Farm to tableとは?定義や日本での取り組みを紹介

Farm to tableとは

Farm to tableは、「農場(Farm)から食卓(table)へ」という言葉で、地元で生産された安全で新鮮な農作物を、農園から直接食卓へ届けようとする運動のことを意味する。ベースにあるのは、日本における「地産地消」と同義ともいえる考え方だ。

一般的にFarm to tableが意味するところは、レストランなど飲食店において、地元産の食材を使った料理を提供することとされている。とはいえ、もちろん一般家庭の食卓もその対象である。ここで使用される食材はオーガニック農法など、自然に負荷のかからない農法で作られたものがほとんどだ。

Farm to tableは単なる個人の考え方ではなく、社会運動として広がっている。そのため、食の安全を訴えることのみならず、現代のグローバル化した食品流通システムに疑問を持ち、地元コミュニティにおける食品流通や地域経済のあり方を見直す役割も果たしているのだ。

Farm to tableの歴史

Farm to tableの歴史

産業革命以降、世界では高速道路や鉄道網が次々と整備されたことで、食品を含めた様々なものの輸送が効率的かつ合理的に行われはじめ、大量輸送も可能となった。また、田舎から都会への移住も多くなり、だんだんと「地元の農場で採れた新鮮な食べ物」を口にしなくなっていったのである。その潮流は、アメリカも例外ではなかった。

1950年代には缶詰や冷凍品などの食品加工が全盛期を迎え、もはや人々は「新鮮さ」に魅力を感じなくなっていた。ファストフードが台頭し、電化製品が次々と開発されたことで、主婦層にも手軽で便利な調理方法がもてはやされたのである。

自然志向への回帰

そんな中、1960年代後半から1970年代にかけ、こうした社会のあり方に疑問を持つ人々が現れ、カウンターカルチャーとしてヒッピー文化が生まれた。ヒッピー文化の中には、自然志向の食文化への関心も含まれ、Farm to tableの元となる概念が生まれたとされる。

1971年には、アリス・ウォータースという人物が、地元農家から食材を買い付けるレストラン「シェ・パニーズ」をカリフォルニア州バークレーにオープンし、Farm to tableを盛り上げる一翼を担った。

1997年には当時のアメリカ大統領ビル・クリントンが、大腸菌O157などによる食中毒問題を受け、農場から食卓まで一貫した衛生管理の必要性を訴えた際に“From farm to table”をいう言葉を使ったことで、多くの人の知るところとなった。

Farm to tableが注目される背景

先述のように、アメリカでは1950年代に加工食品やファストフードが全盛期を迎え、現在の私たちがイメージするような「アメリカの食文化」が形成された。

一方で、もともと農業が盛んで地産地消の概念が根付いていたアメリカ西海岸のカリフォルニア州やオレゴン州でFarm to tableの運動が興ったのが、2010年のことだ。消費者のニーズが変化するにつれ、レストランやホテルなどの飲食店も地球に優しい方法での提供を意識するようになっていった。こうしたトレンドの流れは、ミレニアル世代を中心に高まっている健康志向によって出来上がったといえるだろう。

世界中で、合理性ではなく持続可能性が叫ばれるようになった昨今、食に関わるシステムの欠陥が浮き彫りなっている。

例えば、長距離輸送による二酸化炭素排出量の増加、長期保存や見た目の美しさ、大量生産を目的とした農薬、保存料など添加物の使用などがそれにあたる。こうした食を取り巻く環境は、自然環境や生物多様性、そして私たちの身体にも悪影響を及ぼす問題として指摘されている。

こうした状況を一変させるには、そもそも食べ物を生み出し、流通させる一連の構造を変化させなければならない。その方法としてFarm to tableに注目が集まっているのだ。

Farm to tableのメリット

Farm to tableのメリットは、先述のように消費者へ安心安全な食事を届け、地域コミュニティを活性化させる点にあることは明らかである。また、それだけに留まらず「持続可能な社会づくり」にも大きく寄与しているのだ。

