
サードプレイスとは?
サードプレイスとは、生活の拠点となる「第1の場所」、仕事や学業の拠点となる「第2の場所」とは異なる「第3の場所」のこと。アメリカの社会学者であるレイ・オルデンバーグが著書『The Great Good Place』(1989年)で提唱した言葉で、日常の煩わしさやストレスから解放され人々が気軽に交流でき、コミュニティの拠点となる場を指す。例えば、公園、美容院、ジム、カフェ、図書館などが、サードプレイスとして活用されている。
FacebookなどのSNSもサードプレイスとして仮想されているが、真のコミュニティ形成をする上で最も効果的なものは、人々が日常的につながることができる物理的な場所であるとの意見も多い。サードプレイスの活用によって、人のつながりやコミュニティの形成が促進され、人々の安心感やアイデンティティを醸成するという効果が期待できる。
サードプレイスの8つの特徴

サードプレイスを提唱したレイ・オルデンバーグは、サードプレイスの特徴として以下の8つをあげている。この8つの特徴を備える場所は、どのような場所でもサードプレイスになり得る。
1.中立性
経済的、政治的、法的に縛られることなく、誰でも自由に過ごせる中立的な場所。また、その場所を訪れることも、離れることも自らの意思によって決めることができる。
2.社会的平等性の担保
参加条件は一切なく、社会的地位、年齢、性別に関わらず、誰もが平等に関わりをもてる場所。会社における上司や部下のような上下関係はなく、常にフラットな人間関係を築くことができる。
3.会話が中心に存在する
サードプレイスでは会話が最も重視されているため、その場にいる人同士が気軽に楽しく話し、会話が交流の中心になることを大切にしている。会話の内容は、特別なものや生産的なものである必要はなく、アイディアや意見などをオープンに共有することができる。
4.利便性がある
家や職場を行き来する間に気軽に立ち寄れるアクセスのよい場所で、自宅から徒歩圏内にあることが理想的である。さらに、安価もしくは無料で食べ物や飲み物が提供されていることが望ましい。
5.常連の存在
常連の人たちがその場所の空間や雰囲気を形成し、サードプレイスの良さを引き立たせることで、より個性的な空間を作り上げていく。常連の存在が大切であると同時に、新たな人々を省くことなく受け入れることも大切にしている。
6.地味で目立たない空間
外観や立地が派手すぎず家庭的な雰囲気があり、日常的な空間にひっそり佇んでいる。新しい人も気軽に訪れることができる親しみやすい場所である。
7.遊び心がある
陽気な雰囲気があり、笑いやジョークなどユーモアがあふれている。仕事などで感じるような緊張や憎悪はなく、誰でもリラックスできる場所である。
8.感情の共有
自分の家にいるような安心した気持ちをもち、その場にいる人たちと家族のようなつながりを感じることができる。そして、喜びなどの感情を共に分かち合えることで、居心地の良さを感じることができる場所である。
注目される背景

1989年にサードプレイスが初めて提唱された当時、アメリカは自動車依存型の社会に陥っていた。そのため、人々は家と職場を往復するだけの状態で、公共の場において他人と交流する機会が失われつつあった。このような社会において、潤滑油の役割として「サードプレイス」が注目され始めることになった。
また近年、SNSの普及によって多くの人がオンラインで社会的なつながりを求めるようになったことで、実際に顔を合わせて交流する機会が減少した。それに加えて新型コロナウイルスの蔓延もあり、人間関係の希薄さから孤独を感じる人が急増している。そのような状況において、誰もがリラックスして気軽に交流できる「サードプレイス」に注目が集まっている。
サードプレイスの効果

サードプレイスの活用によって、以下のような効果が期待できると言われている。
孤独を解消する
現代社会において社会問題の一つである孤独やひきこもりの解消につながる。特に、退職後の高齢者、赤ちゃんや幼い子どもがいる母親または父親は、社会的に切り離され、孤独になるリスクが高い。そのような人にとって、サードプレイスは家から出られる唯一の場所になる可能性もある。また、サードプレイスに訪れることで、人とのつながりをつくり個人のアイデンティティを育むことができるため、慢性的な孤独によるうつ病や睡眠障害などの予防にもなる。
日常のストレスを緩和する
日常生活の喧騒や煩わしさから離れて、リラックスできる場でもある。サードプレイスは、仕事や家事育児など多くのストレスを抱える現代人にとって、緊張やネガティブな感情を手放してくつろぐことができる場所となる。純粋にその場にいる人との会話を楽しむことができるため、日常のストレスの緩和につながる。
新しい価値観や知識を得ることができる
サードプレイスでは、職業や社会的地位、年齢などを問わず多様な人が集まるため、新しい価値観や知識を得る機会に恵まれている。共通の趣味などを通じて、新たな人間関係が育まれることもある。また、新しいものに触れることで、自分自身のアイデンティティを自覚することにもつながる。
日本におけるサードプレイス

