気候変動がもたらす異常気象と食料リスク、私たちにできることとは?

猛暑や豪雨、干ばつなど、気候変動による異常気象が世界中で深刻化している。こうした変化は農水産物の不作や価格高騰を引き起こしており、私たちの食への影響も無視できない。

自然と共にある一次産業はすでに適応を迫られ、さまざまな工夫と対策が進められている。この記事では、気候変動の原因や影響、生産現場での対策について解説する。

気候変動とは

気候変動とは、長期的に地球の気温や天候のパターンが変化する現象のことである。近年の猛暑や集中豪雨、干ばつなどの頻発は、気候変動の例であり、身近な自然環境や私たちの生活に深刻な影響を及ぼしている。

気候変動による悪影響が世界各地で顕在化している状況は、気候危機と言っても過言ではない。国家レベルから企業、個人まで、早急な対応が求められている。

気候変動の原因

気候変動の主な原因は、化石資源の利用や森林伐採など人間活動による二酸化炭素(CO₂)の増加である。CO₂などの温室効果ガスは、太陽によって温められた地表の熱が宇宙に放出されるのを防ぎ、地球全体を適切な温度に保つ役割を果たす。

しかし、CO₂濃度が過去80万年間で前例のない水準まで増加したことにより、地球温暖化が進んでいる。地球規模の気温の上昇が、異常気象や海面上昇などの気候変動をもたらしているのである。

気候変動の影響

気候変動の影響は、日本においても顕在化しつつある。熱中症による死亡者数は増加傾向にあり、近年は1,000人規模で推移しているほか、感染症のリスクの増大も懸念事項だ。

自然環境の影響を受けやすい一次産業では、作物の生育障害や品質低下、収量の減少が各地で確認されている。特に果樹や水稲、畜産では高温の影響が顕著であり、漁業においても魚介類の分布変化や養殖業の生産減少が報告されている。

また、洪水や高潮、土砂災害といった自然災害の頻度や規模が増大し、沿岸部では海面上昇や高波の影響により砂浜の消失が進むと予想される。産業やインフラにも被害が及ぶことで、生活基盤への悪影響や経済活動への打撃などのリスクが高まっている。


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世界で頻発。気候変動による異常気象

地球温暖化の進行により、異常気象の発生が増加し悪影響が深刻化している。これまで比較的安定していた地域でも、極端な気象現象が頻発するようになった。

とくに農業や水資源、生態系への影響など、世界中で深刻な被害が懸念されている。ここでは、気候変動によって引き起こされる代表的な異常気象について紹介する。

干ばつ

気候変動による気温の上昇や空気の乾燥度の増加、降水量の減少により、世界各地で干ばつの深刻化が観測されている。特にオーストラリア、アメリカ西部、南米南部などは、過去と比較して干ばつの頻度や影響範囲の増加が大きい。

2022年には、観測史上最も広い範囲で干ばつが発生し、湿潤地域までもが乾燥傾向を示した。このような傾向は、気候変動によって今後も悪化する可能性が高く、農業や水資源への影響が懸念されている。

豪雨

気候変動により気温が上昇すると、大気中に含まれる水蒸気の量が増え、雨の降り方にも変化が生じる。気象庁の観測地点における1901年以降の観測データによると、1日に100ミリ以上の大雨の日数は増加傾向にある一方、雨の降る日自体は減少している。

また、1時間に50ミリ以上の非常に激しい雨や、80ミリ以上の猛烈な雨の発生も増えており、年最大日降水量も増加傾向にある。これらの変化は、短時間に集中して強く降る豪雨のリスクが高まっていることを示している。

山火事

気候変動の影響により、世界各地で山火事の発生や拡大が深刻化している。世界資源研究所によると、森林火災による焼失面積は過去20年で約3倍に増加し、2023年には1,200万ヘクタールに達した。

地球温暖化が進むと高温や乾燥、強風といった山火事を引き起こしやすい気象条件が増えるため、土や植物が乾燥し、火が広がりやすくなることが原因だ。

2024年には南米各国で日本の国土面積の2倍以上に相当する森林や湿地が焼失し、人工衛星による観測が開始された1998年以降で最大の火災面積となった。


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気候変動がもたらす食卓への影響

気候変動による平均気温の上昇や異常気象の頻発は、農水産物の生産に深刻な影響を及ぼしており、食料の値上がりや品薄の一因となっている。

たとえば、アメリカやカナダでは高温乾燥によって小麦が不作となり、2022年3月には小麦1トンあたりの国際価格が前年比2倍以上の523.7ドルに達した。また、異常気象により野菜や果物の生育環境も不安定となり、品質や収量が低下している。