まず、地域内で経済を回していくことで、輸送に起因する環境への影響が軽減されると考えられる。消費者にとっても、食糧が近くの農場で生産されていれば、輸送や梱包のコストがかからないため、安く手に入れることができる。

さらに生産者の立場からすると、地域での農業および農業従事者の地位が向上することで、労働環境における倫理的な配慮が期待できる。また、安心安全な生産であることが消費者への価値提供になり、場合によってはブランド化することも可能だ。

自給自足もFarm to tableの一環となることから、昨今不安視されている食糧危機への対策としても十分な役目を果たすだろう。

Farm to tableの取り組み

アメリカから世界に広がるFarm to tableは、日本でも注目されはじめている。ここでは、日本で行われている取り組みについて見ていこう。

Farm to table つくば(茨城県つくば市)

研究学園都市として知られるつくば市では、農業も盛んに行われている。米やブルーベリー、みかん、ねぎをはじめとした多品目が栽培され、豊かな食文化も形成されている地域だ。

Farm to Tableつくばのサイトでは、つくば市内で生産された農作物、それらを料理して提供する飲食店、物産品やグルメ情報などを発信。農家や料理人、酒造店などのインタビューも掲載している。

市内には地産地消認定店が165店舗(2024年8月時点)あり、2024年夏には認定店が一堂に会して農産物をPRするFarm to Tableつくば Marketが開催された。

WE ARE THE FARM(東京都)

2014年にオープンしたWE ARE THE FARMは、「次世代型オーガニックレストラン」と謳い、恵比寿、麻布十番、豊洲など都内に6店舗展開しているレストラン。

その特徴は、畑を耕すところから自社で行っている点にある。千葉県佐倉市にある自社農園では無農薬・無化学肥料・露地栽培にこだわった「固定種」を栽培している。固定種とは、地場野菜ともいわれるもので、地域の風土に合わせて固定化された野菜のこと。

朝どれの野菜を主役にし、その旨味を存分に生かすシンプルな味付けが魅力だ。

Farm to tableの未来

私たちは、これまでの人類史上最も便利で豊かな時代にあるといえるだろう。ドライブスルーで、サッと食べ物を手に入れることができる。スマートフォンさえあれば、家から出ることなく出来立ての料理を手に入れることができる。こうした時代にあって、一から料理をすること、さらに言えば種から食べ物を育てるなど、時間がかかりすぎて不便であることは間違いない。

しかし、こうした環境で身につく価値観は、まさに「早い、簡単、便利」であることに価値があるという、ファストフードをはじめとした外食産業の理念と合致する。

そもそも、なぜこうした便利なものが世間に受け入れられるのだろうか。それは、現代社会があまりにも時間に追われすぎているからだろう。料理などしている余裕もなく、それどころか「食べること」が、ただの作業になっている人も少なくない。

Farm to tableという運動は、こうした社会に対する警鐘ともいえるだろう。ゆっくりと時間をかけて家族や友人と食事を楽しむこと。農業を通して環境や生物について学ぶこと。自分の住んでいる地域の魅力を再発見すること。

Farm to tableに取り組むことは、食の安全や環境保全だけではなく、私たちが地球の一員として生きる上での価値観を見直すきっかけとなっていくだろう。

参考サイト
Food Safety from Farm to Table: A National Food-Safety Initiative A Report to the President May 1997 – Ensuring Safe Food |NCBI Bookshelf
The History of the Farm to Table Movement|lightspeed
The Farm-to-Table Movement |AGRITECTURE
「Farm to Table つくば ~つくばの食の魅力~」について | Farm to Table つくば
WE ARE THE FARM | 株式会社ALL FARM
【公式】WE ARE THE FARM 恵比寿 (ウィーアーザファーム)|野菜が主役のオーガニック野菜バル

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