
売れ残りや作りすぎによって生まれる「余剰在庫」。多くは焼却や廃棄の道をたどってきたが、shoichiはそれを“新しい資源”として再生させている。リユース・リメイク・タグ管理など独自の仕組みによりモノを再流通させる同社の挑戦から循環型社会の実現に向けたヒントを探る。
「余剰在庫=ゴミ」という思い込みを変える

アパレル業界は、余剰在庫という構造的課題を抱えている。大量に作られた服の多くが、最終的に「ゴミ」として廃棄される。これは、「大量生産・大量消費」という経済の仕組みが生み出した、社会問題の一つといえる。
余剰在庫が発生する背景には、製造・流通・販売の各段階に根深い理由がある。
製造段階では、「需要を予測して先に商品を大量に作り、在庫を抱えることで原価を下げる」という経済合理性が働く。消費者が安価で多様な製品を購入できるのは、大量生産システムによる側面が大きい。流通・販売段階では、季節のトレンドや流行の変化が激しいため商品の寿命が短く、売れ残りが常態化しやすい。メーカーも在庫削減に取り組んでいるが、大規模生産を前提とする限り、売れ残りは年間数十万点規模で発生し続けている。
こうした在庫が廃棄される最大の理由は、「ブランドのイメージを守るため」である。ブランドのタグが付いたまま、安く売られたりリサイクル品が出回ったりすると、正規の商品の売上やブランドの価値が下がってしまう。そのため、ブランド保護を優先する企業の中には、コストをかけてでも在庫を焼却処分するケースがあった。企業にとって「やむを得ない費用」とされてきたのだ。
株式会社shoichiは、この「余剰在庫=ゴミ」という長年の思い込みに対し、真っ向から異を唱える。「廃棄こそがブランドの価値を最も傷つける行為ではないか」と問いかけ、余剰在庫を「新しい資源」として捉え直した。
同社は、廃棄予定の商品を買い取り、独自の販路管理のもとで再流通させることを事業の核とする。これは環境への配慮にとどまらず、企業にとって経済合理性のある選択でもある。
従来、在庫を廃棄するには処分費用や倉庫保管料がかかっていたが、shoichiに買い取ってもらうことでこれらの費用負担がなくなる。さらに、買取による収入も発生するため、費用削減と売上確保を同時に実現できる。
実際、あるアパレル企業はリサイクルへの切り替えにより、年間約170万円の廃棄コストを削減した。環境負荷の軽減に加え、明確な経済的利益があることが、多くの企業がshoichiの取り組みに賛同する理由である。
shoichiがつくる“再生の経済圏”とは何か

shoichiは、廃棄予定の余剰在庫を買い取り、その価値を最大限に引き出す独自の流通システムを構築している。これが同社の掲げる「再生の経済圏」である。
再流通の過程で最も重要なのは、ブランド価値の保護である。同社は買い取った商品を自社倉庫で管理し、外部への流通ルートを厳格にコントロールしている。
リユース品を販売する際には、商品タグ・ブランドタグ・洗濯表示タグをすべて手作業で切り取る。これにより、正規市場を乱すことなく消費者が安価で商品を手に入れられる販路を確保し、ブランド毀損の可能性を排除している。
リユースが難しい商品や、企業がリサイクルを希望した在庫は、新しい素材へと生まれ変わる。例えば、廃棄予定のウール製品を回収し、糸の状態に戻した上でリサイクルウールなどと組み合わせ、新たな衣類へと再生する。この再生ウールやフェルト製品への加工プロセスも一元管理されている。リサイクル完了後には、資源化の過程を証明する「リサイクル化証明書」を企業に発行し、プロセスの透明性(トレーサビリティ)を保証している。
リサイクルやアップサイクルに必要な仕分けや解体といった手作業は、障がい者自立支援法に基づく就労継続支援事業所に委託している。就労支援施設への業務委託により、企業は作業コストを抑えられ、同時に障がいを抱える人々の雇用機会を創出する。環境配慮型のファッション循環とソーシャルインクルージョンを同時に実現する仕組みだ。
このビジネスモデルは、余剰在庫を「費用」から「売上」に転換する点で画期的である。
在庫処分コンサルタントとして、アパレルブランドから余剰在庫や廃棄衣料を即座に現金で買い取り、企業の資金繰りや倉庫コストの課題を解決している。こうした信頼関係は、20年以上の実績と年間約600トンのリサイクル処理能力を持つ自社倉庫によって支えられている。
国内にとどまらず、海外販路も社会貢献と結びつけている。カンボジアなどASEAN諸国への余剰在庫販売を通じたCSR活動「TASUKEAI 0 PROJECT」がその一例だ。販売利益は送料などのコスト相殺や現地の雇用創出、ボランティア活動の支援に充てられている。販売条件の遵守を徹底し、協力企業に支援内容を報告することで、企業の社会貢献成果を可視化している。
「再生の経済圏」を通じて、モノの価値は「ゴミ」として消えるのではなく、環境負荷の軽減・コスト削減・雇用創出・国際貢献という多面的な価値へと転換されている。
再流通市場を開拓し、モノの命を延ばす

