2024年4月17日〜19日にかけて、東京・お台場の東京ビッグサイトにて、「第4回サステナブルファッションEXPO春」が開催された。ファッション業界全体で、環境や社会に対して配慮をすることが求められる中、エコ、リサイクル、アニマルウェルフェア、エシカル、オーガニック、フェアトレードなど、サステナビリティを意識したファッション製品が世界中から集まる展示会である。
FaW TOKYOの一環として催された同展示会。世界25か国800社が出展し、3日間の累計来場者数は22,910人にのぼるなど、サステナブルファッションに関心を寄せる多くの人で会場は賑わった。
サステナブルファッションとは|環境・社会配慮が最も求められるファッション業界
サステナブルファッションとは、衣類の生産から廃棄に至るまでのプロセスにおいて、地球環境への配慮や倫理的な視点を取り入れた持続可能なものづくりのことをいう。
ファッション産業は、大量生産・大量消費・大量廃棄といった直線型経済によって成り立っており、環境負荷が特に大きい産業として認識され始めている。服の製造には大量の資源やエネルギーが必要で、服一着をつくるためにもCO2排出量は約25.5kg(500㎖のペットボトル約255本製造分)、水は約2,300ℓ(浴槽約11杯分)も消費すると試算される。
また大量の衣類が廃棄されることでも、地球環境に対して多大な負荷を与えている。ファストファッションの台頭によって衣服の価格は年々安くなっており、1990年には一枚当たり6,848円だったにもかかわらず、2021年には2,785円にまで下がった。このような衣料品の低価格化と衣服のライフサイクルの短命化に伴い、購入する枚数や廃棄される服の量も増加していった。そして、手放された衣類のうちリユース・リサイクルされているものは、わずか32%にとどまっており、残りの大半はゴミとして埋立処分されているのが現状だ。
このようなファッション産業の問題に対して、官民が手を組んで衣類のサーキュラリティを高めようと模索している。原料調達、製造、販売、利用、回収の各フェーズにおいて、リサイクル素材を用いた製品設計や受注生産の導入、回収システムの確立など様々な施策が思案・実施され、業界全体でサステナブルな取り組みを強化している最中だ。
ファッション業界の主なターゲットは、環境意識やエシカルな視点を重視するZ世代などの若年層となっている。そのため、環境や社会に対して、企業や製品が与える影響に強く目を光らせている消費者も多い。だからこそ、変革のスピードも速く革新的なアイディアが出てきやすい環境ともなっているのだ。
まさに変化の過渡期にあるファッション業界のサステナブルな取り組みを見てみよう。
参加企業のご紹介
多くの企業が多方面からサステナブルな取り組みを推進している中、特に気になった6ブースを紹介する。
株式会社V&A Japan
大阪に拠点を置く繊維メーカーV&A Japanでは、土に還るポリエステル「CRAFTEVO ReTE」(以下、ReTE)を開発している。このポリエステルは、特定の条件のもとでコンポスト(堆肥化)でき、最終的には水と二酸化炭素に分解されるため、埋め立てられる衣類ゴミを削減できるだけでなく、焼却しないため二酸化炭素の削減にもつながる。
また、回収システムを確立するために、ReTEを使用した製品には製品識別タグをつけ、使用後の製品を回収できるように工夫も行っている。ポリエステルの耐久性と生分解性の両立を実現したReTEには注目が高まっており、大阪万博のユニホームにも採用されている。
企業URL:https://vajapan.jp
株式会社オークラ商事
アパレル資材の卸売り販売を行うオークラ商事は、業者向けのアパレル資材販売サイト「APPAREL X」を運営する。「アパレルの資材調達プロセスを、変える」をビジョンに、資材調達の煩雑さを解消することに貢献する同サイト。その中で、取引先のブランドから回収した端材を低価格で再販するという取り組みも実施している。
アパレル業界では、商品を作る際に多くの裁断ごみが発生しており、素材のうち約15%は裁断によって廃棄されてしまうとも言われている。また、中にはシーズン中に活用しきれなかった生地が20メートルも余るというケースもあるようだ。同社は、そういった生地などを業界内で再流通させるシステムを構築し、廃棄される素材を減らそうと試みている。
企業URL:https://www.okurashoji.co.jp
株式会社フラッグ
