「買わないこと」が次の流行?SNSで広がるZ世代の消費スタイル、過少消費コアとは

現在、若者たちのあいだで「買わない贅沢」とも呼ばれる過少消費コア(#underconsumption)に注目が集まっている。従来は、ラグジュアリーブランドの購入や大量消費が「贅沢」として捉えられていた。だが最近では、自分に必要なものだけを厳選して購入し、最後まで使い切ることを贅沢とする潮流がZ世代を中心に広がっている。

節約術とも捕らえられそうな過少消費コアが、なぜ贅沢と考えられているのか。ここでは、ミニマリストやゼロウェイストとの違いや、若者たちが購入品を減らす選択をしている背景を探る。

買わない贅沢「過少消費コア」とは

過少消費コア(underconsumption core)とは、大量消費から離れ、本当に必要なものだけを厳選して購入し、最後まで使い切ることだ。2024年の7月頃から、TikTokのコンテンツクリエイター達を発端に、この言葉が広がりはじめた。

「#underconsumption core」とタグ付けされた海外の動画には、若者たちが限られた所持品で生活をやりくりする様子が公開されている。たとえば、あるTikTokユーザーは、普段は捨てる食材の種や皮を、スープの材料や洋服の染め剤として使用する方法を投稿した。ほかにも、何年も前に購入した洋服や、擦り切れたバッグや靴を今も使っている様子や、必要最低限のコスメグッズだけを入れた化粧ポーチの中身を紹介している動画もある。

長年の愛用品や中古品を利用している様子をあげた動画 via Becca Loveless’s channel

このような様子から、ファストファッションの台頭をはじめとする安価な商品の購入と処分を繰り返すサイクルを抜け出し、新たな購入は控え、持っているもので満足のいく生活を送ることがトレンドになっていることが分かる。TikTokユーザー達は、長年着ていない洋服が入ったクローゼットや、使っていないコスメグッズで膨れ上がった化粧ポーチを例にあげ、「本当にこんなに必要?」と、フォロワー達に問いかけている。

過少消費コアとミニマリストとの違い

過少消費コアとよく似ているのがミニマリストだ。ミニマリストとは、自分にとって不必要なものは避け、必要最低限のものだけで生活をする人を指す。本当に自分にとって必要なものが何かを考え直すことで、精神的に豊かな生活につなげているのだ。

大量消費とは真逆の生活を送っている点で、過少消費コアとミニマリストは共通している。しかし、ミニマリストはできるだけ「ものを持たない」という部分に焦点を当てている一方、過少消費コアは、できるだけ「買わない」ようにし、今あるものを「使い切る」という消費行動に焦点を当てている点で異なる。

過少消費コアとゼロウェイストとの違い

ゼロウェイストも、過少消費コアと似ている部分がある。ゼロウェイストとは、無駄なものやごみをなくすという意味であり、そもそもごみを出さない工夫や対策を求めている。過少消費コアは、購入品の量が少ないため、おのずと個人が出すゴミの量が減る。つまり、過少消費コアの行動が、ゼロウェイストに通じている部分があるのだ。

しかし、一部の消費者の購入量が減っても、企業もしくは社会全体の工夫がなければ、地球上のゴミは減らない。過少消費コアは飽くまで個人の選択であり、ゼロウェイストは社会的な努力なのだ。つまり、この2つは類似しているが同一のものではない。あくまで過少消費コアを選ぶ人が増えると、結果としてゼロウェイストにつながっていくというのが適切だ。

過少消費コアという選択に、なぜ若者は惹かれたのか

過少消費コアという選択に、なぜ若者は惹かれるのか

若者たちが過少消費コアに惹かれるようになった理由のひとつは、従来のインフルエンサーとは異なる新鮮なコンテンツだからと考えられている。もともとインフルエンサーは、「世間に影響を与える人」という広い意味を持っている言葉だ。しかし、SNSの使用が日常の一部になっている現在、この言葉が主に指すのは、SNS上で商品を紹介してPR料を受け取り、生活を送る人のことだろう。

