“食べられる”プラスチックは、プラごみ問題の新たな鍵になるか?

海洋汚染や生態系破壊など、地球環境に深刻な影響を及ぼすプラスチック。近年注目される「食べられるプラスチック」は、海藻などの自然素材から作られ、生物が食べたり土に還したりできる革新的技術だ。ゴミを資源に変える新しいアプローチは、消費活動そのものを変える可能性を秘めている。この技術がもたらす「ゴミのない未来」について、考えてみよう。

プラスチック問題への新たな救世主

プラスチックは自然界で分解されにくく、海洋汚染や生態系破壊、気候変動など、地球にさまざまな悪影響を及ぼしている。特に海洋プラスチック問題は深刻で、クジラやウミガメ、海鳥などがプラスチック製品を食べて死傷する例が絶えず、2050年には海のプラスチックごみは魚の量を上回るともいわれている(*1)。

プラスチック問題を解決するためには、これまで「使わない」「再利用可能なものを選ぶ」といった選択肢が有効とされてきた。そこに新たに加わったのが、“食べられる”プラスチックという、全く新しい発想だ。

プラスチックを食べることができる、あるいは土に還すことができる。この発想が定着すれば、私たちの消費活動はより明るいものとなるだろう。「ゴミを出さない」ではなく、「ゴミが出ない」商品が並ぶ日も、近いかもしれない。

食べられるプラスチックは、欧米を中心に2020年前後から開発が進んでいる。普及にはまだ多くの壁があるものの、食べられるプラスチックが広まれば、プラスチックはゴミから資源へと変わり、利便性と持続性を両立することが可能となるだろう。

日常の消費の中でプラスチックごみが出なくなり、誰もが無意識に地球にやさしい選択肢を取ることができる。それを実現するものこそ、“食べられる”プラスチックだ。


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食べられるプラスチックが注目される背景

食べられるプラスチックの主原料には、海藻やデンプン、セルロースなどの自然由来バイオマス資源が用いられる。作り方にもよるが、体内に入ればおおよそ4〜6週間ほどで消化することが可能だ。

環境にやさしい素材として「生分解性プラスチック」も知られているが、いくつかの違いがある。生分解性プラスチックは、土壌やコンポストなどの環境に置くと、微生物の働きによって水と二酸化炭素に分解されるが、生物の体内では消化されない。一方、食べられるプラスチックは、微生物によって完全に分解されるだけでなく、水に溶けたり、生物が消化したりすることも可能だ。

これらを踏まえて、食べられるプラスチックが注目される背景について考えてみよう。

海洋プラスチック問題への対策

海洋で漂うプラスチックによる生態系破壊において、食べられるプラスチックは画期的なソリューションとなり得る。食べられるプラスチックは水で溶けやすいため、海に流れてもゴミとして残りにくく、環境負荷を軽減することが可能だ。

さらに今、釣りのルアーなど海で使う道具を、生物が食べても安全な素材で作る試みが進められている。食べられるプラスチックが普及すれば、海洋生態系の破壊を心配することなく、海のレジャーを楽しめる未来が来るだろう。

消費者意識の変化

近年、消費者の環境意識の高まりとともに、企業への責任追及も強まっている。環境に配慮した製品やパッケージを選ぶ消費者が増加しており、「サステナブル消費」への関心も高い。利便性や大量生産を優先する時代は終わりを迎えつつあり、持続可能性や安全性といった価値観が定着しつつある。

こうした社会変化の中で、企業にとってサステナビリティに取り組むことは、ブランドイメージを向上させるだけでなく、新しいビジネスチャンスを生むチャンスとなっている。消費者意識の変化が、食べられるプラスチックの技術開発の原動力といえる。

既存技術の限界

生分解性プラスチックの多くは、高温多湿状態の土壌やコンポストなど特定の条件下でしか分解されず、一般的な自然環境では十分な効果が期待できないとも指摘されてきた。中には特定の消化槽の設置が求められるものもあり、実用が現実的ではないものも少なくない。

より汎用性と安全性の高い素材が求められる中で登場したのが、食べられるプラスチックだ。「分解」から「消化」へと視点を大きく変えることで、従来の技術では難しかった環境負荷の低減を可能としている。


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ゴミから「資源」へ、具体的な活用事例

食べられるプラスチックについての研究は進んでおり、日本国内でも開発に取り組む企業が増えている。ここでは、その事例をいくつか紹介しよう。

カトラリー・容器

インドネシアの企業Evoware(イーヴォウェア)が開発した「Ello Jello(エロジェロ)」は、一見すると普通のプラスチックコップだが、海藻から作られた食べられるグラスだ。同社は、米粉ストローや海藻由来のハンバーガー包装材などエコフレンドリーな商品開発に取り組むかたわら、原材料を国内で入手して現地の雇用創出にも貢献している。