株式会社フラッグは、エシカルなセレクトショップ「style table」「Ethical&SEA」を、東京・大阪など国内の主要都市に合計23店舗展開している。事業を通じて、すべての人に「気持ちの良い消費・心身ともに健康な生活」を提供することで、「お互いの生活や地球環境を思いやりながら過ごすこと」が当たり前の社会を目指す。
取り扱う商品は、「オーガニック」「オーシャンフレンドリー」「プラスチックフリー」「グリーンリカバリー」「フェアトレード」「ヴィーガン」「ナチュラル」の7つの軸をもとにセレクトし、消費者のエシカルな暮らしを後押しする。今後、店舗の壁に電子ゴミを利用したいと構想しており、商品だけでなく店舗設計にもサステナブルな視点を取り入れようと試みる。
企業URL:https://flag-support.jp
イーオクト株式会社
イーオクト株式会社は、人々の暮らしを「もっと自然に、もっと快適に、もっとたのしく」することを使命として、サステナブルな製品や環境にやさしいグリーンクリーニングツールの輸入および卸売りを行っている。同社は、地球環境だけでなく、人々の暮らしも豊かでサステナブルなものにするために、製品のデザインや使い勝手も重視する。
今回の展示会では、ドイツ・ドクターベックマン社の「ブラック&ファイバーリフレッシュ黒復活シート」などを並べ、洗濯による地球環境への負担を軽減する「サステナブルランドリー」の啓蒙に努めていた。洗濯を通じたサステナブルなアプローチによって、服を長く大切に着たいという人々の想いに応え、服を捨てないための選択を提案する。
企業URL:https://www.eoct.co.jp
室谷株式会社
来年創立100周年を迎える大阪の室谷株式会社は、新ブランド「hugcumu(はぐくむ)」を立ち上げ、サステナブルな取り組みを推進している。
その一環として、大阪大学発のベンチャー企業・株式会社シモンドと提携し、エジプトの砂漠の緑化事業をサポート。シモンドは、エジプトの砂漠にホホバを植樹することで持続的に緑化を推進することを計画しているが、hugcumuではこのホホバから抽出したオイルを生地作りの柔軟加工に利用している。ホホバオイルを使うことで、よりやさしい肌触りになるとのことだ。このように事業を通じて手を組むことで、持続的に砂漠の緑化運動をサポートできるだけでなく、自社のサステナブルな取り組みにもなるため、まさにwin-winな活動といえる。
企業URL:https://www.murotani.co.jp/
緑陽生質資源股份有限公司(Resource Green-Sun Biomass Co.,Ltd.)
台湾・緑陽生質資源株式会社は、2019年から、パイナップルの葉を使用した繊維とパイナップル葉パルプの研究、開発・生産に投資を開始。そして、パイナップルの葉や茎、根を分解し、再利用可能なパイナップル繊維を作り出すことに成功した。パイナップル繊維は、衣料品・生地・皮革・医療包帯などに使用され、また、パイナップルの葉のパルプや粉末は、環境配慮素材・生活用品・衣料資材などに利用可能ということだ。
実は、パイナップルの果実が1トン生産されるごとに、3トンのパイナップルの葉と枝が農業廃棄物となり、パイナップル産業は世界中で約8,700万トンの廃棄物を排出している。可食部の割合が少ないパイナップルは、どうしてもこのように大量の廃棄を出してしまうが、同社は生物学的手法を利用して、パイナップルの廃棄物を再利用可能で分解可能な製品に変えるために挑戦を続けている。
まとめ
今回の展示会では、業界全体でサステナブルなアクションを推進している様子を肌で感じることができた。
未販売の服が大量に廃棄されていることや、生産国における労働者の人権侵害が次々に明るみになったことで、社会全体からファッション業界に対する変革の要請がなされているが、変な切迫感や悲観した雰囲気はなく、どこか変革のときを楽しんでいるようにも見えた。
消費者として、これからもファッション業界のポジティブな動きにより一層注目し、製品のブランドやデザインだけでなく、背景にあるストーリーや社会とのつながりに想いをはせることも、ファッションの楽しみ方の要素として取り入れていきたい。
■参考サイト
https://www.fashion-tokyo.jp/spring/ja-jp/about/sus.html
https://www.env.go.jp/policy/sustainable_fashion
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