グレートリセットとは
グレートリセットとは、より公平で活力のある持続可能な社会を作り上げるために、これまで当たり前とされてきた経済や社会システムをリセット(抜本的な変革)することである。
近年、さまざまな社会問題が世界を取り巻いている。環境においては、気候変動や生物多様性の喪失、天然資源の減少などがあり、社会においては、経済的な格差が拡大している。そして、新型コロナウイルス感染症のパンデミックを機に、これらの問題が与えるダメージはさらに大きくなり、世界中で深刻な影響をもたらしているのだ。パンデミック前はその場しのぎの対策が中心であったものの、コロナ禍を経て一時的な対処ではより良い世界を取り戻すのは難しいと判断され、グレートリセットの必要性が叫ばれている。
また、世界情勢の改善に取り組む国際機関「世界経済フォーラム(WEF)」が、世界各国のリーダーが集まる2021年の年次総会であるダボス会議(2022年度に延期)のテーマをグレートリセットにしたことで、世界的に注目を集めるキーワードとなった。
グレートリセットが注目される背景
ここでは、グレートリセットが注目されることになった背景を3点に分けて説明する。
新型コロナウイルス感染症の影響
グレートリセットに一番影響をもたらしたのは、新型コロナウイルス感染症の拡大である。新型コロナは世界経済に影響を与え、多くの企業が倒産したり、失業者が増加したりと深刻な問題が発生した。パンデミックは、近年の世界史上で最悪の公衆衛生危機とされており、2024年になっても犠牲者は増え続けている。
特に、新型コロナは貧困を増大させた。国連大学によると、世界の人口のうち約5億人がコロナにより貧困状態に陥ったと言われている。また、ジェンダー差別や教育へのアクセス低下なども起こり、より貧困の格差が広がってしまったのだ。新型コロナにより多くの人々の命や暮らしが失われ、経済も危機に陥り、社会生活や国際関係は行き詰ってしまった。
現状の社会や経済システムでは、新型コロナのような未知の問題に直面しても対応できない組織が多くある。そのため、グレートリセットにて生き方や働き方など社会の基盤を変革していく必要があるのだ。
地球温暖化
近年、地球温暖化の影響によりゲリラ豪雨や森林火災などさまざまな異常気象が世界中で多発している。これまでは経済成長を進めるために森林伐採や大気汚染物質の排出などが行われてきた結果、地球温暖化の進行に拍車がかかってしまっている。そのため、これからは利益だけを重視せず限られた資源を有効活用する、環境に良い社会づくりへの変革が求められているのだ。
雇用形態の変化
新型コロナやデジタル化の影響から多くの国で失業者が増えており、所得と富の格差が広がっている。特に米国、中国、インドなどでは、国内の格差がこの100年間で最大レベルとなっている。
世界経済フォーラムによると、2025年までに15の産業と26の国で約8,500万人の雇用が失われる可能性があるとされている。一方、2025年には9,700万人以上の新たな雇用が生まれるとも言われている。しかし、必要とされなくなる仕事がある一方で、新しい職種や労働環境にうまく適応できるかが問題となっている。実際、働く人の50%がAIやデータ分析といったスキルのリスキリング(再訓練)が必要だと言われているのだ。そのため、失業者が新たにスキルを習得できるよう、グレートリセットを通して雇用変化に応じた教育カリキュラムを早急に考える必要がある。
グレートリセットを実現するポイント

ここでは、世界経済フォーラムが提唱するグレートリセットを実現するポイントを紹介する。
公平性のある市場づくり
より公正な市場を目指すために政府が主導となり、以下のような政策や規制を変革していく必要がある。
- 税制や規制、財政政策などの調整を改善する
- 貿易協定を見直し改善する
- 「ステークホルダーの利益」を考慮した環境を整える
また、より公平な結果を促進するために、長い間後れをとっていた以下のような改革も実施すべきだとしている。
- 富裕層への課税方法の見直し
- 化石燃料への補助金の廃止
- 知的財産権や貿易、競争を管理する新しいルールの導入
持続可能な投資プログラムを活用