インフルエンサーは芸能人にも匹敵する知名度と人気を誇り、フォロワーへの影響力はかなり大きい。インフルエンサーが商品紹介で稼げるのは、単に商品紹介が上手だからではない。フォロワーは特定のインフルエンサーの日常生活を、SNSを通じて見続けることで、その人に憧れや信頼を寄せるようになる。その結果として、「この人みたいになりたい」「この人が使っているものを買いたい」「この人が紹介しているから買いたい」と思うようになる。好きな芸能人がCMをやっているから、好きな芸能人がおすすめをしていたから買った、というようなファンマーケティングをしているのだ。

過少消費コアという選択に、なぜ若者は惹かれたのか

しかし、SNS上でのPR投稿はあまりに多いうえ、本当に投稿者がその商品を気に入って紹介しているものかは不明だ。そのため、一部のフォロワーのあいだで、疲労感や不信感も広がっていた。そんな中、過少消費コアを紹介するコンテンツは、フォロワーに購入を勧めない。もう飽き飽きだと思われるほどのPR投稿もない。買わずに自分を満足させるコツとして、今あるものの価値や可能性に気付いて、それを大切にするマインドを教えてくれるのだ。

消費行動は、現在の生活への満足度や、自身の精神的な豊かさにつながる。そのため、広告や口コミを見れば「あれもこれも」と求めるが、同時に商品のラインナップや情報の多さに振り回され、時間やお金がなくなり、疲れや後悔を感じている人もいる。そんな中、過少消費コアは、「今持っているもの」という限られた選択肢を、工夫して使えるだけ使うシンプルなものだ。そういった、余計なものを持たずに精神面を豊かにするライフスタイルが、若者たちを惹きつけているのだろう。

環境問題や人権問題にも通じている

他にも、過少消費コアに注目が集まる理由として、若者たちの環境問題や人権問題への高さもあげられる。サステナビリティーやSDGsなどのワードが、メディアやビジネスでよく使われるようになったが、特に欧米では若者の社会問題への関心が高い。

温暖化の影響もあって、世界各地で生態系が徐々に変化し、自然災害も勃発している。アメリカではヒートドーム現象が起こり、一部地域が異常な暑さに見舞われた。ヨーロッパでも洪水や山火事が発生している。若年層にとっては、自身や彼らの子どもたちの未来にも影響しうるため、環境問題は命にも直結する重要な課題だ。それに加えて、劣悪な生産環境や、建物のずさんな管理が明るみにでたラナ・プラザ崩壊事故以降、ファストファッションに厳しい目を向ける人が増えた。この事件に加え、ファストファッションが発展途上国や環境に与える負荷を浮彫りにした映画『ザ・トゥルー・コスト ~ファストファッション ~真の代償~』の公開以降、大量消費の有害さに気付き、フェアトレード商品やエシカルファッションを好んで購入するようにになった消費者もいる。

環境問題や人権問題に通じているから

過少消費コアは、そもそも購入する頻度が低いうえ、ひとつのものを長期的に使い込む。そのため、ゴミの量が少なくなる。1度に使う洗剤やシャンプーの量を減らしたと語る動画もあり、使用する石油量の減少や環境汚染の抑止効果にもつながっているだろう。また、購入時には長期的に大切に使えるものを探すため、価格帯が高くても、環境や労働環境に配慮した商品が好まれている。商品の生産背景から過少消費コアの生活を選ぶ人もいれば、気付けばそういった生活になっていた人もいるのではないか。

消費者にとっては、経済的、精神的なメリットも。

過少消費コアに注目が集まった背景にあるのは、より良い暮らしや社会問題への意識の高さだけではない。ロンドン芸術大学で教鞭をとるワルピタ氏は、「経済的・財政的な制限が、この流行を後押ししている」と述べている。持っているものが限られているのであれば、その限られたもので、やりくりするしかないという考えだ。

安いものを大量に購入する消費行動から脱するとしても、いわゆる質の良い製品や、社会への配慮が高い商品は、値段が高くなってしまう。そのうえ、食品や洋服などのぜいたく品が繰り返し値上がりしている現象は、世界各国で起きている。ウクライナとロシアの戦争や、コロナ禍の影響を受け、さまざまな業界で原料費や輸送費が高騰。消費者の食生活や娯楽にも打撃を与えている。そうしたなか、手持ちのものを使えるだけ使い切る工夫や努力に注目が集まるのは、むしろ当たり前といえるだろう。

