ハラルフードとは?背景にあるイスラムの教えやハラルフードの内容を解説

ハラルフードとは

ハラルフードとは、イスラム教の中で食べることを許されている食品のことだ。「ハラル」というのは「許される」という意味のアラビア語で、イスラム法で合法とされるもの全般を指す。反対に、非合法とされるものは「ハラム」という。

イスラム法では、普段の生活においても食べものや行動、服装など、ハラルとハラムが厳しく規定されている。また、ハラルなのかハラムなのか判断しかねるものを「シュブハ」と呼び、イスラム教徒の中ではシュブハを避ける人も多い。

ハラルフードとハラムフード

ハラルフードには穀物や魚介類、野菜・果物など様々な種類があるが、全て覚えるのは大変なので、「ハラムフードを避ける」という考え方が分かりやすい。

ハラムフードとして有名なのは豚肉とアルコールだ。豚肉に関しては特に厳しく、豚由来の食品や成分、豚肉を食べて育った家畜類、豚に触れた食品などは、すべてハラムとされている。肉類では牛肉と鶏肉は許されているものの、イスラム法に即した処理方法を施さなければいけない。

ハラムフードに分類されるものは、国や地域、学派によって多少異なっている。アルコールに関しても、基本的には消毒用アルコール、発酵過程でアルコールが生じる調味料なども避けるとされているが、一定の濃度を超えなければ問題ないとする人もいる。

なぜハラルフードが注目されているのか

ハラルフードが注目されている理由には、グローバル化によって世界中の様々な宗教を信仰する人々が世界各地に存在し、コミュニティの多様性が高まっていることが挙げられる。国際交流が活発化する中で、さまざまな文化や慣習を知り、相手の価値観を理解して受け入れようとする人も多く、その一環としてハラルフードにも注目が集まっている。

また、ムスリムの人口が増加していることも理由の一つ。イスラム教は世界三大宗教の一つであるが、日本でのムスリムの割合はキリスト教・仏教と比べて少なく、身近なものではないだろう。

しかし世界では約4人に1人がイスラム教を信仰しており、東南アジアでは約41%にものぼる。特に国民の約85%がイスラム教を信仰するインドネシア、イスラム教を国教とするマレーシアでは、現在もムスリム人口は上昇しており、両国に近いシンガポールやタイなどでも、今後ますます増加すると考えられる。

こうした中、日本でもインバウンド事業に伴うムスリム市場の拡大や日系企業の東南アジア進出が見込まれているため、彼らの文化に対する関心が高まっている。

イスラム教の教え

イスラム教の教え

多くの日本人にとって、イスラム教はあまりなじみのない宗教だが、ハラルフードについて理解を深めるためには、イスラム教の教えを知ることが必要である。

ハラルとハラムは神が定めたもの

一神教であるイスラム教の唯一神は、アッラーという神だ。預言者ムハンマドがアッラーから受けた啓示は、「クルアーン(コーラン)」という聖典にまとめられている。

ハラルとハラムも、このクルアーンの中に示されている。つまりハラムとハラルは神が定めたものであるため、必ず守らなくてはいけない規律なのである。

清浄と不浄

アッラーは人々が健康であることを願っているため、ハラルは「人間にとって善いもの、清浄なもの」、ハラムは「人間にとって悪いもの、不浄なもの」と考えられている。

例えば、アルコールは「人を酩酊状態にさせる悪いもの」であることから禁止されている。そして豚が特に厳しく規律されているのは、病気にかかりやすい点や、人間と同じ穀物を食べ、雑食でもあるという習性から「不浄な動物」と考えられているからだ。

豚は本来、清潔を好む動物とされているが、実際のところムスリムの人々は「豚は不浄」と教えられていることから、豚に対して嫌悪感を抱く人が多いようである。

ハラルフードの健康面について

そもそもハラルフードは、「不浄なものを体に入れない」という考えに基づくことから、原料の管理や製造の段階でも厳しい衛生管理が行われている。

ハラムフードには血液や死肉など、宗教以外の観点からしても口にするべきものではないものが分類されている。またハラルである食肉であっても、その処理は徹底的に管理されている。「不浄」とされている生き物も、犬や猫、キツネ、昆虫類、は虫類など、日本人の感覚では到底食べられない生き物ばかりだ。

このことから、ハラルフードはムスリムの人々以外でも、安心して食べられる食品といえるだろう。

ハラルフードの認証制度

ムスリムの人が商品や店を選ぶときに参考にしているのが「ハラル認証」だ。これは、ハラル認証機関が食品を検査し、ハラルであることを保証する制度である。

日本でのハラル認証

日本でのハラル認証
出典:ジャパン・ハラール・ファンデーション

一般社団法人ハラルジャパンによると、日本でもハラル認証機関は増加しており、現在確認できるだけでも30以上の認証団体・機関が存在している。

また、東南アジア諸国に進出する大手の日系食品企業では、東南アジアの市場が急成長し始めた2014年から2019年にハラル認証を取得する企業が急増。特に調味料や清涼飲料水での取得が目立っている。

