FOMOとは
FOMO(フォーモ)は、“Fear Of Missing Out”を略した言葉で、直訳すると「取り残される恐怖」という意味になる。これは、最新情報を逃すことで社会から取り残される不安を示している。
現代社会は、インターネットやSNSなどのソーシャルメディアが発展し、かつてないほどの勢いで情報が発信、拡散されている。私たちの周りには情報が溢れるようになり、それらを把握するため、こまめに最新情報をチェックしなければ不安になるという心理状態が、FOMOである。
たとえば、情報を見逃してしまったがために、成功のチャンスを逃してしまうかもしれない、人間関係を保つことができなくなるかもしれない、といったものだ。特に後者は、いつも共に過ごしている仲間だとしても、チャットやSNSで四六時中連絡を取り合わなければ不安に陥るという。
FOMOからの派生語:MOMOとJOMO
FOMOがさらに進むと、MOMO(Mystery Of Missing Out)という状態になるため、注意が必要だ。これは、友人のSNS更新や連絡が途絶えると、「何か自分の知らないところで話が進んでいるのではないか」「疎外されているのではないか」という被害妄想に陥った状態のことである。
一方で、FOMOとは正反対の意味を持つ、JOMOという言葉も生まれている。これは“Joy Of Missing Out”の略で、「取り残される喜び」という意味だ。FOMOによってある種の強迫観念に苛まれた状態から脱却し、むしろ情報から解放されることが喜びに繋がるという考え方である。
FOMOの原因

FOMOの定義から考えると、いかにも「現代病」といったところだが、「何かを見逃すのではないか」という人間心理自体は決して現代特有のものではない。
しかしソーシャルメディアの発展によって、私たちが実際にどれほど多くの情報を逃しているかが顕在化してしまったのである。たとえば、SNSに投稿される友人たちの行動や、流行りの店や商品などは、自ら調べにいかなくとも受動的に目にする機会が増えた。これらは、現実世界での人間関係にも大きな変化をもたらすこととなる。
「同級生の誰々が結婚した」「どこどこの店が流行っている」といった情報は、仲間内での共通認識となり、知らなければ話についていけなくなったりする。つまり、今まで「知らなくても生きていけること」だったものが「知らなければならないこと」へと変化したのだ。
ひっきりなしに更新されつづける「最新情報」によって、やがて人間が持つ「他者と社会的な繋がりを持っていたい」という欲求を常に満たすことになり、スマートフォンなどのデジタルデバイスが手放せない状態に陥ってしまうのである。これにより、分単位・秒単位で更新される最新情報を常に得ることが現実的に可能となり、情報を逃すことへの恐怖が以前よりも増加したと考えられる。
FOMOに起因する行動の例
では実際、FOMOはどのようにして人の行動に影響力を与えるのだろうか。「SNS病」や「デジタル依存」というように、主にインターネットに関する言及が多いものの、実は私たちの日常に自然と起こりえるものばかりなのだ。
SNS(ソーシャル・ネット・ワーキング)
現代のFOMOといえば、真っ先にSNSが思い浮かぶだろう。タイムラインを常に更新しつづけ、誰よりも早く情報を得ようとするのは、FOMOの現れである。大量のアカウントをフォローし、他人の日常、最新のおすすめやニュースに触れようとするユーザーのFOMOの心理を利用しているのが、企業や著名人だ。その多くは、自分自身や自社の認知度アップを目的にSNSアカウントを運営している。
投資
株や仮想通貨などは秒単位で価格が変わるが、この価格変動は特定の出来事やトレンドによって起こるため、投資家は常に情報をチェックしなければならない。ここにも「機会を逃すかもしれない」というFOMOの心理が働いており、投資の世界では投資家のFOMOを利用して価格操作が行われていることもある。この心理から買いが続く相場のことを、FOMO相場と名付けられている。
買い物
