サステナブルな大会を目指す
2023年5月26日、フランス・パリのイダルゴ市長は、2024年のパリオリンピック開催に際し、史上初となる使い捨てプラスチック使用禁止の大会にすることを発表した。
プラスチックごみによる深刻な環境問題への対応や、2012年のロンドン五輪、2016年のリオ五輪時と比較して、CO2排出量を半減させる意向を示している。
開催される競技場では、会場内のペットボトルの持ち込みを原則禁止とする。代わりに、パリオリンピックの公式スポンサーであるコカ・コーラ社より、再利用できるガラス瓶や、ソーダファウンテン(清涼飲料水を供給する機械)を200以上設置するなどして、飲料を提供する予定だ。
マラソン選手の給水もカップで提供されることになり、プラスチックの使用を禁止するために徹底した計画を立てている。

サステナブルな大会に向けてはプラスチックの規制だけでなく、CO2排出量の削減にも取り組む方針だ。
競技施設の95%は既存もしくは仮設の建物でまかなうことで、競技場を建設する際のCO2排出量を抑え、大会後に地域住民にとって負の遺産にならないように企てている。
会場までのアクセスにおいても、観客が自動車ではなく、鉄道や自転車、徒歩を移動手段として選択できるように環境を整えている。競技場へつながる55キロメートルのサイクリングロードを新たに敷設し、会場周辺には広域な専用駐輪場が設置される。また、大会のチケットを保有している観客は、無料で公共交通機関を利用できる。さらに、地方の会場へアクセスできるように鉄道網の増強も進めているなど、CO2削減のためにあらゆる方向から交通整備を実施している。
本プロジェクトでは、イダルゴ市長の意向に基づき結成された「エコロジカルトランスフォーメーション委員会」が助言・監修を行う。当委員会は、生物多様性専門家のジル・ブフ氏が議長を務め、気候やエネルギー、循環経済、食事サービスなどにおける9人の専門家によって構成され、気候と環境戦略でパリ五輪を支援する方策だ。
多様な専門家によるサポートのもとで実施されるパリオリンピックは、科学的データや専門的な知見に基づいた施策を行い、環境問題に対して真にインパクトがある大会になることが期待される。
プラスチック規制を強めるフランス

パリ五輪の開催を通して、フランス政府およびパリ市はプラスチックごみ削減をはじめとする環境政策を全面的に打ち出しているが、これまでも世界に先駆けてプラスチックの廃棄量削減に向けて取り組んできた。
2016年7月、小売業における使い捨てプラスチック袋の使用を禁止し、2017年1月に生鮮食品の包装袋にも適用範囲を拡大。2020年2月には「サーキュラーエコノミーの廃棄物防止法」が制定され、2021年より段階的に使い捨てプラスチックの利用を禁止している。
さらに、2023年1月より、ファストフードで使用されるカップ・カトラリー・グラスも、プラスチック製から再利用可能な素材へと変更された。実際、スポーツイベントなどの開催時にスタジアム内で飲食物を提供する際にも、プラスチック以外の包装を使用しており、ペットボトル飲料やプラスチックを用いた一部の商品も、リサイクル品や再利用できるものが使用されている。
このように、積極的にプラスチックごみの削減を推進しているフランスは、2040年までに使い捨てプラスチック容器・包装の販売停止を掲げている。
プラスチック規制の目的は、単に「プラスチックを使用しない」ということだけではなく、日頃使用されているモノの素材ごとの処理方法を、消費者が正しく理解するという点も重視している。使用後は分別して捨てたり、丁寧に洗ってリサイクルに出したりするなど、循環を意識したゴミ処理を徹底することで、廃棄物や温室効果ガスの削減につながり、環境問題に対しての有効なアクションとなる。
史上初となる、「プラスチックフリーのオリンピック」が成功すれば、今後のオリンピックやあらゆるスポーツイベントの施策の模範になると同時に、世界中の市民にプラスチックごみをはじめとする様々な環境問題や、それに対しての具体的なアプローチを示す好機になるだろう。
【参考記事】
The committee for the games ecological transformation
Paris to ban single-use plastic from the 2024 Olympic Games
フランス、攻めの法律で脱プラへ大きな一歩 プラスチック包装をめぐる国内外の現在地|SB Journey
関連記事









