海洋プラスチック問題とは
海洋プラスチックとは、世界中の海に漂っているプラスチックごみのことを指す。
安価で利便性が高いことから、さまざまな製品に利用されているプラスチックだが、一方で、その製品の多くが使い捨てされているのが現状だ。
適切に処理されなかったプラスチックは河川から海へと流れ、海洋生物に対して甚大な被害を与えているだけでなく、街の景観の悪化や漁業・養殖業への悪影響をもたらしている。海洋プラスチック問題は今後ますます深刻になると懸念され、環境面における喫緊の課題の1つとして捉えられている。
また、海洋プラスチック問題においては、マイクロプラスチックの問題も深刻だ。流失したプラスチックごみが波や紫外線等の影響で5mm以下になったものや、製品の原料として作られたもともと細かいプラスチックのことで、とても細かい粒子であるため回収が困難なうえ、自然に分解されることもなく、海流の影響を受けて広い範囲で残り続けている。
海洋プラスチック問題の現状

WWFによると、世界中に散らばる海洋プラスチックの量は、すでに存在しているものでも1億5,000万トンを超えているという。ここに年間800万トンが新たに流れ込むとされ、これは実にジェット機5万機に相当する重さである。
海洋プラスチックの8割以上は陸上から流入したもので、中でも使い捨てが前提とされる容器や包装資材が特に多くみられる。これらは世界全体のプラスチック生産量の36%を占め、発生したプラスチックごみの内訳に至っては47%と約半数にもなる。
不適切に廃棄されたレジ袋やペットボトルなどは海へ直接、または川から海へと流れ込む。それらが紫外線や波の影響で小さく砕かれ、マイクロプラスチックとして海に漂ったり堆積したりすることで海を浸食しているのだ。
海由来のプラスチックごみは、陸由来のものと比べればそう多くはない。しかし漁具の多くは特に耐久性が強いプラスチック製品だ。投棄または廃棄された魚網は「ゴーストネット」とも呼ばれ、長い間海の中を漂いつづける。そこにアザラシや海鳥、ウミガメが絡みついてしまい、抜けられずに苦しんだ挙句に命を落としてしまう事例が世界中で後を絶たない。
海洋プラスチック問題の原因
プラスチック製品の製造は年々増加しており、その製造量は過去50年で20倍以上にもなっている。一方、これまで生産されたプラスチックの中で、リサイクルされているものはたったの9%。簡単に捨てられることも多く、街で捨てられたビニール等が風に乗って川や海へ流れるだけでなく、直接海に投げ入れたりする、いわゆる「ポイ捨て」の件数も比例して増加している。
しかし私たちはそれ以外にも無意識のうちに、しかも日常的にマイクロプラスチックを流出させてしまっているのだ。
例えば、スクラブ剤として歯磨き粉や洗顔料などに含まれているマイクロビーズ、プラスチックの原料であるレジンペレット、自動車等のタイヤの摩耗によるもの、合成繊維の欠片などがこれにあたる。
これらは私たちの日常生活で当たり前のように使用され、知らず知らずのうちにプラスチックを海に流してしまっているのである。
また先述の「ゴーストネット」のように、海由来のプラスチックごみは魚網や漁具の不法投棄によるものが多くを占める。これらは高い耐久性が特徴だが、そのメリットは言い換えれば簡単に分解されることはないということ。そのため半永久的に自然の中に残り続け、紫外線や波の影響を受けて粉砕されていく。そして陸由来のプラスチックと同じく長い時間浮遊、蓄積していくのだ。
海洋プラスチックが与える影響
マイクロプラスチックによる影響で深刻なものが、サンゴの体内に取り込まれていること。サンゴは海水のCO2の濃度調整に欠かせない役割を持っているが、体内を蝕むマイクロプラスチックによって褐虫藻が減り、光合成できる共生関係を崩すことになるからだ。また海洋生物50万種のうち、およそ4分の1がサンゴ礁域に暮らしていることから、海の生態系や温暖化への甚大な被害は増加していく一方である。
プラスチックは製造の過程で化学物質が添加されたり、漂流するうちに有害物質が吸着していくことが多く、結果としてマイクロプラスチックには、それらの有害な物質が含まれていることも多い。
プランクトンが飲み込めるほど小さいマイクロプラスチック。そのため世界中の魚介類など多くの海洋生態系に取り込まれており、それらは食物連鎖を通して私たちの食卓にのぼり、だんだんと人体に蓄積されていくと考えられている。現在すでに、発がん性や免疫機能の低下、胎児・乳幼児における発達・発育の異常、生殖に関する疾病の増加などの報告もある。
プラスチックは体内で消化されないため、海洋生物の中には窒息や腸閉塞を起こして死んでしまうという事例も起こっている。
海洋プラスチック問題への対策

