米ボーイスカウト連盟が名称変更を決定。ジェンダーの多様性を認める組織へ

米ボーイスカウト連盟、多様性を反映した名称へ変更

2024年5月、ボーイスカウトアメリカ連盟は「スカウティング・アメリカ」に名称を変更することを発表した。115周年をむかえる翌年2月から、新しい名前での活動がスタートする。

ロジャー・クローン会長は「これからの100年間、アメリカのどんな若者もプログラムに歓迎されていることを実感してほしい」と述べている。また記者会見では、名称の変更は一部の人にとっては驚きかもしれないが、連盟にとってはあたりまえの一歩であると述べた。

米ボーイスカウト連盟、多様性尊重までの足取り

ボーイスカウトは、アウトドアアクティビティや社会奉仕など多様なプログラムをつうじてリーダーシップ・人としての成長・協調力などをはぐくむことを目的に活動してきた。1910年の設立以来、加入した総人数はアメリカ国内で約1億3000万人にのぼる。

名称は、ときに組織やグループの象徴にもなる。その名称から「ボーイ」が消えたのは、大きな変化だ。しかし連盟がジェンダー多様性を組織に反映させたのは、今回がはじめてではない。

2013年には同性愛の少年の、2017年にはトランスジェンダーの若者の加入を認めた。2018年からは、5歳から11歳の子どもを対象としたカブスカウトに女子の加入が認められ、翌年の2019年には11歳から17歳の女子がボーイスカウトに参加できるようになった。現在、連盟の活動に参加している女子の数は約17万人であり、全体の約2割をしめている。

ボーイスカウト多様化の背景には、世論の移り変わりや連盟に関わる者からの訴え、そして所属している若者の数の変化があった。

2013年、同性愛者の少年の加入を承認

約100年ものあいだ、生まれたときの性別と性自認が男性である若者だけがボーイスカウトへの加入を許されていた。参加者のなかには、同性愛者であることを理由に辞めさせられた者もいる。

しかしアメリカは、2010年代にはいると軍隊への加入を同性愛者にも認めるなど、ジェンダーの多様性を尊重する社会へと変わっていった。2012年には、「I Really Like You」や「Call Me Maybe」で世界的に有名になった歌手カーリー・レイ・ジェプセンが、ボーイスカウトの方針を性差別だと抗議。連盟内でも長期にわたって議論がすすめられた。

そしてついに2013年、全米から1,400人以上ものボランティア・リーダーが集まった。うち60%を超える数が賛成票を投じ、「性的指向や性的嗜好を理由に少年の加入をことわることはあってはならない」とする措置が承認された。性的指向とは好きになる対象のことであり、その人が同性愛者か異性愛者か、もしくはその他かを指す。性的嗜好は、その人が性的に惹かれるもの・仕草・特徴のことだ。

つまり、性の対象や好みに関わらず参加が認められるようになったのである。

2017年、トランスジェンダーの加入を承認

トランスジェンダーの加入が認められるようになったのは、その4年後だ。きっかけになったのは、2016年に出生時の性別が女性であったことを理由に、ニュージャージー州で当時8歳だった少年が退会させられたことだろう。

前述のとおり2013年に規定が改正されたが、参加が認められたのは出生届の性別が男性となっている若者だけであり、女性の身体で生まれた若者は対象外だった。連盟は「性的指向」を理由に参加を断ることは禁じるが、「性自認」は別だと主張。つまり、本人が自分は男性であると考え、普段の生活を男性として送っていても、出生届に女性と記載されている場合は、ボーイスカウトに所属できなかったのだ。

ニュージャージー州の一家は、退会のあと連盟を訴えた。そして2017年1月、連盟はトランスジェンダーの加入を認めると発表。出生届ではなく加入の際に提出する書類の性別にもとづいて判断するとした。

2018年以降、女子の加入を承認

2018年には5歳から11歳向けのカブスカウトへの、その翌年には11歳以上を対象としたボーイスカウトへの加入が、女子にも認められるようになった。それまでは一部のプログラムにかぎって参加が許されていたが、中核となるプログラムに加わることはできなかった。