過少消費は節約にもなる

さらに、過少消費コアのトレンド化は、大量所有への憧れからの脱出を意味している。この憧れへの根底には、「満たされたい」「認められたい」「見下されたくない」「恥をかきたくない」といった、自尊心や承認欲求もあった。これらの欲求を持つのは人として自然だ。しかし、SNSによって他者に見られる機会や、他者の生活を垣間見る機会が増えたことで、この欲求は過剰なまでに刺激され、FOMOと呼ばれる情報を見逃すことへの恐怖を人々に与えるまでになった。

過少消費コアの広がりによって、承認欲求を原因とする製品や情報の大量消費から人々をいくばくか解放してくれる。しかし、過少消費コアが流行しているからといって、この欲求が完全に和らいだとはいえないという指摘もある。トロントメトロポリタン大学のフェアーズ氏は、このトレンドについて、「若者ひとりひとりが、SNSで完璧さを見せなければというプレッシャーにさらされている。純粋に他の人のためにというよりは、周囲への配慮がある人であるかのように自分を見せたい。その欲求から、完璧でいなければというプレッシャーが生じている」とコメントした。

SNSに垣間見える日常は、投稿者の日常の一部であってすべてではない。なかには、実際の生活とは異なる様子を見せている投稿や、誇張もあるだろう。フェアーズ氏の指摘は、過少消費コアに関する投稿のなかには、これまでの過剰消費のトレンドと根底を同じとする、一種のパフォーマンスとして生活を見せているものもあることを伝えている。

過少消費コアのトレンドは、本当に新しいのか

過少消費コアという言葉や、それに関する動画コンテンツがトレンドとして広がったのは、2024年の夏以降のことだ。しかし、TikTokのコメント欄には「その節約術、前からしていたよ」「シャンプーを使い切るなんて当たり前」「そんなに画期的?」といったコメントも見られる。

動画のなかには、画期的な節約術や食材の活用法を教えてくれるものもある。しかし、そういった新しさゆえに話題になるのは一部の投稿のみだ。過少消費コアの「最後まで使い切る」「不要なものは買わない」といった消費行動そのものは、決して新しいものではない。実際にTikTokユーザーのなかには、「normal consumption core(通常消費コア)」もしくは「過少消費コア。実際は普通の消費コアだけどね」といった文言とともに、必要最低限のもので生活を送る様子を見せている人もいる。

大量消費が当たり前のように行われている現状と比べると対照的ではあるが、過少消費コアの生活そのものは、社会にとってけっして新しいものではない。新しいスタイルの提案というよりは、企業の価格競争や、SNSや広告による消費促進による、安さや消費の多さから抜け出すための気付きを与える役割が大きい。どちらかというと、余分なものをそぎ落とし、ちょうど良いところに戻っていくライフスタイルだと説明されたほうが、しっくりくるかもしれない。

さいごに

必要なものだけを選んで最後まで使い切る過少消費コアは、さまざまな理由で若者たちのあいだで広がってる。実際の行動そのものに目新しさはないかもしれないが、この言葉がトレンドになっている現状から、若者たちの消費行動は、大量消費から徐々に本当に必要とするものへ移行していることは明らかだろう。また、過少消費コアに関する投稿が、SNSや広告による過剰な購買欲求への抑止力になっていことから、依然としてSNSが与える若者の行動への強い影響力も感じられる。

しかし、SNSのトレンドの移り変わりは激しい。ジミル氏は「過少消費コアは、反消費主義の新しい言い換えだ。ミニマリストやゼロウェイストなど、トレンドになった言葉は今も一部の人に影響を与えているが、SNSでの注目度は薄れている」と語った。言葉が入れ替わり、新しいトレンドとして注目されているが、消費主義への疑問は以前からあったことを示している。しかし、トレンドとして新しい言葉が社会に広まることが、一部の消費者が日常生活を見直し、自分や周囲のためにより良い選択をするきっかけになるのは否定できない。

参考サイト
‘It is OK to be content with your simple life’: is ‘underconsumption core’ the answer to too much shopping?|The Guardian
What, Exactly, Does Underconsumption Core Mean?|VOGUE
Thousands Of Gen Z’ers Are Taking To TikTok To Share Everything They’re *Not* Buying, And It’s Kinda Refreshing To See|BuzzFeed

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