同様にとうもろこしや大豆の価格が高騰し、飼料コストが増大したことで畜産物の価格が押し上げられた。さらに、海水温の上昇が水産資源に影響し、日本近海ではサンマやサケの漁獲量が減少している。

こうした気候変動による生産リスクは食料供給を不安定化させており、私たちの日々の食事もその影響をまぬがれない。


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一次産業の対策と工夫

自然環境との関わりが大きい農業・漁業・畜産などの一次産業は、気候変動の直接的な影響を受けやすい分野である。気温上昇などにより、生育不良や漁場の変化、家畜への暑熱ストレスなど、すでにさまざまな課題が現れている。

こうした状況に対応するため、品種改良や生産手法の見直し、ICTの導入など、現場では多様な対策が進められている。ここでは、それぞれの分野における影響と対応策について解説する。

農業

気候変動は農業に深刻な影響を与えており、野菜や果樹では生育障害や収穫期の変化に見舞われ、水稲では高温による品質低下が報告されている。

気候変動に適応するための対策として、高温耐性品種の開発・導入や基本技術の徹底、適切な水管理などがあげられる。水稲の高温耐性品種の例は、「にじのきらめき」や「つや姫」などである。野菜の生産では遮光資材やミスト冷却を活用する事例があり、花きでは台風被害を軽減するため、補強構造を備えた耐風性ハウスの普及が進められている。

果樹では収穫期の早まりや着色不良に対応するため、暖地向け品種の導入が進められているほか、適応策等の情報を共有するためのネットワーク整備も求められている。このように、農業分野では地域や作物に応じた多様な対策が実施されている。

漁業

気候変動は水産業にも深刻な影響を及ぼしており、例えばブリの北上やサケの分布域縮小など、回遊魚の回遊域が変化している。北海道では近年ブリの漁獲量が急増し、それに伴って漁獲対象魚種や漁業経営の見直しが求められている。

また、ホタテやカキの大量へい死、ノリの収穫減少など、海面養殖業でも被害の報告がある。三重県では、秋季の高水温によりノリの種付けが遅れ、2020年には平年比約6割まで生産量が減少した。

こうした影響に対応するためには、高精度な漁場予測や赤潮対策、高水温に強い品種の開発、藻場・干潟の保全活動といった多角的な適応策が必要である。既にICTを活用した赤潮監視システムの導入や、藻場造成によるアワビ・ウニの漁獲資源回復などが行われている。

畜産

気候変動により気温が上昇すると、家畜や家禽は暑さによるストレスで飼料の摂取量が減少し、体重や品質、繁殖成績の低下が起きる。これにより、産肉量の減少や飼育期間の延長といった生産面での影響が既に現れている。

対策として、送風・散水・日除け・断熱などによる畜舎環境の改善や、栄養価の高い飼料や冷水の給与、給餌方法の工夫などが実施されている。豚舎内にミスト装置と換気扇を組み合わせて設置した例では、夏季の豚の増体量が約8%改善された。

長期的には暑さに強い家畜の育種や、新たな飼養技術の開発も望まれており、農研機構は高温下でも安定した産肉性能を示す肉用豚の育種に取り組んでいる。

気候変動を自分事としてとらえよう

気候変動の問題は政府や企業だけでなく、私たちの生活に直接関わる問題だ。たとえば、猛暑による熱中症の増加や、農作物への影響による食料品の価格上昇・供給不足など、日常生活への影響はすでに現れている。

こうした変化に対し、私たち一人ひとりにもできることがある。エネルギー効率の高い家電の使用、公共交通機関の利用や徒歩・自転車での移動、買い過ぎを控え、使い捨てを減らすことなどは温室効果ガスの削減につながる。

また、省エネ住宅への切り替えや再生可能エネルギーの活用、地産地消の実践も市民レベルで取り組める重要な行動である。こうした行動の一つひとつは小さくても、積み重なれば大きな変化を生み出すはずだ。

まずは気候変動を自分自身の問題としてとらえ、知ることから始め、可能なところから行動を変えていくことが重要だろう。

Edited by k.fukuda

参考サイト

気候変動適応計画|環境省
1276. 気候変動が干ばつの激しさを増幅 | 国際農研
日本の気候に起きている変化とその影響(2024年版) – トピックス – 脱炭素ポータル|環境省
地球温暖化で世界的に山火事が多発 森林火災リスクは2050年までに50%増か -|ウェザーニュース
第1節 世界的な食料情勢の変化による食料安全保障上のリスクの高まり|農林水産省

About the Writer
曽我部倫子

曽我部 倫子

大学で環境問題について広く学び、行政やNPOにて業務経験を積むなかで環境教育に長く携わる。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、未就学児や保護者を対象に自然体験を提供。またWebライターとして、環境、サステナブル、エシカル、GXなどのテーマを中心に執筆している。三姉妹の母。
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