アンペイドワークとは?その経済的価値とジェンダー格差との関連について解説

アンペイドワークとは

アンペイドワークとは

アンペイドワークとは、賃金や報酬を伴わない労働を指す。主に家事、育児、介護、地域活動などが含まれる。英語の「unpaid work」に由来し、日本語では無報酬労働や不払い労働と訳されることがある。

ペイドワークが賃金が支払われる労働であり、GDPなどの経済指標に直接反映されるのに対し、アンペイドワークは経済的価値が適切に評価されず、見過ごされがちである。この見過ごされる傾向は、ジェンダーの観点から特に重要である。アンペイドワークの大部分を女性が担っていることが多く、これがジェンダー不平等や女性の貧困化の一因として問題視されている。

近年では、ジェンダー平等の推進や社会的認知の拡大により、アンペイドワークに関する課題が改めて注目されている。その価値を正当に評価し、適切な再定義を行うことが、持続可能で公平な社会を築くうえで欠かせない要素として議論が進んでいる。

アンペイドワークの種類

アンペイドワークの種類

アンペイドワークにはさまざまな種類があるが、主に以下の2つに分類される。

1. 家庭内労働

家庭内労働は、日々の生活を支えるために行われる無報酬の労働を指す。具体的には以下が含まれる:

  • 食事の準備
  • 掃除や洗濯
  • 育児や介護

これらの活動は、家庭の運営に欠かせないものであるが、賃金が支払われないため、経済的価値として認識されにくい。特に、育児や介護といった時間と労力を要する仕事は、担い手の負担が大きく、その負担が偏ることで社会問題となることもある。

2. 地域社会での活動

地域社会での活動もアンペイドワークに含まれる。具体的な例としては以下が挙げられる:

  • PTA活動
  • 町内会の役員や行事運営
  • ボランティア活動

これらの活動は、地域社会の安定や連携を支える役割を果たしている。しかし、自発的に行われるボランティア活動に対し、PTA活動や町内会の仕事は、本人の意思に関わらず担わなければならない場合もあり、特にフルタイムで働く人にとっては、仕事との両立において大きな障壁となることがある。

ジェンダーとの関連性

アンペイドワークの多くを女性が担っている背景には、文化的要因や歴史的要素が影響している。伝統的な性別役割分担の慣習が根強く残り、「家事や育児は女性の役割」とされる固定観念が依然として存在するためである。このような状況は、女性の経済的自立やキャリア形成における障害となり、ジェンダーギャップを助長する要因の一つとなっている。

アンペイドワークの種類とその負担が適切に認識され、社会全体で分担されるような仕組みが求められている。

アンペイドワークの経済的価値

アンペイドワークは、賃金を伴わないため現在のGDP計算には含まれない。しかし、家庭や地域社会を支えるこれらの活動は、実質的に非常に大きな経済的価値を持っている。国際連合(UN)や経済協力開発機構(OECD)の研究でも、アンペイドワークの経済的影響は非常に重要とされている。例えば、国連統計部が2017年に公表した推計では、家事や育児などのアンペイドワークがGDPに占める割合は、各国で15%から40%に及ぶ可能性があると試算されている。また、OECDの2019年の報告書では、アンペイドワークに費やされる時間の価値を市場価格で評価した場合、多くの加盟国でGDPの20%以上に相当する規模になると指摘されている。これを無視することは、経済全体の実態を過小評価することに等しい。

アンペイドワークの価値を可視化する試み

アンペイドワークの価値を数値化するため、以下のような時間価値換算方法が用いられている:

  1. 機会費用法(OC法)
    無償労働を行うことによって市場労働を放棄した際の逸失賃金を基準に評価する方法。例えば、育児や介護に費やした時間を、自身が得られるはずだった賃金で換算する。
  2. 代替費用法スペシャリスト・アプローチ(RC-S法)
    無償労働を、市場で同様のサービスを提供する専門職の賃金で評価する方法。例えば、掃除や介護の時間を、プロの家事代行サービスや介護士の時給で計算する。
  3. 代替費用法ジェネラリスト・アプローチ(RC-G法)
    無償労働を、家事使用人の賃金で評価する方法。この方法は、より包括的に無償労働を評価する試みとして利用されることがある。