海洋プラスチック問題は早急に解決されなければならない問題であるが、世界の国々および日本の対策はどのようにされているだろうか。
世界の対策
世界各国ではプラスチックの生産・使用を削減する積極的な動きが見られており、2018年2月時点で、45か国以上でレジ袋の使用を禁止することを表明している。
欧州議会では2018年10月、2021年から使い捨てプラスチック製品であるストローや食器、綿棒、マドラー等を全面的に禁止する法案を可決。また主要なプラスチックごみの一つでもある、たばこのフィルターについても2030年までに8割を削減するとしている。また、ヨーロッパ各国では、使い捨て容器を使わない「量り売り」を推進する動きも出てきている。
1人当たりのプラスチック容器包装の廃棄量が、世界トップのアメリカでは、2021年11月に「国家リサイクル戦略」を発表し、リサイクルが可能な商品の開発などを行うことで、2030年にプラスチック製品のリサイクル率50%に到達することを目指している。
世界で最もプラスチックの消費量が多い中国では、2021年9月に「プラスチック汚染改善行動計画」を発表し、生産、流通、消費のそれぞれにおけるプラスチック製品の管理に関するルールを明記している。
日本の対策
海洋プラスチックの問題の解決には、生産・使用削減やリサイクルシステムに関する法律を整備することが有効的だが、日本はこの分野において世界に後れを取っている。
プラスチック生産量が世界3位の日本では、発生するプラスチックごみの約半分を容器包装等が占めており、1人あたりのプラスチックごみ発生量も世界で2番目に多い。これは世界の海洋プラスチック問題において、日本がその一因となっていると言い換えることができる。
このことから日本において最も効果的な対策は、使い捨て容器包装等の生産・使用を減らすことである。
そんな中、2022年4月には「プラスチック資源循環促進法」通称プラスチック新法が施行された。以前よりレジ袋の有料化が実施されていたが、この法律では新たに使い捨てのカトラリー類やストロー、クリーニングのハンガーなど、一度だけ使われて破棄される「ワンウェイプラスチック」の使用を削減するほか、環境に配慮された製品の設計、使用済み製品の分別・回収または再商品化を促進することなどが定められている。
私たちができること

海洋プラスチックは日常的に排出されるごみが圧倒的に多く、個人による取り組みが最も重要である。以下では生活に取り入れやすい行動を紹介する。
料理
・使い捨てのラップではなく、洗って何度も繰り返し使える蜜蝋製などのエコラップにする
・生ごみはビニール袋などで捨てず、紙製や生分解性プラスチック製にしたり、コンポストに挑戦してみる
・食品の保存容器やお弁当箱などはシリコン、ホーロー、ガラス製品のものを使う
掃除
・天然素材の布巾や箒、植物繊維のヘチマスポンジ、天然ゴムから作られた手袋など、掃除道具を自然由来ものにする
・重曹やクエン酸などで掃除用の洗剤を手作りしてみる
・自宅だけではなく、地域や海岸のごみ拾いボランティアに参加する
洗濯
・目の細かい洗濯ネットや、抜け落ちたマイクロファイバーを集めてくれるコーラボールなどのグッズを使う
・洗剤は詰め替え用や量り売りのものにする
・マイクロカプセルなどが含まれている洗剤や柔軟剤を使用しない
・アクリル、ナイロン、ポリウレタンなどプラスチック由来の服を着ない
買い物
・プラスチック由来ではなく、天然素材の製品を買う
・個包装ではなく大袋のお菓子にするなど、過剰に包装されていない商品を選ぶ
・マイボトルやマイバッグを持参し、プラスチック由来の容器を使用しないようにする
・購入前にもう一度、本当に必要なものなのかどうかを考えてみる
まとめ
世界の海で深刻な問題となっている海洋プラスチック。日常生活の中ではあまり感じにくい問題かもしれないが、その意識とは裏腹に、私たちの暮らしによってもたらされた原因ばかりだ。
海洋プラスチック問題を解決するためには、私たち一人ひとりの取り組みが非常に重要である。これまで私たちの生活の利便性を高め、多くの恩恵を与えてくれているプラスチックだが、いま地球環境の不調和を生み、生物や人間の健康に甚大な被害を与えていることも事実である。
便利なプラスチックを過剰に使用していないか、適切な処分方法を理解して実行できているかといった、一人一人の日常の小さな意識の変化によって、プラスチックごみ問題の改善につながるはずだ。
参考記事
海洋プラスチック問題について|WWFジャパン
海洋プラスチック問題|IDEAS FOR GOOD
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