自然と人と、ちょうどよい距離でつながる。ガーデンがつくるサードプレイス

自然と人と、ちょうどよい距離でつながる。ガーデンがつくるサードプレイス

都会で人に囲まれて暮らしていても、どこか孤独を感じる。

孤独感を癒すため、お気に入りのカフェでひと息ついたり、美味しいものを食べたりすることも有効だ。しかし、もっと自然に近い場所で、気負わずに人とつながれたらと望んだことはないだろうか。この記事では、孤独を和らげ自分らしくいるための新たな選択肢、サードプレイスとしての「コミュニティガーデン」に注目する。

現代人の孤独とサードプレイス

孤独感を和らげる具体的な解決方法として、サードプレイスが注目されている。サードプレイスとは、家庭(ファーストプレイス)や職場・学校(セカンドプレイス)とは異なる第3の居場所のことを指す。カフェや図書館、地域のコミュニティスペース、趣味の集まりなどがその例だ。

こうした場所で利害関係に縛られず自然体で人と関わることで、安心感や居心地のよさを得て、孤独感を解消できる可能性がある。

都会で生活する人が抱える孤独感

都会で生活する人が抱える孤独感

都会は人が多くにぎやかで便利な場所だが、日々働いたり暮らす中で孤独を感じる人も少なくない。

内閣府が令和6年に実施した孤独・孤立の実態把握に関する全国調査(*1)によると、孤独感が「しばしばある・常にある」「時々ある」「たまにある」と回答した割合の合計は約4割に上る。中でも、孤独感が「しばしばある・常にある」と回答した人の割合は、20歳代および30歳代で高いという結果が出ている。

また、「困った時に頼れる人」として約95%が「家族・親族」と回答するなか、一人暮らしが増えていることも気がかりだ。最新の国勢調査(*2)(2020年)の結果では、単独世帯の割合は2015年の34.6%から38.1%に増加している。

都会には、他人との適度な距離を保とうとする空気感や、表面的なつながりだけで成り立つ人間関係がある。日々忙しい仕事や長すぎる通勤に時間をとられ、多くの人々が効率重視のライフスタイルを確立するなかで、心から安心できる関係や居場所を持つことは簡単ではない。

さらに、SNSなどで人とつながっているように見えても、実際には深い対話や共感が乏しいまま、孤独感が強まることもある。都会の孤独は、物理的な孤立だけではなく心理的な断絶も原因となっている。

サードプレイスの必要性

一人暮らしや孤独感を抱えやすい状況において、気軽に立ち寄れて他者と緩やかにつながれる場所の存在がますます重要になっている。サードプレイスでは、誰かと話して気持ちを共有することができ、心理的な支えやリフレッシュにもつながる。

人からの評価を案じ、やるべきことに追われ、家と職場を往復するだけの暮らしでは心が疲弊してしまう。共通の趣味をもつ人との関わりや、他人と協力し社会に貢献するボランティア活動は、社会の中で自分の存在価値を再確認できる機会となるだろう。

市民向けのイベントなどでの、年代や立場の違う人との穏やかな交流は、新しい気づきや小さな喜びを生む。従来の住民同士のつながりである自治会活動だけではなく、コワーキングスペースやシェアキッチンなど、新しい形のつながりも広がっている。

孤独を感じやすい現代の都市生活において、サードプレイスは人々の心の健康や社会的なつながりを保つための大切な役割を果たすことができるだろう。

コミュニティガーデンという選択肢

コミュニティガーデンとは、地域の住民が共同で管理・運営する菜園や花壇などの緑地空間のことである。都市部の空き地や公園の一角などに設けられ、野菜や花を育てるだけでなく、地域の交流や環境教育の場としても活用されている。

世代や立場を超えた人々が協力しながら自然とふれあい、つながりを育むことができるのが特徴だ。コミュニティガーデンも、サードプレイスの選択肢の一つである。

サードプレイスとしてのガーデン 

コミュニティガーデンはサードプレイスの一形態として、孤独感の軽減や地域の絆づくりを促す場となり得る。

コミュニティガーデンでは、花壇を花で美しく飾るという共通の目的があることで、初対面の人とも自然に会話が生まれやすく、気負わず安心して交流することが可能だ。

また、高齢者や子ども、忙しい社会人など、その地域に暮らすさまざまな立場の人が関わることで、多様なつながりが生まれる。さらに、他者と一緒に体を動かし、成果を分かち合う喜びは、心のゆとりを育み孤独感の緩和にも効果的だ。