今後は、社会や経済を抜本的に変革するために、持続可能な新たな投資プログラムを活用していく必要がある。欧州委員会は、新型コロナから復興するため、前代未聞の7,500億ユーロの基金を作ることを決めた。そして、米国や中国、日本においても大規模な景気対策基金が用意されている。これらの資金は既存のシステムのダメージを埋めるためではなく、今後持続可能な社会をつくるために必要なグリーンなインフラの構築や環境保護などの分野で活用される。
また、今後はただ利益を上げる会社ではなく、限られた資源を有効活用し、消費を抑える環境面に考慮した会社が必要とされる。実際、再生可能エネルギーの市場も広がりを見せており、世界中で関連の業界で働く人が増えている。今後は、環境、社会、ガバナンスの3要素から投資先の企業を評価して資産運用を行う「ESG投資」が注目される。
健康と社会的課題への取り組み
3つ目のポイントは、第四次産業革命(AI、ロボットなどのデジタル革命)のイノベーションを活用した上で、公共の利益である健康と社会的課題に取り組むことだ。新型コロナが拡大する間、企業や大学、そのほかの機関が力を合わせて診断法、治療法、ワクチン開発、検査機関の設立、遠隔治療の提供などを行ってきた。医療に限らずすべての分野で同じような協同での取り組みを行っていけば、社会は大きく変わることができるだろう。
グレートリセットが起こるとどう変わる?
グレートリセットは、これまでの「株主資本主義」から「ステークホルダー資本主義」へと変化させる。これまでの経済や企業では、株主の利益に重きを置いており、どれだけ利益を多く出し、株価を上昇させられるかが大切とされてきた。しかし、利益ばかりを追求するために、従業員や下請けを酷使するなどの問題が発生した。
今後は、株主や消費者だけでなく、従業員や下請け、環境、社会などすべてのステークホルダー(利害関係者)を考慮した企業作りへと移行していく。つまり「儲かればよい」という認識はなくなり、持続可能な世界を作るために、長期的に社会貢献のできるシステムづくりが求められているのだ。
ステークホルダー資本主義を推進するにあたり、再生可能エネルギーの推進や雇用格差の是正、誰もが働きやすい環境づくりなど、あらゆるステークホルダーに配慮した経済・企業づくりが期待されている。
私たちがグレートリセットに向けて考えておくべきこと
最後に、私たちがグレートリセットに向けて備えておくべきことを説明する。
経済変化に備えた準備をする
1つ目は、経済変化に備えた準備をすることだ。新型コロナのパンデミックのように、突然予想できない問題が今後の世界でも起こる可能性がある。
グレートリセットにおいても、インフレが起こるかもしれないと言われている。たとえば、インフレが起こると、物価が上がり家計が苦しくなる場合がある。インフレが起きた場合の影響を小さくするためにも、円の資産の一部を外貨で運用したり、現物資産を持ったりするのも良いだろう。資産を分散して持つことで、ダメージを最低限に抑えられるのだ。
認知を広げる
2つ目は、認知を広げることだ。グレートリセットは2020年に生まれた新しい存在であるため、知らない人も多い。グレートリセットにより、大きな変化が起きることやリスクの存在を認知しておくことで、先ほど述べたような準備ができるようになる。周りの人と相談して準備方法を考えておくのが良いだろう。
まとめ
グレートリセットは、これまで当たり前だったことが当たり前ではなくなり、世界的に予想のつかないような大きな変化をもたらすだろう。新型コロナウイルスの拡大で、誰もがこれまでの日常が簡単に覆されることを経験した。グレートリセットはいつ起こるとは断言されていないものの、徐々に世界が変わっていく可能性がある。私たちは常に社会にアンテナを張り、リセットが起きた際にスムーズに順応できるよう準備しておく必要があるのではないだろうか。
参考記事
「グレート・リセット」の時|世界経済フォーラム
変われる企業、変われない企業。「グレート・リセット」がはじまった|デロイトトーマツ
「グレート・リセット」で変貌するコロナ後の世界と経済|日立
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