されてきた人が、蔑称を自分たちで自認することで、その差別用語の意味を変えようとする試みは、さまざまな文脈でなされてきた。例えば、女性に対する蔑称であるビッチという言葉があるが、この言葉を女性自身が「強い女性」「媚びない女性」の文脈で使い、ビッチという意味に本来付与されていた蔑むニュアンスを変えていく、という表現がある。
レズビアンが自身のことを、蔑称だった“レズ”を使って表現するのは、こういった意味合いもあるのだが、非当事者が使うと別のニュアンス(単なる蔑称)になるので、使用してはならない。
G(Gay、ゲイ)
LGBTQ+のGは、ゲイを意味する。主に男性同性愛者を指す。しかし、場合によってはゲイ=同性愛者、という文脈で使われることもある。そのため、文脈によってはゲイに、女性同性愛者を含むこともある。
ゲイは、LGBTQ+というマイノリティのなかで、最も表象されやすいセクシャル・マイノリティだ。例えば、同性愛を扱った映画やドラマなどは圧倒的に男性同性愛者のゲイを扱ったものが多く、レズビアンは少数派だ。
LGBTQ+とAlly(アライ)のためのフェスティバルであるレインボープライドでは、女装したゲイ男性が表に出ることが多い。LGBTQ+のいうマイノリティのなかで、ゲイに権力・発言権が偏っているため、レズビアンは、セクシャル・マイノリティの中でも、さらに周縁に押しやられている、というケースも多い。
これは、異性愛者の世界と同様に、男性に権力が偏っているからであり、セクシャル・マイノリティの世界でも完全には男女平等が実現されていないことが一因である。
B(Bisexual、バイセクシャル)
LGBTQ+のBは、両性愛者(バイセクシャル)を指す。バイセクシャルとは、同性と異性の両方に対して恋愛感情や性的な魅力を感じる性的嗜好のことだ。
バイセクシャルの中には、「どちらかというと女が好きだけど、両方OK」「どちらかというと男が好きだけど、女にときめくこともある」と、どちらかに偏っている人も多い。
これまで、ゲイ・コミュニティでは、バイセクシャルだと明言することを避ける人は多かった。なぜなら、「いざとなったら異性の方に行ってしまうのでは」「逃げ道を用意している」と思われてしまう傾向があったからだ。
しかし近年、若いゲイの中には、そういった忖度なしに、堂々とバイセクシャルを公言する人も増えてきている。
T(Transgender、トランスジェンダー)
LGBTQ+のTはトランスジェンダーを指す。トランスジェンダーとは自認する性別が、生まれ持った性別とは異なると感じる人々を指す。トランスジェンダーには、性別移行(ホルモン治療・手術)をする人もいれば、性別移行を望まない人もいる。
男性から女性に性別移行をした人は、MtF(Male to Female)と呼ばれ、女性から男性に性別移行した方は、FtM(Female to Male)と呼ばれる。
Q(Queer/Questioning、クィア/クエッショニング)
LGBTQ+のQは、Queer(クイア)またはQuestioning(クエッショニング)を指す。
クイアは、男女二元論の性別や異性愛の性的指向の枠に収まらない人々の総称であり、かつては蔑称だった。だが今は、前述した「蔑称をマイノリティ当事者が使うことで、蔑称の意味を変えていく」という文脈で、クイアの当事者がクイアを自認するようになっている。
クイアにはさまざまな人がいる。例えば、恋愛対象や性的対象は性別を問わない、という人がいる。こういった人をパンセクシャルと呼ぶ。バイセクシャルとの違いは、性別で人を見ておらず、例えば、ノンバイナリー(男性でも女性でもない、中性だと感じる人。男女という性別二元論に違和感を持ち、どちらでもないと感じる人。性別を規定されるのを望まない人)も、性的対象になりえる。
クエッショニングは、自分の性的指向や性自認について疑問(クエッション)がある人のことを指す。自分は男が好きなのか、女が好きなのか、まだわからない、という人や、自分は男として生まれたけれど、性別に違和感があるが、女とまでは言い切れない人など、「既存の枠組みに違和感があるが、まだ答えが見つかっていない」人がクエッショニングに入る。
+(Plus)
LGBTQ+のプラスは、LGBTQに含まれないその他の性的指向や性自認を持つ人々を包括している。
