シンギュラリティは本当に来る?“人間の仕事”を見直し、AIと上手く付き合う

シンギュラリティとは、AI(人工知能)が人間の知能を超える「特異点」のこと。将来訪れるシンギュラリティに向けて、私たちが今から始められることとは?AIが進化してもなお、人間にしか発揮できない能力とは?来たるべき未来に向けて、身につけたいリテラシーについて学ぼう。

現代の日常に溶け込んだAI技術

現代社会におけるAIは、いつしか私たちの生活に欠かせない技術となった。ビジネス・教育・学業など、生活のさまざまなシーンにAIは取り込まれてている。

一方でAI技術の躍進により、新たに解決するべき課題が生じている事実も見過ごせない。AIとの共存における課題のなかでも、重視すべきものの一つが「シンギュラリティ」だ。

決して遠くない未来に到達するとされるシンギュラリティの影響を通し、人間とAIとの共存について掘り下げてみよう。


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シンギュラリティとは?AIが人間を超える日

シンギュラリティとは「技術的特異点」を指し、具体的には「AIが人間の知能を大幅に超えることで、人間の理解・予測を超えた変革が起こる転換点」のことだ。

AIが初めて本格的に人間を上回ったのは、1997年の「AI vs チェス世界チャンピオン」によるAI側の勝利といわれている(*1)。そして現代にいたるまで、AI技術は留まることなく進化し続けてきた。

現在はまだ人間の管理下にあるAIが、さらなる技術進化によってシンギュラリティが発生すれば、AIは人間の手に負えないほどの速度で思考・行動するようになるとされる。

シンギュラリティによる影響は、「生活がもっと便利になる」といった表面的な事象だけではない。シンギュラリティは、AIが人類の知能の限界を突破した存在になることと同義なのだ。

もともとシンギュラリティは、未来学の領域における専門用語であった。AIが人間の知能を凌駕することは「神の概念への進化」とも受け取られ、AI事業は哲学的・宗教的な事業とも例えられる。

シンギュラリティが訪れる時期については、現在も議論が続いている。一般的な説としては2045年前後が有力であるが、その頃にはAIが人間を超えるどころか「人間自身が人工知能と直接的に融合している」とも考えられている(*2)。


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AIの仕事と、“人間”にしかできない仕事

シンギュラリティの発生によって懸念される要素の一つが、雇用の大幅な変化だ。昨今でも「人間の仕事がAIに奪われる」と耳にしたことがある人は多いだろう。

しかしAIは「雇用を減らす技術」であると同時に、「新たな雇用を生む技術」でもあるのだ。

将来的なシンギュラリティを生き残るためには、AIを有効活用し、ビジネススタイルをコーディネートする選択が求められる。そのためにも単に「AIは便利なもの」という認識でいたり、反対に「AIは恐ろしいもの」と嫌厭しないよう、AIの得意・不得意領域をしっかりと学ぶことが重要だ。


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AIが得意な仕事の特徴

AIが得意な仕事の特徴としては、「情報分析力・情報処理力の駆使」が挙げられる。ヒューマンエラーが発生しにくいため、正確さにおいても軍配が上がる。

計算力・記憶力

計算力はAIの得意分野だ。AIは基本的に数字を扱う業務に強く、速さと正確性では人間を凌駕する。またビッグデータを活用した記憶力もAIの強みだ。しかもキャッシュクリアによって記憶をすべて消すこともできる。「覚え続けることも、完全に忘れることもできる」のは、AIならではの強みといえる。

並列処理・マルチタスク

AIは一度に数百万もの処理を並行して実行でき、そのうえ稼働時間が伸びても、人間のように集中力が散漫しない。何時間でも正確さを保ち、つねに規則に見合った働きができる。たとえば金融市場のリアルタイム取引では、株価や業界推移、トレンド、SNSの感情分析などを同時に監視し、1秒よりも早く株や通貨の売買の判断ができる。

精密な反復作業

精密な反復作業もAIの得意分野だ。AIの大きな強みは疲労や感情がないことであり、肉体的・心理的な負担による影響を受けず、同じ作業を延々と続けられる。実際に、精密・正確な反復作業が重視される工場のライン業務などでは、AI化が進みつつある。

パターン認識力

顔認証や異常検知などのシステムなど、膨大なデータにおけるパターン認識力が求められる仕事もAIが得意な業務だ。AIであれば、数千ものデータから些細なイレギュラーを即座に発見することができる。


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AIが苦手な仕事の特徴

AIが苦手な仕事の特徴としては、「非認知能力の駆使」が挙げられる。非認知能力とは、数値で定量的に換算できない能力のことで、共感力や想像力など人間ならではの力といえる。

共感、感情理解

AIにとって、共感や感情理解が求められる仕事は苦手な領域だ。AIは多くのデータから人間の非言語的なサインを通じ、対象者の心理を予測できる。しかし心の実感はなく、感情の一次体験はできない。リアルな心の形成は不可能だからこそ、本当の意味で「人生の伴走者」になることは難しいだろう。

