
Cradle to Cradleとは
「Cradle to Cradle(クレイドル・トゥ・クレイドル)」は、製品や資源をゴミにせず、再利用を前提とした持続可能な設計を目指す考え方である。日本語に訳すと「ゆりかごからゆりかごまで」となり、略して「C2C」と呼ばれる場合もある。
ゴミを資源として捉え、材料を無限に循環させることで、環境にも経済にも良い影響をもたらす。この考え方は、約30年前に、ドイツの科学者マイケルブラウンガート博士・アメリカの建築家ウィリアム・マクドノー氏・そしてドイツのEPEAと呼ばれる環境保護促進機関によって発表された。
Cradle to Cradleは、現在の線形経済を革新させる考え方で、製品を使わなくなった後はゴミとして処理され、資源が無駄にされていく「Cradle to Grave(ゆりかごから墓場まで)」からの脱却を目指す概念だ。
Cradle to Cradleにおける製品のライフサイクルは、以下の生物的サイクルと技術的サイクルの2つがある。
- 生物的サイクル
材料(植物や動物) → 製品 → 使用 → 堆肥 → 土壌(栄養素として戻る) → 新しい植物や動物 - 技術的サイクル
材料(合成素材や金属) → 製品 → 使用 → 再利用(再加工または修理) → 新しい製品(同じ素材を使って再生)
生物的サイクルでは、材料はたい肥や栄養素として土に戻る。また、技術的サイクルにおいても、材料は新たな製品で使えるよう再加工される。
Cradle to Cradleの考え方
基本的なアプローチとして、自然界にゴミは存在せず、ゴミはすべて資源として利用可能な栄養素となると考えられている。
従来の考え方では、ゴミの発生はやむを得ないため、資源の使用を最小限にし、環境の負荷を減らす試みを行っていた。しかし、環境にマイナスの影響を与えることは避けられず、地球の資源が枯渇する時期を遅らせるだけに過ぎなかった。
一方、Cradle to Cradleでは「ゴミ=新しい資源」と考えることで、製品におけるゴミ処理の概念がなくなり、代わりに原材料抽出という過程に置き換わる。製品の作り方や素材の使い方を根本的に見直すことで、これまでのようにマイナスの影響を減らすことだけに焦点を当てるのではなく、新たな価値を生み出すことを目指している。
サーキュラーエコノミーとの関連性

サーキュラーエコノミーとCradle to Cradleは、どちらも持続可能性と環境保護においての共通の目的を持つアプローチである。
まず、サーキュラーエコノミーとは、資源を効率的に使って循環を図ることで、ゴミの発生を最小限に抑える経済システムを指す。そして、Cradle to Cradleは、サーキュラーエコノミーの元となった考え方だといわれている。
サーキュラーエコノミーは、経済全体のシステム変革を目指す広い概念であるのに対し、Cradle to Cradleは、その具体的な実現方法を示す設計の原則だとされている。つまり、この考え方を製品作りに組み込むことで、サーキュラーエコノミーへの移行に貢献するのだ。
Cradle to Cradle認証とは
生産過程において、資源を無駄にせず再利用するアプローチを取り入れたモノには「Cradle to Cradle認証」と呼ばれる、製品の持続可能性を評価する国際的な環境認証が与えられる。認証は、EPEA(環境保護促進機関)により実施され、製品はBasic・Bronze・Silver・Gold・Platinumの5段階から評価される。
世界ではこれまでに、3万4,000点以上の製品がこの認証を取得している。対象となったカテゴリは建築資材・家具・家電製品・衣料品・包装材など多岐にわたっている。
認証を取得した製品は、環境保全に貢献し資源を無駄にしない設計であると証明されるため、企業は自社製品がどれだけ持続可能であるかを示すことが可能となる。
認証には5つのポイントがある

Cradle to Cradle認証を取得するには、以下に定められた5つのポイントをクリアする必要がある。
- 人間と環境に優しい素材の使用
製品に使われる物質や素材が、人間の健康と環境を守ることを最優先に選ばれているか - 製品とプロセスの循環性
製品が再利用に向けて意図的に設計され、設計通りの循環ルートで積極的にリサイクルされるか - エネルギーの選択と環境の保護
モノの製造には再生可能エネルギーを使い、気候変動を引き起こす温室効果ガスの削減に取り組んでいるか - 空気・水・土壌資源の管理
水と土壌が貴重で共有される資源として扱われ、流域や土壌の生態系が保護されているかどうか - 社会的公平性
企業が人権を尊重し、公正で平等なビジネスを行っているかどうか
それぞれの評価ポイントに対して、5つの認証レベルから1つが与えられる。そして、 5つの中で最も低い認証レベルが、その製品全体の認証結果となる。つまり、5つの項目のうち4つがGoldレベルだったとしても、1つがSilverであれば、その製品はSilverレベルとなる。
企業が認証を得るメリット
企業が認証を取得すると、環境・社会・経済の3つの側面において以下のようなメリットがある。
- 環境面
・資源の再利用をするため廃棄が発生せず、環境への負荷を抑えられる。
・廃棄量を最小限にするサーキュラーエコノミーを促進する。 - 社会面
・環境に配慮したブランドとしてのイメージを確立でき、消費者からの信頼を得られる。 - 経済面
・資源の再利用により材料のコストカットができる。
・企業内で資源を循環させるため、資源の市場価格を気にせずに製品づくりができる。
・材料から再製造まで全てを企業で管理するため、高品質な製品を安定的に製造できる。
Cradle to Cradle認証を受けた企業事例

