
ドローンやAIといった新しい技術を、ごみ対策などの環境保全に活用する試みが広がっている。河原の草むらなど死角に潜むごみは、人知れず海に流出し汚染の原因となってきた。最新技術でごみの種類や分布を把握できれば、適切な対応が可能である。この記事では河川ごみの現状と課題、最新技術の活用例について紹介する。
「見えないごみ」を可視化する技術革新

河川のごみの多くは、私たちの目に直接は映らない「見えないごみ」であり、増加し続ける海洋ごみの原因となっている。海に流出する前に回収するには、ごみの存在を的確に把握することが欠かせない。
近年、ごみの実態を把握するために、ドローンからの空撮やAI解析が活用され始めている。河川のごみの実態や最新技術について解説する。
河川の「見えないごみ」問題とは
河原には、私たちの目につきにくい「見えないごみ」が数多く存在する。バーベキューなどの食品容器や空き缶、釣り場に残された吸い殻やレジ袋、流れ着いたプラスチック片など多岐にわたり、中には不法投棄とみられるものもある。
背の高い草木に覆われた場所では、これらのごみの発見は困難であり、回収されなければそのまま海に流出してしまう。実に海洋ごみの7〜8割が、街で発生し雨で流され川を通じて流出したものとされる。発生原因は投棄・ぽい捨てのほか、意図せず漏洩したものだ。
これまで国や地方自治体、地域住民が協力して回収事業を行っているが、人手や費用、地理的制約により、効率的で持続的なごみ対策が課題となっている。
ごみの把握に役立つ最新技術
最新の技術は、自然環境の保全にも活用可能だ。機器を用いた観測と解析は、人の力ではできなかったことを可能にする。広範囲かつ高精度のデータ収集により、政策立案や清掃活動の効率化にも貢献している。
以下に最新技術の概要をそれぞれ説明する。
ドローン(無人航空機)
数cmレベルの高解像度で、海岸や河川のごみを詳細に空撮できる。低コストで柔軟な運用ができるのも利点だ。搭載したスピーカーにより、ごみの持ち帰りを水辺利用者に呼びかけることも可能。
定点観測装置(Webカメラ・センサーカメラ)
比較的低コストで設置でき、特定地点の長期モニタリングを通して、時間変化や季節変動の把握が可能となる。
AI画像解析
AIによるディープラーニング(人間の脳の仕組みを模した機械学習の一種)により、画像の中の「意味のある部分」をピクセル単位で分類する。被写体をピクセル単位で塗り分ける技術により、自動で分類し、ごみの種類別の面積や分布を定量化できる。
Webサービス化
SNSやスマホアプリを活用した市民参加型モニタリングも進んでおり、地域住民やNPOが撮影・投稿した画像がAI解析に活用されている。
ごみの「見える化」の例
岐阜県・長良川で行われた実証プロジェクトでは、ドローンとAIを活用してごみの「見える化」に挑戦した。草木が茂り人力での確認が難しい場所でも、ドローンの空撮映像をもとにペットボトルをはじめとするプラスチックごみの実態を把握できた。
さらに、撮影データを専用ソフトで画像解析し、ごみの種類や分布を把握できるシステムも導入された。これにより、肉眼では見落とされていたごみの存在が可視化され、データとして蓄積される。
実証では、参加者が映像を共有することで問題への関心を高める場ともなった。こうした「見える化」は、単なる調査にとどまらず、ごみの発生源や流出経路を明らかにし、効果的な削減策を検討するために役立つだろう。
データが語る河川ごみの真実

ドローンやAIを活用した観測は、河原のごみの実態をこれまで以上に精密に浮かび上がらせている。ごみが集中するエリアや種類ごとの分布パターンなど、従来の人力調査では把握しきれなかったものも明らかになった。
たとえば、護岸や中州といった水位変動でごみが滞留しやすい場所に、ペットボトルなどのプラスチックごみが多く残されている実態が確認されている。また、台風や大雨の後にごみ量が急増・流下する様子もデータで把握され、発生源や流入経路の推定にも役立っている。
これらの情報は、重点エリアの特定、効率的なごみ回収計画の立案などに有効だ。自治体や研究機関にとっては、政策や施策を検討するための重要な科学的根拠となる。
テクノロジー活用による環境保全のこれから

ドローンやAIなどのテクノロジーは、環境保全の課題を解決する可能性を秘めている。ここでは具体例について紹介する。
海洋・山のごみへの活用
ドローンとAIを組み合わせた技術は、河川にとどまらず海洋や山間部など幅広い地域に応用が可能だ。海岸では定点カメラや衛星画像、ドローンを使って漂着ごみの量を観測し、増加のタイミングを把握して効率的な回収作業ができる。
さらに、海洋短波レーダーやGPS漂流ブイのデータを組み合わせ、ごみが集まりやすい場所や時期を解析することで、効果的な清掃計画を立てることができる。ドローンは、岩場や瀬、急傾斜地など人力や船での回収が難しい場所からごみを運び出す手段としても注目されている。
ごみ発生の予防
ごみ問題の根本解決には、発生を防ぐ視点が重要だ。ドローンで撮影した海岸画像をAIが解析し、ごみの種類や発生源が可視化されることで、住民や観光客の意識変化を促すことにもつながる。
バーベキューや釣りでにぎわう地域では、観光客のごみ対策として、ドローンにスピーカーを搭載しごみの持ち帰りを呼びかける実証も行われている。ごみを見つけるだけでなく、人々の行動変容を促す視点からも、最新技術は期待されている。
環境保全の魅力の向上
環境保全に最新技術を取り入れることにより、保全活動をより親しみやすく魅力的にできる可能性がある。ドローンが空から撮影した映像をモニターで共有したり、AI解析の結果を公開したりすることで、ごみ問題をリアルに実感でき多くの人が関心をもつきっかけになる。実証の現場では、鮮明な映像を目にした参加者から驚きや興味を示す声があがった。
さらに、清掃活動にロボットを導入すれば注目度が上がり、イベント的な魅力を持つことで新たな参加者層を呼び込む効果も期待できる。
テクノロジーは単に効率化の手段にとどまらず、環境保全そのものを「関わってみたい」「体験してみたい」と感じさせる魅力的な活動へと変えていく力を持つ。最新技術を生かしてどんな未来を描くのかは、私たち一人ひとりに託されている。気づきをきっかけに行動を重ねることで、豊かな川と海を次世代へ受け継ぎたい。
Edited by k.fukuda
参考サイト
資料(Data) ドローンを活用した河川及び河川敷における散乱ごみ調査
今さら聞けない海洋ごみ問題。私たちにできること| 日本財団ジャーナル
IT 技術等を活用した海洋ごみ回収・処理事例集 (公開版)
ドローンを用いた海洋ごみの調査実証実験を開催しました! ~デジタル技術が切り拓く、未来に向けた海洋ごみ調査~ | 海と日本プロジェクト岐阜
資料(Data) ドローンを活用した河川及び河川敷における散乱ごみ調査
【実証レポート】堀川に浮かぶごみをなくしたい!川ごみのメカニズム解明と対策の実証
IT 技術等を活用した海洋ごみ回収・処理事例集 (公開版)























曽我部 倫子
大学で環境問題について広く学び、行政やNPOにて業務経験を積むなかで環境教育に長く携わる。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、未就学児や保護者を対象に自然体験を提供。またWebライターとして、環境、サステナブル、エシカル、GXなどのテーマを中心に執筆している。三姉妹の母。
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