しかし2000年以降、ボーイスカウトの所属者数は減少の一途をたどってきた。2000年に300万人いた若者の数は、2017年には200万人にまで減っている。

連盟が女子にも門戸を広げる方針を決めたのは2017年10月だ。組織のプログラムが少年たちだけではなく女子たちの育成にも役立つとし、忙しい親たちの助けにもなると主張。リーダーシップ育成プログラムを、女子たちも受けられるようにすると発表した。

多様性にもとづく名称の変更で期待されること

実質的にすべての性別・性自認への参加を認めたボーイスカウトアメリカ連盟の名称は、2025年2月に「スカウティング・アメリカ」になる。この決定は連盟にとって、そして所属する女子たちにとって、どのような変化をもたらすのだろうか。

連盟は、加入者数の増加を期待

連盟にとって名称を変更することは、多様性への尊重をあらわすだけではなく、活動存続への可能性も意味している。ボーイスカウトで活動をする若者の数は、コロナ渦で約半数になってしまい、たった100万人にまで減少した。

ニューヨーク支部で最高責任者をつとめるサロヤ氏は、名称変更にたいして歓迎の意をしめしている。名前から「ボーイ」が消えることで、加入者の数が増えることを彼女は期待している。

女子たちにとっても重要な変化

特定の性別をさす言葉が組織の名称にふくまれていることは、一部の人に疎外感や違和感をあたえてしまう。それはボーイスカウトに参加している女子たちにも言えることだった。

ニューヨーク・タイムズの取材に応じた女子は、彼女はなぜボーイスカウトにいるのかという質問を今まで何度も受け、「人に話すのがずっと恥ずかしかった」と告白した。連盟の名称変更は、「小さな変化」に見えるかもしれないが「スカウトにいる女の子たちにとっては重要」だと言う。彼女は取材のなかで、「私たちも(グループの)一員なんだって思えることが大切」と伝えた。

なぜ女子たちは「ボーイスカウト」を選んだのか

なぜ女子たちは「ボーイスカウト」を選んだのか

アメリカには、ボーイスカウト連盟とは別組織のガールスカウトが存在する。その発足はボーイスカウト設立の2年後の1912年であり、同じく100年を超える歴史をもつ。それでもボーイスカウトへの参加を希望する女子たちがいる背景にあるのは、プログラム内容の違いだ。

どちらのスカウトもプログラムそのものは似ているが、ガールスカウトのほうが社会奉仕の割合がやや高い。一方でボーイスカウトは社会奉仕にたずさわりながら、ものごとを1人で進める力やサバイバルの知識も身につけられる。このことを理由にボーイスカウトを選んだ女子もいる。

参加者の性別を問わない方針への変更と名称変更の決定は、女子たちの選択肢を広げることになるだろう。

まとめ|名称の変更は多様性を認める社会につながるのか

ボーイスカウトアメリカ連盟は、2013年以降、同性愛者の少年・トランスジェンダーの若者・女子の参加を認めてきた。そして2025年には「スカウティング・アメリカ」に名称が変わる。この変更は、少年のためのスカウト連盟という従来の印象をやわらげることになるだろう。

一方で、この変更にたしいて「多様性を強調しているだけ」「所属者数を増やすため」という意見もある。実際に名前が変わったからといって、出生時の性別や性自認にもとづく差別や偏見が、組織や社会から消えるわけでもない。しかし、「疎外されている」と感じていた人たちが「一員として認められている」と実感できる環境へと変わりつつあるのも事実だ。

日本のボーイスカウトは、1995年以降女子の参加も認めてきたが、今のところ名称変更の予定はない。アメリカ連盟にならって、世界各国のボーイスカウト連盟も「ボーイ」の看板をおろすのかどうか、注目だ。

【参考記事】
Boy Scouts of America to Change Its Name to Scouting America|CNN
Boy Scouts open membership to transgender boys|CNN
Boy Scouts End Longtime Ban on Openly Gay Youths|The New York Times
Boy Scouts Will Accept Girls, in Bid to ‘Shape the Next Generation of Leaders’|The New York Times

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