きっかけは電子ゴミに対する問題意識
ベルリンを拠点とするOpen Funkは、電化製品の製造方法を変え、消費者が自宅で修理できるようにすることをミッションに掲げるスタートアップだ。同社は、製造から修理までを地域密着で行い、無駄な廃棄物を出さない「電化製品のサーキュラープラットフォーム」になることを目指している。
Open Funkの創業のきっかけは、電子ゴミに対する問題意識からだった。
共同創業者であるポール・アンカとケン・ロスタンドは、2018年に開催された循環経済に関するイベントで初めて出会い、共に気候変動やゴミ問題、人権問題、難民問題など、あらゆる社会問題に関心があったことから意気投合。その中でも特に、電子ゴミに関するトピックに強く興味を抱いていた。ケンが中国でクリエーションを勉強していた際に、海岸沿いに積み重なる電子ゴミを目撃したことや、偶然にも二人が壊れたミキサーに頭を悩ましていたことが、その理由である。――電化製品は私たちの生活を便利にしてくれている一方、その廃棄物いわゆる電子ゴミは、世界で最も速いスピードで増えているゴミでもある。この問題はいま最も大きな社会問題の一つにもなっているが、そこに彼らも注目した。
そして、2021年1月についに始動。まず、Facebookグループで壊れたミキサーを寄付してもらうように呼びかけ、集まったミキサーを分解して中を観察した。すると、製品が低品質の材料からできていることや、組み立て効率重視のために接着固定されていることがわかった。つまり、修理できない構造になっていたのである。また、最低限のコストで製造されている製品は安く市場に出回っている一方、修理サービスは非常に高額であるため、一度故障してしまった製品は廃棄されてしまう市場構造にもなっている。
そこで二人は、地球環境にも優しく、人々の生活を豊かにするような製品を作ることができないか、と考えるようになった。
修理できるミキサー「re:Mix blender」の誕生
そこから、修理できるミキサー「re:Mix blender」は誕生した。
Open Funk の製品第一号である re:Mix blender は、一般家庭にもあるようなドライバーで簡単に修理ができ、長期間使用できるように設計されている。ブレンダーの刃は簡単に取り外すことができ、モーターについているカーボンブラシという部品も交換が可能だ。また、パーツは接着固定ではなくネジ止めされているため、組み立ても分解も容易である。
製品には2年間の保証が付いており、修理を依頼することも可能だ。この保証期間を過ぎた後も、修理ガイドや交換パーツを簡単に入手できるようにしているため、修理を施しながら長く愛用することができる。しかし、もし製品が不要になった場合は、Open Funk がミキサーを買い取り、リファービッシュして再び販売する。
製品の製造に際しては、天然資源の使用を最小限にし、温室効果ガスの排出量を下げるなど、環境負担を軽減することも強く意識している。本体に付けるビンは100％ガラス製で、他のどんな形のリユース瓶とも互換性がある仕様だ。刃は、手入れがしやすく寿命が長いステンレスを、ブレンダー本体や足の部分は、地域内で不要になったプラスチックを寄せ集めた100％再利用プラスチックを使用している。このように、資源のサーキュラリティを徹底することで、地球への環境負担を最小限に抑えようと試みている。
さらに、彼らは製品を地元に根ざした方法で作ることで、地域コミュニティを活性化させることも大切にしている。そのため、材料は地域内で調達し、地元の製造者をサポートしながらベルリンのワークショップでデザインから製造、組み立てまでを行う。設計やデザインはオープンソースにしているので、他の国や地域にいる人でもそれぞれの地域に根ざした方法で、同様の製品を製造できるシステムになっている。
このように、「地球環境や地域コミュニティに配慮しながら、人々の生活を豊かにする電化製品をつくる」という想いを、形にしたふたり。2023年10月1日、「re:Mix blender」は初めて消費者のもとへ出荷された。電化製品のサーキュラープラットフォームを目指すOpen Funk の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
参考記事
公式サイト｜Open Funk
Instagram ｜Open Funk
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