アメリカ発の概念であるサードプレイスは、近年日本でも注目され始めている。オルデンバーグの著書『The Great Good Place』の翻訳書が2013年に日本で出版されたことからも、そのことを窺うことができる。
コロナ禍で人との交流機会が減少したことや、都市部などの再開発によって馴染みの店が閉店してしまうことで、日本では孤独を感じる人が増加している。内閣府の調査によると、ひきこもりの人の数は15歳から64歳のおよそ2%にあたる約146万人にのぼる。(2022年11月時点)このような状況において、サードプレイスを取り入れる動きが活発になっている。
一方、日本ではヨーロッパのようなサードプレイスは浸透しづらいとも言われている。その要因は、見ず知らずの人と気軽に会話することへの抵抗を感じやすいという日本人の国民性や、カフェやパブの単価がヨーロッパと比べて高いため、サードプレイスとして通うには金銭的負担が大きいということなどがある。
日本に適する形でサードプレイスを導入するにあたっては、どのようなスタイルがよいのだろうか。法政大学地域研究センターの論文によると、日本におけるサードプレイスにはマイプレイス型と交流型があるという。
マイプレイス型サードプレイス
他人を気にすることなく、マイペースに過ごすことができる場所で、ストレス解消とリラックス効果が期待できる。ただし、サードプレイスの本来の要素である他人との交流はできない。例えば、喫茶店やコワーキングスペースなどがある。
交流型サードプレイス
誰でも気軽に参加できる交流の場所で、他人との関わりを通じて新たな発見や癒しを得ることができる。これは、オルデンバーグが提唱したサードプレイスの形態である。例えば、パブや居酒屋、フランスのカフェなどがある。
この2つのタイプを用途などに合わせてうまく使い分けることで、日本でもサードプレイスが浸透していくことが期待される。
サードプレイスの具体例

サードプレイスの具体例として、以下のようなものがある。
フランスのカフェ
オルデンバーグは、パリのカフェはサードプレイスの最たる例だと述べている。フランスのカフェは、ただお茶を飲むだけでなく、社交の場としても機能しており、芸術家や文豪、政治家が討論を繰り広げ思想を分かち合ってきた歴史がある。人々は、コーヒーやケーキの味の崇高さよりも、人との交流や落ち着いた時間を求めてカフェを訪れている。
イギリスのパブ
「Pub」の語源が「Public House(公共の家)」であるように、イギリスのパブは誰にでも開かれた公共の場所としての役割を担っている。ただお酒を飲むだけの場所ではなく、人々が交流し会話が交わされる社交場として存在している。また、店舗は路面に面していることが多く、気軽に入店することができる。さらに、カウンターで都度注文するスタイルのため、一杯だけの利用でも気楽に訪れることができるのも特徴だ。
その他にも、公園、美容院、ジム、ファストフードレストラン、サウナ、図書館などもサードプレイスとしての役割を担うことがある。また最近では、日本のスナックもサードプレイスとして改めて注目を浴びている。
まとめ
サードプレイスは、自宅や職場で感じる日々の緊張や疲れなどから解放できる場所となり得ることから、現代のストレス社会にとって重要な役割を担うのではないかと期待されている。あらゆる分野でのデジタル化が進み、常に心が休まることがない私たちだが、人との会話や交流を純粋に楽しむことができる居場所をもつことで、日々の生活にささやかな豊かさを作ることができるもしれない。
Edited by k.fukuda
参考サイト
ウェルビーイング(well-being)とは?定義と背景、幸福度を高めるためにできることを解説
“Third Places” as community builders | Brookings






















k.fukuda
大学で国際コミュニケーション学を専攻。これまで世界60か国をバックパッカーとして旅してきた。多様な価値観や考え方に触れ、固定観念を持たないように心がけている。関心のあるテーマは、ウェルビーイング、地方創生、多様性、食。趣味は、旅、サッカー観戦、読書、ウクレレ。( この人が書いた記事の一覧 )