最後に、認証を取得した世界の企業とその取り組み事例を紹介する。
Bang & Olufsen (デンマーク)
デンマークに本社を置くBang & Olufsenは、オーディオ製品やテレビ、電話を製造・販売するオーディオ・ビジュアル製品メーカーである。Bang & Olufsenは、2022年にワイヤレススピーカー「Beosound Level」について、Bronze認証を獲得した。家電業界で認証を受けたのは、これが初めてである。
Beosound Levelには、製品を長く使えるような工夫がいくつかされている。まず、ユーザーはスピーカーのカバーを新しい素材やカラーのものにカスタマイズして、自分の好きなデザインに都度変えられる。
また、年月をかけて性能を向上させられるのが、従来のスピーカーにはない大きな特徴だ。ソフトウェアアップデートにより新機能を追加でき、部品が古くなった場合は交換できるようになっている。さらに、Beosound Levelは、製品の50%以上にリサイクルプラスチック材が使用されているため、簡単に分解でき、リサイクルしやすいメリットも持っている。
スピーカーのCradle to Cradle認証により、Bang & Olufsenは、電子機器業界における循環型経済への移行は可能であると証明するきっかけを作った。
H&M(スウェーデン)
H&Mは、スウェーデン発祥のファストファッションのブランドで、欧米をはじめとして世界中で展開されている。サステナブルファッションを推進させる取り組みの一環として、環境に優しい素材や製造工程を積極的に取り入れている。
H&Mでは、H&Mベビーが展開する新生児向けの洋服が、Gold認証を取得している。アイテムはすべて、環境に優しく、肌にも優しい100%オーガニックコットンで作られている。また、ウエストバンドや袖口が折り返せたり、ウエストが調節可能だったりするなど、新生児の成長に合わせてサイズを調節しながら長く使い続けられるため、持続可能性があると評価されているのだ。また、100%自然に分解される素材や顔料を使用しているため、使わなくなった後は、家庭用のコンポストで堆肥化できる。
H&Mは、大量の製造・消費・廃棄が問題視されているファッション業界において、革新的な取り組みを続けている。
まとめ
Cradle to Cradleは、ゴミを新しい資源として捉え材料を再利用することで、持続可能な設計を目指す考え方である。
世界では人口が増え続ける一方で、ゴミの廃棄量の増加が問題となっている。Cradle to Cradleを推し進めれば、ゴミをそもそも発生させないため、廃棄量を減らせるだけでなく、廃棄するために使うエネルギー量も削減でき、環境保護に貢献できる。
また、サーキュラーエコノミーに移行していくためにCradle Cradleは不可欠な要素となる。今後、さらに環境保全に対する意識は世間で高まっていくだろう。企業にとっては、まずはこの考え方に対する認識を深め、環境に良く質も高い製品づくりを検討していく必要があるのではないだろうか。
Edited by k.fukuda
参考サイト
Bang & Olufsen
Cradle to Cradle Certified
Introduction to Cradle to Cradle|EPEA
Cradle to Cradle|EPEA
Interview: Cradle to Cradle® — 新たな品質基準 | EcoNetworks
Circular Economy and Cradle-to-Cradle|Linkedin
「C2C」って何?~ゴミを出さないモノづくり|時事ドットコム
Cradle to Cradle認証 | Bang & Olufsen
H&MがCradle to Cradle Certified®ゴールドを取得!|H&M






















エリ
大学時代は英米学科に在籍し、アメリカに留学後は都市開発と貧困の関連性について研究。現在はフリーライターとして、旅行・留学・英語・SDGsを中心に執筆している。社会の中にある偏見や分断をなくし、誰もが公平に生きられる世界の実現を目指し、文章を通じて変化や行動のきっかけを届けることに取り組んでいる。関心のあるテーマは、多様性・貧困・ジェンダー・メンタルヘルス・心理学など。趣味は旅行、noteを書くこと、映画を観ること。( この人が書いた記事の一覧 )