FOMOは、買い物の場面でも多くみられている。とくに「期間限定」「タイムセール」「先着特典」などの言葉に弱いという人も多いだろう。これは、消費者のFOMO心理を利用した企業のマーケティング戦略だ。その目的は希少性や緊急性を高めることであり、この言葉によって消費者は、「チャンスは今しかない」「この機会を逃したら次はないかもしれない」という不安から購入に至る。
FOMOの対策

FOMOに振り回されず、自分の生活や精神状態を安定させることは、自分の人生を楽しむために非常に重要である。ではFOMOに陥らないため、具体的にどのような対策を講じればよいのだろうか。
通知をオフにする
SNSやメッセージアプリ、ニュースサイトの通知は、状況に応じてオフにすることが大切だ。まず、家族や仕事関係者からの連絡、災害や社会の大きな時事情報など、生活や仕事に関する緊急性があることについて考えてみよう。すると、それ以外のほとんどが瞬時に得る必要のない情報であることに気がつくだろう。それらの情報は、心に余裕を持ち、落ち着いて確認できるときに取得するようにしよう。時にはスマホやパソコンと距離をおくデジタルデトックスを実践することも効果的だ。
フォローするアカウントを選ぶ
様々な人の生活を見るため、SNSで大量のアカウントをフォローしている人もいるのではないだろうか。しかし、SNSに投稿されたものは人の生活のほんの一部であり、しかも加工されたものや、過度に演出されたものであることも多い。
自分にとって有意義な投稿をするアカウントだけを選び、ミュートや非表示などの機能を駆使しながら、見ていて心が安らぐようなタイムラインづくりを心がけよう。
ネット広告は細部までよく見る
SNSやWeb記事に表示される広告は希少性や緊急性を煽り、消費者にFOMOを植え付けるため、「限定」などの文字を大きく記載することを意識して作られている。また、商品や人物を美しく加工し、実際とは大きく異なる写真になっていることも少なくない。インターネット上で商品やサービスを購入することが多くなった今、それらの言葉や写真をしっかりと細部まで確認し、慎重に検討するようにしよう。
FOMO(恐れ)からJOMO(喜び)へ
FOMOの状態に陥った人は、情報を集めることに必死になるあまり、あたかもインターネット上だけが自分の居場所のように感じてしまうことがある。SNS上の付き合いがメインの人間関係になり、ネットニュースが世の中の全てだと思い込んでしまい、現実世界での人間関係や周囲の環境との繋がりが希薄になってしまうのだ。
FOMOが広がり、社会問題となる中、あえてソーシャルメディアやインターネットと適切な距離をとることで「自分にとって本当に大切なものはなにか」と考える人々が現れるようになる。この動きはJOMOと呼ばれ、先述のように、昨今ではJOMOを推奨する人々が増えているのだ。
JOMOは、誹謗中傷や真偽不明の情報が蔓延るインターネットの世界にとらわれず、目の前のリアルを生きることを目的としている。デジタルデトックスが話題になったように、JOMOが広がる動きは、ITが生活のすべてとなりつつあるデジタル社会の限界を暗示しているのかもしれない。
まとめ
2000年代以降、急速に発展したIT社会。通信技術の向上により、私たちはこれまで決して手に入れることのできなかった、地球の裏側や宇宙の情報まで、瞬時に手に入れられるようになった。遠くに住む人とも簡単に連絡がとれるようになり、人間関係の幅を広げてくれたことはありがたい恩恵である。
しかし一方で、知らなくてもいいこと、知らない方がいいことを目の前に提示してくることは大きな悪影響を及ぼす。FOMOに陥ると、そうした情報もすべて手に入れなければならないという焦燥感から、デジタルデバイスを手放すことができなくなる。現実世界と向き合わなくなり、人間関係や心身を壊すなど、時に身を滅ぼすこともあるのだ。
もし自分がFOMOに脅かされているかもしれないと思ったら、今一度生活を見直し、まずは短時間スマートフォンから離れてみてはいかがだろうか。
参考記事
FOMO and Social Media|Caterina.net
FOMO|証券用語解説集|野村証券
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