また、近年では外食産業や中食産業、さらに日本食レストランに向けた食材販売などの分野でも、ハラル取得の動きが活発になっており、日本市場や日系企業でもハラルフードの需要が高まっていることがうかがえる。

ハラル認証の問題点

世界で多くのハラル認証機関が存在するものの統一基準はなく、現状は各団体ごとに判断基準や指導内容が異なっている。

もちろん、取得のベースとなる考え方に大きな違いはない。しかし、例えば工場など製造環境において、工場全体でハラムを避けているもののみ許可するところもあれば、その製品の製造ラインで避けられていれば、同一工場内でハラムを製造していても許可している場所もある。

現時点では、それぞれの認証は世界中で有効な認証ではないため、最終的には自己判断に任せるしかない側面もある。

日本国内でハラルフードを提供する場所

ムスリムの人々にとって日本でハラムを避けるのは、想像以上に大変なことだ。そのため、日本国内でもハラルフードを販売する店や対応する飲食店が、都市部を中心に増えている。その一部をご紹介しよう。

業務スーパー

業務スーパーでは、現在200種類を超えるハラルフードを扱っている。業務スーパーオリジナルのスパイスや調味料、ジャム、お菓子などもあり、豊かなラインナップが特徴だ。

現在、オンラインショップは東京都(離島を除く)と神奈川県内のみの対応だが、近隣の業務スーパーを覗いてみてはいかがだろうか。

参照:ハラールってナニ?【業務スーパー】 注目のハラールフード特集|業務スーパー

日乃本食産株式会社

「食のバリアフリー化」を唱え、ハラルフードを提供している日乃本食産株式会社。工場で生産される約300種類の商品は、各国の認証機関と相互認証にあり、世界基準のハラール認証商品といえる。常駐するムスリムのシェフのもと、徹底的な衛生管理が行われ、国内で初めて日本ハラール協会のハラール工場認証を受けている。

ハラルフードとはいえ、日本人もおいしく食べられることを前提としているため、どんな人でも楽しむことができる惣菜や調味料が製造されている。

参照:ハラール食品|日乃本食産株式会社

シェラトン都ホテル大阪

シェラトン都ホテル大阪
出典:シェラトン都ホテル大阪

シェラトン都ホテル大阪は、2014年からムスリム・フレンドリーメニューの提供を行っている。いわば日本におけるムスリム対応の老舗だ。コロナ禍の影響で提供を一時中断していたものの、再開にあたりメニューを一新。宗教法人日本ムスリム協会からメニュー認証を取得している。

ムスリム・フレンドリーとは、施設の一部やメニューに対して与えられる部分認証のことだ。しかしながら、当然ハラルとハラムが混在しないように徹底管理は行われているため、安心して利用することができる。

ハラルフードにおける注意点

ハラルフードにおける注意点

豚肉に関しては、口にするのはもちろん、豚肉の話をすることも避けた方がよいとされている。

また、好き嫌いやアレルギー、病気などではなく、「宗教上の理由」で食べられない物があるという感覚は、日本人にはなかなか理解しづらいものだ。しかしムスリムの人々にとってハラムフードを口にすることは、すなわち神に背くことになるという点をしっかりと理解しておかなければならない。

体そのものに影響があるわけではないが、精神性や生き方そのものに大きく関わるため、「ちょっとくらい大丈夫だろう」という安易な気持ちで食べ物を進めないよう、心掛けることが重要だ。

まとめ

コロナ禍が明け、訪日観光客の増加が著しくなった昨今。またグローバル化に伴い、日本に在住するムスリムの人々も年々増加し、中にはムスリムの子どもが日本の保育園や幼稚園、学校に通うことも珍しくない。

このような状況から多様性が叫ばれるようになって久しいが、まだまだ宗教観や文化の違いによるトラブルが後を絶たない。

特に食は旅行中の楽しみであり、生活において最も重要なものだ。好きなものが何でも食べられる日本で生まれ育った人にとっては、ハラルフードの概念は決して身近なものではないが、ムスリムの人々の価値観を理解しようと努めることで、文化の違いを超えた友好関係へと繋がっていくだろう。

参考サイト
ハラル(ハラール)基礎知識|一般社団法人ハラル・ジャパン協会
ハラール(ハラル)とは|NPO法人 日本ハラール協会
イスラム圏向け食品 ―食べてよい物と悪い物―|JAS協会
ハラル認証について-ハラル基礎知識|一般社団法人ハラル・ジャパン
ASEAN主要国における ハラール認証制度比較調査|ジェトロ(日本貿易振興機構)

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