倫理的な判断、多様な価値観

AIの判断基準は、システムプロンプト(AIの振る舞いや役割を決めるために、開発者や管理者が設定するプロンプト)に依存している。システムプロンプトが固定化される限り、AIは倫理や価値観などの「揺らぎが多い領域」には対応しにくい。正誤の判断は、文化や社会の文脈に基づいて下されるため、定量化された思考パターンに縛られたAIには難しいのだ。

創造力

AIは、0から1を創出するクリエイティブな仕事には向いていない。なぜなら、過去データに基づいた情報生成は得意分野であっても、これはあくまで「応用」に過ぎないからだ。まったく新しい概念や、文化的な文脈を踏まえた「創造」は、人間ならではの力といえるだろう。

責任感、リーダーシップ

人間の「本物の人格」と、システムプロンプトによって設計された「人格のようなもの」の間には、越えられない壁がある。人格があるからこそ、困難を乗り越えた人特有の「責任感」や、周りに力を与える「リーダーシップ」などが芽生える。人間の「存在」から発せられるパワーが必要な仕事に、AIは向かないのだ。


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シンギュラリティを恐れず、AIを使いこなす未来へ

シンギュラリティが発生したとき、人間の役割は確実に残されているものの、今以上のAIの介入は避けられないだろう。技術発展によって生まれる文化があるように、消滅する文化も少なくない。

しかしこれまでも文化は誕生と消滅を繰り返してきており、ある種の健全な進化の形ともいえる。テクノロジーと相対し、理解し、使いこなす力こそが、次なる文化を生むための礎となる。

大切なのはシンギュラリティを脅威としてとらえるのではなく、AIを正しく有効に活用するためのリテラシーだ。ここでは、AIとの共存のために身につけるべきリテラシーについて解説する。

AIを「着想のためのツール」として利用する

AIと正しく共存するためには、AIを着想のためのツールとして利用する姿勢が大切だ。AIは膨大な情報量のなかから必要なデータを与えてくれるが、AIの提案に依存したままでは自分で考える力を失ってしまう。

人間が思考力を失ってしまうと、AIによって淘汰されかねない。AIからの提案を「考えるためのヒント」として活用し続けていれば、思考力だけではなくセンス・価値観・美意識なども失われることはないだろう。

業務効率化における「目的意識」を持つ

AIの活用理由には、業務効率化も挙げられる。文章生成やコード作成など、AI機能による業務時間短縮の恩恵を受けている人も多いだろう。ここで意識したいのが、「何のために業務を効率化するのか」という意識だ。

生産性の向上や自分の時間の確保など、明確な目的があるからこそ、業務効率化作業に初めて意義が生まれる。その結果、創造性や意欲が維持され、さらなる行動や目的の設定につながる。AIを「使う側」でいるためには「なぜ使うのか」をつねに意識し続ける姿勢が求められるのだ。

プロンプトを洗練させる学習をする

AIはプロンプトに忠実だからこそ、曖昧なプロンプトから出力される回答には限界がある。プロンプトの洗練のためにはプロンプトエンジニアリングの学習が効果的だが、専門領域の学習だけでは、これもまた限界がある。

AIを使いこなすためには、美しい創作物に触れたり、幅広い価値観の人間と会話したりしながら、五感を通した一次体験を増やすことが大切だ。ときには痛みや悲しみからも学び、心や感性を磨いていくことが求められる。

そういった感性を深める学習を続けることで、視野が広がり、想像力が育まれ、分野横断的な思考が実現する。AIに指示するためのプロンプトにも表現の幅が生まれ、よりニーズに沿った豊かな回答を出力しやすくなる。


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AIを味方にし、シンギュラリティを平和的なものへと変える

AIの台頭により、業務効率化やビジネススタイルの変化が急速に進んでいる。近年の社会や技術の変容に、戸惑いを感じている人も少なくない。

しかし、シンギュラリティという未来を恐れる必要はない。AIを使いこなし、私たち自身の可能性を広げる機会として捉えることが、テクノロジーと上手く付き合い、持続可能な未来を築くための第一歩となる。

ぜひこの機会に、個人とAIとの関わり方について考えてみてほしい。一人ひとりがAIとの関係性について考えることが、時代の大きなうねりにつながる。そのうねりは、いつか訪れるシンギュラリティによる人間への影響を、より平和的なものへと変えてくれるだろう。

Edited by s.akiyoshi

注解

(*1)将棋・チェスのAIソフトとの関わりから考察する、生成AI時代における人間の価値|株式会社東急総合研究所
(*2)シンギュラリティとは~2045年問題~|NPO日本ネットワークセキュリティ協会

About the Writer
山口愛未_METLOZAPP

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数多くのジャンルの経験を生かし、分野横断的な執筆を得意とするWebライター。ウェルビーイングやメンタルヘルス領域を中心に、生活に新たな気づきを与えるコンテンツを発信中。マイノリティな感性に悩む人や、孤独や寂しさを抱きながら暮らす人の心に、少しでも寄り添えるような記事執筆を目指して活動する。現在は、女性のキャリア形成や、人間と動物の関わり方などに興味を持ち学習中。
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