日常のストレスから離れ、五感を開放し、季節によって移り変わる自然と向き合うことでリフレッシュできるほか、自己肯定感の回復にもつながる。

ガーデニングと健康促進の関係を研究した結果(*3)では、ガーデニングがうつ・不安症状・ストレスレベルの低下、人生満足度や生活の質の向上に役立つことが明らかとなっている。また、農作業をすると体内のストレスホルモンが減るという研究結果(*4)もある。

都会の中で人と自然の両方とつながることができるコミュニティガーデンは、現代人にとって貴重な居場所となる可能性が示されている。

コミュニティガーデンの例

コミュニティガーデンの例

花を介した市民同士のコミュニティづくりを進めているのが、埼玉県鴻巣市だ。

鴻巣市は都心へのアクセスが良好である典型的なベッドタウンだが、花の一大生産地としても名高い。花壇用の苗ものを中心とした生産は80年近くに及び、現在は約150の事業者により年間5,000品種以上の花が生産されている。

市は市民ボランティアと協働で「花のまち」としてのシティプロモーションを積極的に進めており、2021年度から「こうのすフラワーロード」の取り組みを開始した。

この取り組みでは例年春と秋の年2回、市民ボランティアを中心に200基のプランターに花が植えられるほか、ハンギングバスケットが制作され駅からの沿道を華やかに彩る。また、町内会や近所のグループで公共施設や公園などで花の植栽や管理を行う際にも、市は活動経費の3分の2以内で補助金を交付し活動を後押しする。

ボランティアはシニア世代が中心だが、学生や親子連れも参加し世代間の交流が生まれている。花を通じたコミュニティづくりが地域全体に広がっており、地域の絆づくりやウェルビーイングの向上につながっている好例だろう。

行政とボランティアが協働で推進する鴻巣市のコミュニティガーデンが、人と人とを結びつけ市民の暮らしをより豊かにし、まち全体を明るく照らしている。

市民による花の植栽活動

「関わりしろ」のある社会へ

物理的にも心理的にも孤独感が生まれやすい社会状況のなか、「関わりしろ」のある社会づくりが注目されている。「関わりしろ」とは、人と地域、人と人とのあいだに自然に生まれ、それらをゆるやかにつなぐ余白のような存在だ。

たとえば、まちの一角にあるコミュニティガーデンは市街地の余白といえる。この「関わりしろ」で自然と向き合いながら土に触れ、隣の人と一緒に手を動かすうちに自然と会話が生まれ、心の余白が穏やかに満たされるだろう。

また、美しく植えられた花壇を見て達成感を味わい、街を彩り「誰かの役に立っている」と感じる瞬間は、自分自身の価値を思い出させてくれるものだ。安心や自己肯定感を育むためには、人付き合いが苦手な人でも自分に合った距離感で関われる居場所が必要だ。花を植え、誰かと挨拶を交わし、ガーデンを気にかける。そのような関わりにも大きな価値がある。

どんな人でも無理なく関われる「関わりしろ」を持つコミュニティは、人の孤独をそっと和らげ、誰もが大切にされていると感じられる理想的な暮らしを実現するだろう。

小さな一歩からはじめよう

孤独な気持ちは、必ずしもネガティブに捉える必要はなく、誰もが感じるものであり自分を見つめる大切な時間でもある。しかし、その気持ちを少しでも和らげたい場合には、人とつながる選択肢としてコミュニティガーデンを思い出してほしい。

土や植物に触れて柔軟な心で人と関われば、孤独感が解消されるだけでなく、新たな自分の居場所や自分の価値を発見するきっかけになる可能性もある。

まずは近所の緑地やガーデンイベントに足を運んでみてはいかがだろうか。自分にぴったりのサードプレイスを探すための、小さな一歩となるはずだ。

Edited by k.fukuda

注解

*1 孤独・孤立の実態把握に関する全国調査による。
*2 国勢調査による。
*3 ガーデニングと健康促進の関係を研究した結果による。

*4 農作業をすると体内のストレスホルモンが減るという研究結果による。

About the Writer
曽我部倫子

曽我部 倫子

大学で環境問題について広く学び、行政やNPOにて業務経験を積むなかで環境教育に長く携わる。1級子ども環境管理士と保育士の資格をもち、未就学児や保護者を対象に自然体験を提供。またWebライターとして、環境、サステナブル、エシカル、GXなどのテーマを中心に執筆している。三姉妹の母。
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