なぜ日本のゴミが太平洋にあるのか。私たちの選択が海に与える影響

なぜ日本のゴミが太平洋にあるのか。私たちの選択が海に与える影響

海洋環境にさまざまな影響を与える「海洋プラスチック問題」が深刻化している。 海に浮遊するゴミによって生態系が崩れるだけではなく、漁業や観光業への影響もある。

「ゴミを海に捨てたことなんてない」と感じている人も多いのではないだろうか。しかし、太平洋には日本の面積の4倍以上の規模のゴミが浮いているという。もしかしたら私たちの生活が本当に海洋プラスチック問題と深く関わっているのかもしれない。

プラスチックに囲まれた日常と海

プラスチックに囲まれた日常と海

海洋プラスチック問題を、自分とは遠いところの問題に感じている人が多いのではないだろうか。しかし実は、海洋ゴミの7~8割は街で捨てられたものとされる。川から海に流れ出たゴミが、潮に乗って沖まで行ってしまうのだ。

海洋ゴミがなぜ問題かというと、海に放置されたプラスチックは消失しにくいからだ。自然になくなるまで、比較的分解されやすいビニール製のゴミ袋が20年、ペットボトルは400年、釣り糸など漁具は600年とされる。半永久的に海洋上に漂うため、海洋ゴミは蓄積され続けてしまうのだ。

プラスチックであふれている日常生活

プラスチックの始まりは1835年に遡る。フランスの化学者ルニョーが塩化ビニルとポリ塩化ビニルの粉末を作成したことから始まり、ポリスチレンやナイロンなどのプラスチックが開発されると次第に人々の生活に広がっていく。日本でも1950年代から本格的に普及するようになった。

プラスチックの語源は「形づくることができる」という意味を持つギリシャ語の「plastikos(プラスティコス)」。石油から製造され、熱や圧力を加えるとさまざまに形作ることができる。そのため、多種多様な製品に使用されるようになっている。

一般社団法人プラスチック循環利用協会によると、2023年の日本国内の「樹脂生産量」は887万t、「樹脂製品消費量」は843万tだ。

日本はプラスチックゴミ大国

一方、プラスチックの排出量を示す「廃プラ総排出量」は769万t。以下の表は、分野別にまとめたものだ。

順位用途分野使用量割合
1位包装・容器等/コンテナ類360万t46.8%
2位電気・電子機器/電線・ケーブル/機械等137万t17.8%
3位事務用品/衣類履物/家具/玩具等77万t10.1%
4位建材59万t7.6%
5位生産・加工ロス58万t7.6%

樹脂別の内訳は、ポリエチレンが261万tで33.9%、ポリプロピレンが187万tで24.3%、ポリスチレン類が89万tで11.6%、塩化ビニル樹脂が69万tで9.0%などとなっている。

2015年のデータになるが、人口1人あたりのプラスチック容器包装の廃棄量は年間約32kgに相当する。これはアメリカに次いで2番目に多く、日本がプラスチックゴミ大国であることを示している。

さらに日本列島は四方を海に囲まれた島国で、常に海洋上にゴミが流出するリスクがある。環境省では、プラスチックの流出量は年間11,000〜27,000tと推計している。 


REMAREとフィッシャーマン・ジャパンによる海洋プラスチックのアップサイクル事例

「太平洋ゴミベルト」の存在

世界中で海に流出するプラスチックゴミは年間約800万tと言われる。ほとんどは海岸に打ち上げられるが、海流に乗って特定の場所に集まってしまうものもある。集まり続けるゴミは塊のようになって浮いており、その通称は「ゴミベルト(Garbage Patch)」。所有者がいないため、手付かずのままゴミが増え続けている。

ゴミベルトは、大西洋、太平洋、インド洋などに5つあり、最大規模とされるのが「太平洋ゴミベルト(Great Pacific Garbage Patch)」だ。北太平洋を循環する海流の影響で、カリフォルニア州とハワイ州の間の数百km沖にある。その大きさは160万km²。これは日本の陸地の約4.2倍だ。

調査したオランダのNPOオーシャン・クリーンアップによると、太平洋ゴミベルトから回収したゴミの99.9%がプラスチックゴミで、少なくとも1兆8,000億個(約8万t)のプラスチックゴミがあると推計した。プラスチック片の言語から発生源を国別で特定すると、日本が33%を占めており、中国に続いて世界で2番目の多さだった。

なお、環境NPO「Plastic Oceans」は、太平洋に浮かぶプラスチックゴミの島を「Trash Isles(ゴミ諸島)」という国として国連に申請する活動も行っている。