これには、パンセクシュアル、アセクシュアル、ノンバイナリーなどのアイデンティティが含まれる、という説もあるが、パンセクシャル、アセクシュアル、ノンバイナリーなどは、Qのクイアに含まれる、とする人もいる。
諸説あるが、+をつけている意味としては、「現在定義されているセクシャル・マイノリティ以外も取りこぼさない、包括的な概念である」ということだ。
Allyとして具体的にできること

次に、LGBTQ+のAllyとして、具体的にできることを解説していく。
LGBTQ+のAlly としてできること1 どういった差別があるのか学ぶ
Allyは、LGBTQ+コミュニティの歴史や文化、権利について学び、他の人々にもその知識を広める役割を担う。
どういった差別があるのか、差別を防ぐにはどういった知識が必要か、を学ぶことはAllyにとって大切なことだ。
例えば、2015年に一橋大学の大学院において、アウティングを苦に大学院生の男性Aさんが自殺した事件があった。アウティングとは、他人の性的指向を同意なく他の人に開示することだ。Aさんは、ゲイであることを秘密にして生活していたが、友人Bさんにゲイであることをアウティングされてしまったのだ。
もし、Bさんがアウティングという言葉を知っており、アウティングが当事者にどれだけの精神的苦痛をもたらすかを理解していれば、アウティングは行われなかっただろう。Bさんはゲイの当事者ではなかったために、アウティングがどういった意味を持つか、理解することができなかったのだ。当事者でなければ体験できない差別や心理を知るためには、Allyになって学ぶしかない。
Allyになることは、セクシャル・マイノリティの人々を傷つけないために重要であるだけではなく、自分自身が加害者にならないために自己防衛の手段でもあるのだ。
LGBTQ+のAlly としてできること2 ヘイトに対抗する
LGBTQ+の人たちは、ネット上でセクシャル・マイノリティに対するヘイト投稿を見ることも少なくない。ともすれば、現実世界にも、セクシャル・マイノリティのヘイターで溢れていると思いがちだ。そういったとき、Allyとして発言している人がいれば、LGBTQ+の当事者たちは、世の中はヘイターだけではない、と安心できるだろう。
特に、誰かが差別的な発言や行動をした際に、黙って見過ごすのではなく、積極的に避難し、諌めることができれば、LGBTQ+の人たちの助けとなる。
例えば、会社でゲイを揶揄するような発言をしている上司がいたとする。ゲイの当事者でゲイであることをオープンにしていない人の場合、そこで発言することはゲイであることがバレるリスクを考えると、難しいだろう。
そういった場合は、当事者ではないAllyの方が、注意しやすいのだ。
LGBTQ+のAlly としてできること3 イベントや支援活動・NPOに参加する
プライドパレードやLGBTQ+支援のイベント、NPOなどに参加することで、連帯感を示し、コミュニティのメンバーをサポートすることもできる。
LGBTQ+の権利に関する活動の一環で署名を集める必要がある場合、署名活動を手伝う、なども効果的だ。
LGBTQ+のAlly としてできること4 LGBTQ+の声を聞き、サポーターに徹する
Allyは、LGBTQ+の人々の声に耳を傾けることが大切だ。Allyとして学ぶ中で「自分たちとセクシャル・マイノリティの人々の気持ちは同じ」と考え、リーダーになろうとする人もいる。しかし、当事者がいる場所なら、当事者にリーダーを任せるべきだ。
Allyはあくまでも支援者、サポーターであり、当事者やリーダーではない。LGBTQ+の人々がマイノリティとして隅に押しやられないことを望むのなら、当事者の意見やニーズを尊重し、無理に自分の意見を押し付けないことが大切だ。
Allyになることは、マイノリティが差別されない世界を作る第一歩
Allyとしての役割は、思いやりを持ち、積極的にコミュニティをサポートすることだ。一人ひとりがAllyとして、小さな一歩を踏み出すことで、マイノリティが差別されない社会に近づいていくことができるだろう。
参考文献
『差別は思いやりでは解決しない ジェンダーやLGBTQから考える』神谷悠一(集英社新書)
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