内閣府による統計

内閣府経済社会総合研究所の報告書「無償労働の貨幣評価について」では、1991年の推計で日本国内の無償労働の評価額は67兆円から99兆円と試算されている。これはGDPの14.6%から21.6%に相当し、非常に大きな規模であることが示されている。また、これらの無償労働の総額の約9割を女性が担っており、一人当たりの無償労働評価額でも、女性は男性の5倍から9倍と高い数値が出ている。

アンペイドワークとジェンダー平等

アンペイドワークの大部分を女性が担う現状は、ジェンダー平等における重要な課題である。例えば、日本では女性が1日にアンペイドワークに費やす時間は平均3時間44分であり、男性の1時間30分を大きく上回っている(内閣府「男女共同参画白書」2023年版)。この負担の偏りは、女性のキャリア形成や経済的自立を阻む要因となるだけでなく、性別役割の固定化を助長する可能性がある。

特に「第二のシフト(Second Shift)」と呼ばれる、フルタイムの仕事を終えた後に家事や育児を担う女性の負担が顕著で、仕事と家庭の両立が困難になる要因となっている。この状況を改善するためには、男性の家事・育児参加が不可欠である。例えば、北欧諸国では父親の育児休暇取得を奨励する政策により、男女間のアンペイドワークの時間格差が縮小している事例もある。

こうした取り組みを参考にしつつ、家庭や職場における意識改革と政策的支援を進めることが、アンペイドワークの負担を平等に分担することにつながる。

各国の取り組み事例

北欧諸国の政策

北欧諸国では、アンペイドワークの負担を平等に分担するために、男性の育児休暇取得を奨励する政策が進んでいる。例えば、スウェーデンでは「パパ・クォータ(父親割り当て)」と呼ばれる制度があり、育児休暇の一定期間が父親専用に割り当てられている。この結果、2022年には男性の育児休暇取得率が30%を超え、アンペイドワークの時間格差が縮小した。また、ノルウェーでは、男女が家事や育児に費やす時間の差がわずか18分にまで縮小しており、これにより女性の労働市場への参加率が80%に達している(OECDデータ)。

日本の現状

一方、日本ではアンペイドワークの負担は依然として女性に偏っている。総務省「社会生活基本調査」(2021年)によると、女性が家事に費やす時間は1日平均3時間37分で、男性の41分の約5倍に達している。この偏りは、女性のキャリア形成や経済的自立を妨げる要因となっている。

こうした状況を改善するため、日本では働き方改革や保育サービスの拡充が進められている。例えば、2019年に施行された「改正育児・介護休業法」では、男性の育児休業取得を促進する「産後パパ育休」制度が導入され、2022年には男性の育児休業取得率が17.13%と過去最高を記録した(厚生労働省データ)。また、保育サービスの拡充により、待機児童数は2017年の約2万人から2022年には約4000人に減少している。

これらの取り組みは一定の効果を上げているものの、北欧諸国と比較すると進展は限定的である。今後さらなる政策の充実と意識改革が求められる。

まとめ

ジェンダー平等の必要性が叫ばれ、女性の社会進出が進む中で、女性の就業割合は飛躍的に伸びた。しかし、家庭内で担ってきた労働を同時に負担し続けることによる弊害には、これまで十分に注目されてこなかったのが実情だ。フルタイムの労働と家庭内・地域内の無償労働を並行して続けることは、時に困難を伴い、女性の社会進出に歯止めをかける要因となることもある。

こうした課題に対処するためには、アンペイドワークの存在を認識し、就業に必要な社会の入り口だけを整備するのではなく、全体を俯瞰してワークライフバランスというより広い枠組みから再考することが求められる。

参考記事
無償労働の貨幣評価について|内閣府

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