同社が開拓する再流通市場は、アパレル業界の「廃棄が当たり前」という従来の価値観に一石を投じている。余剰在庫の処理という課題に対し、サーキュラーエコノミーの観点から具体的な選択肢を提示した点が評価されている。
環境面では、焼却や埋め立て処分されていた衣料品を資源として再循環させることで、二酸化炭素排出の削減に寄与している。また、リサイクル作業を就労支援施設に委託する仕組みは、障害者雇用の促進という社会的効果も生んでいる。
消費行動への影響も見逃せない。リユース品やアップサイクル製品が市場に出ることで、「使い捨て」から「長く使う」への意識転換を促す可能性がある。海外への販路開拓も、良質な衣料品へのアクセス向上という点で現地社会に貢献していると言える。
ただし、再流通の仕組みを社会に定着させるには、いくつかの課題が残る。
第一に、トレーサビリティの確保である。現状の「リサイクル化証明書」は一定の役割を果たしているが、サプライチェーン全体で製品履歴やリサイクル可能性を共有するには、デジタル技術を活用したより包括的なシステムが必要だろう。
第二に、制度面でのインセンティブ設計だ。企業が廃棄よりも再流通を選ぶ経済合理性を高めるには、税制優遇や補助金制度など、行政による後押しが欠かせない。
そして何より、余剰在庫問題の解決は企業努力だけでは完結しない。消費者の選択と行動が鍵を握る。
購入前に企業のサステナビリティ方針を確認する、アップサイクル製品を選択肢に入れるといった小さな行動の積み重ねが、循環型経済の基盤を支える。安価で良質な商品を享受する一方で、その背後にある余剰在庫の問題にも関心を持つこと。それが持続可能な消費社会への第一歩となるはずだ。
Edited by k.fukuda
参考サイト
TASUKEAI 0 PROJECT アパレル廃棄0を目指すshoichi応援ファンド|ソニー銀行
【取材記事】「shoichiがいるから大丈夫」そう言われる企業になる。日本のアパレル余剰在庫を全部買いつくすことが目標。ナチュラルボーンSDGs形態のリユース事業に未来を見る。|mySDG
アパレル在庫買取のshoichiが「廃棄衣料」の買取・リサイクルサービスを開始
























丸山 瑞季
大学で国際コミュニケーション学を専攻。卒業後はデジタルマーケティングに携わり、現在は難聴児の子育てに奮闘しながら、楽しく生きることをモットーに在宅で働く。関心のあるテーマは、マインドフルネス、ダイバーシティ、心理学。趣味は、食べること、歩くこと、本を読むこと。( この人が書いた記事の一覧 )