海洋プラスチック

日本の海岸線と国境なきゴミ問題

日本の海岸線と国境なきゴミ問題

四方を海岸線に囲まれた日本では、ゴミが流出するだけではなく、他国から漂着する可能性もある。漂着ゴミによる影響として以下のようなことが考えられる。

  • 景観やレジャーへの影響:美しい景観を損なったり、海辺で楽しむレジャーの妨げになる
  • 安全な暮らしへの影響:ガラス破片などにより、ケガをすることがある
  • 漁業や海運への影響:魚網に絡んだり、漁獲物に混入する、安全な航行を妨げる
  • 海洋生物への影響:海鳥などが誤って飲み込んだり、海洋生物の体に絡まる

日本に漂着した海洋ゴミの種類

2024年3月に環境省が公表した資料「令和4年度漂着ゴミ組成調査データ 取りまとめの結果について(*1)」によると、39都道府県・78地点で調査を行った結果、個数では「カキ養殖用まめ管(長さ1.5cm程度)」が19,673個と最も多く、全体の16.5%を占めた。

以下の表は、上位5位までをまとめたものだ。

順位品目個数割合令和3年度
1位カキ養殖用まめ管(長さ1.5㎝程度)(漁具)19,67315.9%2位
2位ボトルのキャップ、ふた16,42913.3%1位
3位漁網(漁具)13,67611.0%24位
4位飲料用(ペットボトル)<1L9,3647.6%5位
5位プラ製ロープ・ひも(漁具)9,0187.3%3位

世界中で発生する国境なきゴミ問題

また、漂着ゴミにはもう一つ問題がある。海流に乗ってさまざまな国のゴミがたどり着いている問題だ。これは世界各国で同じ状況で、漂着ゴミには国境がないため「国境なきゴミ問題」とも言われている。漂着物は外来の移入種となって、生態系に影響を与える可能性もある。

「令和4年度漂着ゴミ組成調査データ 取りまとめの結果について」(*1)で行った調査では、全国でペットボトル11,904個を回収。そのうち言語が判別できたのは7,031個で、沖縄県・鹿児島県で回収したペットボトルのうち9割以上が中国・台湾語表記だった。

特に漂着ゴミが日本で最も多いと言われるのが対馬だ。九州と朝鮮半島の間、日本海の入り口に位置している国境離島で、対馬海流に乗ってアジア諸国から海洋ゴミが漂着する。その量は年間およそ3万〜4万㎥とされ、国の補助金等を使いながら年間約2.9億円の事業費をかけて漂着物対策を行っている。

もちろん、日本から流出したゴミも漂流して海外諸国にたどり着いている。2011年の東日本大震災発生時に大量の漂着物が太平洋を横断して、ハワイやアメリカ、カナダの西海岸に漂着したこともよく知られている。


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ゴミは誰のもの?社会の仕組みを問い直す

海洋ゴミの7〜8割は陸から川を通じて沖まで流されたものとされるが、意図的に捨てたものばかりではないこともわかっている。集積場所に捨てられていたり、ゴミ収集車から落ちたゴミをカラスが突いて散乱させたりしてしまうといったケースもある。 

もちろんモラルに反してゴミを捨てている人がいれば、その人たちに責任がある。しかし、海洋プラスチック問題は個人の責任追及だけで解決できるほど単純ではない。かといって、国の政策だけでも解決するわけではない。消費者も、生産者も、それぞれが海洋ゴミを流出させるサイクルの一部になっているのが現状だ。

現代の社会生活で、プラスチックの使用を完全に止めることは現実的ではない。だからこそ、便利さを保ちながら生態系への影響を最小限に抑える仕組みが必要になる。海洋プラスチック問題を含む環境問題の多くは、私たちが求める「便利さ」と密接に関わっている。こうした現実を踏まえて、日常の行動を見直していくことが求められているのではないだろうか。

注解・参考サイト

注解
*1 令和4年度漂着ゴミ組成調査データ 取りまとめの結果について

参考サイト
漂着ゴミについて考える。私たちの海を守るには?|環境省
プラスチックを取り巻く国内外の状況<資料集>|環境省
【国際】太平洋ゴミベルト、約8割が漁業由来。発生源最多は日本。Ocean Cleanup論文|Sustainable JAPAN
日本人のプラゴミ廃棄量は世界2位。国内外で加速する「脱プラスチック」の動き|日本財団ジャーナル
【増え続ける海洋ゴミ】海ゴミの7〜8割は街由来。流出原因の調査で分かったモラルでは解決できない問題|日本財団ジャーナル

About the Writer
倉岡

倉岡 広之明

雑誌記者として活動した後、フリーライターとして独立。さまざまなジャンルの記事を執筆しているが、北海道で生まれ育ったこともあり、自然環境や気候変動、SDGs、エネルギー問題への関心が深い。現在は、住宅やまちづくり、社会問題、教育、近代史など、多岐にわたるテーマを手がけている。
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