株式会社勤労食の「PACOON(ぱくーん)」は、小麦粉・砂糖・鶏卵などを原材料とする食べられるスプーンだ。ビーツや抹茶で色付けしたカラフルな色合いが特徴で、使い捨てプラスチックの削減に楽しく取り組めるきっかけを提供している。

木村アルミ箔株式会社では、「食べれるうつわシリーズ」として、海苔や昆布、大根、人参といった食材を用いて、ユニークなおかずカップを展開している。おかずと一緒に食べることができるうえに、栄養も摂れるという優れものだ。

物流・包装業界

寒天メーカーの伊那食品工業株式会社が造った「クレール」は、海藻由来の食べられるエコフィルムだ。水分の漏れを防いで食材をまとまりやすくするのが特徴で、お菓子作りや仕切りシートとして利用するほか、印刷して食品に貼り付けることも可能だ。同社の「トンボのはね」はヒートシールに対応しており、粉末スープや油も包装できる。

インドネシアのBiopac社が開発した「Biopac」は、海藻由来の天然包装資材。希望のサイズにカットして印刷用紙にしたり、袋に仕立ててビニール袋のように使ったりと、さまざまな用途で利用できる汎用性の高さが魅力だ。

ロンドンのNotpla社が販売する「Ooho!」は、海藻由来のパッケージで、水やジュースといった液体を包むことができる。ペットボトル削減のために開発された同製品は、マラソン大会の給水でも配布された実績があり、使い捨てプラスチックの代替として高い注目を集めている。


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普及に向けた課題と未来への展望

食べられるプラスチックは、持続可能な社会を実現するための革新的な素材だ。しかしながら、普及には課題も多い。天然素材を原料とするために、一般的なプラスチックに比べると製造コストが高く、強度や耐久性も劣る。自動車部品や電子機器といった高耐久かつ高性能が求められる分野への適用は、現時点では困難だ。

今後、食べられるプラスチックの普及を進めるには、強度を高める技術開発や製造コスト・プロセスの最適化、サプライチェーンの構築が必要となるだろう。また、法規制や国際的な安全基準の整備も重要となる。

そして、消費者が入手しやすい環境づくりや啓発活動も求められる。消費者一人ひとりが当事者意識を持ち、プラスチック問題と向き合うことが、普及の第一歩だ。社会の意識が変われば、大手メーカーが自社製品で食べられるプラスチックを採用する日も、そう遠くはないだろう。


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私たちが描く「ゴミのない」未来

プラスチックは地球環境に悪影響を及ぼす一方で、医療機器や電子機器などに活用され、私たちの生活を豊かにする役目も果たしている。プラスチックは必ずしも悪ではないが、適切に処理されずに蓄積したゴミは、いずれ私たちの健康や命をも脅かしかねない。

食べられるプラスチックは、単なる代替素材ではなく、プラスチックが持つゴミとしての宿命を根底から覆す可能性を秘めている。この技術が普及すれば、ゴミは資源として社会を循環し、私たちの消費行動そのものを環境保全につなげることも可能だ。

もっとも、食べられるプラスチックの普及には、コストや強度などのさまざまな課題が残されている。プラスチックについては、「なるべく使わない」「再利用する」という従来のアプローチを続けながら、革新的技術の成長を社会全体で後押ししていくことが大切だ。できることから一つずつ、身の周りのプラスチックについて見直してみよう。

Edited by s.akiyoshi

参考サイト

注解
(*1)一般社団法人日本バイオプラスチック協会|生分解性プラスチック入門

参考サイト
TBWA HAKUHODOの釣り好き社員から生まれた、海に残るプラスチックをゴミから“栄養”に変える新発想 ー「SUPPLEMENT LURE(サプリメントルアー)」を発表|PR TIMES
Evoware(イーヴォウェア)
PACOON(ぱくーん)
食べれるうつわ野菜シリーズ | 木村アルミ箔株式会社
海藻由来の可食性フィルム | 伊那食品工業株式会社
Biopac
Notpla | Sustainable Packaging Made from Seaweed

About the Writer
小島奈波

夢野 なな

ライター、イラストレーター。芸術大学美術学科卒業。消費が多く騒々しい家族に翻弄されながらも、動植物と共存する生き方と精神的な豊かさを模索中。猫と海、本が好き。神奈川県の海に近い自然豊かな田舎で暮らす。創作に浸る時間が幸せ。
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