オランダで、サブスクのヘッドフォン「REPEAT」が登場【電子ゴミ問題の解決策#2】

Gerrard Street

年間1,500万キロのヘッドフォンが捨てられている

移動中に音楽を聞いたり、オンラインで会議をしたりすることが当たり前となってきた現代において、いまやヘッドフォンは私たちの生活に欠かせないものとなってきている。

その一方、世界中で毎年1,500万キロものヘッドフォンが捨てられているという統計もある。これは、ヘッドフォンも年間50億キロに及ぶ電子ゴミの一部であるということを示すものだ。これほど大量のヘッドフォンが廃棄される原因は主に二つある。一つは、多くのヘッドフォンは全てのパーツが繋がっているため、部分的にでも故障してしまったものは、修理が難しく廃棄されやすいこと。もう一つは、性能が高い製品が市場に出てくるたびに多くの人が新しい製品を購入し、古いものは廃棄してしまうということ。このようにして廃棄されているモノの中には、金や銀などの金属資源が含まれていることも多く、ヘッドフォンを含む電子廃棄物の問題は世界中で解決が叫ばれている。

このような電子機器をすぐに廃棄してしまう世の中の潮流に疑問を感じた二人の音楽狂—トム・リーンダースとドラス・ガラマは、この産業を変革したいという想いから、Gerrard Street(ジェラルド・ストリート)を立ち上げた。

「Who says headphones can’t last a lifetime?(ヘッドフォンは生涯にわたって使えないなんて、誰が言ったんだ?)」

オランダのGerrard Street(ジェラルド・ストリート)社は、ヘッドフォンのサブスクサービス「Headphone as a service」を月額8.20ユーロ(約1,270円)で提供している。これは、ユーザーが永久的に無料でヘッドフォンの修理をしてもらうことができるサービスだ。このサービスで使用できるヘッドフォン「REPEAT」は、モジュールデザイン(複数のパーツを組み合わせた設計手法)を採用しており、複雑なナットやボルトを使わないシンプルな構造になっている。モジュールにすることで、部品の85%が再利用可能になっており、故障した箇所を個別に入れ替えたり修理することができるため、もし故障してもヘッドフォンごと廃棄せずにすむ。

ヘッドフォンが故障した際は、自身のアカウントからパーツを注文し、壊れたパーツと入れ替えるだけという簡単な手順であることに加えて送料も無料であるため、修理に対するハードルは非常に低い。壊れた部品は新たな製品の材料となるため、返信用封筒に入れて必ず返却する必要がある。このようにサブスクにすることで、故障したり寿命がきたヘッドフォンを廃棄するのではなく、修理またはリサイクルできるサーキュラーな仕組みになっている。

また、ヘッドフォンのアップグレードやダウングレードにも対応しており、いつでも好きな時にグレードの異なる製品に取り換えることができる。さらに、「喧騒の中でも最高の音質を」と掲げ、業界トップレベルのノイズキャンセリング機能を搭載するなどクオリティにもこだわっている。つまり、ユーザーがより性能が高いものを求めて、古いヘッドフォンを廃棄してしまうということを極力減らそうと試みているのである。

ヘッドフォンをサブスクにすることで、普段高品質なヘッドフォンを使わないような顧客も獲得できることや顧客との距離を近づけることができるなど、ビジネス的にも恩恵がある。そのため、環境負荷を軽減できるだけでなく、事業自体もサステナブルなものとなっている。


社名の由来となっているヘッドフォン発祥の地、ロンドンのGerard Street。ここでは当時、人々は年額5ポンドでヘッドフォンを借りて、自宅で教会やオペラの音楽をライブのように楽しんでいた。同社のサービスは、この文化から着想したものだ。電子廃棄物という現代の社会課題への危機意識と、過去の文化を掛け合わせることで生まれたサブスクヘッドフォンという新しいサービスは、地球への負担を最小限に抑えながら、私たちが文化的な営みを最大限楽しむことを可能にしてくれるかもしれない。

Edited by k.fukuda

参考サイト

公式サイト|Gerrard Street
Founder Gerrard Street: ‘Our headphones are sustainable’ | Dutch Cowboys 
Headphone as a service: Repeat

本記事は、特集「電子ゴミ問題の解決策」に収録されている。世界各地で進む電子ゴミの課題と、その先にある持続可能な仕組みを探った。ほかの記事もあわせて、より多角的な視点を見つけよう。

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About the Writer
Kie Fukuda

k.fukuda

大学で国際コミュニケーション学を専攻。これまで世界60か国をバックパッカーとして旅してきた。多様な価値観や考え方に触れ、固定観念を持たないように心がけている。関心のあるテーマは、ウェルビーイング、地方創生、多様性、食。趣味は、旅、サッカー観戦、読書、ウクレレ。この人が書いた記事の一覧

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